君と初恋

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1、出会いは突然に

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「あ、あの!お手伝いしますっ」

 よく考えもせずに発した言葉にさっそく後悔し始めてきた。
 ちょうど夏に差し掛かりそうな今日この頃。
 最近の中では一番熱いかもしれない休日のお昼時に街中の歩道橋をおっきな荷物を抱えて歩くおばあさんを見つけた。
 私でもためらうくらいの大荷物で階段を上っているおばあさんは腰が悪そうで見ていられない。そう思った時にはとっさに声をかけてしまっていた。
 案の定、おばあさんは喜んでくれたけど、さっきも言った通り私で私でもためらうくらいの大荷物なのだ。
 おばあさんの荷物を持って、そのうえおばあさんの手を取って歩くのは不可能に近い。というか普通に考えて無理だ。
 考えなしの自分に自己嫌悪を発揮しそうだったけど、それどころじゃないので慌ててぐるぐる頭を回す。
 それにきっと後悔するってわかってても無視する選択肢があるような人にはなりたくない。
 そんなこと言っても思考の波は一向に解決策をつかまないまま空振りしまくっている。
 私、綿谷わたや凪心なこは昔からそうだ。
 思ったことが思った通りにいかないとすぐに焦っちゃって何にも浮かばなくなってしまう。頭がフリーズしてしまうのだ。しかも、考えなしだからそういう場面が多い。解決策が見つからないままにオロオロして時間が過ぎていく経験なんて一度や二度じゃない。しかも、その過ぎていく時間にもまた焦ってしまうんだ。
 大勢の前に出たりしてもいつも緊張で吐きそうになるし、誰かに意見を伝えるだけでも緊張してシュミレーションの半分も話せたことはない。
 直さなきゃって思うけど練習できるものでもないし、慣れたいけどそういう状況になったら例外なくいつも焦ってしまう。
 ほら、おばあさんだってさっそく頼んだのを後悔しそうな顔してる。
 どうしよう早く何か言わなくちゃ。
 はやく、はやく、はやくっ!

「何かお手伝いしますよ」

 焦ってどうにもならなくなっていたところに神様か天使みたいな声が降ってきた。
 それに、おばあさんから受け取ったままどうしようもなかった荷物が腕の中から消えていた。
 正確には誰かの腕の中に移動していたんだけど。

「これ、もらうよ? 君はその女性と一緒に階段を上ってくれるかな?」

 もう一度柔らかく降ってきた言葉に今度こそちゃんと顔を向けてみる。
 さっきは尾を引いていた焦りと突然の状況についていけなくて体が固まったままだったから顔をあげるっていう思考に至らなかったんだ。
 我ながら焦りすぎである。
 そこに立っていた声の主は私と同じくらいか少し年上に見える男の子だった。
 最初に目に入ったのは陽の光を浴びてきらきら光ってる茶髪。染めているほど明るくないけど日に透けてきらきらしている。少し切れ長な瞳は意志が強そうで、すっと通った鼻筋と相まってシャープな印象。だけど、優しそうに笑った口元や少し日に焼けた肌が人のよさそうな雰囲気を醸し出していた。
 さっきはあんなに大荷物に見えたのにその子が持ったらすごく軽そうですいすい階段を上っていく。
 しばらく、ボケっとその姿を眺めていたけどやがてはっとしておばあさんの手を取る。慌てておいて行かれないように彼の後をついていく。
 おばあさんもすっかり彼のことを好きになっちゃったみたいで「若いころのおじいさんを思い出すわあ」なんてつぶやいている。
 結局、名前も知らない彼は荷物を抱えて歩道橋の反対側まで一緒に渡ってくれた。
 良い人すぎてここに人目がなかったら間違いなく拝んでいただろうと思った。

「二人ともありがとうね。これあげるわ」

 おばあさんは私が役立たずだったことは忘れたことにしてくれたみたいで私たち二人にお菓子をくれた。
 あの男の子は最後まで神様のようで優しく謙遜していた。
 最後までほとんど言葉を交わすことはなかったけど私の中で彼は完全に尊敬の対象で、また会えたらいいななんて叶えるつもりもないお願いを心の中に思い浮かべてた。
 せめて名前だけでも聞きたかったけど、緊張して声をかけられないかった。
 本当に自分の性格が恨めしい。
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