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3、一年前の雨
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空の向こう側をないものにするかのような分厚い雲に覆われた雨の日。
視界が悪いし気分が下がって外にも出たくない。
それでも前から約束していたのをすっぽかすわけにはいかなくて待ち合わせのカフェまで急ぐ。
パンケーキがおいしいお気に入りの店だった。
待ち合わせ相手は澪奈だ。
どうしても話したいことがあると言われてしまえば行くしかない。
店に入れば彼女はもう来ていて手を挙げて場所を教えてくれる。
「ウサ、別れよ」
向かいの席に座って早々に彼女が口を開いた。
待たせてごめんねくらい言わせてほしい。
まさか、どうしても話したいことが別れ話だったとは思わなかった。
今日は付き合って一年の日だから、彼女にそんな趣味があるとは思えないけど記念日を祝いたいとかそんなことかと思っていた。
彼女はとても自由人だしわがままだけどけして傲慢な人ではないと思っている。
だからこそ、何の前触れもなく理由もない別れ話ではないと思った。
「え?ごめん、何か気に障るようなことしたかな?」
全く予想が付かな過ぎて素直に疑問を口にした。
唐突すぎる発言に衝動的に言ったこととか冗談なのかと思ったのだ。
「ううん。ただ、もう一年たったからいいかなって思って」
彼女は何もわかっていない俺にいら立ったような表情を見せることもなく淡々と言ってのけた。
どうやら怒ってるような気配はない。
それどころか本当に「もういいかな」とおもったみたいな、前々から決まっていたことのような平然とした態度。
別になんてことないって顔。
「……なにそれ。まあ……君らしいのかもしれないけど。俺、最近君をわかってきたと思ってたけどまた分かんなくなったよ」
本当に意味が分からなかった。
もしかして、目的が終わったのだろうか。
最近、うっすら忘れかけていた彼女が俺を利用している説が確信を得た気がした。
一年たっても付き合った時と同じように何かに利用されているような気配はなかったのだ。
少しショックが和らいだ気がした。
なんていうか嫌われたのかと思うと嫌だけど、別れること自体に特に抵抗感はなかったのだということに今気が付いた。
変な感じだ。
「元々、分かってなかったってことでしょ。それより、バイトしない?」
俺の言葉にどうでもいいという態度で返した彼女がまた意味不明なことを言った。
こっちはいろいろ複雑なのにと思うけど彼女に言っても何かが変わる気はしない。
そして彼女が僕に事情を説明する気はないのだということも分かった。
「……そうかもね。ん、バイト?」
だったら適当に頷いておく。
それにしても気になるのはバイトだ。
「そう。別れるお詫びにバイト紹介する」
まさか彼女口からそんな言葉が出てくるとは思わなくて目を見開いてしまう。
ただ、変な気の使い方は一蹴まわって彼女らしかった。
そういうところが彼女がたまに見せる姫らしくないところなのかもしれない。
「それは……なんていうかありがたいけど、なんで?てか、僕別れ話に頷いてないけど」
「ウサが別れたくないとは思えない。バイトはたまたまだよ」
言葉を濁したのに、何の疑いもなく返された。
彼女は俺を何だと思っているのか。
だけど、彼女の目を見て冗談とかではないんだということは分かった。
それなら、僕の返事はもう決まっている。
「うん、まあ君が別れたいなら反論はしないよ。別れるとなってからも恋人でい続けるほど無意味なことはないから
ね」
どんなにうまく説得してこの関係が続いたとしてもそれは元の関係とは違うものなのだ。
いつ切り出されるのかと別れ話におびえながら過ごすなんて御免だ。
僕の返答に彼女は心底満足そうな顔をして笑った。
最後の日になっても彼女の掌の上で転がされている気がしてならない。
「うん。同感ね。じゃあ、行こう」
そういうとすぐに席を立った。
相変わらず彼女は自由すぎる。
「え、どこに?」
追いついて声をかけたのに答えてくれるつもりは毛頭ないみたいだ。
本当に彼女は自由すぎる。
視界が悪いし気分が下がって外にも出たくない。
それでも前から約束していたのをすっぽかすわけにはいかなくて待ち合わせのカフェまで急ぐ。
パンケーキがおいしいお気に入りの店だった。
待ち合わせ相手は澪奈だ。
どうしても話したいことがあると言われてしまえば行くしかない。
店に入れば彼女はもう来ていて手を挙げて場所を教えてくれる。
「ウサ、別れよ」
向かいの席に座って早々に彼女が口を開いた。
待たせてごめんねくらい言わせてほしい。
まさか、どうしても話したいことが別れ話だったとは思わなかった。
今日は付き合って一年の日だから、彼女にそんな趣味があるとは思えないけど記念日を祝いたいとかそんなことかと思っていた。
彼女はとても自由人だしわがままだけどけして傲慢な人ではないと思っている。
だからこそ、何の前触れもなく理由もない別れ話ではないと思った。
「え?ごめん、何か気に障るようなことしたかな?」
全く予想が付かな過ぎて素直に疑問を口にした。
唐突すぎる発言に衝動的に言ったこととか冗談なのかと思ったのだ。
「ううん。ただ、もう一年たったからいいかなって思って」
彼女は何もわかっていない俺にいら立ったような表情を見せることもなく淡々と言ってのけた。
どうやら怒ってるような気配はない。
それどころか本当に「もういいかな」とおもったみたいな、前々から決まっていたことのような平然とした態度。
別になんてことないって顔。
「……なにそれ。まあ……君らしいのかもしれないけど。俺、最近君をわかってきたと思ってたけどまた分かんなくなったよ」
本当に意味が分からなかった。
もしかして、目的が終わったのだろうか。
最近、うっすら忘れかけていた彼女が俺を利用している説が確信を得た気がした。
一年たっても付き合った時と同じように何かに利用されているような気配はなかったのだ。
少しショックが和らいだ気がした。
なんていうか嫌われたのかと思うと嫌だけど、別れること自体に特に抵抗感はなかったのだということに今気が付いた。
変な感じだ。
「元々、分かってなかったってことでしょ。それより、バイトしない?」
俺の言葉にどうでもいいという態度で返した彼女がまた意味不明なことを言った。
こっちはいろいろ複雑なのにと思うけど彼女に言っても何かが変わる気はしない。
そして彼女が僕に事情を説明する気はないのだということも分かった。
「……そうかもね。ん、バイト?」
だったら適当に頷いておく。
それにしても気になるのはバイトだ。
「そう。別れるお詫びにバイト紹介する」
まさか彼女口からそんな言葉が出てくるとは思わなくて目を見開いてしまう。
ただ、変な気の使い方は一蹴まわって彼女らしかった。
そういうところが彼女がたまに見せる姫らしくないところなのかもしれない。
「それは……なんていうかありがたいけど、なんで?てか、僕別れ話に頷いてないけど」
「ウサが別れたくないとは思えない。バイトはたまたまだよ」
言葉を濁したのに、何の疑いもなく返された。
彼女は俺を何だと思っているのか。
だけど、彼女の目を見て冗談とかではないんだということは分かった。
それなら、僕の返事はもう決まっている。
「うん、まあ君が別れたいなら反論はしないよ。別れるとなってからも恋人でい続けるほど無意味なことはないから
ね」
どんなにうまく説得してこの関係が続いたとしてもそれは元の関係とは違うものなのだ。
いつ切り出されるのかと別れ話におびえながら過ごすなんて御免だ。
僕の返答に彼女は心底満足そうな顔をして笑った。
最後の日になっても彼女の掌の上で転がされている気がしてならない。
「うん。同感ね。じゃあ、行こう」
そういうとすぐに席を立った。
相変わらず彼女は自由すぎる。
「え、どこに?」
追いついて声をかけたのに答えてくれるつもりは毛頭ないみたいだ。
本当に彼女は自由すぎる。
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