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第三章 新たなる旅立ち
見えざる戦士
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スネイルは、ジャシードたちがオークジャイアントと戦っているのを羨ましそうに見ていた。本当は暴れたいのだが、他でもないジャシードの命令に逆らうつもりはない。周囲の気配に最大限、気を遣いながら、バラルの護衛をしていた。
初めこそ特に何もなかったが、ジャシードが言っていたように、動き出した他の気配を感じた。
スネイルは、自らの気配を抑え目にし、動き出した気配を追いかけながら、バラルを餌にして誘い込むことにした。
――失敗は許されない。
スネイルは、集中を途切れさせることなく、気配を追い続けた。その気配は、そっとスネイルに、否バラルへと近づいてきていた。
いつの間にジャシードは、この気配を捉えていたのだろうか。パーティーのリーダーを務めて戦いも頭を張り、常に最前線にいるはずのジャシードは、スネイルが集中し続けなければ見失うような気配に気づいて配置を換えた。しかもジャシードは、それらを何気なくこなしている。
スネイルは、もっと自分が成長しないといけない、と強く感じた。
しかし思えば今、気配を追っている相手は、何と我慢強いことだろうか。普通の怪物であれば人間を見たら即攻撃となるはずだが、この怪物は気配を消して、まさに最高のタイミングとなるように接近してきている。
スネイルはこの気配に、タンネッタ池で倒した怪物を重ねていた。あの醜い怪物も、姿を消し気配を消してゆっくりじっくりと迫ってきていた。
今監視をしている怪物も、同じ何かを感じる。もしかしたら、タンネッタ池の怪物の再来かも知れない。もしそうだとしたら、今なら倒せるのだろうか。スネイルは様々な思考を巡らせていた。
気配は間近に接近してきていた。より詳細な位置を掴むには、スネイルも本気を出さなければならない。
スネイルはいつかやったように、気配を捉えるべく集中し始めた。視界が二重にぶれ、普通見えるものと見えないものとを仕分けできるようになる。
――見つけた。
スネイルは、姿を隠して行動している、あのリザードマンを捉えた。ジャシードですら、力場なしには対抗できなかった相手だ。
しかしそれでも、バラルを攻撃させるわけには行かない。スネイルも気配を消して、リザードマンへと接近していった。
◆◆
スィシスシャスは不可視の膜を下ろして、忌々しい魔法を使う老人をひと突きで殺してやろうかと迫っていた。
正直、狙うのは老人である必要性はなかった。頭の中に浮かび上がる思いが、老人を殺せと言っている気がしているだけだ。
ジャシードと呼ばれているリーダー格は、スィシスシャスにとっても気になる存在だ。スィシスシャスが不可視の膜を下ろしているにも関わらず、あのジャシードと遠くから目が合ったような気がして、上手く攻撃に移せなかった。
本当に始末するべきはジャシードだが、隙がありそうで無いため対応できない。真っ向勝負でどうにかできそうだと思ったが、何故か攻撃が通用しなくなるため、それも難しい。
そう言った理由で、外側から攻めることにしたスィシスシャスであったが、これも何故か見透かされている気がしていた。
不可視の膜は通常見破られないはずだが、あのジャシードと言うのは鋭敏な感覚を持っているように思われる。
そのジャシードが、今はオークジャイアントに釘付けになっており、戦場で寝ているバカな老人を始末するのには絶好のチャンスだ。
スィシスシャスは、老人まであと五メートルほどの距離まで近づいた。槍を構え、ひと突きで殺せる体勢を整えた。槍の長さは三メートル。あと三歩で射程圏だ。槍を構え、一歩進む。
と、その瞬間、尻尾の付け根の辺りに激痛が走り、不可視の膜が解除された。
小さな人間が、スィシスシャスの背後からダガーの突きを繰り出していた。それはスィシスシャスの鎧が薄い尻尾の辺りから、身体に刺し込まれて激痛となっていた。
「シャァァァァッ!」
スィシスシャスは尻尾を振り回し、ダガーを刺し込んでいた小さい人間を振り払った。ゴロゴロと転がっていく小さな人間は、起き上がると素早く老人の近くに移動した。
スィシスシャスは、この小さな人間がバカな老人を守ろうとしているのを理解した。
寝ている仲間を守るなど、愚の骨頂だ。スィシスシャスは、老人に狙いを定めた。
まずは小さな人間を攻撃する。小さな人間の得物はダガーだ。二本あろうと、槍の長さに適うわけがない。槍を突き出すと、左側に回避した。
「シーシャス!」
スィシスシャスは、バカめという意味の言葉を放ち、槍を老人に向けて突き出した。
次の瞬間、スィシスシャスの腕が爆発し、右腕が吹っ飛んだ。尻尾から脳天まで突き抜ける激痛がスィシスシャスを襲った。悶絶する声が漏れる。
スィシスシャスには何が起こったか分からなかった。混乱の最中、右脇腹に更なる激痛が突き抜ける。
「バカめ」
寝ていたはずの老人は、片目を開けて言った。
「バカめ!」
右脇腹を突き刺した小さな人間は、真似をして同じ事を言いつつ、右脇腹のダガーを二本とも捻った。
気絶しそうな程の痛みが、スィシスシャスの身体を縦横無尽に走り回った。
ダガーを持っている小さな人間を右手で振り払おうとしたが、スィシスシャスの右手はもう存在しなかった。
スィシスシャスは、痛みに耐えつつ身体をダガーから離し、小さな人間に尻尾を回して張り飛ばし、不可視の膜を張った。
そしてできる限り速く、その場を移動した。
だが、スィシスシャスの背後に更なる痛みが走り、不可視の膜が解除された。
「落とし物に気づいた」
小さな人間は言った。見れば体液が地面に軌跡を描いている。
「シシャァ!」
くそ、という意味の言葉を放ったが、今度は左脚から炎が上がった。寝ていた老人がまた魔法を使ったらしい。
「おーい、スネイル。もういいか?」
「いいよ!」
老人とスネイルと呼ばれた小さい人間が、会話を交わしている。
早くこの炎を消さなければいけなかった。スィシスシャスは、逃走を選択せざるを得なくなった。単独で来たのは失敗だった。相手を侮りすぎた。
スィシスシャスは、両脚と尻尾を使って、全力で逃げ始めた。サッと後ろを振り向いたが、小さな人間は追ってこなかった。
スィシスシャスは、何とかエレネイア湖に飛び込み、逃げ果せた。
◆◆
「ふわぁぁ、まだ眠いが……とりあえず問題ないだろうな」
バラルは大あくびをしながら、むくりと起き上がった。
「おっちゃん、平気?」
スネイルは、いつの間にかバラルの事を『おっちゃん』と言うようになっていたが、バラルは特段気に止めていなかった。
「うむ。こっそり起こしてくれて助かったぞ」
「足でごめん」
スネイルは、バラルに寄っていった時に、密かにバラルの腕を蹴っていたのを詫びた。
「なあに、命拾いしたと思えば安い物だ」
バラルは、スネイルの頭を撫でた。
「デカい方はどうかな?」
バラルが目をやると、オークジャイアントは体液だらけの身体で戦っているのが見えた。
「デカいのしぶとい。なかなか倒れないよ」
「そのようだな。スネイル、わしはもういいから、バシッとやって来い」
「おう!」
バラルに背中を叩かれて、スネイルはオークジャイアントの背後を目指して走り出した。
◆
ジャシード達は、オークジャイアントを圧していたが、体液だらけの状態でも、オークジャイアントは倒れなかった。
「全く、しぶっといわね」
マーシャは、やれやれと言った様子で肩をすくめながら言った。
魔法は散々使っているが、どれもこれも致命傷には至っていない。打てども撃てども、大木は倒れない。まさにそんな感じだ。
オークジャイアントは、膝が砕け、身体全体に大火傷を負い、無数の箇所がマーシャの魔法で弾け飛んで体液塗れになっている。
足元はオーリスとジャシードのしつこい攻撃で、肉が見えるほど傷ついているが、それでもオークジャイアントは倒れなかった。
「アニキ!」
スネイルは、ハンドサインと身振りで『攻撃、首根っこ』を送ってきた。
「私がやる!」
マーシャは、オークジャイアントと右足の地面を盛り上がらせ、更に踵の後ろに高い壁を作り出した。
オークジャイアントは盛り上がった地面から離れようとして、踵の後ろの壁に引っかかり、派手にひっくり返った。
ジャシードたちは、オークジャイアントが起き上がる前に右足の足の裏を斬りつけ始めた。
堪らず身体を起こしながら、オークジャイアントは足を引っ込めようとする。
そこへスネイルが走り込み、オークジャイアントの鎧を上って、首根っこの部分に狙いを定めた。
ワスプダガーが、狙った場所に突き立てられた。スネイルは別の角度からゲーターを刺し込み、更にワスプダガーを抜いて刺し込む。
すると、傷口から大量の体液が噴き出し始めた。スネイルはその流れに押されて落ちそうになったが、何とかオークジャイアントの鎧にしがみついた。
オークジャイアントは、首の後ろにいるスネイルを振りほどこうと腕を伸ばした。
「うわわっ」
スネイルは指の一本に弾かれ、宙に舞った。
半身を起こしているオークジャイアントは、かなりの高さがあった。そこから弾かれたスネイルは、軽く十メートルほどの高さから落ちていく。
「スネイル!」
オーリスはその俊足を活かして、スネイルの落下地点へ走った。何とか追いつき、オーリスはスネイルを受け止めようと身構えた。
スネイルはオーリスの腕の中へと……などと美しくはならず、オーリスを押し潰すようにゴロゴロと草原を転がっていった。
「ガンド!」
ジャシードはスネイルを、オーリスとガンドに任せることに決め、『治療せよ』のハンドサインを出すと、自らはオークジャイアントに走り込んだ。後ろ手に『爆裂』のハンドサインだ。
マーシャの魔法がジャシードを追い越し、先に半身起こしたオークジャイアントへ、爆裂の魔法が炸裂した。
オークジャイアントは爆風に押され、ほぼ大の字に倒れ込み、今度はジャシードがその上を走って行く。
ジャシードはオークジャイアントの胸に、ジャンプしてファングを深く突き立ててから、フォーススラッシュのチカラを発動させた。
フォーススラッシュの波動が身体の中を駆け巡り、首根っこの傷と合わせて失血状態になったオークジャイアントは、遂に痙攣を残して動かなくなった。
「よし……。ガンド、そっちは?」
ジャシードは治療に行っているガンドへ向けて、大声を張り上げた。
「二人とも骨が折れてるから、治してるよ」
「あう! 痛い痛い! もっと優しく!」
ガンドとスネイルの声が聞こえてきて、ジャシードは安心した。
「マーシャ、ガンドを手伝ってあげて」
「うん、わかった!」
マーシャが小走りに、三人のいる場所へと走って行く。
ジャシードは、オークジャイアントの身体を裂いて、マナの欠片がないか探し始めた。どこにあるのかも全く分からないが、これまで見てきた欠片は、身体の中にあることが多かった。
色々と探したが、最終的にオークジャイアントが噴出した大量の体液の中から、マナの欠片が合計七個発見された。
「こんなに大きな怪物を倒して、たったの七個か……。大変だなあ、これは」
ジャシードはため息をついた。
◆
オークジャイアントとの激戦を終え、治療が済んでエレネイア湖で武具を洗った後、ヒートヘイズの一行は風抜け谷で夜を明かした。
その後、街道沿いの旅は、ひと雨見舞われたものの順調に続いた。そして十字路南の山裾で一泊し、ウェダール平原へと差し掛かった。
ウェダール平原は、十字路を境に東南北へと広がる広大な平原だ。所々に森や林はあるが、その殆どが草原になっている。
ひと言に草原と言っても、草の背丈は三メートルもある巨大な物から、五センチ程度の草まで様々な物があるため、どの方向へも見通しが良いわけではない。
ウェダール平原にいるらしいと言う噂のコボルド集団は、あまりにもザックリとした情報のみがある状態では、集団を発見することができなかった。
恐らくは街道を逸れ、ウェダール平原を大まかにでも探索する必要があるのだろう。
一行は、草原が開けた部分を探し、ウェダール平原のど真ん中で夜を明かした。
幸い襲撃もなく、見張り役のガンドが暇なため交代の間際に少し寝てしまい、バラルにきつく怒られる出来事があった程度だ。
翌日、平原をうろつくオーガに見つかって攻撃されたが、六人は難なくオーガを退治した。
ヴァーラン付近にある橋を越えると、マナクル砂丘が見えてきた。メンダーグロウはマナクル砂丘にあり、その城壁はとても目立つ。
南にあるドゴールと違って、北にあるメンダーグロウは、そこそこ肌寒い気候だ。城壁の向こうでもくもくと上がっている煙は、それぞれの家庭にある暖炉から上っている煙らしい。
そんな城壁周りからの眺めを見ながら、一行はメンダーグロウに到着したのだった。
初めこそ特に何もなかったが、ジャシードが言っていたように、動き出した他の気配を感じた。
スネイルは、自らの気配を抑え目にし、動き出した気配を追いかけながら、バラルを餌にして誘い込むことにした。
――失敗は許されない。
スネイルは、集中を途切れさせることなく、気配を追い続けた。その気配は、そっとスネイルに、否バラルへと近づいてきていた。
いつの間にジャシードは、この気配を捉えていたのだろうか。パーティーのリーダーを務めて戦いも頭を張り、常に最前線にいるはずのジャシードは、スネイルが集中し続けなければ見失うような気配に気づいて配置を換えた。しかもジャシードは、それらを何気なくこなしている。
スネイルは、もっと自分が成長しないといけない、と強く感じた。
しかし思えば今、気配を追っている相手は、何と我慢強いことだろうか。普通の怪物であれば人間を見たら即攻撃となるはずだが、この怪物は気配を消して、まさに最高のタイミングとなるように接近してきている。
スネイルはこの気配に、タンネッタ池で倒した怪物を重ねていた。あの醜い怪物も、姿を消し気配を消してゆっくりじっくりと迫ってきていた。
今監視をしている怪物も、同じ何かを感じる。もしかしたら、タンネッタ池の怪物の再来かも知れない。もしそうだとしたら、今なら倒せるのだろうか。スネイルは様々な思考を巡らせていた。
気配は間近に接近してきていた。より詳細な位置を掴むには、スネイルも本気を出さなければならない。
スネイルはいつかやったように、気配を捉えるべく集中し始めた。視界が二重にぶれ、普通見えるものと見えないものとを仕分けできるようになる。
――見つけた。
スネイルは、姿を隠して行動している、あのリザードマンを捉えた。ジャシードですら、力場なしには対抗できなかった相手だ。
しかしそれでも、バラルを攻撃させるわけには行かない。スネイルも気配を消して、リザードマンへと接近していった。
◆◆
スィシスシャスは不可視の膜を下ろして、忌々しい魔法を使う老人をひと突きで殺してやろうかと迫っていた。
正直、狙うのは老人である必要性はなかった。頭の中に浮かび上がる思いが、老人を殺せと言っている気がしているだけだ。
ジャシードと呼ばれているリーダー格は、スィシスシャスにとっても気になる存在だ。スィシスシャスが不可視の膜を下ろしているにも関わらず、あのジャシードと遠くから目が合ったような気がして、上手く攻撃に移せなかった。
本当に始末するべきはジャシードだが、隙がありそうで無いため対応できない。真っ向勝負でどうにかできそうだと思ったが、何故か攻撃が通用しなくなるため、それも難しい。
そう言った理由で、外側から攻めることにしたスィシスシャスであったが、これも何故か見透かされている気がしていた。
不可視の膜は通常見破られないはずだが、あのジャシードと言うのは鋭敏な感覚を持っているように思われる。
そのジャシードが、今はオークジャイアントに釘付けになっており、戦場で寝ているバカな老人を始末するのには絶好のチャンスだ。
スィシスシャスは、老人まであと五メートルほどの距離まで近づいた。槍を構え、ひと突きで殺せる体勢を整えた。槍の長さは三メートル。あと三歩で射程圏だ。槍を構え、一歩進む。
と、その瞬間、尻尾の付け根の辺りに激痛が走り、不可視の膜が解除された。
小さな人間が、スィシスシャスの背後からダガーの突きを繰り出していた。それはスィシスシャスの鎧が薄い尻尾の辺りから、身体に刺し込まれて激痛となっていた。
「シャァァァァッ!」
スィシスシャスは尻尾を振り回し、ダガーを刺し込んでいた小さい人間を振り払った。ゴロゴロと転がっていく小さな人間は、起き上がると素早く老人の近くに移動した。
スィシスシャスは、この小さな人間がバカな老人を守ろうとしているのを理解した。
寝ている仲間を守るなど、愚の骨頂だ。スィシスシャスは、老人に狙いを定めた。
まずは小さな人間を攻撃する。小さな人間の得物はダガーだ。二本あろうと、槍の長さに適うわけがない。槍を突き出すと、左側に回避した。
「シーシャス!」
スィシスシャスは、バカめという意味の言葉を放ち、槍を老人に向けて突き出した。
次の瞬間、スィシスシャスの腕が爆発し、右腕が吹っ飛んだ。尻尾から脳天まで突き抜ける激痛がスィシスシャスを襲った。悶絶する声が漏れる。
スィシスシャスには何が起こったか分からなかった。混乱の最中、右脇腹に更なる激痛が突き抜ける。
「バカめ」
寝ていたはずの老人は、片目を開けて言った。
「バカめ!」
右脇腹を突き刺した小さな人間は、真似をして同じ事を言いつつ、右脇腹のダガーを二本とも捻った。
気絶しそうな程の痛みが、スィシスシャスの身体を縦横無尽に走り回った。
ダガーを持っている小さな人間を右手で振り払おうとしたが、スィシスシャスの右手はもう存在しなかった。
スィシスシャスは、痛みに耐えつつ身体をダガーから離し、小さな人間に尻尾を回して張り飛ばし、不可視の膜を張った。
そしてできる限り速く、その場を移動した。
だが、スィシスシャスの背後に更なる痛みが走り、不可視の膜が解除された。
「落とし物に気づいた」
小さな人間は言った。見れば体液が地面に軌跡を描いている。
「シシャァ!」
くそ、という意味の言葉を放ったが、今度は左脚から炎が上がった。寝ていた老人がまた魔法を使ったらしい。
「おーい、スネイル。もういいか?」
「いいよ!」
老人とスネイルと呼ばれた小さい人間が、会話を交わしている。
早くこの炎を消さなければいけなかった。スィシスシャスは、逃走を選択せざるを得なくなった。単独で来たのは失敗だった。相手を侮りすぎた。
スィシスシャスは、両脚と尻尾を使って、全力で逃げ始めた。サッと後ろを振り向いたが、小さな人間は追ってこなかった。
スィシスシャスは、何とかエレネイア湖に飛び込み、逃げ果せた。
◆◆
「ふわぁぁ、まだ眠いが……とりあえず問題ないだろうな」
バラルは大あくびをしながら、むくりと起き上がった。
「おっちゃん、平気?」
スネイルは、いつの間にかバラルの事を『おっちゃん』と言うようになっていたが、バラルは特段気に止めていなかった。
「うむ。こっそり起こしてくれて助かったぞ」
「足でごめん」
スネイルは、バラルに寄っていった時に、密かにバラルの腕を蹴っていたのを詫びた。
「なあに、命拾いしたと思えば安い物だ」
バラルは、スネイルの頭を撫でた。
「デカい方はどうかな?」
バラルが目をやると、オークジャイアントは体液だらけの身体で戦っているのが見えた。
「デカいのしぶとい。なかなか倒れないよ」
「そのようだな。スネイル、わしはもういいから、バシッとやって来い」
「おう!」
バラルに背中を叩かれて、スネイルはオークジャイアントの背後を目指して走り出した。
◆
ジャシード達は、オークジャイアントを圧していたが、体液だらけの状態でも、オークジャイアントは倒れなかった。
「全く、しぶっといわね」
マーシャは、やれやれと言った様子で肩をすくめながら言った。
魔法は散々使っているが、どれもこれも致命傷には至っていない。打てども撃てども、大木は倒れない。まさにそんな感じだ。
オークジャイアントは、膝が砕け、身体全体に大火傷を負い、無数の箇所がマーシャの魔法で弾け飛んで体液塗れになっている。
足元はオーリスとジャシードのしつこい攻撃で、肉が見えるほど傷ついているが、それでもオークジャイアントは倒れなかった。
「アニキ!」
スネイルは、ハンドサインと身振りで『攻撃、首根っこ』を送ってきた。
「私がやる!」
マーシャは、オークジャイアントと右足の地面を盛り上がらせ、更に踵の後ろに高い壁を作り出した。
オークジャイアントは盛り上がった地面から離れようとして、踵の後ろの壁に引っかかり、派手にひっくり返った。
ジャシードたちは、オークジャイアントが起き上がる前に右足の足の裏を斬りつけ始めた。
堪らず身体を起こしながら、オークジャイアントは足を引っ込めようとする。
そこへスネイルが走り込み、オークジャイアントの鎧を上って、首根っこの部分に狙いを定めた。
ワスプダガーが、狙った場所に突き立てられた。スネイルは別の角度からゲーターを刺し込み、更にワスプダガーを抜いて刺し込む。
すると、傷口から大量の体液が噴き出し始めた。スネイルはその流れに押されて落ちそうになったが、何とかオークジャイアントの鎧にしがみついた。
オークジャイアントは、首の後ろにいるスネイルを振りほどこうと腕を伸ばした。
「うわわっ」
スネイルは指の一本に弾かれ、宙に舞った。
半身を起こしているオークジャイアントは、かなりの高さがあった。そこから弾かれたスネイルは、軽く十メートルほどの高さから落ちていく。
「スネイル!」
オーリスはその俊足を活かして、スネイルの落下地点へ走った。何とか追いつき、オーリスはスネイルを受け止めようと身構えた。
スネイルはオーリスの腕の中へと……などと美しくはならず、オーリスを押し潰すようにゴロゴロと草原を転がっていった。
「ガンド!」
ジャシードはスネイルを、オーリスとガンドに任せることに決め、『治療せよ』のハンドサインを出すと、自らはオークジャイアントに走り込んだ。後ろ手に『爆裂』のハンドサインだ。
マーシャの魔法がジャシードを追い越し、先に半身起こしたオークジャイアントへ、爆裂の魔法が炸裂した。
オークジャイアントは爆風に押され、ほぼ大の字に倒れ込み、今度はジャシードがその上を走って行く。
ジャシードはオークジャイアントの胸に、ジャンプしてファングを深く突き立ててから、フォーススラッシュのチカラを発動させた。
フォーススラッシュの波動が身体の中を駆け巡り、首根っこの傷と合わせて失血状態になったオークジャイアントは、遂に痙攣を残して動かなくなった。
「よし……。ガンド、そっちは?」
ジャシードは治療に行っているガンドへ向けて、大声を張り上げた。
「二人とも骨が折れてるから、治してるよ」
「あう! 痛い痛い! もっと優しく!」
ガンドとスネイルの声が聞こえてきて、ジャシードは安心した。
「マーシャ、ガンドを手伝ってあげて」
「うん、わかった!」
マーシャが小走りに、三人のいる場所へと走って行く。
ジャシードは、オークジャイアントの身体を裂いて、マナの欠片がないか探し始めた。どこにあるのかも全く分からないが、これまで見てきた欠片は、身体の中にあることが多かった。
色々と探したが、最終的にオークジャイアントが噴出した大量の体液の中から、マナの欠片が合計七個発見された。
「こんなに大きな怪物を倒して、たったの七個か……。大変だなあ、これは」
ジャシードはため息をついた。
◆
オークジャイアントとの激戦を終え、治療が済んでエレネイア湖で武具を洗った後、ヒートヘイズの一行は風抜け谷で夜を明かした。
その後、街道沿いの旅は、ひと雨見舞われたものの順調に続いた。そして十字路南の山裾で一泊し、ウェダール平原へと差し掛かった。
ウェダール平原は、十字路を境に東南北へと広がる広大な平原だ。所々に森や林はあるが、その殆どが草原になっている。
ひと言に草原と言っても、草の背丈は三メートルもある巨大な物から、五センチ程度の草まで様々な物があるため、どの方向へも見通しが良いわけではない。
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恐らくは街道を逸れ、ウェダール平原を大まかにでも探索する必要があるのだろう。
一行は、草原が開けた部分を探し、ウェダール平原のど真ん中で夜を明かした。
幸い襲撃もなく、見張り役のガンドが暇なため交代の間際に少し寝てしまい、バラルにきつく怒られる出来事があった程度だ。
翌日、平原をうろつくオーガに見つかって攻撃されたが、六人は難なくオーガを退治した。
ヴァーラン付近にある橋を越えると、マナクル砂丘が見えてきた。メンダーグロウはマナクル砂丘にあり、その城壁はとても目立つ。
南にあるドゴールと違って、北にあるメンダーグロウは、そこそこ肌寒い気候だ。城壁の向こうでもくもくと上がっている煙は、それぞれの家庭にある暖炉から上っている煙らしい。
そんな城壁周りからの眺めを見ながら、一行はメンダーグロウに到着したのだった。
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「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
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