家族になった人族のポムと魔族のポムの物語

純粋どくだみ茶

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家族になった人族のポムと魔族のポム

01.魔族のポムの初陣

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魔族のポムは女の子。

魔族の魔術学校を次席した逸材だが欠点があった。

魔族の男性は身長が200cm、女性は180cmほどあり人族と比べても1割以上大柄だ。

ところがポムは、145cmと魔族の女性としてはかなり小柄だ。

ポムは、いつも"子供"とバカにされていた。

いつか見返してやると魔術学校で頑張った。

しかし、体が小柄のため運動では後塵を帰す結果となり、首席を取るころはできなかった。

皆を見返すためポムは、魔術学校を卒業すると魔族軍に志願した。

ポムの魔術学校の成績を見れば魔術師部隊に配属されることなど誰が見ても明からかだった。

ただし、ここでも体格が問題になった。

本来であれば、体格(身長)が問題で魔族軍に入る検査に落ちるはずなのだが、魔術の成績があまりにも優秀だったため検査に合格してしまった。

ただ、魔族軍で魔術師部隊に配属になっても訓練はある。

そうポムの欠点は体力なのだ。

ポムは、走っても歩いてもいつもビリだった。

体を使うことに対しては何をしてもビリだった。

でも魔術は先輩魔術師を凌駕した。

そして、訓練課程がまもなく終わろうとする頃。

戦争が起きた。

魔族軍が人族の国へ攻め込むというのだ。

魔族からすれば人族の国など取るに足りない存在だった。

ポムの能力なら、魔族軍の主力の魔法部隊に配属されると思っていた。

ところが、配属された魔術部隊は、辺境軍の魔術師部隊だった。

ポムは、自分の体躯を呪った。

いつまでこの呪縛が付きまとうのかと。

ポムはもうどうでもよくなった。

この戦争が終わって軍隊に数年いれば除隊できる。

あとは結婚相手を見つけてつつましやかな人生を送ろうと思った。



魔族国の辺境にある転移門をくぐった。

山を越え、谷を進み、森の中を歩いた。

雨が降り、けもの道がぬかるんだ。

ポムは、体力のせいかいつも遅れて歩いていた。

さらに雨が降ってぬかるんだ道で何度もころんでどんどん遅れていった。

そんなとき、同じ魔術師部隊の先輩魔術師のお姉さんが助けてくれた。

ポムを見ていると妹を見ているようだといつも笑って世話をやいてくれた。

森を抜けた頃、雨がやんだ。

草原に辺境軍が集まっていた。

物資が所狭しと積まれていた。

やっと休める。

何日かぶりのまともな食事が提供された。

温かい食事を食べ終わると同時にその場に眠ってしまった。

ポムの小さい体は既に限界だった。

どんなに魔術の能力が高くても体力がない自分には務まらないと悟った。

そんなポムを先輩魔術師が魔術師部隊のテントに運んでくれた。

次の日、そこからさらに2日歩いた。

不味い携帯食料で空腹を紛らわす。

水筒の水で喉を潤した。

明日の朝、戦争が始まる。



魔術師部隊は、後方から遠距離魔法を放つので辺境軍の後方に配置されていた。

魔術師部隊の周辺には、数は少ないが戦士部隊が護衛についている。

自分達が敵と直接戦うことはないので、他の部隊とは闘いに対する気の持ち方が少し違った。

皆、気楽だった。

いつも世話をやいてくれる先輩魔術師が、何度も話していた闘いのいろはをまた話していた。

先輩魔術師に聞いてみた。

闘いの経験はあるのかと。

苦笑いしていた。

魔族軍は、ここ数十年間他国と戦争をしていなかった。

なので、誰も実戦経験なんてしていないのだ。



辺境軍の魔術師部隊の隊長が命令を下した。

「皆の者、あれが目標の人族の街"ココ"だ。」

「魔族50人の魔法攻撃がれば、あのような矮小な街など瞬時に陥落するだろう。」

「だが、決して油断してはならない。例えネズミでも最後には"ひと咬み"する力を残している。」

「だから徹底的に破壊し尽す。反撃する力など微塵も残してやるものか。」

皆、歓喜の声をあげた。

そして遠距離魔法攻撃の準備に入った。

魔術師が3人ひと組で炎魔法を練り上げ遠距離を飛ぶ巨大な炎の弾を撃ちあげるのだ。

準備ができたチームから順次、巨大な炎の弾が撃ち上げる。

次から次へと巨大な炎の弾が撃ち上がる。

草原の空を爆音と爆音と爆音が響きあいながら人族の街"ココ"へ向かって飛んで行く。

爆音が微かになった頃、人族の街から炎の柱がいくつも立ち上った。

人族には、この巨大な炎の弾を打ち落とす術がない。街を守る術がない。

城があろうが城壁があろうがこの巨大な炎の弾があれば、落とせない街も国もないのだ。

魔力が尽きるまで炎魔法を練り上げ遠距離を飛ぶ巨大な炎の弾を撃ちあげた。



魔術師部隊の隊長から魔法攻撃の中止命令が下った。

いよいよ魔獣達の地上攻撃が始まる。

これで人族の街も陥落したも同然だ。

そろそろ、別動隊が人族の要塞"コラ"への攻撃を開始する頃だろう。

魔族たちは魔力の回復を行うため、魔族独特の回復魔法をかけて魔力とMPの回復を行っていた。

魔術師部隊は、既に戦勝気分だった。

魔術師部隊を守る戦士部隊も、この闘いでは出番がないと嘆いていた。



なんだろう。

空からいくつもの閃光が見えた。

いくつもの爆音が聞こえた。

人族の街"ココ"の方角を見ると空から幾重もの閃光と爆音が大挙して落下していた。

自分たちが先ほど放った炎魔法の巨大な炎の弾の数百倍はあるかという規模だ。

最初は、人族の街"ココ"にそれが落ちたと思った。

しかし、違った。

それは、魔族軍の魔獣達に向かって落ちていたのだ。

草原からは見たこともない衝撃波と爆炎と砂塵が舞い上がっていた。

誰もが口を開けたまま目を見開いたまま動くことができなかった。

砂塵がおさまった。

草原は、巨大な穴で埋め尽くされていた。

数千はいた魔獣達がどこにもいない。

いるのは、巨大な穴の脇にある煙を吹いている黒い塊だけだ。



その光景を見ていた魔術師部隊の隊長の顔色が明らかにおかしかった。

顔が青ざめ汗が滝のように流れていた。

魔術師部隊の隊長が怒号を発した。

「魔術師は、回復したものから炎魔法による攻撃を再開しろ!」

「すぐにだ。ぐずぐずするな!死にたくなければ今すぐ攻撃に入れ!」

魔力とMPの回復が半分も終わっていないが、炎魔法の攻撃の準備に入る。

「隊長の様子からするとかなり危ない状況のようね。」

「おそらく、我ら魔族よりも強力な魔法が撃てる魔術師が人族にいるようね。」

いつも世話をやいてくれてくれる先輩魔術師が状況分析を披露した。



それは、魔術師部隊から炎魔法の第2次攻撃を開始しようとした直前におきた。

空が光った。

爆音が聞こえた。

「全員撤退、撤退、撤退、逃げろ!」

魔術師部隊の隊長の声を聴いたのは、それが最後だった。

同じチームの先輩魔術師がポムに覆いかぶさった。

鼓膜が破れそうな爆音と衝撃波を浴びた。

そして気を失った。



どれくらい経っただろうか。

目がさめた。

誰かが覆いかぶさっていた。

よく見るといつも世話を焼いてくれた先輩魔術師だった。

息をしていなかった。

体を起こして回りを見た。

起き上がったている者は誰もいなかった。

「…誰か、誰かいませんか。」

声を出して気が付いた。

頭から血が出ていた。

両手から血が流れていた。

服が焼けていた。

体のあちこちが痛い。

立ち上がり、足を引きずりながら声を出す。

「誰か、誰かいませんか。」

周りは死体だらけだった。

死体を見て誰だか見分けが付くのはいい方だった。

黒焦げで誰なのか判別もつかない死体が大半だった。

逃げなければ。

ポムはそう思った。

近くにあった鞄を掴み、痛い体を引きずるように歩き出した。



少し歩いたところで、数人の魔族が草原に座り込んでいた。

同じ魔術師部隊の魔術師、戦士部隊の戦士、5人の魔族が生き残っていた。

無傷の者などいなかった。

生きていても動けない者は置いてきたと言っていた。

悲しすぎて涙も出なかった。

少し休憩した後、6人で補給地点に向かうことにした。

しかし、そこまで歩いて2日はかかる。

この体力とケガでは絶望的だ。

ポムの体力ではそこまで持たない。

でも、歩いた。

徐々に皆から遅れてきた。

皆が遠くに見える。

でも助けてとは言えなかった。

皆も歩くだけで精一杯なのだ。

何かと世話を焼いてくれた先輩魔術師はもういない。

拾った鞄から水筒を取り出して水を飲む。

もう水が殆ど残っていない。

不味い携帯食料は、節約しても2回分がいいところだった。

草原に座り込み、休憩をとった。

頑張って歩こう。

そう決心をして立った。

「うそ。皆はどこに行ってしまったの。」

草原には自分ひとりだった。

どの方角に行けばいいのかも分からない。

とめどなく涙が流れた。

とにかく歩こう。

遥か遠くに見える森らしき方角に向かって歩いた。

辺りが暗くなった。

誰もいない草原でただひとりだ。

怖い、怖い、怖い。

休まずに歩いた。

川があった。

人族の街へ向かう行軍中には、草原に川は無かった。

全く違う方向に進んでしまったようだ。

とにかく喉が渇いた。

川の中に顔を入れて水を飲んだ。

生きたい。生きたい。それだけが願いだった。

鞄から水筒を出して川の水を入れる。

河原に座り僅かばかりの食料を取り出して食べた。

不味いと嘆いて食べていた携帯食料が美味しかった。



疲れた。

歩きどおしだった。

このまま寝たい。

でもこんなところで寝て魔獣に襲われたら魔族でも死んでしまう。

河原の近くの木があったので登った。

体の小さなポムには木登りは重労働だった。

でもやらなければ魔獣に襲われて死んでしまう。

必死で木に登った。

体が小さいことが功を奏したのか、太い枝の幹で寝る場所を確保できた。

疲れた体で歩き通しだったので、空腹にも関わらずすぐに寝てしまった。
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