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10.武具回収ふたたび
05.伯爵様を助けました。(その1)
しおりを挟む国内の諸侯には、国王派、反国王派、中間派の3つの派閥がある。
"バーラ"の城塞都市の防衛戦では、国王派の貴族を先に招集し、次に中間派、その次に反国王派の
諸侯を招集した。
招集した国王派の諸侯に先に手柄を立てさせることで、反国王派を排除することが目的だった。
ところが、国王派の諸侯の半分の兵力すら集まらず、集まった兵力のうち30000近くを失ってしまった。
失った兵士の中には、現場で兵士を指揮した貴族もいた。当然の様にその殆どが戦死した。
国王派の力が日増しに衰えはじめ、代わりに反国王派の諸侯は、現国王に変わるべく国王派及び
中間派の諸侯への武力的圧力をかけ始めた。
何事もなく平和な街道を馬車で移動中の面々。
今回の武具回収には、クリス(技切姫)、アレス(召喚の女王)、ミリアーナ(神官)、エリカ(神官兵)と俺の5人のみでやってきた。
武具の回収に神官や神官兵といった教会関係者がいると何かと都合がよいので、2人に参加してもらった。
右手の人差し指の"赤い糸"は、街道と同じく真っ直ぐ先へと延びていた。
今日は、珍しく俺が馬車の御者役を買って出た。
「今日は、天気もいいしのんびりできて幸せです。」
「ミリアーナ様、羽を伸ばし過ぎないでください。いつ何が起こるのか分からないのです。適度な緊張は大切です。」
「エリカ、クッキーを食べながら真面目な話をされても心に通いません。」
「これは失礼しました。では、ミリアーナ様も1枚どうですか。これとても美味しいです。」
エリカに出されたクッキーを頬張りご満悦なミリアーナ。
「でも、このクッキーって榊さんが作ったんですよね。」
「榊さん、普段の食事も作るしお菓子も作りますよね。」
「商売としてやっていけるくらい美味しいものばかりですよね。」
「お店、やらないんですか。」
エリカは、暗に俺に店を出しなさいと言っているように聞こえる。
「実は、いろいろ考えてはいるんだけど、あるスキルが必要だと思っていてね。」
「そのスキルがないと食べ物商売は難しいかな。」
日本、いや。以前の世界では当たりまえだったのに、この世界にはないものなんだけど。
「それは、どんなスキルですか。」
「料理とかお菓子作りのスキルですか。」
「ははは。実は"料理Lv3"と"パテシエLv3"のスキルは既にあるんだ。」
「どうりで、ご飯やお菓子が美味しい理由が分かりました。」
「最近、体重が増えた気がして仕方ありません。でもこのクッキー美味しくてやめられません。」
女子の心の葛藤が垣間見れます。
「ミリアーナさんとエリカさんは料理ってどうなの。」
「えーと、教会では持ち回りで食事を作りましたが、質素な料理が多くてとても美味しいとは言えません。」
教会って美味いもの食べてると思ったけど、以外や以外。
探査に何か"赤い点"が表示された。"赤い点"の前にはいくつかの"青い点"も表示されている。
「おっ。探査に面倒なものが表示されたようだ。みんな、注意してくれ。」
探査に表示された"赤い点"は、街道から真っ直ぐこちらに向かってきた。
数は"5"。かなりの速さで向かってくる。
さらにその後に10以上の"赤い点"が表示された。
街道の遥か前方で土煙が上がっている。どうやら馬車が街道から草原へ滑り落ちたようだ。
探査には、"青い点"を囲むように"赤い点"が輪を作っている。
「誰かの馬車が野盗にでも襲われているよだ。」
「まあ、暇だし助けてみるか。」
「みなさん、まったり気分でくつろいでいるところ悪いけど、いつもの感じでお願いできるかな。」
「アレスは、"阿行"さん、"吽行"さんを召喚して野盗どもを追い払ってください。」
「サティは、この馬車に近づく者を倒してください。」
「エリカさんは、ミリアーナさんの護衛でお願いします。」
アレスが"阿行"と"吽行"を召喚し、先行して街道脇の草原で立ち往生している馬車へと向かった。
「主様、草原ウルフ3体と雪原ウルフが2体が向かってきます。早々に撃退します。」
クリスがこちらに向かって来る魔獣を識別して攻撃体制に入る。
「こんなところに雪原ウルフとは珍しい。ん。クリスさんや、雪原ウルフとやらはスキルに"氷魔法"を持っていないか。」
「…。あります。1体が"氷魔法Lv1"、もう1体が"氷魔法Lv2"です。」
クリスがサクッと鑑定で調べてくれた。
「クリスさん。お願いします。"氷魔法Lv2"を奪取してください。奪取した暁には"とても美味しいスイーツ"を作ってさしあげます。」
「了解!」
クリスは、"とても美味しいスイーツ"に一瞬で反応してアッという間に姿が見えなくなった。
と思ったらもう戻ってきた。
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