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14.魔王を討伐します
06.勇者を出迎えます。(その2)
しおりを挟む魔王城内に通された勇者達と俺達と魔族の臨時代表者、セイランド王国の臨時代表がテーブルを囲みながら食事を始めた。
「つまり魔族国が転移門を使って王都城下に攻め込んだ。」
「王都にいた国王陛下と大臣のほぼ全てが魔獣の攻撃で死んでしまった。」
「王都城下になだれ込んだ魔獣を討伐しながら転移門をくぐり、魔族国に到着した"榊"君達は、魔族軍と闘い魔王を倒すことに成功した。」
「このままセイランド王国と魔族国が戦争を続けることは、両国にとって好ましくないので停戦協定を結ぶ話し合いを行っている最中。」
「それでいいか。」
勇者は俺の説明を反芻し、再度俺に話を来り返した。
「はい、勇者様。それが今回の事のあらましです。」
俺は、にこやかに勇者様に答えた。
勇者はつぶやいた。
「もう魔族国が攻めてくることもなく、魔王と戦うこともないのか。」
「いえ、まだセイランド王国と魔族国は停戦交渉の話し合いを始めたばかりです。」
「話し合いはこれからなので、直ぐに停戦協定が締結される訳であありません。」
「さらに魔族国でも魔王が討伐されたため、次の魔王が決まるまで国事行為は進まないと思ってください。」
「国と国との話し合いです。物事が決まるまでは長い時間が必要でしょう。」
勇者達は、部屋の天井を見上げていた。
倒す相手がいなくなったのだ。目標が無くなってしまったのだ。
勇者は勇者として次に何を成すべきなのか考えている最中だろう。
「皆さん、今日は魔王城にお泊りください。セイランド王国の臨時代表の者や、交渉担当の複数の者が魔王城にお泊りになりますので、そんなに不安になることはないと思います。私達も今日はこちらに泊まる予定ですので、今後のことについても話し合いましょう。」
その夜、俺達と勇者達で夜遅くまで語り合った。
次の日、魔族の臨時代表の方から次の魔王様候補がほぼ決まったとの連絡があった。
次の魔王様候補は魔族の女性らしい。
俺は右手の人差し指を見た。
新しい魔王のスキルが回収の対象だったら洒落にならないからだ。
人差し指には"赤い糸"は繋がれていなかった。
しかし、なぜかだか小指にうっすらと赤い糸が見えた。
これは、どう考えてたらよいのだろう。
まあ、今は考えないことにした。
とにもかくにもセイランド王国と魔族国との間で戦争が起こらないことだけを願うばかりだ。
次の日、魔王城を後にして転移門まで移動する。
勇者達は飛龍で、俺達は"風神"と"雷神"の雲に乗って移動した。
転移門を守る魔族軍の護衛の兵に挨拶を交わして転移門を通る。
勇者達は、セイランド王国へ戻ってきた。
王都城下は既にところどころで復興作業に取り掛かっていた。
道で赤ん坊を抱いた女性とすれ違った。
多くの人が死んだが、新しく生まれてくる命もあるのだ。
時間が経てば王都も復興するだろう。
勇者達と王城に到着した。
セイランド王国臨時政府代表を務めるリーガル伯爵様とオーレリアン伯爵様を紹介した。
また、次の王としてロンギフローラム伯爵のオフェリア嬢を紹介した。
セイランド王国は、国王を失って国民の求心力となる者が不在なため、勇者達にぜひその役をやってもらいたいとお願いした。
俺達は、所詮一介の冒険者だ。
魔王を倒したと言っても誰も信じてはもらえない。
勇者には、勇者でなければできないことがあることを伝えた。
魔王が倒されたからと言って"田舎"に引っ込んで畑を耕すような隠居生活は諦めてもらおう。
”勇者"というスキルを持つ以上、それ相応の仕事はしてもらうということだ。
あとひとつだけ、面倒な仕事が残っている。
反国王派の諸侯が本当に王都に軍勢を差し向けてくるかだ。
平和であるのが一番だが、権力を欲する者は人の命など考えたりはしない。
何事もお伽噺のように綺麗にハッピーエンドでは終わらない。
王都城下の復興は始まったばかりだ。
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