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白い寝所
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「イザナギさま」
マガツヒのざらついた声は、拾われてきて間もない頃に比べれば少しだけ、甘く低くなった。
その声に、今は不安の色が濃く混じっていた。
「どうして、イザナギさま」
寝台に横たえられたマガツヒは、イザナギに組み敷かれていた。いつもならマガツヒはそのまま抱かれるのだが、今日は様子が違った。
マガツヒが首を横に振る。何も理由なく嫌がっているわけではなかった。
ナオビが、そこにいる。
幾重にも重なった薄布の向こうに、ナオビの気配を感じる。
それをわかっていて、イザナギはマガツヒの腹を撫でた。
「ナオビに教えてあげようか」
「いや……」
金の瞳を濡らし、マガツヒは首を何度も横に振る。
「気持ちいいことは、嫌い?」
「ん、ちがう、すき、だけど、ナオビは、だめ」
「ナオビが嫌い?」
「違う、ナオビはすき、だけど」
潤んだ双眸を揺らし、マガツヒはイザナギに縋るような視線を向けた。
「ナオビに、おしえないで」
マガツヒは乞うように、掠れた声を絞り出す。金色の瞳を情欲に澱ませ、イザナギを見上げた。
自分の痴態を、イザナギの甘い声を、どちらも大事に隠しておきたい。マガツヒと、イザナギだけのものにしておきたい。
そんなマガツヒの想いは、イザナギには手に取るようにわかった。
「いい子だね、マガツヒ」
腹を撫でていた手はするりと胸板に這い上がり、微かに上下する平らな胸を宥めるように撫でた。
「大丈夫、あの布を超えてこちらにこなければ、わたしたちのことはナオビには聞こえないし、見えないよ」
その言葉を聞いて、マガツヒの表情には安堵の色が広がった。
「わたしがそうしたんだ。だから、大丈夫だよ、マガツヒ」
マガツヒが表情を和らげる。
嬉しそうに潤んだ金色の目を伏せた。眦から、涙が伝い落ちる。
「これは、マガツヒと、わたしだけの秘密」
「ひみつ」
濡れた瞳でイザナギを見上げ、マガツヒの声が繰り返す。その響きはあまりに甘美なものとしてマガツヒの意識に焼き付いた。
真っ直ぐに見上げるマガツヒの目を見て、イザナギは満足げに笑った。
「おいで、マガツヒ」
低く甘いイザナギの声に、マガツヒは誘われるように夜色の腕を伸ばす。
イザナギの朝焼け色の唇が、夜色の肌に降り注ぐ。触れていないところはないくらいに、身体中に優しく触れる。
「たくさん、ください。イザナギさま」
譫言のように、マガツヒは甘い声を上げた。
胎にも口にもたっぷりと精を注がれたマガツヒは、幸せそうに表情を蕩けさせた。
胎内を、腑を、イザナギの精が満たしている。
「うれしい」
白く汚れた唇を拭いもせず、マガツヒは淫靡に微笑む。
「疲れただろう、ゆっくりお休み」
「はい、イザナギさま」
身体を少し丸め、潤んだ金色の瞳を伏せて、マガツヒは意識を手放した。
マガツヒのざらついた声は、拾われてきて間もない頃に比べれば少しだけ、甘く低くなった。
その声に、今は不安の色が濃く混じっていた。
「どうして、イザナギさま」
寝台に横たえられたマガツヒは、イザナギに組み敷かれていた。いつもならマガツヒはそのまま抱かれるのだが、今日は様子が違った。
マガツヒが首を横に振る。何も理由なく嫌がっているわけではなかった。
ナオビが、そこにいる。
幾重にも重なった薄布の向こうに、ナオビの気配を感じる。
それをわかっていて、イザナギはマガツヒの腹を撫でた。
「ナオビに教えてあげようか」
「いや……」
金の瞳を濡らし、マガツヒは首を何度も横に振る。
「気持ちいいことは、嫌い?」
「ん、ちがう、すき、だけど、ナオビは、だめ」
「ナオビが嫌い?」
「違う、ナオビはすき、だけど」
潤んだ双眸を揺らし、マガツヒはイザナギに縋るような視線を向けた。
「ナオビに、おしえないで」
マガツヒは乞うように、掠れた声を絞り出す。金色の瞳を情欲に澱ませ、イザナギを見上げた。
自分の痴態を、イザナギの甘い声を、どちらも大事に隠しておきたい。マガツヒと、イザナギだけのものにしておきたい。
そんなマガツヒの想いは、イザナギには手に取るようにわかった。
「いい子だね、マガツヒ」
腹を撫でていた手はするりと胸板に這い上がり、微かに上下する平らな胸を宥めるように撫でた。
「大丈夫、あの布を超えてこちらにこなければ、わたしたちのことはナオビには聞こえないし、見えないよ」
その言葉を聞いて、マガツヒの表情には安堵の色が広がった。
「わたしがそうしたんだ。だから、大丈夫だよ、マガツヒ」
マガツヒが表情を和らげる。
嬉しそうに潤んだ金色の目を伏せた。眦から、涙が伝い落ちる。
「これは、マガツヒと、わたしだけの秘密」
「ひみつ」
濡れた瞳でイザナギを見上げ、マガツヒの声が繰り返す。その響きはあまりに甘美なものとしてマガツヒの意識に焼き付いた。
真っ直ぐに見上げるマガツヒの目を見て、イザナギは満足げに笑った。
「おいで、マガツヒ」
低く甘いイザナギの声に、マガツヒは誘われるように夜色の腕を伸ばす。
イザナギの朝焼け色の唇が、夜色の肌に降り注ぐ。触れていないところはないくらいに、身体中に優しく触れる。
「たくさん、ください。イザナギさま」
譫言のように、マガツヒは甘い声を上げた。
胎にも口にもたっぷりと精を注がれたマガツヒは、幸せそうに表情を蕩けさせた。
胎内を、腑を、イザナギの精が満たしている。
「うれしい」
白く汚れた唇を拭いもせず、マガツヒは淫靡に微笑む。
「疲れただろう、ゆっくりお休み」
「はい、イザナギさま」
身体を少し丸め、潤んだ金色の瞳を伏せて、マガツヒは意識を手放した。
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