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第56話 真の脅威
しおりを挟む「すっげー! こりゃ魔写メに撮らねぇと!」
「それな! あとでMSNSにアップしようぜ!」
度胸があるのか無謀なのかは分からないが、西門から外に出ては携帯魔電話を突き出して、魔写メと呼ばれるものをパシャパシャ撮り始める門兵達。
「魔写メ? MSNSにアップする? あれは携帯魔電話で写真を撮ってるのか? 魔カメラなら知ってるけど、似たようなもんなのかな……?」
聞き慣れない単語に色々と不思議に思いながらも重大な危機であることを伝えると、門兵達から嬉しい一言が返ってきた。
「大丈夫っス! だってキュロス兄さんがいるんスから!」
「それな! 兄さんがいれば、この街は世界一安全な場所っスからね!」
曇りのない瞳で俺を見つめる2人からは、微塵の恐怖も感じられず、ただただ俺を信じているように見える。
そんな姿を見て堪らなく嬉しくなり、期待に応えるべく「あぁ、任せとけ!」そう2人に伝えて魔物の群れに目を向けた。
魔物の群れは密集しているようで、魔力を展開しながら策を考え始めることに。
魔物の総数は36匹で、内訳はヘルハウンドが12匹とフラワーウルフが3匹、あとはグラスウルフが21匹と思ったよりも少なく、どの魔物も倒したことがあるので「よしっ、これならイケる!」と確信した俺は早速実行に移す。
先頭にいるヘルハウンドから50mほどの距離まで近づくと、魔物の群れは一斉に咆哮を上げながら街へ向けて駆け出してきた。
その動きを確認した直後、左手を前に突き出して魔法を唱え出す。
「光的!」
1匹の魔物の額に光の的が浮かび上がり、それに続くように次々と他の魔物の額にも光の的が浮かび上がる。
36匹全ての魔物の額に光の的、謂わゆる光的が浮かび上がったことを確認し、透かさず次の魔法を唱えた。
「雷槍!」
雷電が収束され、計36本の雷槍が出来上がると、魔物の群れに向けて雷槍を放つ。
放たれた雷槍は導かれるように魔物達の額に直撃していき、連鎖するように感電しては倒れていく。
数匹のヘルハウンドは首を捻って回避するが、隣接する他の魔物から感電して、結局は倒れることとなる。
最後にヘルハウンドが1匹だけ生き残ってはいたが、その場でフラフラとした直後に倒れて痙攣を起こし、終いには白目になり動かなくなった。
「すっげー! 瞬殺じゃん!」
「それな! 流石はセリーヌさんの彼ピさんっス!」
今はもうセリーヌの彼ピではないのだが、そう思われたことは素直に嬉しい。
そして嬉しさから1人でニヤニヤしていると、2人は続けて話し出す。
「これなら100……いや、1000匹はイケそうっスね!」
「それな! 魔物が1000匹来ても楽勝っスよね!」
2人の発言に嫌な予感を感じはしたが、セリーヌの彼ピと言われた嬉しさの方が勝り、つい調子に乗って「あぁ、勿論だ!」と言ってしまい……
「……!? な、なんだ、この魔力反応の数は……こんなの、どうしろと言うんだ!?」
なんと1000匹を超える魔物の群れが街へ迫ってきており、到底手に負えるとは思えず、先程の調子に乗った発言をすぐに後悔する。
「これは、自身を驕った罰か……?」
そして、これこそが真の脅威なのかと深く理解して茫然とするのであった……
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