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第58話 終わらぬ脅威
しおりを挟む「絶対にこの場で止めてみせる! 落ちろ、百雷!」
魔法を唱えると同時に高々と上に挙げた両手を前方に向ける。
その直後、天空から幾つもの雷撃が降り注ぎ、魔物の大群に直撃していくと、更なる土煙を立ち昇らせて辺り一面が黄色一色となった。
「うわっ、土煙がこっちまで来た! ぺっ、ぺっ……凄いな、新たに閃いた魔法は……でも、これじゃあ魔物がどれだけ残ってるのか分からないな……魔法の余波で魔力探知もできないみたいだし……」
取り敢えずは後方へ下がり、様子見しながら耳を澄ませてみる。
あれほど地鳴りと化していた足音は全く聞こえず、あの足を竦ませるような咆哮も聞こえてはこない。
だが、全ての魔物を倒せたとはとても思えず、警戒は解かずに身構えておく。
すると、少数だが土煙の中から魔物が駆けてくる気配を感じ、見逃さぬよう目を見開いて姿を現すのを待つことに。
10秒ほど待つと、土煙の中からポツリポツリと1匹ずつ魔物が出てきて、街を目指して駆けてくる。
その魔物達は100匹にも満たない数であり、どうやら9割以上は先程の百雷で倒せたようだ。
しかし、およそ90匹の生き残りの魔物達は俺に眼中はなく、ただただ街を滅ぼすためだけに動いているように見え、それが逆に恐ろしく感じた。
「なんか操り人形みたいだな……これも統率者による指揮なのか? もしそうなら可哀想な気もするけど、それでも街を滅ぼさせるわけにはいかないんだよな……悪いけど、これ以上は進ませない!」
一瞬、魔物達を憐れに思うが、それでも街とそこに住む人々を守るため、迷うことなく次なる魔法を唱えた。
「灼爍たる礫となれ! 爍礫!」
俺を中心に赤々と明るく照り輝く小さな火球が急速かつ次々と出現して、その火球を100、200、300、400、そして500個まで数を増やしたあとに「当たれ!」とそれらを魔物達へ向けて一斉発射。
豪速で飛んでいく小さな火球は魔物達を確実に燃やしていき、1匹また1匹と順に倒れていく。
1発1発の威力は弱めだが、5発も当たれば脅威ランクBの魔物でさえも倒すことが可能であり、結果的に全滅とまではいかなくとも残り12匹まで魔物の数を減らせた。
その残り12匹の魔物は、ヘルハウンドが4匹とステルスリカオンが4匹、ダイアウルフが3匹にアヌビシオが1匹の計12匹となっている。
「これは、見事に犬科の魔獣しかいないな……そういえば、あの大群も殆どがグラスウルフやフラワーウルフだった気がする……ということは統率者ももしかして……?」
スタンピードを引き起こした魔物の正体は未だ不明ではあるが、とてつもなく嫌な予感しかしない。
すると、アヌビシオを除く11匹の魔物達が一斉に威嚇の咆哮を上げ始める。
それらは全て俺に向けられたものであり、どうやら俺を倒すべき相手だと認識したようだ。
「本当に大変なのはこれからかもな……まさか脅威ランクAの魔物が普通に来るなんて……というか、もしかしてアイツが統率者なのか……?」
何やら怪しい気もするが違う気もしている。
だが、結局は今いる魔物達を倒さねばこの脅威は終わらない。
そう己に言い聞かせて、警戒しながら魔物達の様子を窺うのであった……
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