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第62話 桃色の助っ人
しおりを挟む「もっ、モモ!? 何故こんなところに!? い、いや、それよりも、これ以上は危ないから下がってくれ!」
「キキッ!」
「イヤッ! って……そんなこと言ってる場合じゃ! ……あ、喋れる……!?」
俺を救いに来たのはモモであり、どうやらモモのおかげで普通に話せるように。
しかし、身体の方は未だに動かず呪縛に囚われたままで、すぐにでも反撃に出たいが出れずにいた。
「モモ! もういい! もう充分助かったから、本当に下がってくれ!」
懸命に頼んでもモモは聞く耳を持ってはくれず、俺を無視してアヌビシオを見据えながら身構えている。
すると、アヌビシオはモモをひと睨みしたあと、何事も無かったかのようにモモの目の前まで歩いていき、路傍の石を蹴るかの如く右前脚でモモを蹴り飛ばした。
蹴られたモモは10mほど吹き飛び、その勢いのまま地面を転がっていき、5mほど転がったあとにパタリと倒れて動かなくなる。
「モモ! おいっ、モモ! 頼む、返事をしてくれ!」
地面にうつ伏せで倒れたまま、モモはなんの反応も示さない。
だが俺には分かる。モモはまだ生きているということを。
それは魔力探知をすれば分かることであり、魔力の濃さで生命に支障がないことも把握しているから。
でも、ピクリとも動く気配はしない。
もしや脳震盪でも起こしているのだろうか?
心配しながら見守っていると、モモは身体を震わせながらもゆっくりと立ち上がる。
そんなモモの姿を目の当たりにすると、自分が情けなくて情けなくて仕方がなくなり、なんとかして呪縛から抜け出そうと再び全身に力を込めた。
「うぐぐっ……動け……! 動いてくれ……! 動かないと、モモが……!!」
額に血管が浮き出て、今にもはち切れそうなほどに力を込めているが、身体は全く動いてくれない。
「だ、ダメだ……くそっ、こうなったら魔法でどうにかしてやる!」
恐慌状態の時は正気を保つのに必死でとても魔法を使える状態では無かったが、今ならきっと使えるハズ。
そう推察して、試しに治癒魔法を唱えてみる。
「メガヒール!」
負傷した左上腕と右脹脛に意識を向けながら唱えると、魔法は正常に発動して傷も問題なく癒えた。
魔法を使えることが分かり「よしっ!」とガッツポーズを取ろうとしたが拳を握ることはできず。
それでも魔法が使えることは大きく、早速呪縛を解くために解呪魔法を……
「し、しまった……俺、解呪魔法を見たことないかも……な、何か、何か代わりになる魔法を探さなきゃ……!」
自身で探しつつもニカナによる閃きにも期待を持つ。
そんななか、尚もモモはアヌビシオに挑み続けては傷を増やす。
「モモ、どうにか耐えてくれ! もう少ししたら駆けつけるから!」
湧き上がる焦燥感を押し殺しながらそう叫ぶと、フラつきながらもモモは右手を挙げて応えてくれた。
「モモ……何か、何かないのかよ! 解呪魔法に代わる魔法は! …………!! そうだ! あの魔法だったら以前にあの人が使ってたハズ!」
ニカナによる閃きはないが、自身で解呪魔法に代わりそうな魔法を思い出しては強く祈りながらその魔法を唱える。
「頼む、効いてくれぇぇっ! アンチカーズ!」
効果のほどは不明だが、形振り構わず魔法を唱えたのであった……
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