なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

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第93話 恐怖、再び

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「あっ、元の瞳に戻った……」

「……」

 魔眼の発動を解いた女性は、俺には魔眼が効かないと理解し、ショックを受けて放心状態となる。
 恐らくは先の『魅了の魔眼』で俺を魅了し、女性の虜にしようとしたのだろう。
 だが残念ながら俺にはニカナが付いているので、相当に強力なものでなければ効果は見込めない……と、ニカナが言っていた。

(まぁ、イズナさんを貶した件もあるし、これで大人しくなってくれれば……)

 そんなことを考えている間にイズナとの距離は既に10mを切っており、更に先では土煙が立ち昇っている様子が見て取れる。

「あと少しで着くから、今のうちに魔力探知で調べて……なっ!? なんだ魔力は!?」

 魔力探知で戦地の状況を調べ始めた直後、波紋状に広がる魔力を探知したが、それは一際大きい魔力反応から発せられていることに気づく。
 つまり、その波紋状に広がる魔力は魔物による攻撃であり、そのうえ音速並みに速い攻撃のため、避ける間もなく当たることとなった。

「し、しまった……この声……これは、呪縛の咆哮だ……」

 前方ではイズナが動けなくなっている姿が目に映り、目の前には抱かれたまま恐怖て顔を引きつる女性の姿が。

「……何よ……これ……怖い……怖いよ……助けて……」

 恐怖で涙を零しながら助けを乞う女性を見て心を揺さぶられた俺は、優しい声で女性に声を掛けたあと、声を張り上げて魔法を唱える。

「大丈夫、今すぐ助けますからね? 呪縛を解け! 禊祓!」

 魔法を唱えた直後、俺と女性は虹色に輝く光に包まれ、その後すぐに身体中から黒色の靄が排出されると同時に呪縛からも解放された。

「こ、怖いのが消えた……さっきの魔法はアナタが……?」

 キョトンとしながら口を開く女性の顔を覗き、無言でニコリと微笑んだあと、再び前を見据え、早急にイズナの元へと駆け出す。

「イズナさん待っててーーぐぇっ!」

 独り言を呟く最中、突然俺の身体を強く抱き締める女性。
 思わず変な声が出たことを恥じていると、その女性が穏やかな表情で俺に告げる。

「私の名前はメイリン。絶対にアナタを堕としてみせますから、覚悟してくださいね?」

 穏やかな表情でそう告げたメイリンは、最後にニコッと満面の笑みを浮かべた。

(これは、覚悟しておかなきゃだな……)

 メイリンの満面の笑みにやられ、額に汗を掻きつつそう思う間に、イズナの元へ着いたため、すぐさまイズナにも魔法を掛ける。

「イズナさん、すぐに助けますからね! 禊祓!」

 禊祓の効果によりイズナの呪縛も無事に解かれ、その後自身の変化に戸惑うイズナへ向けて一言告げる。

「もう大丈夫ですね? それじゃあ俺は先に行きますんで!」

 未だに戸惑うイズナは無言で頷き、それを見届けてから戦地へ向かう……前に、これから先はとても危険なため、メイリンにはこの場で降りてもらうことに。

「メイリンさん、この先は抱いたままじゃ危険なのでここに降ろします。それと、この後はイズナさんと行動を共にしてください。あと、決してイズナさんと喧嘩しないように!」

 きちんと釘を刺したから大丈夫だろう。
 それにメイリンも大きく頷いてくれたし。
 そう思いながら後ろを振り返り、目の前の戦地へ向けて駆け出した……
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