なんで誰も使わないの！？ 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します！！

第125話 斬れねぇもんはねぇんだよ！！

「う、嘘でしょ……神獣とかあり得ないわ……！？　しかもレベルだけじゃなく、生命力や魔力量も高すぎて視ることができないなんて……それに魔術……魔物が魔法を使えるなんて反則じゃない……！　こんなやつ、一体どうすれば倒せるっていうのよ……」

　険しい表情に変わってすぐ、動揺を口にするネマ。
　そんな彼女に動揺の訳を聞いたクアトロは、不安げな表情を見せつつもロランの後ろ姿に「頼むぞ……！」と希望を託した。


　……その頃、明後日の方角に向かっていたファラは戦意喪失中のミカゲの元に着くなり「貴方の助力も必要なのです！　どうかチカラをお貸しください！」と精一杯の説得を試みる。
　しかし、当のミカゲに変化は見られず、抜け殻のようになったまま動く気配は無い。

　その後も何度か声を掛けてはみたものの反応は一切無し。
　このままでは埒が明かないと説得を断念したファラは、再び明後日の方角へと駆け出していき、鎮火間近の火の海を横目で覗きながらすぐ側を通過。
　その時の彼女の表情……それは、セリーヌの死を悼んだのか悲壮に満ちており、見た者が心を痛めるほどであった。


「うーん、そろそろ効いてもいいハズなんだけどなぁ……」

　そう呟いたカミュ。何か策があって矢を射続けていた模様。
　だがそれを嘲笑うかの如く、九尾妖狐ナインテイラーは尚もロランと激しく斬り合っている……と、その最中……


「……ッ！？」

　突如、九尾妖狐ナインテイラーの動きが鈍化。
　カミュのあの表情から察するに、彼が射続けていた矢によるものかと。多分、矢尻に強力な痺れ毒を塗布していたのだろう。
　漸く効いたことに安堵したのか、先程から口元を緩ませているカミュ。
　その一方で、ロランは身体を深く沈めて地面にヒビが入るほどのチカラを溜めていた。

「セリーヌ……団長……今から仇を取るから見ててくれ……ゔぉぉぉぉぉーっ！！」

　吼えると同時にロランは高く跳び、九尾妖狐ナインテイラーの首を狙って渾身の一撃を放つ。

「「ぶった斬れぇぇぇーっ！！」」

　クアトロ・ネマ・カミュら3人が一斉に大声を上げると、呼応するかのようにロランの放った渾身の一撃が九尾妖狐ナインテイラーの首に届いた……かに思えたが、寸前で奴は首元に小さな結界を発現してそれを阻止。
　如何に小さいとはいえ奴の結界は異常なまでに硬く、土塊や突風を両断したロランでもヒビ一つ入れることすら叶わなかった。

「こ、これが神獣……やっぱり倒すことなんてーー」

　ネマが諦めかけた刹那、クアトロは叫ぶ。

「ーーまだだ！　まだ終わっちゃいねぇ！」

　ネマが「えっーー！？」と振り向いた途端、クアトロは両手に持った大戦斧を身体ごと振り回し、血管が破れんばかりの力で投擲。
　高速で回転しながら風を斬り裂いていく大戦斧は、九尾妖狐ナインテイラーの頭上に描かれた紫の魔法陣に向かっていき、見事に魔法陣を破って小結界を解除。
　すると次の瞬間、ロランの剣が九尾妖狐ナインテイラーの首に掛かる。

「クソっ、なんて硬さだ……！　でもな！　今の俺に（結界以外で）斬れねぇもんはねぇんだよ！！」

　金剛石ダイヤモンドにも勝る九尾妖狐ナインテイラーの外皮。それは急所であるはずの首も例外ではない。
　だがそれでも、ロランは圧倒的な膂力を以って横一文字に剣を振り抜いた。そして……


「二人とも、仇を取ったぞ……」

　九尾妖狐ナインテイラーの生首と共に宙を舞うロラン。
　その際彼の表情は、仇が取れた喜びと2人を失った悲しみから、笑みと涙を同時に浮かべていた……