【無才】のウェポンスミスは諦めない! 〜才能の欠片もないと工房をクビにされ捲った私が〝夢〟〝復讐〟〝助力〟を経て、武器職人の頂点に至るまで〜

るっち

文字の大きさ
33 / 40

第17話 謝罪と感謝の言葉を心の声で

しおりを挟む

「ふぅ……よしっ、んじゃ行こっか!」

 勢いよく立ち上がる私。きちんと供養できてとても晴れやかな気持ち。
 四種の丸い光改めヴァルガたち四人を見送った後、工房へと帰るために振り返る……とその矢先、イルズィオールに「ちょっと待て!」と何故か呼び止められた。

「ん? なに? なんかおかしかった?」

「いやいや、おかしすぎだろ。何故野郎どもの名前を知ってやがる。俺が口にしたのはヴァルガだけのはずだ……間違いなくな」

 唐突に真顔で問うイルズィオール。額に汗を浮かばせつつ。
 この真剣かつ困惑した表情は……本気だ。
 そう強く感じ取った私は、先程の出来事を包み隠さず話した。特段、隠すようなことでもなかったし。

 ……

 ……

 ……うん、みんな無言。
 話している途中からみんなの表情が驚きに変わっていくのは見ていて分かった。
 私自身も話しているうちに、あれ? これ普通じゃないな? と思ったくらいなので当然と言えば当然だ。
 でも、なんで私だけ……? そう不思議がっていたら、ティナちゃんが納得の回答を。

「……魂、ではないでしょうか……」

 イルズィオールを除く全員がハッするなか、彼女は続けて話す。

「お姉様は魂に干渉できるスキルをお持ちです。なれば、魂を認識されてもなんらおかしくはないはず。それに、そう考えることであの不可解な事象にも合点がいきます」

「ふむふむ……なるほど、言われてみれば確かに……うんっ、ティナちゃん凄いし偉い!」

 天使の推理に間違いなし! と頭を撫でてご褒美を。
 素直に嬉しそうな表情を浮かべるこのを見て、寧ろ私の方がご褒美をもらった気分に。
 だがその最中にふと気づく。そういえば〝あの不可解な事象〟とはなんぞや……? と。

「ふふっ、もうお忘れですか? あの時、エタンの弓と会話をなされていたのでしょう?」

「あ……」

 そういえばそうだった……で、ティナちゃんの推理によると、あの時点でエタンの弓には既に魂が宿っており、私はその魂と会話もとい念話していたと考えられる、とのこと。

 彼女の知人に動物と念話できる人がいて、似たような光景を見たから間違いないらしい。あ~、私もそのスキル欲しい~!

「くっ、私もあのスキルが欲しかった……動物さんと意思疎通が取れるとはなんと羨ましい……ッ!!」

 嘘でしょ!? まさかの同じ気持ち!? と思いきや、私以上に右拳を握り締めて悔しがるエタン……はさて置き、終始疑問符を浮かばせていたイルズィオールが最後の最後に口を開く。

「あぁ、あのマザロリコン王子のスキルか……ありゃ確かに便利だ。ソイツで情報収集してるようだしな」

「──!? 貴方、何故そのことを……いえっ、そもそも何故ジオスお兄様を知っているのですか!?」

「あん? 何故ってそりゃあ──」

「──あー、お腹空いたなー、早く帰ってご飯食べたいなー」

 下手クソな演技で遮った。めっちゃ見られてるけど。

 ヤっ、ヤバいっ、ヤバいヤバいヤバいっ! なんか線と線が繋がってきてる! いずれ分かることだけど今だけはダメっ! ティナちゃんの素性を知ってるのがバレちゃう! 知ってて隠してたのかって嫌われちゃう!

 みんなから物凄く怪しまれているのも厭わず、「とっ、とにかく早く行こっ!」と強引に出発。早足で工房へと向いだした。


 ……道すがら、不意に気になったことを皆に聞いてみる。

「あのさ……みんなが強いのは見て分かるんだけど、ぶっちゃけどのくらい強いの?」

 この質問に答えるのは難しい。例の鍛治力みたく数値化されているわけではないからだ。
 けれど、どうしても今すぐ聞いておきたかった。もし次また似たような状況になっても焦らずに済むように。

「……ん? なんだ唐突に……まぁいい。筆頭従者であるこの私が直々に教えてやろう」

 とても偉そうだけど、とても親切なエタン。だって、誰よりも先に教えてくれるんだもの。

 それほど親切な筆頭従者様の話では、従者のみんなは〝冒険者ギルド〟に登録しており、フェルム・プラータ・エタンの三人は現在、FからSまである冒険者ランクの中でも上位戦力である〝Bランク〟なのだそう。

「なるへそ~、どうりで強いわけだぁ……って、あれ? ゴルトだけBランクじゃない……? ってことはまさか……Aランクなの!?」

 予想に驚きつつも、期待に胸を膨らませて聞いてみた……が、エタンの口から出たのは「違う」の一言。
 そうなれば、ゴルトの冒険者ランクは必然的に中位戦力の〝Cランク〟となるため、盗賊らを一人で連行していることに強い不安が。あわわっ、大丈夫かなぁ!?

「……ふむ、その不安そうな顔……お前、何か勘違いしているようだな」

「え……? 勘違い? それって……どゆこと?」

 ちんぷんかんぷんの私に対し、エタンは少しだけ口角を上げてから答え合わせを。

「奴は、ゴルトはSランクだ。この世に十二人しか存在しない、な」

「え゙ぇ~っ!? エエエエSランクぅぅぅ~っ!?」

 衝撃の事実に思わず立ち止まって叫んだ私。プラータが「はぁ……煩い」とぼやくほどの声量で。

 特位戦力〝Sランク〟……それは、国を跨ぐ者。国内のみならず国外からの依頼をも請け負うことのできる、特殊にして特別なランクであり冒険者の頂点。
 最上位戦力〝Aランク〟を【自国の守護者】とするならば、こちらは【世界の守護者】と云えるだろう……と、エタンがドヤ顔で教えてくれた。

 てか、なんでドヤ顔? なんで自分のことみたく自慢げに話した? って感じの顔を見せるみんな。
 私も同意見だが教えてもらった手前、顔には出さぬよう努めて「あはは……」と苦笑いで誤魔化す。

 そんな折、イルズィオールだけは驚愕の表情を見せ、声を震わせながら大きな独り言を。

「ゴ、ゴルトだと……まさか【破界】の──ッ!? な、何故それほどの男がこんな田舎街に……」

 んなっ!? いっ、田舎街で悪かったな! と腹を立てるも、気になるワードが出たのでつい口に。

「はかいの……?」

「あぁ、アイツの二つ名だ。世界を破壊できるほどの膂力を持つってんで付けられたっぽいぞ? 大袈裟だよなぁ……まっ、実際凄ぇ馬鹿力だけどよ」

 フェルムの説明を聞くも、いまいちピンとこない私は「ふーん、よく分かんないや」と興味なさげに返しては再び歩を進め、程なくして工房の裏庭に到着。
 そういえば裏庭見るの初めてだぁ~ワクワクっ! と興味津々で辺りを見渡した……が、この場にあるのは手付かずとなったものばかり。
 例えば……あの砂埃に塗れた物置や井戸、無造作に生い茂った雑草群、あと枯れ果てた小さな薬草畑。
 しかし、それだけでも分かる。充分すぎるほど伝わってきた。いかにこの小さな薬草畑を大事にしていたのかが。
 物置の中に積まれた数多の肥料袋、井戸の軒先に吊るされたお洒落な如雨露、無造作といえど大事な所には草一本生えぬよう敷かれた厚めの防草布。どれもこれも見れば一目瞭然だ。そう、だから……


 だからこそ悲しい。
 大事にされていたはずなのに、理不尽にも枯れる運命を辿らされた薬草たちを想うと。

 だからこそ苦しい。
 生き甲斐ともいえる薬草たちが日に日に枯れていくさまを見て、その度に悲しみ嘆いたであろうあの人を想うと。

 だからこそ憎い。
 それほどまでに優しく慈愛に満ちた人を裏切り陥れた挙句、生き甲斐までをも奪った奴らの存在を想うと。

 だからっ、だからこそっ、大変だろうけどっ、全部私がなんとかしなきゃ!! って、そう思ったんだ。


「……あれ? おかしいな……私、なんで泣いて……」

 己の意思とは関係なく、自然と流れる涙。
 突然泣き出した私を見て、唖然とするみんな。
 ただ一人、このだけは違う。私と同じ。
 きっと、私が抱いた負の感情を察して引き摺られてしまったからだ。
 悲哀・苦悶・憎悪。それらが混ざり合うことで生まれたなんとも形容し難いこの感情と、そこから見出した勝手な使命感によって。だけど、それでも……


 ごめんね、一緒に泣かせちゃって……

 ありがとね、一緒に泣いてくれて……

 謝罪と感謝の言葉を心の声で伝え、私は泣き笑った。
 一緒に泣いてくれる人がいる。それがこんなにも幸せなことだって、知ってしまったから……──
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...