同期に恋して

美希みなみ

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ただの同期です

第2話

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ようやく課長の仕事が終わり、自分の今日の仕事に手をつけられたのは、もう終業時間間際だった。

予想以上に電話もなるし、課長の仕事も調べることなどが多かった。

ため息をつきたいのを、飲み込むとすぐに自分の仕事に取り掛かる。

「近藤先輩手伝いましょか?」
後輩の声に、私は笑顔を向けた。

「今日、予定あるって言ってたでしょ?もう終わるから大丈夫よ」
ついつい申し訳ない気持ちから、そう言っている自分に心の中でため息をついた。

「じゃあ、お先に失礼します」
その言葉に、私も小さく手を振った。

営業の人は直帰も多く、ガランとしたフロアに、やっぱりみんなに手伝ってもらうべきだったと思って、私はため息をついて手を止めた。


「ちな、ほら」
目の前に置かれた紙袋に、私は顔を上げた。

「あ……」
ありがとうという言葉がでず、なぜか泣きたくなる。
目尻が熱くなり、こんなことで泣くわけにいかなないと、ギュッと唇を噛んだ。

1人残されていた、少し照明の落ちたフロアでだんだんと気持ちが落ちていたのだろう。

「まったくちなは……」
ボソリと言われた言葉に、迷惑をかけてしまったと今度こそ涙がこぼれた。

「ごめん……迷惑かけて」
私のその言葉に、涼真が慌てて私を見た。

「違う!ちな。ごめん!いや、泣くな!ちな。ほらお腹空いてるんだろ?」
ガサゴソと紙袋の中から、あったかい肉まんをだして涼真は私をみた。

ハンカチで目元を抑えていた私の手を、涼真はそっと取るとそこに肉まんを置く。

ハンカチがなくなり、ポロポロと落ちる涙を止めようとしても、止まらず私はもうヤケクソでとりあえず肉まんを一口かじった。

「へへ……涼真、ありがとう」
肉まんと涼真の暖かさが胸に広がり、私は泣き笑いをうかべた。

「ちなはさ……」
そう言って、私の頬を両手で包むとそっと、涼真は親指で私の涙をぬぐった。

「ちょ……りょ……」
肉まんを頬張っていたため、まともな言葉にならず驚いて私は目をみひらいた。
肉まんを口に加えている女など、どれだけ色気がないことだろう。ましてや涙できっとメイクもぐちゃぐちゃだと思う。

頬が熱くなるのを感じたが、固定されていて身動きが取れない。

「ちなはさ、一人でやろうとしすぎだ。もっと周りを頼れよ」
触れていた手を離すと、涼真はすぐにパソコンを取り出すと、私の仕事をしはじめた。

「涼真、ちょっと!疲れてるのに!いいよ」
そんな涼真に慌てて言った私に、涼真はジロっと私を睨む。

「ごめん」

「ごめんじゃない」
こちらを見ずにいった涼真に私は小さく呟く。

「ありがとう……お願いします」

「おう」
それだけをいうと、涼真は私をみて優しい笑顔をくれた。
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