Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第一章 クルードフォーミア編

戦闘開始

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 ―――みぃつけた。

 バンバさんの背後から、両刃に棘のついた剣を持った何者かが勢いよく剣を振り下ろした。

 ザシュッ...

 という音と共に、バンバさんの背中から、大量の血が溢れ出る。同時にバンバさんはその場に倒れこんでしまった。

 「獲物...みぃつけた。」

 剣を振り下ろした何者かが剣を引きずりながら、私と入町さんの目の前まで歩いてくる。その時の私は完全に恐怖で呆然と立ち尽くしてしまっていた。そんな私に入町さんは

 「気をしっかり持ってください...!!」

 と言いながら、バンバさんに切りかかった何者かの姿をしっかり見据えている。そうして、何者かは姿を現した。その時に、その何者かの正体が女性だとわかった。

 「...見たこともない装いをした...女...。」

 女性は私の言葉に笑みを浮かべて、ゆっくりと一歩一歩を踏みしめるように近づいてくる。

 「やったね。2人も獲れるなんてラッキ~。」

 「...。」

 私が体を震えさせていると、入町さんがドレスのスカートから刀を取り出して、片手に持ちながら私を護るように前に立つ。

 「大丈夫ですよ...。頼りないかもしれませんが...私が、絶対に護ります...。」

 「何言っちゃってんの? あんたも獲物なんだけど?」

 入町さんが私を安心させようとしてかけてくれている声に女性は追い詰めるようにそう言った。

 「獲物も...生きてたら抵抗しますよ...!! 逃げたり...立ち向かったり...。」

 「でも、結局は弱い方が狩られるよ。でもまぁ、正直どっちもあたしにとっちゃそこまで脅威でもないし...抵抗するだけ無駄だよ。」

 女性はそう返しながら、勢いよくヒールのかかとで入町さんに蹴りかかる。その瞬間...背後から片手で口に当て「シーッ」というポーズをしながら、もう片方の手で一本の両手剣を持って、女性の首に向かって切りかかるバンバさんの姿が見えた。

 「...!!」

 「あ...? .....!!!」

 バンバさんは勢いよく剣を横に振り、女性の首に当たるという直前で、女性はその攻撃に気づき、寸でのところで避けられた。

 「...はぁ....危な..。」

 女性はそう言いながら切りかかってきたバンバさんを見る。

 「一撃で仕留めたかったんだが...ばれたか...。」

 「(さっきの受けてたはずだろ? なんで普通に立ち上がってるんだよ。しかも、ご丁寧に倒れた演技までして、しばらく起き上がれないって悟らせての奇襲?) ...卑怯だねぇ。」

 「敵に対して何か慈悲があるとでも?」

 女性の言葉にバンバさんはさも当たり前のような表情でそう返す。

 「フフッ、そりゃそうだ。つか、あたしの方が先に不意打ちしかけてるしね。」

 女性はその返しに、鼻で笑いながら返しているが、先ほどとは違いトーンが少し低くなっている。

 「さて、仕事中にトラブルが発生したわけだが、どうしようか...。店長に連絡する暇がないな。(他の出席者はこちらに気づいていない。落ち着いたとはいえ、停電の影響で混乱している状態が続いていて、他のところに目を向ける余裕がない、そしてなおかつ波音で音が聞こえ辛く、暗闇の影響でこちらが見え辛いことが功を奏しているようだな。)」

 そう言いながら、バンバさんは片手に持っていた剣を両手に持ち直す。

 「へっへ...。(あいつの言う通り、もっと慎重に始めるべきだったかもしんねぇ...。)」

 40分前

 とある森の中...2人の男女が客船を見ながら会話をしている。

 「はぁ~...。あたしがこんなことを....。」

 「文句を言うな。これは餓狼鬼虎の上層の人間ではなく、他でもない首領の望みだ。首領が自身でそれを成そうとした際に手傷を負ったのなら、直属の部下である俺たちが向かうのは当然のことだ。」

 「あんたのあの人に対する忠誠は凄まじいものだけど....いきすぎたらただの害だよ。」

 「安心しろ。そこまでに行くつもりはない。」

 2人の男女は互いを牽制しあっているのか、それとも信頼しあっているからこそなのか、鋭い視線を交わしながら話している。

 「...無駄話はこれまでにして、目的と作戦を確認しよう。まず俺たちの目的は『深天極地の純血の生け捕り』だ。」

 「生贄にするためのね。」

 「...。」

 「睨むなよ。わかってるっての。」

 女の方はやり取りに飽き飽きしているような態度で男に話の続けるように言う。

 「俺たちは上層の部下に頼まれたように、俺が客船を停電させ、非常用の予備電源が作動する前、船長とその家族を上層の犬共が暗殺している間に、お前が深天極地の純血の周りにある障害を取り除き...俺の矢でさらう。」

 「障害ってどれ?」

 女は目を細めながら、客船の周りにいる出席するであろう者たちに目を向ける。

 「深天極地の純血は確認したところ2人いる。一人は全くと言っていいほど戦えないが、もう一人は刀を隠し持っている。両方とも女だ。その2人の近くにいる男女こそが障害だ。特に男の方だな。」

 「はぁ~? あのちょっと強そうなやつ?」

 「その通り。」

 「あっそ。じゃあさ、もう一人の女の方は? とても障害になりえるとは思えないけど...。」

 「そうだな。正面対決では、そうかもしれんが...。だからといって侮るな。一応不意打ちには気をつけろ...。絶対だ。確証はないが...もしかすれば...。」

 「はいはい。わかりましたよ...。」

 男の言葉を女は軽くあしらう様に返す。

 「上層の犬共は裏切り者の抹殺。あたしたちは深天極地の純血の生け捕り...。なんかうまく上層の奴らに利用されてるようで気に食わないね。」

 「そこには同意する。だが、作戦は必ず実行しろ。どれだけ利用されていようとも...首領の目的完遂の為ならば...そう悪いものでもないだろう...?」

 「...まぁな。じゃ、行ってくるわ。」

 「始めるときは慎重に始めろ。では、武運を...。」

 「はいはい。」

 男の言葉に耳を傾けていないのか、面倒くさそうに女は森を後にした。

 現在

 「でもまぁ...いっか。」

 女はそう言って、不規則な動きで俺の方に切りかかってくる。それを俺は体を跳んで回転させながら避け、同時に女の腹に剣を振る。

 「おっと...。」

 女は後ろに飛んでギリギリで避ける。その間に俺は、女から目を離さずに光琳に指示を出す。

 「橘を連れて逃げろ。それと...できるだけ物陰に隠れて、外から見えないようにしろ。」

 「わかりました...!! じゃあ付いて来てください。」

 「あぁ...はい。」

 「...何? (物陰に隠れて、外から見えないようにしろ? ...こいつ、まさかあいつの位置をわかってるのか?)」

 「目と耳が普通より良くてな。」

 光琳は俺の指示通りに橘の手を取って、すぐにその場を離れようとする。

 「へぇ~...!! 逃がすか!!」

 「...!!」

 そんな2人に、女は躊躇なく切りかかる。俺はその剣をすぐに抑えつけて、女の頭を蹴って床にたたきつける。その間に、光琳と橘が外から見えないようにテーブルの下や椅子の裏に隠れながらも素早くこの場を離れていく。

 「っ!!」

 その様子を見届けたと同時に、女はたたきつけられてバウンドしている状態で剣を俺に向かって振り上げる。すぐに体勢を崩して避けるが、避けきれず頬に刃が掠る。

 「はぁ~。(反応速度、動体視力、咄嗟の判断力...強い。) ふざけてられないな。」

 女は俺にそう言いながら、両刃に棘のついた洋剣と後ろ腰から片刃の黒い和刀を抜き、洋剣は順手に持ち、和刀は逆手に持つ。

 「餓狼鬼虎・餓の節、その一角が束ねる組織...〝クィリーブラッツ〟所属、軍姫カデーレ...。」

 「...名乗り?」

 「こっから本気って合図...。」

 女...カデーレはそう言って先ほどとは比べ物にならない速度で不規則な動きをしながら連続で切りかかる。俺はその順手の洋剣と逆手の和刀の連撃の嵐が読み辛く、洋剣を避けると、和刀が避けきれず、逆に和刀を避けると洋剣が避けきれない。

 「... (面倒極まりない。)」

 「チッ...!! (こいつ、あたしがこんだけ連撃をかましてんのに、全く直撃しないどころか、当たっても掠っただけで留めてやがる。しかも、どんどん連撃が掠ることすら減っていってる。もう適応してきたってのか? あたしのこの動きに...。)」

 だが、俺はカデーレの動きを正確に捉えることに専念し、体もそれに付いて行くように少しずつ馴染ませていく。そうして、着実に攻撃を受ける回数を減らしていく。

 
 2階 ロビー

 俺が戻ると、ご主人と依頼人に向かい合って異様な雰囲気を漂わせる貴族服の男と、それを護衛するように立っている紳士服の男3名とドレスの女3名がいた。

 「ん? (7人? もっと多くの足音が聞こえたが...。)」

 「伯爵?」

 ご主人が目を細めながら貴族服の男にそう話しかけると、貴族服の男は無言でご主人の元まで歩いていく。

 「? どうしたのですか?」

 その光景に、護衛するように立っていた6人の男女も困惑した様子で貴族服の男がご主人の元まで歩いていく姿を見ている。

 「..ぃ..ぃ..ぁ..ぅ..ぁ..ぃ。...ぁ..ぅ..ぇ..ぇ..ぅ..ぇ...。」

 「伯爵? 一体何を言っているのですか?」

 貴族服の男は声がうまく出せないような状態になっている。その様子に流石の男女6人も、貴族服の男に近づこうとする。

 「(いいあうあい? あうええうえ? この言葉を言っている貴族服の男の声にはどこか必死さがある。何かに縋るような....。縋る...ような....。)」

 ..ぃ..ぃ..ぁ..ぅ..ぁ..ぃ。...ぁ..ぅ..ぇ..ぇ..ぅ..ぇ...。

 ぃぃぁぅぁぃ。ぁぅぇぇぅぇ。

 いいあうあい。あうええうえ。

 しいたうない。たうけえくえ。

 ―――死にたくない。助けてくれ。

 「...!!」

 俺はそう感じ取り、すぐさまご主人と依頼人の元まで向かい、すぐそこまで来ていた貴族服の男を突き飛ばす。

 「貴様何を!!」

 護衛の男女の6人の内の1人がそう叫ぶ。

 「いいから離れなさい!!」

 それに対し俺は必死に訴えるような目で男女の目を見ると、男女は一歩だけその場を離れる。その一瞬、貴族服の男が目から大粒の涙を大量に流していた。

 次の瞬間、それを無視するように体は赤く光りだし、大きな爆発音とともに、男は爆発した。

 「何だ今の爆発は!?」

 「いったい何が起こってるというの!?」

 先ほどまである程度落ち着いていた出席者たちが恐怖のあまりにもう一度騒ぎ出す。その中、男が爆発した瞬間を見た、護衛していた男女6人とご主人と依頼人はその場で座り込んで唖然している。

 「(男が爆弾そのものになっていた...。一体いつから? 少なくとも、この船に乗った段階では、あんな異様な雰囲気持った出席者はいなかったはず...。)」

 ―――組織の裏切り者よ、貴様をこの世から消す。抵抗すれば家族の命はない。甘んじて滅びを受け入れよ。

 「(主人を裏切り者とし、だからこの世から消すと考える。息子や妻にも同じような内容の手紙を送ったのに...。抵抗したら家族の命はない...。滅びを受け入れる...。これがもし、出席者の死を対象に見せて精神的に滅ぼすことを意味するのなら、ご主人にとって、出席者たちに家族と同じような情を持っていたとしたら....。) ご主人...。」

 「....はい?」

 ご主人は貴族服の男が目の前で爆死したことが余程のショックだったのか、声が裏返った状態で俺の声に反応する。対して依頼人は腰が抜けて立ち上がれなくなっている。

 「ご主人にとって、このパーティーに出席している人たちのほとんどは、どういう人たちですか?」

 「....私にとって、家族と同じくらい....大事な...大事な人たちです.....若い頃...何度も助けられた....何度も幸せな思い出を作ってもらった.....その恩を....返したくて....パーティーを開いたんです...。少しでも、私や妻の人生を...豊かにしてくれた..人たちに報いたかったのです....伯爵は...その中でも......辛い幼少期を支えてくれた。」

 ご主人は声を震わせながらそう答えた。

 「(じゃあ、あの手紙の意味合いは組織を裏切ったから、大事なものを目の前で抹殺し、精神的に壊した後に、ご主人を殺してこの世から消す。多分これだろう....だが、今の段階ではご主人の直接的な家族だからという意味以外、妻である依頼人と、2人の息子宛てに同じような手紙が届いた意味と、一体何の裏切り行為を犯したのかがわからない。そして殺し方だ。一体いつ、どうやって人間を爆弾にした?)」

 俺はご主人の答えにそう思案しながら、周りを警戒する。そうすると、複数ある気配を消し切れていない集団の中から、異様且つ危険な雰囲気を持つ人間がいた。

 「....あ~あ...。殺し損ねちまったよ。ふざけんなよぉ~。なぁ~に邪魔してくれてんだよお前。」

 俺が感じた瞬間にその人間は変な歩き方で、姿を現した。目は真っ黒で、髪の毛は淡い赤、体系は瘦せ細っていて、片腕がない。

 「誰です? あなた...。」

 俺はその中でも、あくまでパーティーに出席した、セレンとして話す。すると、その人間...男は不気味な笑みを浮かべて言う。

 「知ってるぅ~。お前知ってるぅ~。でも思い出せねぇなぁ...だぁれだっけなぁ~。」

 「そちらこそ誰です?」

 「俺かぁ~? 俺はぁ~...」

 ―――餓狼鬼虎上層...餓の節が一角...上層階級直轄部隊隊長....つき人のアカザサだぁ。

 男は割とあっさりと名乗り、また不気味な笑みを浮かべる。

 「よろしくぅ~。ヒッヒヒひひヒヒひヒヒヒヒひヒひヒヒヒひひひ。で? お前はぁ~だぁれだぁ~?」

 「あなたのように怪しい人には名乗りたくありません...。」

 男の質問に俺がそう答えると、男はまた笑いだし、しばらくして笑いつかれたのか、不気味な笑顔のまま俺の目を見る。

 「そっかぁ~、名乗らねえかぁ~。」

 ―――じゃあ...死ぬかぁ~。
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