Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第一章 クルードフォーミア編

動き出す男

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 ―――じゃあ...死ぬかぁ~。

 男は勢いよく俺の元まで走ってきて、頭に向かって蹴りかかる。その瞬間に俺はドレスの下からスモークグレネードを3つ取り出し、落とすように投げる。そしてすぐにそこから煙が発生し、俺は気配を消してご主人と依頼人を抱えて男とすれ違う様に走ってその場から離れる。

 「ぁあ? (煙まかれただけなのに...見失った。気配...ねえな。こんな一瞬で...あ~あぁ~めんどくせぇ) でも、こっちには出席者のほとんどが人質だぁ、これ以上抵抗したらわかってるはずだぁ。どのみち、逃げても無駄だぁ~!! (てか...あいつらはいつまでかかってんだぁ~? 別に男の方を殺せなんて言ってねえんだがなぁ~。それとも...女2人とも、それなりに戦えんのかぁ?)」

 男の気配が薄くなると、俺はご主人と依頼人を物陰に降ろした。

 「大丈夫ですか?」

 俺がそう訊くと、ご主人は俺のことを訝しむような表情で見る。

 「あなたは一体...。」

 「あなた...。」

 ご主人が俺のことを訊こうとした瞬間に、依頼人がご主人の前に立って止める。

 「黙ってこんなことをしてごめんなさい。実はね...。」

 その後、依頼人は少し申し訳なさそうな表情でご主人に俺がここに来た理由を話す。

 「なぜそんなことを....抵抗すれば家族の命はないと書いてあっただろう...。」

 「ごめんなさい。でも、私はあなたにいなくなってほしくないのよ。息子はただの行方不明だからまだ希望はあるわ。でも死んだら、本当に二度と会えなくなるわ。私はそれが嫌なの。あなたにとって、このパーティーの出席者がどれほど大事かはよくわかってるつもりよ。でも、私にとって一番大事なのは、あなたや...息子よ....。」

 ご主人の落胆の声に、依頼人は自分の依頼した理由である本音を吐露する。その様子にご主人は唇を強く嚙み、俯きながら拳を強く握っていた。そんな中、こちらに来ている複数の足音と狙っている気配が感じる。

 「チッ...。(もう勘付かれたか。それとも船内中にご主人を狙う敵が蔓延はびこってるのか? だが、やはりだな。家族のように想っているとはいえ、抵抗しても出席者たちを何度も爆発はしない。安易にそんなことすれば船は転覆、自身の命を危険にさらすことになる。)」

 俺は舌打ちをしてそう思案した後に、ご主人と依頼人の間に割って入り話を中断させる。

 「すみませんがお2人とも、状況が予想より大きく変わったので、かなり杜撰ずさんな護り方をするかもしれません。」

 「というと?」

 俺の言葉に依頼人よりも先にご主人が反応する。その目は、まるで自分を責めるような感情がこもっているように感じた。

 「あなた方を囮にし、その隙に私が周りの敵を始末します。」

 「...わかりました。」

 「すみません。」

 俺の考えに、ご主人は少し沈黙した後に覚悟を決めたように頷き、依頼人の方に目を移す。

 「囮になっている間...私は妻を守り、他の出席者たちを落ち着かせます。」

 「...ありがとうございます。ですが無理だと感じたら、今からガスマスクと睡眠ガスグレネードを渡すので、それで全員を眠らせてください。」

 「眠らせる?」

 「今の現状がおおやけになり、世間に知られればこれから生き辛くなるでしょう?」

 「...ありがたく受け取らせてもらいますが...。こんなことになったのは私の責任です。世間に知られようと、私は構いません...。」

 俺の返答にご主人は頷きながらも、自分の覚悟を再度を示すような言葉を述べ、ガスマスクを2つ、睡眠ガスグレネードを10個貰う。。

 「例外なのですが。黒と赤のドレスを着た2人の女性と黒の紳士服を着た男性は眠らせないでください。その3人のうち2人が店の店員で、1人は掛け持ちしている依頼をしている人なので...。」

 「...わかりました。」

 依頼人は俺の指示に対し、少し冷や汗をかいている。しかし、ご主人は冷や汗一つかくことなく深く頷いている。依頼人は不安が勝っているが、ご主人は覚悟の方が勝っている状態だ。そう思って俺は

 「その間は、私が守るので安心してください。ですが、近くにさっきの狂った男を見かけたり、感じたりしたら、その場から離れるか、死角をとってください。死角を取りさえすれば、私が一撃で仕留めます...。」

 と宣言した。それを聞いた依頼人はご主人同様に覚悟を決めた表情でその場から動き出す。同時に俺も気配を消して、その場から消える。

 1階 パーティールーム

 カデーレの攻撃に俺は出席者たちに近づかず、ちょうど見え辛い場所で移動しながら対応していた。

 「千切噛ルミナン・テッドドーラー!!」

 その中でカデーレは洋剣と和刀で挟み込むように俺の足を切り落とそうとしてくる。俺は避けるために、すぐさま体を回転させながら飛び上がり、その勢いのまま剣を振って、カデーレの肩、膝、太もも、背中、腹、目の順番で斬る。

 「っ...!!」

 「チッ...!!」

 だが、その攻撃のいずれも直撃はせず、すべて掠る程度で抑えられ、カデーレは俺から距離をとる。そして、洋剣を床に突き立てて、口笛を吹こうとする。

 「(クソが...!! 完全に対応されて攻撃が当たらなくなってきた...。その癖、向こうの攻撃は直撃はせずとも当たってる...。このままじゃジリ貧だ。結局負ける。...あいつの助けを....。....いや、別にマジで戦えなくなってきたわけじゃない。本当にやばいときに呼ぶ。)」

 しかし、カデーレは一瞬だけ、動きを止めた後に口笛を吹くことをやめて突き立てた洋剣を引き抜き、無言で俺を見据える。

 「(こいつはこの先の計画の障害になる。間違いなく。だからここで....潰す...!!)  無明夜ノックス・ノンルチェット。」

 その後、カデーレは俺の方によってふらついているような足取りで走ってきながら、またも不規則な連撃を仕掛けてくる。俺はそれを難なく、受け流していると、カデーレはあり得ない体勢で和刀を力強く振り上げ、俺の体勢を崩し、その後横に振られた洋剣によって剣を弾き飛ばされる。そこでできた隙を狙って和刀を順手に持ち替え、洋剣を逆手に持ち替える。その後、俺の心臓に向けて、和刀を刺そうとする。同時に逆手持ちしている洋剣を横に振って俺の胴体を切り落とそうとしてきた。

 「...。」

 だが、俺は寸でのところで敢えて力を抜くことによって攻撃を回避し、床に倒れこんだところで体を転がして、剣を取る。その後すぐさま飛び上がって、体を横に回転させながら、カデーレを斬ろうとする。だが、カデーレもそれを読んでいたのか、その一撃を和刀で受け流した後に、隙だらけになった俺を洋剣で斬る。

 「...ッ!!」

 「よし....まずはちゃんとした一撃ぃ...。」

 俺はすぐにカデーレから距離をとって、斬られた箇所を押さえる。

 「(直撃はしたがまだ我慢できる程度だな。まだやれる。)」

 「(このままめられたままなのもしゃくなんでねぇ。もうちょっと頑張らせてもらうぜぇ...!!)」

 3階 シアタールーム

 私と入町さんは外から見えないことを意識して移動してきた結果、3階の映画鑑賞する部屋に来てしまった。

 「こそこそと移動して、ここまで来ましたけど...。もし敵が来たら袋小路じゃないですか?」

 「...そうですね。間違えました。」

 私の指摘に入町さんは頭をさすりながら申し訳なさそうな表情を浮かべて私の方を見る。

 「あ...すいません。責めるつもりは....。」

 「...すいません。頼りないですね。」

 「え...。」

 「私...ずっと師匠に頼りっきりで...我も強くないから...あまり前に出て意見を言えませんし....。狩りをやって自給自足の生活をしてた時も...弱い獲物以外は....師匠のサポートばかりで....正直...自分に自信が持てないんです。挙句の果てに...あなたに気を使わせてしまって...。」

 突然口にしたその言葉に、私は無意識に深く共感した。私も自分に自信が持てなかったからだ。大学への進学も、自分の努力に自信が持てずに挑みもせずに逃げ、就活も自分の良さが見つけられず、とってきた資格にも運が良かったからと思ってしまって、自身が持てず面接に落ち続けた。子供のころから、誰かの役に立ちたいとは思ってた。だから、他人に気を使って自信のなさを隠してきた。でも、就職先が見つからず悩んでいた際、友人に気を使われた。その時、初めて私は気づいた。露骨に気を使われる苦しさを....。それを私は入町さんに、無意識だけど露骨に気を使ってしまった。苦しさを知ってるのに...。私は自分の頬を叩いて

 「いえ、本当に気にしないでください。私は入町さんに護られているだけの役立たずです。だから、無駄口をたたくかもしれませんが....それでも入町さんの判断に任せて付いて行きます。」

 そう言うと、入町さんは少し呆けたような顔をして、その後に唇を噛んで深く頷く。

 「ありがとうございます。では、そろそろ移動しましょう。」

 その後に発言した入町さんの声色からは焦りが少なくなり、同時に冷静さが強くなった。そして、私と入町さんが移動しようとすると...

 ドーン

 という爆音と共に、壁から一本の矢飛び出し、私と入町さんの間を通って反対の壁を貫いた。

 「「え?」」

 「外したか...思いの外逃げるのがうまいな。」

 私と入町さんは同時にリアクションをした後に、矢が突き破ってきた壁から離れて、急いでシアタールームを出ようとする。その瞬間、矢が突き破ってきた壁から大量の矢が外からすり抜けてくるようにして飛び出してくる。入町さんは私を抱えて、その矢をかすりながらもなんとか避け続けて扉の方まで走った。

 「悪いが逃がす気はない。」

 扉を開けて出ようとすると、目の前からまた矢が襲ってきた。

 「いったい何ですかこれぇ~!!」

 入町さんはそう言いながら、私を抱えて廊下を走り抜けて4階へ進む。

 「そのまま上に上がってどうする? 避ける場所も防ぐ場所もない甲板にでも出るつもりか?」

 4階に着いた瞬間...またもや大量の矢が私と入町さんに向けて撃たれてきた。

 「このままじゃ、ジリ貧ですね。せめて何とか敵の位置を明かして、一矢報いたいんですが。」

 入町さんはそう言いながら一番手前の客室の中に入って、私を床に置く。後に、刀を持ち直して周りを見る。

 「油断...全くできないですね。」

 「...はい。」

 入町さんの言葉に私は放心状態気味で返事をした。

 1階 バー

 「マスター...船が停電しててなぜか手動で操作せずに海の真ん中で停まってしまっているのに...よくワインなんて出せるねぇ...。」

 「...まぁ...何というか..。仕事をしている間は....落ち着けるので...それに...あなたというお客様もおりますし...。」

 静寂な空間の中で二人の男が酒を飲みながら話している。一人はバーのマスター...もう一人は白い紳士服を着ている。

 「辺りは真っ暗...周りはほぼ見えない....やけに外は静か。」

 「そうですね...たまに変な音は聞こえますが...。」

 白い服の男にマスターは同意しながらも、感じている違和感を口にする。

 「そうだねぇ。金属音だったり、爆発音だったり、爆音だったり....。でも落ち着いているのは...主催者が頑張って出席者たちを落ち着かせてるのかなぁ?」

 「ですがここに来ないのは...。」

 「2人しかいなくて、普通の声の音量で喋ってるから、大丈夫だと思ったか、はなから気づいていないのかもね。」

 「なるほどぉ...。」

 白い服の男の言葉にマスターは、助けをあきらめたような声で返した。すると、グラスに注がれたワインを飲み干して立ち上がる。

 「どこかへ行かれるのですか?」

 「うん。ちょっと状況を見てくるよ。何もしなくてもよさそうだったら....戻ってくるよ。」

 「はぁ...。」

 「何円かな?」

 「5000円です」

 「美味しいお酒をありがとう。」

 マスターがそう言うと、男は代金を払ってバーから出ていった。
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