Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第二章 シャインティアウーブ編

新たな依頼

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 ーーーこれでロックコード完了だな。

 昨日、アルベルト夫妻から貰った魔工車が知らない人間に盗まれないように、薫と光琳が雑談している間、ロックコードを俺とバンバで5種詰め込んだ。

 「パスワード、暗証番号、パズル、眼球認証、血液認証すべて完了させて、やっと運転できる。」

 「気になったんだが、血液認証の際に使った血液は俺とお前だが、あと1つは誰のだ?」

 「俺もお前もよく知ってるあいつだ。」

 「いるか?」

 「臨時に運転してもらえたら助かるだろ? 今はあいつより弱いんだ。俺も、お前も。」

 バンバにした質問の回答に俺は何となく察してそれ以上深くは聞かないことにした。

 「さて、運転は何年ぶりだ?」

 「7年ぶりだ。」

 「...俺とそんなに変わらないな。とりあえず、薫と光琳を下ろして試運転しておくか。」

 「そうだな。事故起こしたら面倒なんてもんじゃないからな。」

 俺とバンバはそう会話をした後に、バンバは外で待ち、俺は魔工車のバックドアから一通りの生活空間が揃っている住宅スペースに入り、薫と光琳がテレビのニュースを見ていた。内容は、ここ最近起きた3つの事件に関するものだった。1つは俺たちが関わったクルードフォーミア襲撃事件。そして他2つは

 ・シルヴァマジア大火災事件
 ・シャインティアウーブ全電力停止事件

 どの事件も今から3週間前に起こった事件であり、解決した人間が誰なのか隠されている事件。シルヴァマジアとシャインティアウーブに関してはそれぞれの国のトップが解決したという噂がたっているが、クルードフォーミアは本当に誰かわからないという風になっている。

 「ニュースを見ている最中で悪いが、一旦車から出てくれ、俺とバンバが試運転するからな。」

 「「はい。わかりました。」」

 薫と光琳は俺の指示にほぼ同時に返事をしてすぐ荷物をもって、車から降りた。2人が降りたのを確認すると、俺とバンバはロックコードを解除して運転席と助手席に乗った。

 「じゃあ行ってくる。できるだけ早く帰ってくるようにする。」

 「わかりました。行ってらっしゃいませ。」

 「行ってらっしゃいませ!!」

 バンバの言葉に返事した薫の言葉を光琳は真似するように復唱する。それを聞いた後にバンバは魔工車を起動させ、運転を始める。

同時刻 シャインティアウーブ内のとある病院

 ーーー残念だが、これ以上娘さんを延命させるのは...酷だ...。

 白髪混じりの年配の医者が深刻な面持ちで向かいの男性に言い聞かせるように言った。

 「...娘は、まだ生きたいと言っているんだ。頼む、延命を続けてくれ、何か方法はあるはずだ。」

 「その方法とやらを探していったい何年経った? 10年だ、10年。君は妻を失ってから現実から目を遠ざけようとしている。君にとって娘さんがどれだけ大切かは知っている。だからこそ、一思いに苦しみから解放してやるべきじゃないのか?」

 「娘がもう死にたいと言ったら私も考えよう。だが、生きたいと言っている。私はそれを裏切れない。」

 男性は医師の言葉に頷きながらも、自分の医師を変えずに、反論し医師の目を真っ直ぐ見た。それを見た医師は無言で頷いて看護婦に言う。

 「機械を動かしてくれ、彼の娘さん、富士浪ふじなみ 清雅せいがさんの延命を始める。」

 「ありがとう。そしてすまない。」

 「何を言う。君ら夫妻には散々助けて貰った。多少の無理強いは聞くさ。」

 男性は医師に感謝しながら強く握手した後に、病院をあとにした。

10分後 シャインティアウーブ付近

 科学大国シャインティアウーブが見えるところまで来た俺たちは一旦魔工車を止めて、運転を変わって薫と光琳のもとに帰ろうとした。

 「7年ぶりだが、俺の方は特に問題なかったな。帰りはお前で頼む。」

 「こんなでかい国だったか? シャインティアウーブ。心なしかミラージュタワーも綺麗になったように見える。」

 「まぁ、都市から大国だからな。前の広い敷地が今や機械だらけの大都会。都市というには広大な領土と戦力を誇っていることから大国となった。ミラージュタワー...気式空電塔...については...特にこれと言って変わってないな。1人の頃は全く来なかったのか?」

 「国内の依頼しかこなかったからな。近くにこんな大国があっても、寄る必要がなかった。」

 俺の答えにバンバは無言で頷きながら、俺のつけているマスクを見つめる。

 「そのマスク、いつまでつけてるんだ? 眠っているときも一応はずさないでやったが、息苦しいだろ。薫がいないときぐらい、顔を隠すのは止めた方がいい。フードだったり、仮面だったり、マスクだったり、今度はサングラスでもつけるつもりか?」

 「そうだな。サングラス...いいな。」

 「お前、ほんとに見ない間に変わったな。」

 「いや、そうでもないさ。」
 
 俺はそう言って魔工車を起動させて走らせる。

同時刻 シャインティアウーブ ミラージュタワー展望台

 展望台のなかで研究服を着た男女が電気の配線部分を点検させた後に話していた。

 「はぁ~。やっと終わったよ。な~がかったぁ~。」

 「まっ、これから市長としての仕事が待ってるけどね。」

 「はぁ~~あっそうじゃん。」

 疲れが溜まっているのか金髪の目付きの悪い男性が伸びをしながら展望台をあとにしようとすると紺色の髪をした眼鏡の女性が指摘した。それに深いため息をつきながら思い出したかのように頭を抱える。

 「休んじゃダメ?」

 「ダメ。」

 「...っかぁ~クソが。電力を全部ストップさせられたからわざわざ国中回って点検したら、全て問題なく時間を無駄にしたどころか、帰れば書類仕事が待っていると言う...。はぁ~...やっぱ先代...つか初代か...の判断ミスだろマジで。何で現場仕事が向いている男に市長なんぞの国のトップ任すかね? 俺まだ27だぜ? 市長就任時なんて25だぜ? イカれとんのかって。」

 「また同じ愚痴をはいて、いいから戻って仕事するよ。私も仕事あるんだから、大変なのはお互い様。」

 「はいはい...。」

 女性の言葉に仕方がないと言うように、返事をして研究服を着た2人の男女は展望台をあとにした。

10分後 スターリースカイ跡地

 俺とバンバは薫と光琳の前まで来て魔工車を降りた後に、来る途中で決めた住宅スペースのロックコードを設定し、薫と光琳に教える。

 「住宅スペースのロックコードは2つ設定してある。パスワードと暗証番号だ。今から教えるから覚えておけ。」

 「「はい。」」

 「まずパスワードは、「今を生きる」だ。暗証番号は、1021004001131015だ。」

 「暗証番号難しいですね。」

 「24035の2進数を間にいれればいい。2なら10、4なら100、0なら文字通り0、3なら11、5なら101。」

 「あ..だから102、1004、00、113、1015なんですね?」

 「そういうことだ。」

 俺の言葉をすぐに理解した薫だが、隣で光琳は首をかしげながらバンバを見た。それに気づいたバンバは光琳に耳打ちで、

 「修行の合間に教えるから今は流せ。」

 と言うと、光琳は無言で頷いて俺の方に視線を戻す。

 「じゃあとりあえず入れ。運転席からでも住宅スペースに移動はできるし、会話もできる。これからはここが、家で仕事場だ。修行場所は日々異なる。そこで、光琳は今まで通り、薫はこれから光琳と一緒にバンバの元で修行するんだ。」

 「はい。」

 「光琳は薫に対して姉弟子としてアドバイスをしてもらうと助かる。」

 「はい。」

 「バンバは...自由に修行をつけてくれ。」

 「わかった。」

 俺は一通り指示を出すと、全員で魔工車、レグスに乗った。

 「まず、ここからかなり近いところにあるシャインティアウーブで仕事を探してみよう。」

 「中に入るのか?」

 「いや、あくまで近くで車を止めて、待つだけだ。運が悪ければ一日中暇になるな。」

 「それは避けたいな。」

 俺とバンバはそう会話しながらレグスをシャインティアウーブ付近まで走らせる。

同時刻 シャインティアウーブの富士浪グループ 本社ビル

 ーーーおはよう

 病院から帰ってきて、男性は会社の中に入ると、働いている社員や事務員に軽く挨拶をすると、全員から深々と頭を下げられ、次々と元気よく

 「おはようございます!! 社長!!」

 と返される。その中で、秘書らしき女性が男性に耳打ちで挨拶をしながら言う。

 「おはようございます社長。それで、娘さんの容態は?」

 「長く世話になっている専門医に、延命を止めさせた法がいいと言われた。それだけ絶望的だ。」

 男性が沈んだ表情でそう答える。

 「...娘さんとは話せませんでしたか?」

 「いや、話せはした。だが、声を出すのが辛そうで、早めに切り上げてきた。」

 「...今日は休んだ方が...。」

 話している際の男性の様子を見て秘書が休むことを勧めると、男性は秘書の目を見て答える。

 「それはできない。娘の病気がひどくなり始め、会社の経営が難しくなり始めた頃に、支えてくれて、ここまで大きくできたのは今の社員や君ら事務員たちのおかげだ。君らが頑張っているなか、きついからと、おずおず休むわけにもいかない。」

 その後、男性は少し考えるようにしたのちに言う。

 「それに、専門医がネガティブなことを言い始めたのなら、財閥のトップと言えど、頼るのは止めとこうと思っていたが、頼んでみよう。」

 「誰にです?」

 「誰って? シャインティアウーブの若き市長...今は大統領のようなものか。ルーク・ギルデアにだよ。そして...一応保険として、もう1つ。」

 男性はそう言って、社長室に行き、2通の手紙を書く。

 「(1通はルーク・ギルデア宛、もう1通は...。)」

 男性は少し思い出しながら、とある人物に電話を掛ける。

 「もしもし。」

 「もしもし?」

 電話に出た相手は、クルードフォーミアの船長、アルベルト・マキュレルである。

 「私だ。富士浪 誠二せいじだ。」

 「あぁ誠二さん。お久しぶりです。」

 アルベルトに、男性は軽く名乗ったのちに訊く。

 「3週間前のクルードフォーミア襲撃事件についてだが...。テレビのインタビューで言っていないことがあるだろう? それを教えてくれないか?」

 「それは...。」

 男性の質問にアルベルトは言い淀むと、男性は少し焦るようにして言う。

 「別に事件の詳細な真実を知りたいと言う訳じゃない。ただ、君を守ってくれた人物について知りたいんだ。名前だけでもいい。その者の名前に、漆暗 青葉かバンバ・キルラエルかの名前はいなかったか?」

 「....? 1人は知りませんが、もう1人は知っています。」

 「どっちだ?」

 「バンバ・キルラエルの方です。」

 「いまどこにいる?」

 男性はアルベルトの答えに畳み掛けるように訊いていく。

 「昨日までなら、恐らくスターリースカイの跡地にいると思います。しかし、車を渡したので、もう近くにいないかもしれません。」

 「...くっ協力は諦めた方が先決か...。」

 最終的な答えに男性はもう1通の手紙を捨てようとすると、アルベルトがこう言った。

 「ですが、彼は何でも屋というものを営んでいるようで、もしかしたらスターリースカイから近いところにシャインティアウーブがあるので、近くで営業している可能性はあります。」

 「.........。一か八かだな。ありがとうアルベルト。そして、疑ってしまうような質問の仕方をしてすまない。」

 「いえいえ、役に立てたのなら。ですが...」

 「ん?」

 「あの方々は私の恩人です。もし何かあった場合...。」

 アルベルトの釘を刺すような言い方に、男は一瞬顔をしかめるが、冷静に返答する。

 「...大丈夫だ。わざわざ知り合いを危険な目に遭わせる気はない。」

 「...そうですか...。」

 男性は電話を切って、捨てようとしていたもう1通の手紙に「宛先:何でも屋」、封筒に「魔工車で営業をしている」と書いて、ルーク・ギルデア宛の手紙と一緒に社内ポストにいれる。

 「今日中に頼む。明日には、3人で話したい。」

 男性が社内ポストにそう言うと、ポストは青白い光を放った後に機械音声で喋る。

 「ルーク・ギルデア様に送信完了。何でも屋様は配達員が配達するので少々お待ちください。」

 「よし。解決するかはわからんが、やってみる価値はあるはずだ。」

 男性はそう言って、社長室で仕事を始める。

同時刻 シャインティアウーブ役所 執務室

 ミラージュタワーから帰ってくると、2人の男女は役所内で別れて、男性は執務室に入っていく。すると、ポストが青白く点滅しているのが見えた。

 「広げてくれ。」

 男性がそう言うと、執務室全体が暗くなり、手紙の内容が青白い光でテーブルの前に浮かび上がる。それを男性は椅子に座って確認する。

 「あ?」

 内容を確認したのちに男性は写し出された画面をスワイプして消したのちに執務室の電気を消して、金属のバッグを片手に持って、執務室から出る。それを見た女性が男性に近づいていって話しかける。

 「どこ行くの?」

 「急遽入った仕事。何かあったときはお前にも連絡するから、そん時はよろしくな。」

 「戦う可能性があるの?」

 「いやわかんないけど。何か予感がすんのよ。」

 「そう。じゃあ一応気を付けて。」

 「へいへ~い。」

 女性の言葉に男性は軽口で返して、役所を後にする。

10分後 シャインティアウーブ付近

 俺たちはレグスを止めて、看板のようなものを写し出して、そこに「何でも屋」と書く。すると、遠くから配達員の服装をした男性が走ってきて、俺たちに話しかける。

 「何でも屋の人たちですね?」

 「はい。」

 「手紙があります。」

 「手紙?」

 俺がそう言いながら眉間にシワを寄せると、配達員は俺に持っていた手紙を渡して、

 「それじゃ、ありがとうございました。」

 と一礼したのちに、シャインティアウーブに走り去っていった。俺はその様子を見届けたのちに、封筒から手紙をとりだし、内容を読んだ。

 「...富士浪 誠二より...。」

 「富士浪?」

 俺の声にバンバが反応して広げた手紙を覗き込む。

 「富士浪ってことは...。」

 「花先生の夫だな。」

 「そうだな。」

 「新たな依頼かもな。俺が行く。」

 俺がそう言うと、バンバはすかさず訊いてくる。

 「俺じゃなくていいのか?」

 「いや、俺であるべきだ。」

 俺がそう返すと、バンバは少し考えたのちに、頷く。

 「じゃあ、お前が行っている間、薫と光琳の修行をしておく。何かあったら、この鷹に手紙を持たせて読んでくれ。モールスでもいい。」

 「わかった。」

 バンバがそう言うと、鷹は俺の肩に乗っかって、高らかに鳴いた。
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