Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第二章 シャインティアウーブ編

邪概心苦

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10分後 研究所内部 白い紳士服の男vs暴走している富士浪清雅

 冷気によって、周りが凍りついている中、彼女の攻撃はさらに激化していく。

 「氷の槍だけでなく、剣や鎚、斧を造形し射出するようになってきた。その中で龍だけじゃなく、牢獄や荊で捕らえて、確実に殺しに来てるね。(能力が暴発じゃなく、確実に使いこなせるようになってきている。でも、まだ造形だけ、冷気自体は操れてない。) でも、槍や剣、斧や鎚ほどのものを造形するなら、自分で使った方が良い。射出するなら、少し頑丈な氷柱で充分。」

 僕は目蓋を閉じ、腕をゆっくりと上げながら、大量の氷柱を回りに生成していき、ゆっくりと目蓋を開け、攻撃をしている彼女を見据え、上げている手を止め、指を鳴らす。

 「氷柱流群アイシクルシャワー。」

 すると、生成された氷柱は彼女の放つ剣や斧、鎚や槍を相殺していく。その中で、清雅さんは槍、剣、斧、鎚を造形し続けるが、僕の粗雑な氷柱を造形する方が速い。

 「っ!!」

 それにすぐさま気づき、彼女は僕の真上に鳥籠とりかごを造形し、足元からいばらを造形する。

 「...。」

 そして、すぐに荊を僕に絡ませて動きを止め、鳥籠を落として身動きの自由を奪う。

 「ふぅうう!!」

 そして、相殺されて飛び散った氷の破片を全て束ねて、さらに巨大な龍を造形し、僕に向かって放つ。

 「氷竜アイスドラゴン...。」

 即座に僕は生成していた氷柱を束ね、氷の翼竜を作り出す。すると、怯むように翼を持たない龍は後退して彼女を取り囲むように漂う。同時に、翼竜は咆哮で僕の自由を奪っていた荊と鳥籠を壊してくれる。

 「...!!」

 「...行ってきて。」

 そして、彼女は腕を上げて、僕に向かって手を広げる。すると、龍は勢い良く僕の方に突っ込んでくる。同時に、僕は彼女から目を離さずに、翼竜の鼻を撫でて首もとを2回ほど軽く叩いて、アイコンタクトをする。そうすると、翼竜はわずかに頷いて、龍に向かって突っ込んでいく。同時に放たれた2頭の龍はぶつかり合い、僅かに怯んだ龍の胴体を噛み、翼竜は天井を突き抜けて空に出る。そうすると、龍は自分を噛んでいる翼竜を振りほどいて距離を取る。

 「......!!!」

 自身の造形した氷の龍が足止めされ、打つ手を失ったのか、頭を抱えたような反応を見せる。そうしていると、何かに気づいたのか、右手を腰に当て、体勢を低くしながら、左手を右手の方に近づけて、何かを掴むような状態になる。

 「氷華ひょうか...。」

 彼女がそう言うと、左手から柄が、腰に当てていた右手から鞘が造形され、左手の柄と組み合わされ、1本の刀になる。そして、居合い抜きの構えを取る。

 「白天流 第一秘剣 晶閃。」

 「...。」

 そして、驚くべき速さで僕との距離を詰め、刀を一気に引き抜く...瞬間に刀の柄を足で押さえつけて止める。

 「...!!」

 その時の表情はわかりやすく驚いているようだった。

 「あなたは、今、自分の意思で動いていますか?」

 僕は語りかけるようにそう訊く。すると、彼女は僕の問いかけを振り払うように頭を横に振って、睨み付ける。すると、翼竜が足止めしていた龍が降りてきて、僕と彼女の間に割って入るように乱入する。彼女はすぐに龍に乗って、空に飛び立つ。僕は足元に氷を造形し、空に向かって伸ばし続け、頭を下げている翼竜の上に飛び乗って、伸ばした氷の地面を翼竜の鎧に造形し直して着させる。龍の上に乗った彼女と翼竜に乗った僕、互いが相対するような位置付けとなり、彼女はまだ戦闘を続行する意思を見せる。すると、翼竜が僕の方を「どうする?」といっているように見る。

 「もちろん。助ける一択だよ。」

 僕がそう言うと、先程戦っていた場所に近い方向から水色の光が現れ、国中を覆い尽くした。回りを確認してみると、僕の翼竜が開けた天井と屋根の穴が元に戻っていき塞がっていく。

 「これは...?」

 僕が不思議そうに言っていると、翼竜が鳴いて、彼女と龍が向かってきていることを報告してくれる。

 「ごめん。今は気にしてる場合じゃないね。」

 僕は翼竜に謝ってから、向かってくる彼女と龍に向かって翼竜を飛ばせる。

 「グガアアアア!!!」

 「フュォォオオオオ!!」

 翼竜と彼女の龍が同時に雄叫びを上げて互いに噛みつこうとする瞬間に、僕は龍の上に飛び乗って、刀を構えている彼女に向かって走っていく。そうすると、彼女が立っている場所の氷が彼女を守るように壁を張り、その壁から大量の氷柱がこちらに放たれてくる。

 「氷剣アイスソード。」

 僕は片手で氷の剣を造形し、こちらに向かってくる氷柱を切り落としながら進んでいく。そうしていると、彼女は自分の足元を氷で固定して、龍の体を捻らせて、翼竜に巻き付かせる。その勢いで僕は龍から離されてしまった。

 「氷鎖アイスチェーン。」

 僕はすぐに氷の剣を鎖に造形し変え、翼竜の尻尾に引っ掻けて、振り子のように揺らして、その勢いを使ってもう一度龍の上に乗り、同じように足元を氷で固定する。それを確認した翼竜は、自身に巻き付いた龍の首元を噛んで、振りほどいた後に、距離をとって氷のブレスを放つ。龍はそれを身をひるがえすように避けて、翼竜を睨み付ける。

 「このままじゃらちが明かない。(どうすれば彼女は正気に戻る?)」

 僕はそう考えながら、鎖を剣に造形し変え、もう一方の手にも氷の剣を造形する。

 「そのまま殻に閉じ籠っている気ですか?」

 僕はそう声をかけてみる。僅かに彼女の表情が動いた気がする。

 「でも、声だけじゃ届かない。」

 「自分のやったことに余程目を背けたいんだろうな。」

 「え?」

 僕は突如増えた言葉に驚いて、後ろを見る。すると、金髪の女性が鎖のついたナイフを龍の体に刺して、その手で赤黒い槍を持って立っていた。

 「いつの間に。」

 「ついさっきだ。というか、もう一人のスペアネルはお前か。」

 「はい。すぐに出ていくつもりだったんですがね。思いの外時間がかかりまして。その槍は何です? まさかとは思いますが...。」

 僕が少し警戒した声で言うと、女性は「待て」という合図をした後に話す。

 「これは、彼女を正気に戻すためのものだ。だが、ただこれを使って正気に直しても意味がない。まずは剣を使って、彼女の精神に行く。」

 「心から変えると?」

 「事実を受け止めさせる。」

 その言葉に、僕は手遅れだったのかと思い、1つ訊いてみた。

 「彼女はもうなにかやってしまったんですか?」

 「親殺しをさせられた。」

 「....親...殺し...。それは...惨いですね。」

 僕が少し俯いてそういうと、女性は僕を横目で見て、槍をしまいながら言った。

 「だから、事実を受け止めさせて、前に進ませる。ここまでやってくれたんだ。あと少しくらい付き合ってくれ。」

 「...もちろん...。」

 女性の言葉に僕は頷いて、彼女の方を見る。彼女は敵が増えたことを確認したのか、攻撃を再開しようとしている。

 「お前、名前は...?」

 そう訊かれて、少し渋ったが僕は素直に名乗った。

 「ブリザと申します。」

 「そうか。俺はクリード。コーネリアス・クリード。よろしく頼む。」

 「はい。」

 その言葉にそう返事をして2人で彼女の元に走り出す。

 「この剣の力を使えば、俺だけだが精神に行くことができる。その間の戦いは...。」

 「僕がやるんですね。わかりました。」

 「話が早くて助かる。」

 そうやって会話した後に、僕はコーネリアスさんの前に出て、放たれてくる氷柱を全て切り落として、彼女を覆う壁まで近づくと、2本の氷の剣を合わせる。

 「氷鎚アイスハンマー。」

 大型の氷の鎚に造形し直し、壁を勢い良く殴り壊す。彼女は刀を持って応戦しようとするところを氷の鎚を目の前で爆散させて、一瞬だけ視界を眩ませる。その隙に、コーネリアスさんが剣を振り下ろす。

 「この一端に害をこうむったものよ、あなたが辿るべき結末はこれではない。望まれるは、輪廻の虚空の場で己が背けている事実に目を向けよ。無辿輪廻むてんりんね。」

 その詠唱と共に振り下ろされた緑の刀身の剣と共に、コーネリアスさんは彼女の目の前で消えた。

 「恐らく成功した。あとは、耐えるだけの作業だ。」

 僕は翼竜にアイコンタクトをして、剣を構える。

???

 前とは違って、明確な意識をもってここに来た。精神とは言ったものの、いざまた来てみると、少し違う印象を受ける。

 「いや、考えてる場合じゃないな。ここは時間の流れが違う可能性がある。早く見つけなければ...。」

 俺はそう言って、暗闇の中をとりあえず走ってみた。すると、突然あたりの空間に色がつき、見覚えのある男女が赤ん坊を抱いている姿が流れた。恐らく、若かりし富士浪誠二さんと富士浪花先生、そして、生まれたばかりの富士浪清雅さんだ。俺はそれを確認して、辺りを見回してみると、その光景をただじっと見つめている富士浪清雅さんがいた。俺はゆっくりと近付いて、一緒にその光景を見ることにした。

富士浪一家の回想

 「お前似だな。」

 「それほどでもないと思いますが。」

 赤ん坊の私を優しく抱いている母さんに父さんが優しく話しかけている。

 「母さんの笑顔、久しぶりに見たな。あんな優しそうな父さん初めて見たな。あんな風に、笑うんだ。」

 そんな感想を抱いていると、場面は変わって、父さんと母さんが私の性別を聞いて名前を考えている。

 「真白とかにします? それとも、女の子なのにかっこよさげに白夜とか。」

 母さんが楽しそうに父さんに提案している。

 「白から一旦離れたらどうだ? そうだな...がさつに育たないように、上品に育てるつもりだからな。名前からそれにしよう。...清雅...。清雅どうだ?」

 「富士浪 清雅...。おぉ、ビビっときましたよ。それにしましょ。」

 「よし、ではそれで出してくる。」

 私の名前が決まると、母さんは満面の笑みを浮かべて同意する。それに、父さんは隠しているが嬉しそうな表情で病室を後にした。

 「...名前、母さんがつけたんじゃないんだ。父さんがつけてたんだ...。」

 私がそう言うと、場面はまた変わって、私の入学式が終わって写真を撮っているところになった。

 「どうです!? 清雅ちゃん。私の仕立てた服は? 可愛らしくて尚且つ動きやすいでしょう? ほんとはもっと可愛かったんですよ。」

 「そうなの?」

 「はい。それをお父さんに邪魔されちゃいましてねぇ~。」

 「当たり前だ。あそこまで行きすぎたら逆に恥ずかしいだろう。第一、入学式なんだからもうちょっと落ち着いてて良いんだよ。」

 「ぶー。」

 「その反応、そろそろきつくなる年だぞ。」

 「ぐえっ。」

 「ふふっ。」

 私が2人のやり取りに思わず笑ってしまう。

 「それを見た母さんが一緒になって笑ってくれて、父さんは笑ってなか...。」

 「ふっ..。」

 私がそう言ってると、父さんが微笑んでいることに気づいた。

 「笑ってる。」

 私がそれに気づくと、更に場面は変わり、4年生になった。この頃から、母さんの帰りが遅くなって、父さんと2人きりになるのが多くなった。

 「お父さん。授業参観の....来てくれないかな....。」

 「ん? あぁわかった。」

 入学してからの4年間、父さんは母さんに比べて厳しくて、私は母さんっ子になっていって、父さんとのコミュニケーションをとらないようになっていった。そのせいで、父さんとの距離感がわからなくなって、家族なのに、怖くなった。

 「...ただいまぁ~。ごめんね遅くなって。」

 「おかえりなさい。お母さん。」

 「あぁ清雅ちゃん。」

 私は帰ってきた母さんに真っ先に走っていって出迎えた。その後、しばらくは一緒の空間に父さんがいるのに、まるでいないもののように母さんと喋り続けた。そうして、時間が来ると母さんに寝るように言われて、寝室に行って眠りに就いた。でも、場面は変わらず、その後の母さんと父さんのやり取りを見せてくれる。

 「誠二? 毎度毎度帰ってきて、あんな重苦しい空気が漂ってたら、これから不安なんですけど?」

 「すまん。距離感がわからなくてな。厳しくしすぎたかと思い、優しくしようとして見るんだが、うまくいかなくてな。」

 「誠二、女心わかりませんもんねぇ~。」

 「面目ない。」

 「今度私休みとりますから、その時に一緒に旅行にでも行きましょう。ちょうど夏休みなる頃でしょうしね。」

 「それは助かる。」

 2人のやり取りの中で夏休みの旅行が決まった。

 「私のことについて、悩んでくれてたんだ。」

 私がそう言うと、今度は場面が変わり旅行の日になった。

 「久しぶりの家族旅行! 目一杯楽しもう!!!」

 「おぉ!!」

 「お、おおー。」

 母さんの言葉に私は元気良く腕を振り上げて、父さんはそのノリにとりあえず合わせるように腕を上げる。そうやって、旅行が始まった。海で泳いだり、ざるそばを食べたり、花火をしたり、ホテルで3人トランプゲームをした。

 「勝ちました。」

 「また負けたぁ~。」

 「清雅、強いな。」

 私がトランプゲームで母さんと父さんに勝ったところだ。

 「トランプゲームはほとんど私が勝ったんだっけ。懐かしいな。これを期に少し父さんへの怖さが無くなったんだ。」

 私がそう言うと、場面が変わって、珍しく私がホテルの部屋を抜け出して、自販機でお茶を買って座って飲んでいるところになった。

 「こっそり抜け出すとは...悪いな清雅。」

 「あ、お父さん。」

 そこをお父さんに見つかり、焦ったけど父さんの柔らかな表情を見て、少し安心した。

 「学校は楽しいか?」

 「...。はい、楽しいです。友達もできましたし、授業もわかりやすいです。」

 「そうか。それは良かった。」

 この時、私は父さんに対する怖さが無くなった。むしろ、私との距離感を掴みかねているだけで、頑張って父親になろうと頑張っていることがわかったから。

 「なのに...私は...。」

 私が現在のことを思い出して悔しそうな顔をしていると、場面は変わり、中学の入学式を終えて、家に帰ったところになった。

 「しばらく仕事が忙しくなりそうだ。」

 「え? 私も...。」

 「...参ったな。」

 2人とも仕事が忙しくなるということで、頭を抱えている。

 「私が作りおきをしておきます。」

 「待て、それでは君の負担が...。」

 「大丈夫です。それに誠二、料理できないじゃん。私に任せなさい。」

 「...すまない。」

 「いいですよこれくらい。」

 母さんだけに負担をかけてしまうことに父さんが申し訳なさそうに謝ってる。

 「本当に...2人とも忙しい時期が長かったんだよね。」

 私がそう言うと、場面が変わり、父さんが仕事をしているところになった。

 「これが終われば、やっと暇ができる。あいつに仕事に集中させなければ、。毎日毎日、晩御飯分まで作りおきしていたら時間が足りない。」

 父さんがそう言っていると、部下らしき人が電話を持ってやってきた。

 「社長。」

 「すまないが今は手が離せない。後にしてくれないか。」

 「社長...。...社長!!」

 「...どうした? 何かあったのか?」

 「花さんが...。」

 「花がどうした...。」

 「...。」

 部下の人は言いづらそうにしている。

 「花がどうした!!」

 「...亡くなりました...。」

 「...な...に...?」

 父さんは目を見開いたまま、膝から崩れ落ちて、辛そうな表情を圧し殺して、もとの表情に戻して、部下の人たちに指示を出した後に、荷物をまとめて退社した。

 「...。」

 私がなにも言わないでいると、場面は勝手に変わり、お通夜、葬儀、告別式の順で場面が流れた。私は直視できず、視線を下に向けた。ただこの時覚えている。

 「私は、母さんの死を受け入れられなくて、泣けなかったんだ。」

 そう言うと、場面は変わる。母さんが死んでから、私は母さんの代わりに父さんを支えようと思って行動してた頃だ。

 「頑張って料理の勉強をして、成績もよくとって、父さんが不安にならないように、頑張ってたんだ。」

 私がそう言うと、場面は変わり、私が突然倒れて病院のベッドで目を覚ましたところだ。

 「...父さん...ごめん...。」

 私が頑張って声を出して、迷惑をかけたことに謝ると、父さんは私の手を握って、微笑みかけてくれた。

 「大丈夫だ。世話をかけるのが子だからな。そして、親は世話を焼くものだ。私にかける世話など気にすることはない。」

 「...。」

 その言葉を聞いて、私は目を閉じて眠ってしまう。

 「清雅...。大丈夫。私が、絶対に助ける。」

 眠ってしまった私に父さんはそうやって何度も起こさないように話しかける。そうして、更に場面は変わり、医者に病名を告げられ、母さんの墓まで来た。

 「花。清雅な、細胞腐蝕症だそうだ。ほぼほぼ不治の病だ。だが、死なせんよ。絶対に治してみせる。まだ、君のところには行かせんよ。........。約束だ。」

 父さんはそう覚悟を決めたような顔で母さんの墓に女郎花オミナエシの花を供えて、墓所を後にする。そして、場面はまた変わる。父さんが細胞腐蝕症の資料を仕事の合間や帰ってから寝る間も惜しんで読み漁っている。

 「くっ、1人では限界があるな。」

 父さんはそう言って、読み終えた細胞腐蝕症の資料を戻し、知り合いに協力を頼んでみる。

 「どうかな?」

 「難しい問題ですね。時間が足りないと言いますか。でも、他の情報も募ってみます。でも...。」

 「あぁ、もちろんは期待はしないでおく。でも、ありがとう。リーフ君。情報通の君の協力も得られるのは頼もしい。」

 「ルークには言わないんですか?」

 「あいつは...忙しいだろ? それに、どのみち今頼むのはな...。」

 「そうっすね。すいません。馬鹿なこと訊いて。」

 「いや。」

 そうやって、時間が経っていく。それにつれ、父さんの表情が暗くなっていく。でも、毎年、毎年、誕生日を祝ってくれる。

 「16歳になったなおめでとう。」

 「17歳になったな。ほら、耳飾りのプレゼントだ。」

 「18歳、もう高校卒業の年だな。お前が希望していた高校の授業内容をまとめたノートと教材を買った。治ったら一緒に勉強しよう。」

 「19歳か。すまん、なんとか成人式には間に合わせる。」

 「20歳...。すまん、間に合わなかったな。花の案を積めた服を仕立ててもらったんだが、無駄になってしまったな。だが、誕生日おめでとう。」

 「21歳、誕生日おめでとう。治ったら、私の刀の流派を教えてやろう。お前用の刀も打って貰った。きっと使いこなせるようになる。」

 「22歳の誕生日おめでとう。今回は初めてアイスケーキなるものを買ってみたぞ。買えるところを写していあるから、治ったら今度は一緒に買いに行こう。」

 「23歳、誕生日おめでとう。水色の髪飾りを買ってきた。すまないなこれがプレゼントだ。」

 「誕生日おめでとう。24歳になったな。すまんな清雅...父さん...折れそうだ。」

 だんだん暗くなってやつれていく父さん。それを見届けると、場面は変わる。

 「...!?」

 「...ぐ...ぐふぉぁ...。ぅぅ...ぁぁ...。すまない...駄目な...父親で......すま..ない..。父親らしい....ことを....して..やれなくて....すまない....。愛情を...注ぎきれ....なくて...すまない...。」

 私が作った氷の槍で父さんを刺し殺した。

 「違う...違う...私じゃ...。私じゃ...!!」

 私がそう言うと、隣から頬を叩かれた。

???

 「刺したのはあなただ。それで殺したのもあなただ。」

 俺は厳しく、絶叫しそうになる富士浪清雅さんを叩いた。

 「...誰?」

 「あなたの両親の知り合いです。」

 「知り合い...?」

 「はい、そうです。...話を戻します。あなたが、富士浪誠二さんを殺した。」

 「...違う、違う...!! そんなわけない!!」

 「悲しいことです。辛いことです。でも、事実です。変えられない事実です。目を背けても、なすり付けても、逃げ続けても変えようのない事実です。」

 必死に事実を理解していながらも目を背けようとする富士浪清雅さんに俺は現実を突きつける。

 「嘘だ!! 私が父さんを殺したって言うの!? あれだけ迷惑かけておいて!! 私が殺したって言うの!?」

 「その通りです。受け入れたくないでしょうが、受け入れるしかないんです。」

 「嫌です...受け入れたくないです。認めたくないです。あんなもの見せられたら、もっと受け入れたくないです....!!」

 富士浪清雅さんは俺に泣きながら訴えかけるように言う。

 「ではどうするんですか? このまま、他の人にその迷惑をかけ続けるんですか?」

 「へ?」

 「すでにわかってると思いますが、ここは現実ではありません。現実のあなたは、暴れて同じ国に住む人を殺害しようとしています。」

 「え...!? そんな...どうすれば...。」

 「それは、あなたが父親を手にかけてしまったことを受け入れて、前に進むしかありません。」

 「...。」

 「手にかけてしまったことは事実です。しかしあなたは、別に自分の意思で殺したんじゃない。操られて殺させられたんだ。仕方のないことです。あなたに抗う術はなかった。10年間病にふせっていた人間に何ができると言うのです。」

 俺は状況を述べながら説得する。

 「でも、操られていたとしても、私の...この手で...。」

 「あなたの父親は...誠二さんは...あなたのことを愛していました。あの映像でもわかる通り...。その為に、10年間、折れずあなたを助けようとしていた人が、今のあなたを見たらどう思うでしょう....。」

 「....。」

 「悲しい....のではないのでしょうか? 自分の油断のせいで、娘が自分を手にかけてしまい、それに囚われてしまっていることに、凄く悲しいと思います。もちろん、死者の気持ちなど、生者の勝手な想像の域を出ませんが。あなたなら、家族であり、一緒にいたあなたなら、わかるのでは? 自分の父親がどんな人間だったか。」

 ーーー世話をかけるのが子だからな。そして、親は世話を焼くものだ。私にかける世話など気にすることはない。

 「(脳裏にその言葉がよぎった。父さんの言葉だ。厳しいなぁ。私に父さんを手にかけたことを気にするなって言うこと? 無理だよ。無理だよ...!!)」

 俺の言葉に清雅さんは俯いた状態で拳を握る。すると、また映像が流れ出す。花先生の墓の前にいる富士浪誠二さんだ。

 「細胞腐蝕症だそうだ。ほぼほぼ不治の病だ。だが、死なせんよ。絶対に治してみせる。まだ、君のところには行かせんよ。」

 同じ台詞だ。だが、少し違った。

 「この命に代えてもな。約束だ。」

 この命に代えてもな。この言葉を言った瞬間だけ、富士浪清雅さんをはっきりと見ていた。

 「...。どうすればいいですか?」

 富士浪清雅さんが受け入れきれてはいないが、とりあえず前に進もうとしている意思の感じる声音で俺にそう訊いてきた。俺はこの後やることを説明する。

 「この後、この空間を消して、私の武器であなたを強制的に正気に戻します。」

 「...それだけですか?」

 「はい。それだけです。」

 「わかりました。」

 「この輪廻の虚空の場で己が背けている事実と向き合ったものよ。そなたを現世に戻す。無辿輪廻むてんりんね。」

 俺はそう言って緑に光る剣で富士浪清雅さんの首を打つ。その瞬間、真っ暗闇の空間を真っ白な光が包む。

氷の龍の上

 「ぁ...。」

 彼女の攻撃の手が止まる。と同時に、コーネリアスさんが剣を持って戻ってくる。

 「うまく行ったようですね。」

 「多分な。これから仕上げだ。」

 僕の言葉にそう返しながら、コーネリアスさんは赤黒い槍を手にとって、彼女に近づいていく。

 「邪神の槍。真名を解放。よこしまなるものに侵され、苦しみを味わった心よ、今、汚された概念を清らかなるものにかえよ。邪概心苦じゃがいしんく。」

 コーネリアスさんはそう言って、赤黒い光が更に強まり、彼女を刺す。すると、彼女に傷がつくことはなく、氷の能力が全て解除された。そのせいで力の抜けた彼女と共にコーネリアスさんが落ちる。僕は翼竜と共に2人を助け出して、降り立つ。

 「すまんな。」

 「いえ、これくらいは。」

 降りたってすぐ僕とコーネリアスさんがそんなやり取りをすると、思いの外早く彼女が起きた。

 「...。」

 彼女が僕とコーネリアスさんを見ると、理解したのか深々と頭を下げた。

 「すいません。ありがとうございます。助けてもらって...。」

 「いえ、元に戻って良かった。」

 「こうやって戻れたのは、あなたの意思のお陰でもあります。気にしないでください。」

 彼女の言葉にコーネリアスさんはそう返して、この場を後にしようとする。

 「待ってください。」

 「ん?」

 「私も行きます。このまま迷惑をかけてばかりなんて嫌です。幸い、先程からの動きのお陰で、体の鈍りもとれましたし、能力の使い方もわかります。私に、手伝わせてください。」

 「...。私の仲間に女性2人います。その2人を守るだけなら、お願いします。」

 「はい。」

 彼女の提案を少し渋ったが、それでも早くコーネリアスさんは肯定した。そうして、彼女は行く前に僕にもう一度お辞儀をしてコーネリアスさんと共に、この場を去った。

 「流石に...これ以上深入りはできないかな...。...やばそうだったら...助けても...いいよね...。」

 僕はそう言って、この場から立ち去る。

同時刻 地下都市 猟兵分隊 光琳と薫

 影のような黒い化け物が一つとなって巨大になったことで耐久力と機動力が上がったのか、さっきのように軍人たちが戦えなくなっている。

 「くそっ、ショットガンじゃもうダメージ通らねえ!!」

 「風穴開けてもすぐに再生されるし、何より...」

 「巨体に似合わねえ機動力で動くから、そもそも当たらねえ!」

 東西、対向の南側に散開して指示を出していた人がそう言いながら、化け物の攻撃を何とか搔い潜って攻撃を続けている。

 「弱音を吐くな貴様ら!! 俺がいなくなったら、お前らがこの隊を引っ張るんだぞ!! 他のお前たちも辛そうな表情を出すな。たったそれだけで、この隊の士気が下がるからな!! 士気が下がりきった隊の末路は死だけだ!! 死にたくなかったら、士気を下げるな!!」

 その中で、弱音を吐いてしまう部下を厳しく叱咤する。

 「だああああああ!!!」

 そうしている中、光琳さんは壁を連続で蹴って、高く飛び上がると、化け物を頭上から槍で落下の勢いのまま突き刺す。しかし、化け物の影がすぐに光琳を捕まえようと取り囲む。

 「!!」

 私はその光景と狙撃班の様子をうかがっていると、班長が中心部を狙撃するという合図が見えた。

 「光琳さん! 伏せ!!」

 その瞬間に、分隊の人たちは狙撃班の邪魔にならないように横に避けて、光琳さんは言う通りにしゃがむ。すると、光琳を取り囲もうとしていた影に風穴があき、そこから脱出して軍曹さんの近くに行く。

 「あいつの中心に核は無さそうです!」

 「そのようだな。よくやったぞ嬢ちゃん。君の友達も合図を見逃さずによくやっている。君らの上司はさぞ優秀なのだろうな。」

 「軍曹! どうしますか? このままじゃショットガンの弾が切れるっす!!」

 近くの部下がそう軍曹さんに訊く。軍曹さんは息切れしながらも化け物をジッと見据える。

 「火炎放射器の使用を許可する。徹底的に奴の核を探せ。見つけた際に限り、ガトリングの使用を許可する。」

 「了解!!」

 そう指示された部下の人は他の人たちにその指示を伝える。それと同時に軍曹さんは片腕で狙撃班の人たちにアンチマテリアルライフルの使用許可の合図を出した。

 「君はまだ戦えるか?」

 「もちろんです!」

 「よし。なら俺と共にあいつを引き付ける囮になってくれないか?」

 「え?」

 「他の奴らが多少でも動きやすくするためだ。大丈夫だ。何があっても君らは死なさんさ。」

 軍曹さんの指示に戸惑う光琳さんに軍曹さんは何かを覚悟した顔で言う。

 「...はい!」

 「相変わらずいい返事だ。」

 そうして、軍曹さんと光琳さんは2人で化け物に近寄って、それぞれショットガンと弓で目を撃ち抜いて、必要以上に挑発する。その隙に、軍人たちが火炎放射器で化け物を攻撃しながら、狙撃班の人たちは化け物の上部の部分に限って銃を撃っている。

 「食料をお願いします!!」

 そんな中、分隊の運搬係の人が私に食料を求めてやってきた。私はすぐに食料をかごに入れて渡して、狙撃班と分隊の戦いの様子を引き続き見る。その中、運搬係の人が必死に走って、戦っている軍人達に食料を渡している。

 「軍曹!!」

 「俺の分も彼女にやれ、俺はいらん!!」

 「ですが...!!」

 「なぁに帰ってから食べるさ。」

 「了解です!」

 「(帰れたら...だがな。)」

 そうして、火炎放射器のガスが切れるまで戦っていると...

 「!!」

 部下の人がついに移動し続ける核を見つける。

 「軍曹!! 核です!! 体中を移動していますが!! ありました!!」

 「今はどこに移動している!!」

 「おそらく頭部!!」

 「班長!!!!!! 撃てぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 軍曹は合図ではなく、狙撃班の班長に直接叫ぶ。

 「!!」

 それに答えるように班長はライフルの引き金を引く。

 ガン!!

 銃弾は見事命中。しかし、

 「ひびが...入っただけだと?」

 核はひびが入っただけで壊れなかった。

 「刹鬼ぜっき!!」

 「!!」

 「あと一撃なら! 任せてください!! 貫穿槍がんせんそう!!!!!!!!!」

 光琳さんは深天極地の力を解放してそこから核に目がけて槍を突き出して突撃し、ひびの入った核は再生しきる直前で完全に砕けた。

 「...?」

 しかし、そのまま力が解けてしまった光琳さんはそのまま落下してしまう。

 「おい!! クッションになるぞ!!」

 軍曹の指示で軍人たちは光琳さんの落下位置を予測して受け止める態勢に入り、無事光琳さんは着地できた。

 「ありがとうございます。」

 「いや、こちらのセリフだな。あんな力隠し持ってなかったら今頃死んでた。だが、最初から出さなかった辺り、消耗が激しいのか?」

 「はい...かなり疲れてしまって戦いを続行できなくなる可能性があったので。」

 「まぁ結果として止めを刺してくれたのだから、大手柄だな。」

 「はい。」

 軍曹さんと光琳さんがそう話していると、他の軍人達も口々に

 「いやぁ応援が呼べないってかなりきついんだなって実感したぜ。」

 「俺らの今までって割とマシな方だったんだな。」

 と今日の戦いの辛さを吐露していた。

 「死者どころか重傷者すら俺以外いないんだ。今日の戦いは運がよかったな。」

 「そうっすね。」

 軍曹さんの言葉に部下の人は疲れ切った顔で同意する。

同時刻 移動中のルーク

 「!!」

 「んあ? どうした?」

 突然。担いでいる女が驚いた顔をする。俺はそれに対して静かに訊くと、女は首を振って

 「何でもない。」

 と答えた。明らか何か隠してそうだったが、今は愛翔との合流を優先することにした。

 「(倒された。影の化け物が...! 誰に!!)」
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