Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第二章 シャインティアウーブ編

休息

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数日後

 戦いが終わった後の私たちはしっかりと現地のお医者先生に治療を受けて、その後クリードさん以外は亡くなった人の葬儀に参加した。正直、軍曹さんの奥さんやその部下たちの親御さんや息子さんの挨拶は辛かった。そうして通夜と葬儀を終えた後には必ず皆でクリードさんの病室に行っていた。傷は完治しているけど、未だに意識が戻らない。不安だ。

 「どうした?」

 師匠が私の様子を見て、心配そうに訊いてくれた。

 「いや、このまま目を覚まさなかったら。」

 「...。」

 不安そうな薫の隣で私は不安を吐露する。

 「...大丈夫だ。まだ死ねないんだから。目は覚ます。」

 「死ねない?」

 私が師匠の口からでた言葉に首を傾げると、師匠はそれ以上何も言わずに立ち上がる。

 「帰るぞ。もう夜遅い病み上がりなんだからさっさと寝るぞ。」

 師匠はそうして病室から出る。私もそれに続こうとすると、薫は動かない。

 「行こう?」

 「はい。」

 私の言葉に薫は力ない返事をして立ち上がり、そうしてレグスに戻って就寝した。

 「...。」

クリードの様子を見に行ったバンバ

 この国の医者がクリードを診ていてくれている。薫から預かったこの盾の効力は失っている。槍も同様にだ。短期間で力を使いすぎたせいか。まぁ、クルードフォーミアでの一件から3週間も寝たきりで、急に依頼が入り、そのまま巻き込まれた形で、力を使っただろうからな。

 「目、覚ましませんね。」

 「この国の為に戦ってくれた人よ。完全に亡くなったって判断されるまで諦めないよ!」

 不安そうに呟く看護婦に女医がハキハキとした声でそう言って病室から出てくる。薫と光琳が世話になった軍曹の嫁だ。

 「あ、また来てたんですね。必ず目を覚まさせます!」

 「もちろんです。ここで死なれたらまた手続きが面倒ですからね。」

 俺がそう言うと、女医は笑ってその場から去り、それを追うように看護婦が一礼して出て行った。俺はクリードが眠っているベッドの隣の椅子に腰かける。

 「終わったぞ。」

 俺がそう言いかけると、窓に鷹が来て、くちばしでノックする。俺は窓を全開にして病室の扉を閉め、鷹を肩に乗せて、再度椅子に腰かける。

 「後手に回ると流石の都市伝説の暗殺者さんと史上最恐の狩人でもきついか?」

 すると、全開にした窓から青葉が入ってきて現れる。

 「随分と久しぶりに感じるな青葉。」

 「そうだな。」

 「何しに来た。」

 「呼ばれそうな状況で呼ばれなくて暇なもんで。」

 「嘘つけ。お前への仕事など引く手数多だろ。」

 適当な返答をする青葉を見据える。

 「個人的に調べたんだが、バラガラってやつだが。よくわからん。過去の情報と今の状況がどうやっても結び合わない。」

 青葉はそう言って数枚の紙を俺に渡してくる。

 「ごく普通の会社員が突如失踪した後に、餓狼鬼虎の餓の節のリーダー格になっていた。組織に入った後のことは流石にわからなかったか。」

 「ああ。んじゃそんだけ。」

 「待て。」

 すぐに立ち去ろうとする青葉を引き留めて、薫と光琳のことを思い浮かべる。

 「んあ?」

 「せっかくだ。2人の顔でも見ていけ。」

 「どこだ?」

 「西門の出口付近だ。」

 「わかった。」

 俺は紙切れを渡す。すると青葉は少し考えた後に鷹と共に窓から出ていく。

 「起きてるだろ。」

 「ああ。だからもう帰っていいぞ。戻ってきたら応戦できないだろ。もう少し待ってから行く。だが、まだわからないあと3日ぐらい寝てろ。」

 「...そうする。」

 青葉との会話を盗み聞きしていたクリードに俺はそう言って、持ってきた本を開く。

その頃、車に到着した青葉

 車に着くや否や寝ている2人を起こそうとして鳴こうとする鷹を制止する。

 「せっかく眠ってるんだからわざわざ起こすなよ。」

 俺は紙切れを見て、ドアを開けて住居スペースに入り、眠っている2人の姿を見る。

 「眠ってんのに、不安や心配が顔に出てる。」

 俺はそう言いながら周りを見渡す。

 「生活に困ってる感じじゃない。」

 俺はそう呟いて寝ている2人また目を向ける。

 「...クリード...さん。」

 「...。」

 俺は心配そうな表情であいつの名前を呟く薫さんを見て何も言わずにその場から立ち去る。

更に3日後

 目を覚ますと、薫と光琳が俺の顔を覗き込んでいた。

 「「起きた...。」」

 2人してそう言うと、少し大きめの声でバンバを呼んだ。すると、出掛けるような格好をしたバンバが来た。

 「ん?」

 俺が首を傾げていると、薫が俺にこう訊いてくる。

 「動けます?」

 「? ああ。」

 「割りと?」

 「まぁ力使った際の疲労で倒れたようなものだからな。目覚めたから動けるぞ。」

 それを聞いた薫は光琳と目を合わせた後に、俺の財布を渡してきた。

 「今日は休みにして、思いっきり出掛けて遊びましょう!」

 「それで、もっとお互いのことを知ろう!」

 「...そんな勢いよく言うことか? それ...。」

 2人の提案を聞いた後に、バンバの格好に納得がいき、俺も武器はしまっておいて、いつもの格好に戻り、薫と光琳に言われるがままバンバと同じようなテンション感で外に出る。

ファッションブランド ファーシードコード

 薫と光琳の「まずは服を買いに行きましょう」という言葉に言われるがまま、ついていき、街の中でも特に目立つところに来た。でかい文字で、Far Seed Codeと書かれている。紳士服や婦人服が並んでいるのが見える。そこに、薫と光琳が入っていった。俺とバンバはさほど服に興味がないため、近くのベンチに座って待とうとすると、入っていった2人が戻ってきて、俺とバンバの手をとって、一緒に入らされた。

 「ぉお~。」

 店内を見て、静かに感動していると、目を細めている薫が話しかけてくる。

 「あの。」

 「ん?」

 「フードとってくれません?」

 俺はフードを更に深く被りながら、薫を見る。

 「ダメだな。こんなに人がいるなかでフードをとったら、人が蟻のように群がってくる。」

 「え~。服選びづらいじゃないですか。」

 「ん? お前のを選べばいいじゃないか。外で待ってるぞ。」

 「いいえ! クリードさんスタイルいいんですからおしゃれしてほしいんです。」

 「ああ...そうか...。」

 薫の熱量に俺は諦めて、ここで時間を潰すことにした。そして、バンバと光琳の方を見ると、案外バンバは乗り気で光琳の服や自分の服を選んだりしていた。

 「(興味あるのが普通か...。)」

 「クリードさん!」

 「ん?」

 名前を呼ばれて、薫の方を見ると、右手にブラウスとスカートのセットを、左手にジャケットとスキニーのセットを持っていた。

 「試着してください!」

 「...。」

 俺はコートのポケットを探って都合よくあったサングラスとマスクをつけて、試着室で着替える。そして、薫に見せると、

 「ん~? (いつもと雰囲気が違ってすごく...いい...。)」

 「ん?」

 薫は顎に手を当てて考える素振りを見せる。もう1つのセットの方に着替えても、

 「ん~? (これはこれでできる大人のお姉さん感があっていいなぁ...。)」

 「ん? (おんなじ反応だな。)」

 同じような反応をし、違う服のセットを選んできて、また俺に試着させてくる。そんな風に着せ替え人形のように着替えている内に、服を選び終わったバンバと光琳が来た。

 「流石似合うな。」

 「師匠も選んでやったらどうです?」

 「俺が選ぶと、どうしても今のこいつには違和感が出るが...。まぁ物は試しだやってみるか。」

 「そんな軽く試すな。」

 「よぉ~し私も頑張るぞぉ~。」

 「お前も選ぶのか。」

 そのお陰なのかなんなのか、バンバと光琳も服選びに参加し、半ばファッションショーと化してしまった。その影響で、回りのお客は集まってきて、同じような服の組み合わせを買っていくのが見えた。そうして二時間が経った。薫は俺の着た服の中で特に似合っていると感じた服を買って俺に渡した。店を出る際には、ブラウスとスカートのセットで帽子を深く被った状態でバッグの中にある程度の荷物をいれた。

 「うん、かわいいです。相変わらず顔が見えなくて残念ですけど。」

 「雰囲気がらっと変わりましたね! でも...何か...。」

 「高嶺の花という印象は拭えんな。」

 「高嶺の花? そうでもないだろ。」

 「「「(自覚が無さすぎる。)」」」

 そんなやり取りをして俺たちは次の目的地に向かう。

レストラン ディシェトパージェ

 薫と光琳に案内されて、洋風でも和風でも中華風でもない近未来的なデザインをしたレストランに着いた。看板にはディシェトパージェと書かれている。

 「さぁさぁ予約をとっておいたので、席に行きましょう。」

 「用意周到だな。」

 薫の準備の早さに感心しながら4人でレストランに入っていき、店員に案内された席につく。薫と光琳が先に座り、その2人に向かい合う形で俺とバンバが座った。俺は横においてあるメニュー表を取って配る。

 「光琳...これなんかどうだ? 天ぷら食べたことなかったろ?」

 「はい。どんなのなんですか?」

 「それは注文してからのお楽しみだな。無理だったときのために、俺はステーキとライスのセットにしておこうか。」

 「私は...ミートソーススパゲッティにします。」

 「色々あるんだな...。...海鮮系も結構あるな...。俺は海鮮丼にする。」

 「じゃあ注文は決まったな。呼ぶか。」

 バンバがテーブルの機能を使って店員を呼ぶと、店員が元気よく注文を聞いてきた。俺が薫や光琳、バンバ、俺の順で注文する料理名を述べた。すると、店員は注文の確認をした後に、料理人のいるところに行った。

 「待ち時間暇ですね。」

 「...じゃあ...少し面白い話でもするか? 笑えるかで言えば笑うところはないが...。」

 「お前...またあの話か?」

 「俺の持ちネタはこれくらいしかない。....何を話すか...。まぁ、恐らく関わりの深い方を話した方がいいか。」

 バンバの言葉に薫と光琳は耳を傾ける。俺は、昔に聞かされた話なので、外の風景を眺めた。

 「光琳にも話したことがないからな。薫、歴史の授業で習ったことがあるかもしれないが、革命大戦というのを知ってるか?」

 「世界政府に、賊と義勇軍と革命軍の同盟と、殺戮者の一味の三勢力による大戦争...ですよね?」

 「そうだ。」

 「確か...今からおよそ1000年前に起こったんですよね?」

 「そう。発端としては、当時革命軍を結成して率いていた、革命の旗手パトリシア・グリーンライトが世界政府直属の軍に所属していた天狼の狙撃者ブルー・スティーラと軍を裏切って賊となった鋼鉄の反逆者レッド・ノイジーがパトリシアの言葉に同調し、同じく革命を目指すものとして仲間となり、その後、世界政府の機関でクーデターを起こしたことだ。それで、世界政府の実質的トップだった灰の統治者グレインズ・ヘッシャーが革命軍を潰そうとしたところに悪逆無道のゼイジス・アルベイン率いる殺戮者の一味が便乗して戦いに加わったことだ。」

 「あっそうなんですね。」

 薫はそこまで詳しくは知らなかったのか、少し驚いていた。光琳は話が気になるのか、少し身を乗り出している。

 「あぁ。ちなみに、殺戮者の一味はゼイジスを含めメンバーはたったの13人だったようだが、それでも200か国中190国の加盟国の戦力を保有する世界政府が唯一本気で恐れていたという情報からも、13人で一個の勢力になりうるという驚異的強さと危険性を持っていたのだろう。」

 「革命軍側の戦力はどうなんですか?」

 「革命軍側は元々のパトリシアが率いていた仲間たちの他に、海賊、山賊、空賊の協力者がいたノイジーとその仲間、海軍、陸軍、空軍に厚い信頼を持っており、仲間に引き入れることができたスティーラとその仲間...まぁ殺戮者の一味よりかは多いぐらいで、世界政府と正面衝突すると、きついぐらいには少ないな。」

 「でも、戦いは革命軍側の勝利だったんですよね?」

 「あぁ。パトリシアがヘッシャーとゼイジスを討ったことによって、この大戦争は革命軍側の勝利となり、今の世界体制の礎を築く為の第一歩になる。」

 「レッド・ノイジーとブルー・スティーラって人はどうなったんです?」

 光琳の質問にバンバは顎に手を当てて少し考えた後に答える。

 「そのどちらも、大戦中に殉職している。だが...。」

 「だが...?」

 「死因が未だにわかっていない。レッド・ノイジーもブルー・スティーラもどの資料を読み漁っても、指折りの実力者であり、負ける姿が想像できないとまで書かれていた。それなのにだ、パトリシアと比べて死因の情報が一切ないんだ。」

 「え? パトリシアって人も死んだんですか?」

 光琳が驚いたように聞く。

 「ん?」

 薫の方を見てみると、何やら胸を触りながら、首を傾げている。が、何ともなかったのか、バンバの話に再度耳を傾け始めた。

 「あぁ。だが殉職じゃない。大戦後に大戦の終結とこれからの世界体制が変わることを告げる演説中に突然倒れてそのまま意識が戻ることなく亡くなったとされている。」

 「何か悲しいですね。」

 「ん?」

 「革命を夢見た人達が、その後の世界を見ることなく死んじゃったなんて...。」

 「...そうだな。フィクションと違い、現実は嫌というほどに残酷だ。だからこそ、生きる価値があるのか、ないのか、たまにわからなくなる。」

 「...。」

 「大変お待たせ致しました。海鮮丼とミートソーススパゲッティのお客様は...。」

 そうやって話していると、店員さんが料理を持ってきた。俺たちはそれぞれに注文した料理を置いて貰うと、同時に食べ始めた。光琳が美味しそうに天ぷらを頬張っていると、バンバがステーキの4分の1を光琳の皿に乗せる。それに光琳がお礼を良いながら、まだ口をつけていない天ぷらをバンバにやろうとすると、バンバがやんわりと断って、食べさせている。薫はその光景を見ながら優しい笑みを浮かべている。

 「...(微笑ましいな。)」

 俺が内心そう思いながら、いち早く食事を済ませると、席を立ってトイレに行くついでに会計を済ませた。戻ってくると、光琳が最後に食べ終わったようだった。

 「美味しかったですね。」

 「はい! 必死に狩りを終わらせてやっと食事にありつけたときと同じくらい美味しかった!!」

 「あれより、大分美味だと思うが。」

 「この後はどうするんだ?」

 3人の落ち着いている雰囲気に、俺はできるだけ柔らかい声で薫に尋ねる。

 「そうですね...この後は...買い物に行って、食材だったりを買っておきましょう。その後は、自由にしてもらっても大丈夫です。」

 「そうか。じゃあ、それは最後にして、この国をもっと見て回るか。」

 俺がそう言って立ち上がると、薫と光琳はお互いの顔を見合わせて、嬉しそうに立ち上がり、バンバはその様子を見て柔らかい笑みを漏らしながら立ち上がり、店を出ていく。薫に俺が先に会計を済ませていたことを気づかれると、なぜか感謝と共に謝られた。その後は、シャインティアウーブの遊園地や美術館を巡り、そして、辺りも暗くなってきた辺りで、シャインティアウーブ特有の食材や食器を買うと、店を出て一緒にレグスに向かって帰り始める。

帰路

 その間、薫と光琳が仲良くなったのか、俺とバンバより少し早いペースで談笑しながら帰っていて、少し距離を離されている。この程度離れていたら、普通の声で話しても、聞こえないだろう。

 「そういえば、俺と光琳の関係をよく話していなかったな。」

 「そうだな。」

 「あいつは、3年前ある屋敷で俺が拾った。」

 「屋敷?」

 「あぁ。その時の光琳は酷くやつれていて、目に生気もなかった。」

 俺は眉間にシワを寄せる。今の光琳の姿とは想像つかない状態だったのだろうと容易にわかったからだ。

 「そこで、光琳に訊かれたことがある。」

 「訊かれたこと?」

 「「私の名前は入町光琳と言います。バンバ・キルラエルさんですか?」ってな。」

 「何...!?」

 「俺は「何で俺の名前を知っている?」と当然聞き返した。そしたら、「あなたが助けに来るのを待っていました。助けに来てくれてありがとうございます」って答えたんだ。」

 「どういう意味だ? 誰かがお前の助けを呼んでいたと言うのか?」

 「多分そうなんだろう。だが、俺にはその誰かがわからなかった。それを聞こうとしたが、次に言った言葉で止めておこうと判断した。」

 「その次に言った言葉とは?」

 「「私の記憶を消してください」だ。」

 「......。じゃあ今の光琳は...。」

 「あぁ。俺と出会う前の記憶はない。」

 俺の予想にバンバは淡々と答える。恐らく神聖魔禍の剣で記憶を消した...というか改竄かいざんしたのだろう。

 「神聖魔禍の剣で記憶を改竄したのなら、それなりの代償が来るはずだ。だが、その様子は特に...。...!」

 俺は喋っている最中に何が代償になったのかを理解した。それを察したのか、バンバは深く頷いて答える。

 「そうだ。俺は...本来の武器を使えなくなった。同時に、あの化け物じみた強さも失ったわけだ。だが、中途半端に残っているせいで、最初は苦労した。」

 「お前がなぜあの金髪の女と戦っているときに、本気を出さなかったのかがわからなかったが、出すに出せなかった訳だ。」

 「戦力として仲間になっておきながら、大幅にパワーダウンしていると知って失望したか?」

 「パワーダウンしてても、あそこまで戦えている時点で失望のしようがないだろ。」

 「ありがたいお言葉だな。」

 俺の言葉にバンバは2人で談笑している薫と光琳を見て柔らかい視線を送りながら答えた。

 「今の光琳はこの事を?」

 「知らない。だから、記憶を取り戻そうとは思わない。だがもし、記憶を取り戻したいという気が起きたのなら、それは運命だと思って甘んじて戻そう。」

 「そうか。」

 「悲惨な過去なんざ忘れた方がいい。」

 「悲惨な過去だから背負って生きるべきとも思うがな。」

 「ふっ、青葉のようなことを言うな。」

 「あいつならもっと綺麗事を言うだろ。」

 「確かにな。」

 俺たちがそう会話を続けていると、距離が離れているとわかった薫と光琳が立ち止まってこちらに手を振っている。俺とバンバは少し小走り気味に、薫と光琳の元に行き、そのまま4人でレグスまで戻っていった。



 そうしてレグスにつくと、買ってきたものを冷蔵庫や棚の中に直していった。そうして、ゆっくりくつろごうと思っていると、こっそり買っていた花火セットを持ってきて、俺たちに見せてきた。

 「これやりましょう!」

 「花火...季節外れはなはだしいけど。」

 「いいじゃん。」

 「そうだね。」

 薫と光琳がそう会話をしていると、水をいれたバケツと折り畳み式の椅子をバンバが持ってきた。

 「じゃあやるか。もう暗いしな。」

 「はい!」

 そうやってバンバが光琳の持っている花火に火をつけて、薫はその火を借りて花火をつけている。俺はその光景を見ながら線香花火をつける。

 「...。」

 「綺麗ですね。」

 俺が線香花火を持ったまま黙って座っていると、薫が隣に座ってきて、話しかけてきた。

 「そうだな。」

 「サングラスしてて、花火よく見えてるんですか?」

 「あぁ、結構見えてるぞ。」

 「ホントかなぁ~?」

 そんな会話をしながら薫が俺の顔をよく見ようとして来る俺は目線をそらして、見られないようにする。

 「もぉ~見せてくださいよ。でも、今だけですよね? いつか見せてくれますよね?」

 「.........。あぁ、いつか...見せる。絶対にな。でも...」

 「?」

 「その時...」

 俺は首を傾げている薫の目をサングラス越しにじっと見ながら言う。

 「お前は...俺を...。.........。」

 「!!」

 線香花火が地面に落ちる。

 「...やだなぁ...そんなことになるわけないじゃないですか...。」

 「そうだな...。まだな。」

 回りの音が全て無くなったような静けさが俺と薫の間で流れる。気まずくなったのか、薫は立ち上がって光琳とバンバの元に行った。

 「仲良くなりすぎてもあれだからな。」

 そうして、花火セットを使いきると、その日はレグスで沸かされた風呂に入り、歯を磨き眠りに就き、この一日は終わった。

その頃 就寝中の薫

 ずっと心の中に引っ掛かっている。何であんなことを言ったんだろう...。そんなのあるわけないのに...。

 「その時...お前は...俺を...」

 殺す時だ

 「嘘だ。嘘だよ...。だって、そんな理由どこにも...。」

 私は頭を抱えながら、布団を深く被って、忘れることにした。
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