Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第三章 シルヴァマジア編

捕食者:ラーパクス

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シルヴァマジア 東中央の森林部住宅地

 どんな力を持ってるか未だにわからない。心底楽しそうで、バカにしているようで、見下しているような顔をするあいつをあたしは殺す。この力を使っても、勝てないと思ってしまう。力は上回っている自信はあるのに、勝てる自信が持てない。

 「(感情じゃ勝てない。)」

 あたしの炎をスレイバーと男の拳がぶつかり合い、激しい火花が飛び散る。

 「ただの拳で何で火花散るんだよ!」

 「終わったら教えてやるよ。」

 「終わったころにはてめえ死んでるよ。」

 「そんな能力の使い方じゃ、俺は殺せねえよ。」

 男はそう言って蹴り飛ばす。あたしは空中で体勢を立て直しながら、炎を纏わせたスレイバーを頭上で回転させて、雨のように降らせる。

 「火山・流星弾!!」

 「ヒ...。」

 男はそれらを避けて続けるが、地面に激突した衝撃で起こった土煙で視界が遮られる。あたしは足から炎を噴射させて一気に距離を詰めながら、炎をスレイバーの剣身に何層も集めて回転させて、螺旋状に伸ばす。

 「開花・花火!!」

 不意を突かれた男が避ける前に腹部に直撃させ、胴体を焼き抉る。そうして、男の血を浴びながら貫いて、スレイバーを束ねていつでも攻撃できるように男の方を見る。

 カチッ

 「!!」

 あの音が鳴った瞬間にあたしはスレイバーに纏わせた炎を噴射させて、ジェットスピードで男の急所を狙う。

 「おっと。」

 「チッ!」

 しかし、男は片手でしっかりと受け止めて、そのままスレイバーを引いて、あたしの体勢を崩す。それにすぐ、足から噴射して逆に、距離を縮めて頭を吹っ飛ばす。

 カチッ

 しかし、次の瞬間には何ともなかったようになる。

 「どうせ死なないんだったら、防ぐ必要ねえんじゃねえのか?」

 「いいや? 意外とめんどくせえんだよ。俺が持ってる能力。」

 男はそう言った瞬間にあたしの目の前に現れて、下から拳を突き上げる。それをすぐにカウンターで蹴り上げて、スレイバーで仕掛けるが、今度は口で受け止め地面に落とした後に起き上がって伸ばした剣身をつたって、顔面を蹴ろうとする。あたしはすぐにスレイバーから手を放しててのひらに火球を作り出して握りつぶして、迎撃する。そうして、拳と足がぶつかりあう瞬間に握りつぶした火球を破裂させる。

 「爆拳ばっけん!!」

 ドガーン!!!

 巨大な爆発音と共に男は消し飛ぶ。あたしは警戒しながらスレイバーを手に取って、消し飛ばした方向を見る。

 カチッ

 あの音がした。しかし、目の前に男はいない。

 「!!」

 あたしはすぐに後方に攻撃を仕掛けると、ニヤケながら攻撃を避けて立つ男がいる。

 「(起こった事象を無かったことに能力?)」

 「いや? ちょっと違うな。」

 「!」

 あたしのちょっとした思考を読み、男は余裕そうに否定する。

 「クッ!」

 「いやしっかし、異能力者スペアネルも案外大した事無いんだなぁ? それとも、無意識に気を遣っちゃって本気出せないか? でも、お前程度じゃ本気出さなきゃあっさり負けちまうぞ?」

 「何!?」

 「だって、俺遊べてるんだもん。てめえが異能力者スペアネルだと分かった時にゃ多少焦ったもんだが、このくらいじゃなぁ? さっきの雑魚2人よか大分マシって程度だ。」

 その言葉に、あたしを反論しようとするができなかった。攻撃を当ててあっさりと殺したはずなのに、当然のように復活して攻撃を仕掛けてくる。今はまだあたしが優勢なように感じるが、これが無制限に続けば、いずれ体力が無くなって、劣勢になっていく。これだ、力は上回っているはずなのに、勝てる自信ができないのは...。

 「どうした? 来ないのか? それとも、あまりにも勝てるビジョンが見えなさ過ぎて、諦めの境地ってのに来たか?」

 「誰がだよ。」

 あたしはそう言って、男に切りかかる。そして、同じように男は反撃して、それにカウンターを仕掛けて、殺す、殺す、殺す、殺す。それを何度も繰り返す。だが、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、と音と共に当たり前のように復活する。そうしている内にあたしは疲労で膝をついてしまう。

 「は?」

 あたしがその状態に驚いて目を見開いていると、男が笑いながら見下して言う。

 「お前まさか、能力使ったの初めてか? ってことは、使わずこれまでやってきた感じか。じゃあ仕方ねえな。異能力者スペアネルになりきる前にあんだけ動いて疲れ切った状態になってたら、いくらなる覚悟を持ってなったとしても、体力回復しきってないんだから、それであんなバカスカ能力使ってたらバテるわなぁ?」

 「何?」

 「んっふふふ...。感情で動く奴は本当御し易いよなぁ? 陽葉山花仙。」

 それを言われて必死に立ち上がろうとするが、そのまま転倒する。

 「そんなんじゃ、もう戦えねえなぁ? じゃあご褒美だ。俺の能力一個教えてやる。」

 「!?」

 「俺はな? テゼルの盗賊団ってのを率いてるラファス・ドゥイレルってんだ。」

 「ラファス...ドゥイレル...?」

 「あぁ。『盗賊団』を率いている...な?」

 強調した言葉で男...ラファス・ドゥイレルが何を言いたいか、あたしは察した。

 「ご名答...。俺の本来の能力は...奪うことだ。奪い方は命を喰うこと。それだけでそいつの持つ身体能力や精神、経験や知能全てを奪う捕食者ラーパクス。」

 「(でも...!!)」

 「でも今まで使った能力と合致しないだろ? ってことはだ。」

 ラファスはあたしの目を覗き込むように見て目を見開いた状態だけ口角だけを上げて笑う。

 「(くっ!?)」

 「はい大正解! 喰ったんだよ。いやぁ、苦労したぜ『これら』の力を奪うのはよぉ。でも、仕方ねえよなぁ? 神様が託してくれた力なんだからなぁ? 俺は本当に運が良い。この力のおかげで人生いつも楽しいぜ。」

 「てんめ...!!」

 あたしが何とか立ち上がろうとすると、ラファスはあたしから一旦離れる。

 「でな? 俺一個試したかったことがあるんだよ。」

 「?」

 「異能力者スペアネルの能力って奪えんのかなぁ? ってさ。」

 「!?」

 ラファスはあたしを見ながらそう言って、一気に近づいてきて髪を掴んで持ち上げてあたしの顔を見て、口角だけ上げて笑いながら言う。

 「おっと偶然! 1人釣れたじゃないか?」

 「タダで食われるとでも?」

 「骨を折ってグチャグチャに丸めりゃ、丸呑みできなくもねえぞ俺は?」

 「!?」

 「この能力な? 感謝してるっちゃしてるんだが、生食じゃねえと意味ねえんだよ。」

 そう言って、髪から手を放してあたしの頭を両手で掴んで押しつぶそうとする。

 「まずはうるせえから、頭を潰して即死させるか。流石に死ぬだろ化け物でもよぉ?」

 「ぐっぁぁぁぁあああああ!!!」

 あたしは力を振り絞って、頭を掴んでる手を解いてラファスを蹴り飛ばし、炎を噴射させて逃げようとする。

 「!?」

 しかし、炎は少しだけ噴射すると、燃料が切れたように燃え尽きてそのまま倒れこんでしまう。

 「あんだけ、かっこいい登場して、俺に戦いを挑んできた癖に...逃げるのか?」

 「クソッ!」

 あいつの言った通り、少し疲れてた時に能力をバカみたいに使ったせいで、自分が感じている疲れ以上に体が悲鳴を上げてる。土壇場で慣れないことをしたせいで、殺されかけてる。

 「はぁ...はぁ...。」

 あたしはみっともない姿で這いずりながら逃げようとするが、すぐに捕まって頭を何度も蹴られる。

 「どうしたぁ!? さっき威勢はよぉ!? ほらさっきみたいに頑張って向かって来いよ! 母親の! 師匠の! 仇取るんだろ? このままくたばったら、お次は妹かぁ!」

 「!!」

 あたしはすぐに起き上がって、スレイバーで攻撃を仕掛けるが、簡単に避けて肩を掴まれて今度は腹に膝蹴りを何度も入れられる。

 「1! 2!! 3!!! はいもういっちょお!!!!!」

 「グハァ...!」

 あたしは吐血して、その場に倒れそうになるがすぐに頭を両手で掴まれてまた押しつぶされそうになる。

 「ぁ...ぁぁぁぁ...ぅぁぁぁ...。」

 「相変わらず頭蓋骨かってえなぁ...。」

 ―――絶対に来てね。約束だよ。

 ―――お次は妹かぁ!

 「!!」

 あたしは歯を食いしばってラファスの手首を掴んで力いっぱい握りながら話そうとする。

 「ぅ...ぁぁ...ぁぁあああああああ!!!!!」

 「んふ...根性で何とかしようってか? でもなぁ、ここ現実なんだよねぇ。現実って夢見してくんないんだよ。」

 あたしは叫びながら、ラファスをニヤけるラファスを睨む。すると、手に炎が纏い始める。

 「すごいなぁ。根性でガス欠の能力まで使えるとは、有望だなぁ。でも...。」

 炎は出し尽くしたように消え、力もなくなっていき意識も朦朧もうろうとしてくる。

 「魅せてくれたねえ。一瞬の輝き。いやぁ泣けるねえ...。いい盛り上がりだったよほんと。」

 ラファスが煽っているのが聞こえるが、もう何言っているのかわからない。

 「おい。」

 「ん?」

 ラファスの背後から男の声が聞こえる。そうして振り向いた瞬間、男はラファスの両手を落としてあたしを抱きかかえた。

 「ぅ...ぁ...。」

 「ナイスファイト。叫び声で気づけた。」

 カチッ

 あの音が鳴るのが聞こえた。そしてやはり...あいつの落とされた手は完治した。

 「四肢に枷、首輪...褐色肌に赤い髪...。まさかお前...炎帝か?」

 「炎帝? なんだそりゃ...。つかお前、大丈夫か? 起きねえと逃げらんねえぞ。」

 あたしの意識が徐々に元に戻っていく。そうすると、あたしを地面に下ろしながら見ている褐色肌の赤髪の男がいた。

 「褐色肌に...赤髪...。まさか...生き別れの兄弟!?」

 「なわけねえだろ何言ってんだ。この期に及んでボケんな。立てるか?」

 男にそう言われて体を動かそうとするが、全く動かない。

 「いや...無理そう。」

 「じゃあ仕方ねえな。避難キャンプまで連れてく。ここまで来る間に他の奴らも結構運んだからもはやお手の物だ。」

 男はそう言いながらラファスを無視しておぶる。

 「近くに...妹がいるんだ。」

 「妹ってどんな?」

 「赤髪であたしより数倍素直そうな。」

 あたしがそう言うと、男は顎に手を当てて少し考えて言う。

 「それって他に女2人連れてた子か?」

 「...多分それだ。」

 「じゃあもう連れてってる。大丈夫だ。」

 男がそう言った瞬間、ラファスが男に殴りかかってるのが見えた。

 「あ...!!」

 それを「危ない!!」とあたしが言う前に、目を離さずに男は片手で受け止めていた。

 「今お話し中だろ? 邪魔すんなよ。」

 男がそう言って視線を移すと、ラファスは距離を取ってニヤケる。

 「...こりゃ、避難させてる場合じゃねえな。」

 男はそう言いながらハンドサインを出す。それと同時にラファスがサインをした方向に走り出すと、一瞬で目の前に移動して腰に手を当てて仁王立ちする。

 「どうした?」

 「流石に遊べねえな。これは...。」

 ラファスはそう言って、後退りながら、首を鳴らす。

 「やる気か?」

 「ああ、負けはしねえだろうからな。」

 ラファスはそう言って、男に向かっていった。

シルヴァマジア国外避難キャンプ

 陽葉山さんのお姉さんと分かれたあと、私達3人は2人の男女と会って、簡易避難所のキャンプに連れてきてもらっていた。そこにいた人たちに食料を分け与えてもらい、何とか私は動ける程度まで回復しきったけど、光琳は目覚める様子はない。

 「血は何とか止まったが、ここからの治療は流石に無理だ。」

 「私達の治癒魔法じゃこれくらいしかできない。ごめんね。」

 「いえ、ありがとうございます。」

 治癒魔法をかけてくれた夫婦に私は感謝を述べて、光琳を見る。

 「ジークさんがいれば...。」

 そうしていると、少し奥の方で少年がそう呟いていた。

 「ジーク...? ジーク・ヴィネア...?」

 「この国の森長です。」

 頭があまり回っていない私に、陽葉山さんが息を整えながら教えてくれる。

 「その人がいれば、戦いを終わらせられるの?」

 「いえ、それもありますが...。ジークさんはこの国で一番の回復魔法を使えるので、すぐに怪我してる皆や入町さんを完治させて目覚めさせられるんです。」

 「何で捕まってるんだっけ?」

 「この戦いの火種となったという風に国中に伝えられて捕まったんです。」

 「誰が伝えたの?」

 「確か...軍務卿のフリードさんだったと思います。」

 そう教えてもらうと、私は未だに目を覚ます気配のない光琳の顔をジッと見て陽葉山さんに訊く。

 「多分、指揮とかやってると思うので...世界樹...?」

 私はポケットに手を入れて、ナイフを掴む。

 「そっか。ねえ陽葉山さん。」

 「はい。」

 「ジーク・ヴィネアさんの捕まった理由って、嘘の可能性あるんだよね?」

 「もちろんです。あの人はそんなことする人じゃありません。」

 それを聞くと、私は陽葉山さんの方に顔を向けて

 「ジーク・ヴィネアさんを解放すれば...皆助かるんだよね?」

 と訊いた。それを聞いていた周りの人たちが私を見る。

 「...はい。」

 陽葉山さんは驚きながらもゆっくりと頷くと、私はゆっくりと立ち上がって、この国の中心にそびえたっている大樹に目を向ける。すると、治療してくれた夫婦と陽葉山さんが

 「バカな考えはおよし! 今のあんたに何ができるっていうんだい!! 血が止まったってだけで完治してるわけじゃないんだ! 無茶したら死ぬよ!!」

 「そうだ! 行けば確実に軍務卿に殺されるぞ!!! 若いもんが死に急ぐな!!」

 「そうですよ橘さん! ここで待ってる方がよっぽど安全です。」

 強く止めてくれる。私は3人に優しく微笑んで強く覚悟を決めて言う。

 「大事な友達が姉弟子が死にかけてるのに、ジッとなんて私にはできません。それに、もし成功したらここにいる人たち皆もっと安心できるでしょう?」

 「橘さん...。」

 「陽葉山さん...。光琳を頼むね。絶対...絶対に生きて帰ってくるから!!」

 私はそう言って、一目散に世界樹に向かって走り出す。
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