Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第三章 シルヴァマジア編

橘薫の覚悟

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シルヴァマジア 東中央の森林部住宅地

 ラファスの激しい攻撃を男は受け流しながら、合間で殴打を挟み込んで半身を消し飛ばす。

 カチッ

 そして、またあの音と共によみがえる。

 「...。」

 男はその様子を見てから、怪訝そうな顔をして首を傾げる。

 「(攻撃が無かったことにされた?)」

 「どうしたぁ?」

 ラファスがニヤけた顔をしていると、男はあたしの方を見て再度ラファスを見る。

 「(何かあるなこいつ。それがわからねえと、戦っててもケリがつかねえな。だが何もせずに逃げたら、こいつが何をしでかすかもわからん。物は試しだな。)」

 男は何かを思いついたような顔で、目の前から消える。

 「!!」

 次の瞬間、男はラファスの遥か上空に移動して片手に炎を溜めているのが見えた。それに気づいたのか、即座にラファスは防御の体勢を取る。

 「(へぇ~防御はするのか...。) 大火弾グラン・バラ・デ・フェーゴ。」

 男はそう言って、溜めた炎を放つように手を振り下ろす。すると火球のように連続でラファスに向かって放ち、あたしの元に瞬時に移動してくる。その一瞬、熱を帯びていたのか髪と眼の色が明るくなっていた。

 「おい...。あれどうなってるんだ?」

 「デカい火の玉をあそこに設置したんだよ。だから、あいつ何度復活しようとあれで再度殺し続けてんだよ。かなり時間続くからその間に国民全員出来たら避難キャンプに連れていけたらいいなってのも込みで。」

 「倒さねえのか?」

 「倒さねえのかって...倒せねえんだよ。あんな訳わからん奴、そんまま戦う選択するほど、別に死に急いでねえよ。」

 男はそう言って、あたしを抱えて避難キャンプの方に走り出す。

 「(復活する時に移動できることも考えて広範囲に撃てるようにしといたが正解だったぽいな。だが、どの道のんびりはしてらんねえ。)」

 「どうした?」

 急にため息を吐いた男にあたしがそう訊くと、男は遠い目をして答える。

 「いや、軽い気持ちで旅行に来たら、何か戦い終わらせろみたいな無茶な指示出されたと思ったら、あんなんいる魔境に突っ込んでいかなきゃいけない現状にため息が出たんだよ。」

 「そりゃ、難儀だな。」

 「何でこうなったんだ全く。」

 「そういや名前なんて言うんだ? あたしは陽葉山花仙。」

 「俺はフレア・アステラ。」

 「よろしくなフレア。」

 「急に距離感縮めてくるなお前どうした。」

 あたしはそう言いながらフレアに避難キャンプに連れて行ってもらった。

シルヴァマジア上空

 激しい衝突音と共に、空は震え下の木々は悲鳴を上げるように揺れる。

 「衛星サテライト電光線フルグールレイ。」

 私は自分の周りに雷でできた球体を複数形成して、それを漂わせながら光線のように放たせながら空中を移動して、戦いを有利に進めている。

 「4対1でこの動きとは、流石と言わざるほかないな。」

 「言ってないで、攻撃の手を緩めないでくれる?」

 子連れの男に女はそう言って、襲ってくる狼と若い男の人に強化魔法をかける。

 「(さっきからあの女の人厄介だな。) 転移メタスタージス。」

 「!?」

 「はい零距離! 熱線カローレイ。」

 私は一瞬で女の人の背後に転移して、後頭部目がけて熱線を放ってみるが、その時には女の人はもう別の場所に移動している。

 「(やっぱり、あの女の人...転移する時だけ魔力が流れない。じゃあ素の力? でも、魔法が使えるのに...素で超能力を使えるなんて聞いたことないんだけど...。ってか、ローザンとアリューはまだなの? 応援頼んだんけど、まだ避難に時間かかってる?)」

 女の人の力に違和感を持ちながらも、ちっとも来ない応援に愚痴るが、子連れの男性の攻撃をしっかりと防ぐ。

 「(この人に至っては...子連れだから遠距離も近距離も戦いづらい。あの若い男の人と狼は滅茶苦茶やりやすいんだけどね。攻撃もきちんと当たってくれるし。)」

 「はぁぁぁぁぁ!!!」

 「ワァァァウ!!!」

 「衛星サテライト!!」

 私がそう叫ぶと、襲い掛かる若い男の人と狼に衛星が電光線を放って迎撃してくれる。

 「ふぅ~。危ない危ない。」

 「ロッソ!!」

 若い男の人がそう叫ぶと、地面に落ちた狼が口を大きく開けて何やら溜めている。

 「(え? そんなんできんの?) 衛星サテライト止めて!!」

 私がそう言うと、衛星達は狼の方に向かっていった。

 「はぁ!!」

 「ガラ空きだとでも思ったの?」

 「いや? これで十分だ。巴!!」

 「はぁ? ...!?」

 若い男の人の攻撃を受け止めた手が離れない。

 「太陽ユディチョンソリスき!!」

 「大盾マンニャスクートゥム。」

 女の人が放ってくる攻撃に対し、片手で魔導書をめくって巨大な盾を形成してギリギリで防ぐ。その後、舌打ちしていた若い男の人を蹴り飛ばしてその場から離れると、狼が溜めていたブレスを放ち、それに合わせるように衛星が電光線を放つ。

 ドガーン!!!!

 そのぶつかりに巨大な爆発音と衝撃波で空にひびが入る。そうして、狼のブレスを相殺した後、衛星は魔力切れしたのか光の粒子となって消えていく。

 「急に本気の連携してくるね。ちょい焦ったよ。」

 私がそう言って蹴り飛ばした男の方を見ると、子連れの男性の姿が見えなかった。

 「!?」

 私は咄嗟に屈むと、間一髪男性の持つ大槌を避けることができた。

 「一人だけ連携に乗ってこないなって思ってたら油断する機をうかがってたわけね。」

 私がそう言いながら距離を取ると、背後に若い男の人、下には狼、上には女の人、正面には子連れの男性がいて囲まれる位置になってしまった。

 「(左右には逃げれるけど、この男2人は細かく反応できるよね。)」

 私がそう冷や汗をかいていると、巴の方向から突風が降ってきた。

 「?」

 私がその方向を見ると、尖った耳に褐色肌の男が空中に立っていた。

 「アリュー!」

 私がそう言うと、若い男の人に切りかかる影が見えた。そこに視線を移すと、黒髪を一つ結びした後ろ姿がある。

 「ローザン!!」

 私がそう言うと、アリューとローザンは私と同じ位置まで来て、背中合わせの状態になる。

 「遅い!」

 「あんな雑な指示でよく来たもんだろ。」

 私の文句にローザンが言い返す。

 「さっきの爆発音がなかったらわからなかったぞ。上空にしても高すぎるぞここ。」

 アリューは逆に私の指示の雑さに文句を言い返してきた。

 「仕方ないじゃん。結構離れないと国巻き込むし。」

 「だとしても遥か上空とでも言うだけで変わったぞ。」

 「マジであの探してる時間が何だったんだよ。」

 私の返答にローザンとアリューは愚痴りながらも、戦闘態勢を取る。

 「まぁいい。エリナ、俺はあのデカい剣を持ったやつをやる。」

 「俺は、バフかけとか厄介そうなあの女をやる。お前は器用なんだから子連れの人をやれ。」

 「狼は?」

 「俺とアリューメスで時間を稼ぐから魔獣でも召喚しろ。」

 「はいはい。人使い荒いんだから。」

 「「お前が言うな。」」

 私はそう言われながらも魔導書を閉じて指を噛んで血を出したら、血で手のひらに魔法陣を描く。

 「やらせるか!」

 「ワウ!!」

 「やらせないようにできるとでも?」

 私の邪魔をしようと真っ先に動いた若い男と狼をローザンが自慢の剣で狼に斬撃を飛ばして、若い男の受け止める。

 「くっ!」

 「邪魔しないでくれよ。」

 魔法を放とうとする女に炎のむちを作り出したアリューが邪魔をして、子連れの男性を鋭く見る。

 「滾り盛る業火の中でただ一人門前で立ち尽くす3つの影、いずれも時経て変わる事無し、永遠に番の役を果たす。地獄の門に現る影あり、今こそ責務を果たす時! 我が名は神川エリナ、契約の義に従っていでよ! 三頭狼ケルベロス!」

 私がそう言って、手のひらを下に向けた瞬間、手のひらに書いた魔法陣が空中に浮かびあがり、そこからケルベロスが現れる。

 「じゃあケルベっちゃん! その狼頼むね!」

 「「「ワォーン!!!」」」

 私がそう頼むと、三頭は全く同じタイミングで鳴いて返す。それを聞いた私は子連れの男性を見て魔導書を構える。

 「三葉。お前も守りながらは戦えない。地面に下ろすから隠れてなさい。」

 「わかった。」

 男性は子供にそう言って、地面に降り立つ。私も追うように地面に降り立つと、子供は男から離れて木の後ろに隠れて

 「お父さん頑張れぇ!!」

 と応援する。

 「お父さん...あなた、親なのになぜ子供を?」

 「連れずに戦えるのならとっくにそうしている。こうしなければ戦えないのだ。」

 「だったら戦場から身を引けばいいのでは?」

 「できるなら...。」

 「とっくにそうしていると...。」

 「そうだ」

 どこか哀愁と悔恨を感じる顔で男はそう言って、大槌を構える。そうして私たちは戦闘を再開する。

シルヴァマジア世界樹

 できるだけ人気のない方向を進んでここまで辿り着いた。後は登るだけだ。

 「すでに負傷してる状態でここに来てるんだ。慎重にやらないと、無駄に戦ってもっと勝てなくなる。」

 私はそう言って、世界樹の中に入っていく。中は頂上まで螺旋状の階段で形成しているように見える。

 「隠れられそうな場所はない。周りに警戒しながら...行こう。頑張れ、私。」

 自分を鼓舞しながらゆっくりと階段を上がっていく。

しばらくして場面は変わり、世界樹頂上

 薫が目指す頂上に、軍務卿フリードがシルヴァマジア全体を眺めていると、部下の男が膝をついて報告をする。

 「フリード卿、世界樹に上る影を確認いたしました!」

 「見せてみろ。」

 「はっ!」

 フリードがそう言うと、部下の男はこめかみに手を当てて確認した影を脳内を通して見せる。

 「フッ。ただの子供じゃないか、しかも重傷を負った。だが念には念を、迎撃しに行け、まぁたかだか小娘一人、数で押せば簡単に制圧できるだろう。制圧した後報告に来い。」

 「了解!! お前たち! 行くぞ!!」

 「(周りに小娘の仲間らしき影はない...。一人で来たのか? あんな重傷で?)」

 フリードはその事実に怪訝な顔をするが、再度シャインティアウーブに向けた軍への指示をする。

場面は戻り、世界樹内部

 ゾクッ!!

 体に激しい悪寒が走る。私は登っている途中の螺旋階段の裏に回り、ナイフを深く刺してぶら下がる。

 「いない...? 近くにいるはずだ! 探せ!!」

 階段から複数人の足音が聞こえる。

 「...。」

 私は息を潜めて、できる限り体を静止させる。そうしていると足音が一つ私の真上で止まる。

 「...。お前、ちょっと降りてここの下を覗いてくれないか?」

 「了解!」

 「(バレた...!?)」

 私はナイフに体重をかけて体勢を何とか変えて、壁に足をついてナイフをいつでも抜けるようにする。

 「...ん?」

 「!!」

 位置を覗く男性に向かって、私はナイフを抜くと同時に壁を蹴って男性に突撃する。

 「ぐぼぉ!?」

 直撃した男性は泡を吹きながら倒れ、他の人たちが魔法で撃とうとするが、私はすぐに気絶した男性を持ち上げて身を隠す。

 「仲間を盾にするとは卑怯な!!」

 気絶した男性に指示を出したリーダーらしき男性がそう怒鳴る。

 「(...絶対にジーク・ヴィネアさんを解放して、皆を、光琳を助けるんだ!)」

 私は心の中でそう叫んで、身を隠している男性を持ち上げたまま正面に走り出す。

 「てめぇ!!」

 「待て!! あいつが死ぬ!」

 1人の男性が迎撃しようとすると、リーダーらしき男性が制止させて、盾にしている男性の身を案じる。

 「そんな言ってられねえよ!!」

 その中で、また1人の男性が球体上の氷を放つ。私は咄嗟に男性から手を放して上に跳びあがり、回転しながら前にいる男のうなじにかかとを落として気絶させる。

 「今だ!! 敵は無防備、一気に放て!」

 リーダーらしき男性はそう言って、残りの人たち全員で魔法を放つ。

 「!!」

 私はすぐに動こうとしたときに傷口が開いて、出血するがそれでも体を低くしてすばやく移動して、ナイフの柄で腹部やうなじを打って気絶させた。

 「はぁ...はぁ...。...あれ? (あの人がいない...?)」

 放たれた魔法を直撃しなかったもののかすった痛みと開いた傷口の痛みで息切れしていると、リーダーらしき男性がいないことに気づいた。

 「殺さないとは甘いな。」

 背後から男性の声が聞こえて、咄嗟に反応したが間に合わない。近距離で魔法を撃たれる。

 「(避けきれない...!!)」

 私は心の中でそう思って目をつむる。

 「(...いや、絶対に避ける! 避けて、助ける!!)」

 私はそう再度誓うと、体が一瞬だけ流れるように動いた。

 「...何...?」

 「...へ?」

 そうして、目を開くと、そこには背後で倒れるリーダーらしき男性とそれをやったと思われる自分の体があった。

 「今の...状況から...私が...倒した...?」

 私はそれに驚きながらも、頂上が見えてきた螺旋階段を上る。出血しすぎているのか眩暈めまいに襲われながらも、頂上に到着した。

 「随分と遅かったな。」

 頂上でたたずむ中年の男が振り向きながらそう言うと、傷だらけで上ってきた私を見て驚いた顔をする。

 「俺の部下を倒してここまでやってくるとは...ことほか強いようだ。だが...。」

 男は私の状態をしっかりと見てからニヤリと笑って言う。

 「息も絶え絶え、手足も震えている、何よりその火傷痕...いや凍傷の痕といった方がいいのか? いつぶっ倒れるかもわからんな。」

 「...はぁ...はぁ...グフッ...ゴホッ...。」

 私は息切れしながら出した咳で大量の血を吐く。それでも、私はしっかりと踏ん張って立って男を見据える。

 「ジーク・ヴィネアを...解放しろ...。」

 「なるほどそれが目的か。だが無理な話だ。ジーク・ヴィネアは戦争を仕掛けた戦争犯罪人として処刑される。まぁ若くして国を治めようとした人間の浅はかさによる罰だ。平和は国を停滞させる。それに、科学技術など使う危険因子と共存するなど誰も真に受け入れん。」

 「詭弁を...ようは...見下してた人が...認められているのが...悔しいだけ...。」

 私がそう言うと、男は勢いよく私の腹部を蹴る。

 「グァ...!!」

 「小娘、口の利き方には気を付けることだ。」

 私は後退りながら倒れそうになるが、片足を前に出して踏ん張って立つ。

 「何を必死になっているのか...。」

 「...。」

 私は震える手でナイフを握りしめて男に向ける。

 「まさか...戦う気か? 命知らずだな。」

 「...!!」

 私は睨みつけるように男を見る。

 「いいだろう...。ここまで来た褒美だ。かかってこい。」

 そう言われた私は震える足を必死に動かして男に向かっていく。
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