Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第三章 シルヴァマジア編

橘薫という女

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シルヴァマジア世界樹頂上

 私のナイフは簡単に受け止められ、出血している箇所を執拗に殴られ、それに倒れると腹部を何度も蹴られ、頭を踏みつけられる。

 「ぐっ...ぅぅ...。」

 「この程度か...万全ならばまだ戦いになったやもしれんが、これではただの消化試合だ。」

 フリードはそう言って踏みつけている足に更に体重をかける。

 「ぅぁぁぁぁ...!!!」

 「これでは魔法すらいらんぞ?」

 苦しむ私に呆れながらフリードは足をどけて、サッカーボールを蹴る要領で私を蹴り飛ばす。

 「ぅぁ...ゲホッ...!」

 「これで勝てると思って来たのかね? いやはや思慮が浅いというか、考えが甘いというか、浅はかというか、無謀というか...いやそもそも身の程知らずか...。」

 フリードはそう言いながら、私の髪を掴んで持ち上げる。

 「顔は美人に生まれたな。戦いの世界でなければもっと他の生き方があっただろうにな...。」

 フリードはそう言って、そのまま壁に投げてぶつける。

 「ぐぁ...!」

 「いや、これほどの馬鹿者ならば、遅かれ早かれ死んでいたか。」

 フリードは起き上がれない私にそう吐き捨てると、なにか指示を出し始めた。

 「ぐ...くぅ...。」

 私はその隙に立ち上がると、フリードはゆっくりと振り向いて、ため息を吐く。

 「ほっとけば起き上がるのか...全く面倒な。」

 「...。」

 私が睨みつけながらナイフを向ける。フリードはそれを見ながら椅子に座って私の方に体を向ける。

 「君にいいことを教えてあげよう。」

 「...?」

 「人間には上に立つべき人間と、立たないべきである人間がいる。」

 フリードは訊いてもいない事を急に喋りだす。

 「上に立つべき人間は、必要な犠牲を払うことができ、下の者を屈服させることのできる人間だ。立たないべきは、必要な犠牲すら拒み、下の者に従うことしか能のない人間だ。その点で言えば、ジーク・ヴィネアはまさに後者に該当する。」

 フリードはコーヒーを飲みながらくつろぎながらジークさんを非難する。

 「ジーク・ヴィネアは国を進化させるどころか、停滞させる。敵国との共存や少数の貧乏人への救済。馬鹿か、これまでいがみ合い、何度も戦争を繰り返したシャインティアウーブと今更条約を結んだところで過去の遺恨が消えるわけでもない。遺族の抱いた憎しみ、怒り、悲しみを無理やり抑え込んで生きろというのか? それに数少ない貧乏人を救済するというのもバカな話だ。全て救うことなど不可能なのだ。だからこそ切り捨てることが大事なのだ。少数に多数が合わせてどうする? 少数が多数に合わせなけらばいずれ破綻するのは目に見えている。」

 「全部が全部...納得できる答えなんて...ない...。」

 私がそう反論すると、フリードは目を皿にして返す。

 「そんな事誰もがわかりきっている。だが、それを求めるのだ。自分の正義を振りかざして気持ちよくなるためにな。」

 「...。」

 フリードの返しに私は黙ってしまう。

 「だから、戦争を起こして自分たちの正義を直接振りかざせる場を用意するんだよ。」

 「...それじゃ...!」

 「あぁ死人が出る。だが弱者が死ぬだけだ。強者は生き残る。それによって、能ある人間だけが残る。だから国は進化していくのだ、他国といつ戦争になろうとも勝てるようにし、それらの努力が結果的に国を進化させる。」

 「...でも...!!」

 言い返そうとするが、フリードが畳み掛けるように言葉をつなぐ。

 「でも? 何の犠牲もなしに進化を求めると? 平和ボケしたバカのような事を言うな。そんな理想論が100%叶えたいなら、眠って夢で叶えたらどうだ。ここは夢じゃない、現実だ。そんな都合がいいことを起こせるような自分を顧みない人間ばかりじゃない。」

 「...。」

 「何かが無ければ、人間は自ら能ある人間になろうとしない。だからこそ、その環境を用意してやろうというのだ。何が間違っている?」

 「...それでも...間違っている...。」

 「感情論では何も解決はせん。それとも、君は心何とかなるとでも思ってるのかい? じゃあ君は、他人の為に死ななければならないとき何の躊躇もなく死ねるというのかい?」

 「...それは...。」

 「言葉に詰まっている時点で自分の事を考えてしまっている。それが理想をかなえるときに一番邪魔なのだ。なれば、現実を変えて無理やりそうなるようにするしかなかろう。」

 「...。」

 「心では確かに気に食わんが、理屈としては正しいと思うが?」

 フリードの畳み掛けるような説明に私は気圧されて怯む。

 「お前の戦う意味は何だ?」

 そんな様子の私にフリードが真面目な顔で訊いてくる。

 「(私の戦う意味...? 私は我儘わがままに付き合ってくれた光琳を助けたい。私は苦しそうにしている国民の人たちを早く安心させたい。私は...。)」

 そんな事を考えていると、意識が朦朧もうろうとしてきて片膝をついてしまう。

 「答えるまえに息絶えるか。これならば変に時間を稼ぐ必要はなかったな。」

 フリードの呆れた声が聞こえる。そんな事を思っていると、完全に倒れこんでしまう。目も霞んでくる。

 ―――君は何の為に戦いたい?

 夢の中で聞いた声がそう問いかけてくる。

 「(光琳を助けたい。国の人たちを安心させたい。)」

 ―――何で?

 「(何で?)」

 ―――何でそう思うんだい? 君が彼女らについて行った理由は何だい?

 「(...弟に会いたいから...。)」

 ―――何で? 何で弟に会いたいと思ったの?

 「(...唯一の肉親だから...。)」

 ―――そっか。じゃあ、国の人たちを安心させたいと思ったのは? 友達を助けたいと思ったのは?

 「(...大切な人がいなくなった時...寂しかったから...悲しかったから...。)」

 ―――じゃあ、君の根底にあるものわかるね? 君は何で戦うの?

 「(もう大切なものを失いたくない。失わせたくない。だから...戦う!!)」

 そう思った瞬間、急に体に力が湧き上がってくるのを感じる。私はすっと立ち上がって、フリードを見る。

 「...!」

 それに気づいたのか、フリードは私の方に振り向く。目を見開く。

 「何...? (白髪に青い眼? それより、傷が...塞がっている...!)」

 「.....(痛くない。体が凄く楽だ。)」

 「何だその変化は?」

 「(雫の落ちる音が聞こえる。水が流れる音、いや血が流れる音?)」

 私は驚いているフリードを見据えて、ナイフを向けようとする。

 「...!!」

 その瞬間、フリードが真横に移動してきて電撃を込めた拳で殴りかかってくる。体を反って避けながら前腕を10回斬る。

 「ぐっ!!」

 それにフリードはすぐに距離を取って私を見る。

 「(あの一瞬で何があったというのだ...!? 身の程知らずの小娘から、警戒するべき敵へと変貌したぞ...!?)」

 私は体勢を低くして切りかかる。それを何とか避けながらフリードは攻撃を往なす。でも、往なせば往なすほど私の攻撃の速度が上がっていく。

 「ぐぅ...!! (魔法を使わないなどと言ってられん!!) 蛇雷拳スネーク・サンダーフィスト!!」

 フリードは雷を込めた両手を蛇の噛みつきのように連続で突き出す。しかし、私は体の動きの流れが読んで、避け続け一瞬の隙を突いて、腹部を刺す。

 「ぐぉ...!! 衝雷打ライトニング・インパクトストライク!!」

 フリードは一瞬怯んだ後に、両手を合わせて更に雷を込めると、下に勢いよく振り下ろす。

 ゴォーン!!!!

 落雷の音と鐘を鳴らした音がまじりあったような音と共に雷の衝撃波が部屋全体に広がる。そのせい世界樹の頂上は完全に破壊され、避けた私はそのまま世界樹の外に落ちてしまう。しかし、フリードも私を追って世界樹から飛び降りる。すると、破壊された世界樹の頂上は即座に再生し、何事もなかったかのようになる。

 「...。」

 私は何事もなかったかのように着地すると、目の前にフリードが降り立って睨みつけてくる。

 「やってくれたな小娘。」

 「...。」

 「この雷拳のフリード・フォン・ファーヴァに勝てると思った自身の浅はかさを後悔させてやろう!! 雷帝インペリアルブリッツ!」

 フリードはそう言って、全身に雷を纏わせて、両腕にだけ蒼い雷を纏わせる。

 「...!」

 私はナイフを強く持って、フリードを見据える。

 「雷相手にナイフで挑むとは全く無謀な女だ。」

 フリードはそう言って、電撃の音を立てながら雷の速度で殴りかかってくる。私は動きを読んで避けようとするが、フリードは寸前で軌道を変えて殴ってきた。

 「う...!!」

 「どれだけ動きを読めても、寸前で変えられたら反応はできない...。偶然謎の力に目覚めたからと言って、倒せるほどこのフリード甘くはないぞ!!」

 「でも...倒す...!!」

 「...やってみろ小娘ぇ!!」

 そう言われた私はナイフを持って、一瞬で距離を詰めて切り上げる。だが、フリードはそれを避けた後に横から顔面に殴りかかってくる。私はそれをギリギリまで待って、当たったと同時にナイフをフリードの腹部に突き刺す。

 「ぐぉ...!! ぐぅ...ぉぉぉおおお!!!」

 フリードは痛がりながらも私を殴り飛ばす。私はそのままシルヴァマジアの西側まで吹っ飛ばされる。その最中、フリードが近づいてくるのが見えた。

 「...!!!!!」

 私は地面に着いた瞬間に体勢を立て直して、向かってきたフリードの片目をにナイフを刺す。

 「ぐぉああああ!!」

 「はぁぁ!!!」

 片目を潰され、悶絶しているフリードの頭を蹴り落す。ナイフを後頭部に刺そうとすると、すぐに私の背後に回って掴んで地面に何度も叩きつける。

 「流電撃フロウィングエレクショック!!」

 「...!!」

 その中で私に電流を流すと同時に私は手首にナイフを突き刺す。

 「ぐぁ!!」

 「ぅぅぅぅぅ...!!」

 私は痛みに耐えながら突き刺したナイフを上に引く。

 「...!!」

 それにすぐフリードはナイフを抜いて、距離を取る。

 「...手を切り落とそうとするとは、恐ろしい奴め...。」

 フリードはそう言って、雷の速度で攻撃を仕掛けてくる。私は前に跳んでナイフを刺すと、その場で抜き取って横に蹴り飛ばす。

 「ぅぁ...!!」

 「はぁぁぁぁ!!!!」

 そして、体勢を崩したフリードに追撃を加える。しかし、寸前でかわされ距離を取られる。

 「(確実に適応してきている。馬鹿な...!?)」

 フリードは自身の手を見始める。

 「(震えている? この俺が? こんな身の程知らずの小娘に...臆している...!?) ありえん...ありえん...ありえん!!!! 私は...フリード・フォン・ファーヴァだぞ!! 貴様のような小娘に負けるわけがない!! ましてや、怯えているはずがない!!」

 フリードはそう叫んで、全身を蒼い雷を纏わせて、雷の速度で動き回り攻撃を仕掛けるが、私は動きを読みながらギリギリまで引き付けることを繰り返すことで避け続け、流れるフリードの首元を蹴り飛ばす。

 「ぅぉぉぉぁぁぁぁ...!!」

 蹴り飛ばされたフリードは大量の血を吐く。そしてそれを手で触れて見ると、目を見開いて驚きながら私を見る。

 「バカな...(一撃一撃の重さが、俺より上だと...?) こんな小娘に....俺の計画を邪魔されてたまるかぁ!!! ここで貴様の人生を終わらせてやる!!! 麒麟グラッフィサンダーストライク!!!」

 フリードは全身に纏った雷を両手に集中させて、一瞬で私との距離を詰めて、両手での掌底を繰り出す。

 ドゴォーーー!!!

 落雷が爆発した音と共に、溜めた雷撃が放たれる。

 「...。」

 それが収まったフリードの目の前に私はいない。

 「...消し飛んだか...。」

 なぜなら、背後に回っているから。

 「...!!」

 「(気づいた! でも遅い!!) 暗殺術・第1項! 首狩!!」

 私はそう言いながらナイフの柄でフリードの首を打つ。

 「くっ...!!」

 それを受けたフリードは何とか踏ん張るが、すぐに意識をなくしてその場で倒れた。

 「...倒した...。...!!」

 私は力が切れる前に世界樹を急いで登りに行った。

シルヴァマジア牢獄内

 僕は魔法で牢獄内部から周りの状況を俯瞰ふかんしていた。

 「あの力は...深天極地...。白髪に青い眼なら、羅刹かな? 土壇場で覚醒して、しかもあのフリードさんを倒すなんて...凄い。」

 僕はそう言いながら視点を僕に戻して目の前の牢獄を見て立ち上がる。

 「じゃあそろそろ動かないと、彼女は魔力を持ってない。全体に伝える事はできない。僕がいかないと、クレイ君は泉のところから出られなくなってる。でもそろそろ破れそうだから、助けに行く必要はないかな。休んだ分きっちりと働かないとね。」

 僕はそう言いながら牢獄の鍵穴に魔力を流し込んで開ける。すると、看守が僕に武器を構えて目を見る。

 「...大臣は...倒されましたか?」

 「うん。」

 僕がそう言うと、看守は武器を納めて、複数の書類を取り出して差し出してくる。

 「そうですか...。では、これが細かな資料です。」

 「え?」

 僕が驚いていると、看守は真面目な声で資料がある理由を述べる。

 「あなたが囚われている間、他の幹部の皆さんがフリード大臣の裏工作を調べていてくれました。これがあれば、確実に向けた軍も引かせることができます。」

 「相手側はどうするの?」

 「そちらも信用できるところから依頼しました。そこから、裏工作をしていたヴェルフォルア・スミスを捕らえたという報告がありました。」

 その言葉に僕は笑顔で感謝を述べる。

 「...ありがとうございます。忙しいのに...。」

 「いえ、私も個人的にあなたには恩があります。」

 「そうなんですね。」

 「では、牢獄から出します。ですが、まだ正式な発表はないので、どこに向かうかだけ。」

 「世界樹の頂上まで。」

 「了解!」

 そうして、僕は周りに見つからないように道を選んで世界樹の頂上へ向かう。

その頃 シルヴァマジア 国外避難キャンプ地

 周りの国民たちが心配そうに見守っている。なぜなら、突如現れた銀髪赤眼の男に押さえつけられているからだ。

 「ぐぅ...くっそぉ...!!」

 「3対1でこれとは...弱くて運が良かった。あの2人のどちらかいたら面倒だったがなぁ...。」

 「光琳さん!!!」

 「まぁこれはこれで好都合。」

 「...くぅ...バラガラ...!!」

 この男との戦いは数十分前にさかのぼる。
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