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第四章 バルジェリア皇国編
忠誠の騎士の夢
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―――ナイトメア...ナイトメア...!! ナイトメア・クライン...団長!!
誰かが呼ぶ声が聞こえる。名前だ。名前が聞こえる。誰の名前かわからない。ナイトメア・クライン...俺の名前だ。そう分かった瞬間に体を起こして声のする方に目をやると、包帯を巻いているソフィアの姿があった。
「ソフィア?」
「そうよ。」
ソフィアの姿をまじまじと見て、自分の姿を見る。ようやく頭が起きてきた。そうだ...負けたんだ。俺達は。
「今何時だ?」
「今は8時。寝坊だよ。」
「そうか...。」
今日は陛下が処刑される日。民を奴隷にするか、王族のみの犠牲で終わらせるか。この2つの選択肢のうち陛下が選んだの王族のみの犠牲。つまり、自分たちの命を差し出すというものだった。四方匡の王にこの選択を送った際、即座に陛下、お妃様、姫様、殿下の処刑決行日が決まり、今日の昼、国民たちの前で決行される事になった。
「陛下は?」
「牢屋の中でまだ幼い殿下を妃様と一緒に遊んでやってる。姫様は...牢の隅で黙って座ってる。」
「そうか。」
処刑人は最初、陛下の代わりに来る者が直々に行うはずだったが、それでは絶望が足りないとかで俺が処刑することになった。
「...。」
さんざん俺を鍛えてくれて、一緒に戦ってきたこの剣で今日、陛下、お妃様、姫様、殿下の首を落とす。今まで散々敵を斬ってきたのに、そう思うと手が震える。
「陛下の処刑まであと4時間ある。だから、陛下は外出させられないけど、殿下と姫様が外出させられるから、死ぬ前に遊ばせてやってくれって命令。」
「わかった。殿下と姫様を迎えに行こう。」
殿下とは良く出かけたな。ぶっきらぼうでぞんざいな姫様と違って素直で子供らしい殿下。いろいろ買ったし、団長になってより剣の腕により磨きをかけたら、自分が剣を教えたいなと思ってた。そんな事を思い出してると、もう陛下のいる牢に着いた。中にいる陛下は似合わないボロボロな服を着てる。でも、いつも通りの笑顔を向けて殿下と姫様に声をかける。
「フェシス、ヴィクタ。」
ミドルネームで呼ばれた殿下は俺とソフィアの方を見て笑い、姫様は諦めたような顔で牢の扉に立つ。看守はすぐに牢を開けて姫様と殿下を解放する。
「じゃあ頼むよ。ナイトメア団長。ソフィア副団長。」
「「はっ!!」」
何度も陛下に捧げた返事をして、殿下と姫様を連れていく。背中を向けて歩いていく中、お妃様と陛下の悲しい笑い声が聞こえた。街に出るといつもとは違う雰囲気に殿下は少し悲しそうな顔をするが、それでもいつも通り楽しそうな笑顔を作る。姫様は周りを見て、下唇を強く噛んでいる。
「どこを見ますか? 殿下。」
俺がそう声をかけると、殿下は周りを見てから言う。
「ナイトメアやソフィア、お姉ちゃんが行きたいところに行く!!」
無邪気な声で殿下は俺とソフィア、姫様に笑いかける。そうして、俺は4時間後に自分がすることを忘れて殿下を連れて遊んだ。立ち寄られた店の店員はその時だけ満面の笑顔を浮かべて接客し、普段は厳しい鍛冶屋の親父さんも殿下をこれでもかと可愛がった。
「皆優しいね!!」
「はい。皆、殿下のお父様が...お母さまが...大好きなのです。」
「もちろん、姫様もですよ。」
「知ってるよ。でも、守れなかった。」
殿下の言葉に辛くなった。姫様の言葉に悔しくなった。あの時、あの傭兵達に負けなければまだ戦えてたかもしれない。
「ナイトメア?」
「...すみません殿下。少しぼーっとしていました。」
考えるな。今は殿下と姫様の事だけ考えろ。その後、時間がくるまで殿下と姫様を連れて国中を歩いた。そうして、昼時の鐘が鳴る。
「昼だ。」
「ええ。昼...ですね。」
「「...。」」
何で、楽しい時間は無情にも早く流れていくのだろう。負けてから、陛下とあの会話をするまで凄く長く感じたのに。何で、終わりに向かう時間はこんなにも短いんだろう。...殿下と姫様を牢に送り届けた後、陛下に少し挨拶をした後、牢を後にした。挨拶する時、俺は陛下の顔が見れなかった。自分で殺す顔を見れなかった。
「大丈夫?」
「...大丈夫だ。すぐに処刑の儀が始まる。俺は準備しないといけない...から、ソフィアは誰も侵入できないように見張っててくれ。」
俺はそう言って、ソフィアと別れた後、すぐに自室には戻らなかった。しばらく、これから王のいない国になる風景を見つめた。
「ん?」
そうすると、奥から今日会った人々が走ってきた。明らかに俺の方に走ってきてる。
「どうしました?」
俺が先頭の男性に話しかける。鍛冶屋の親父さんだ。
「騎士団長...俺、この国の為なら奴隷なっても構わねえよ。」
「奴隷...? 何の話です?」
思いもよらない言葉に驚きながらも平静を装う。
「俺、聞いたんだよ。王様、俺達を奴隷にしない為に死ぬんだろ? そりゃ正直ありがてえよ。でも、あんな小さい子まで殺されちまうんだろ? そりゃ酷ってもんだろ。」
鍛冶屋の親父さんの言葉に他の人たちも同調する。そこで10分くらい処刑を止めてくれと言われた。陛下は騎士としての覚悟があるからこそ、選択をしてくれるのはわかっていた。自分たちを犠牲にするお人ではないことは知っていた。だが、殿下は違う。まだ、何の覚悟も決め切れていない子供だ。奴隷になる覚悟はできてる。どうにかしてくれ。
「...処刑の儀がある...これ以上は立ち止まれません。すみませんが、あなた方の期待には応えられない。」
そう言って、国民たちの前から去る。足取りが重い。殿下はまだ覚悟を決めれない子供...処刑するのは酷だ...。わかってる...そんな事当たり前にわかっている。何なら陛下すらも救いたい。だが、俺には力がない。守る力も、陛下の為に戦う力も何もかも足りない。奴隷になる覚悟ができているだと? 殿下に覚悟が決め切れないと言っておいて、何を言ってる。お前たちの子供も奴隷になるんだぞ。
「どうにかしてくれ? ...。」
俺は自分の右手を見る。散々剣を握りしめたこの右手。敵を薙ぎ倒し、切り裂いたこの右手...何ができる? これから、慕っていた人とその伴侶と2人の子供斬る右手...。
「一体俺に何が...。」
そう言いかけて、生まれたばかりの殿下を見せてくれた日の事を思い出す。
―――この子が僕とアリシェスの子供。名前はもう決めてた。伝説の王の名前からとって、名はアーサー。アーサー・ヴィクタ・バルジェリア。
その時の王は嬉しそうに名前を言って顔を見せてくれた。
―――ナイトメア。私は、このアーサー...名前で読んだらフェシスに怒られるね。ヴィクタが生まれてくるために生きてきた気がする。
―――え?
―――この子の為に、もちろんのフェシスもだけど。私は生涯を捧げる。
あの陛下の笑顔が忘れられない。笑いながら赤ん坊の殿下を大事に抱きしめるあの姿を忘れられない。
「...。」
拳を握りしめる。処刑人は...俺だ...。どういう結果になっても、それを背負う義務がある。...覚悟はできた。そうしてから、まるで場面が飛んだかのように処刑場に前にいた。これから処刑の儀が始まる。
「バルジェリア王。何か遺言はあるかな? 無いならば他3名の分の遺言を言え、戦わず恐れていた弱者に遺言を言わせる気はない。いや、そこの王女殿下は聞こう。」
四方匡の王が煽るように言った。陛下は前を向いて訪れた国民たちに告げる。
「私は...この国に生まれてきてよかった。今まで生まれに恥じた事も悔いた事もない。ただ一つあるとすれば、敗れた事だ。すまない。皆を守ることができなかった。皆に当たり前の明日を見せることができなかった。国の為に戦ってくれた皆の家族をまた会わせてやれなかった。国の為に命を賭して戦った仲間たちよ、旅だった仲間たちよすまない。私もお前たちの元に逝くことになった。」
「よき遺言だ。流石は強国バルジェリア最後の王だ。立派な遺言だ。決行しろ。」
俺はそう言われて、剣を持って陛下の横に立つ。
「ナイトメア。私達が居なくなった後の国を頼む。」
それが最後に告げられた言葉だった。振り下ろした剣は陛下の首を落とし、陛下の血に染まる。
「そのまま伴侶の処刑を決行しろ。」
「ごめんね。ヴィクタ、フェシス。私達の元に来なければ、幸せだったろうに...。」
涙を流すお妃様の首を落とす。
「よし。では王女殿下。遺言を聞こう。」
「弱者が強者になった気で吠えてんじゃねえよ。」
「ん?」
姫様は四方匡の王を睨みつけて叫ぶ。
「傭兵団雇って...人質に取ったうちの兵士を裏切らせて、毒盛らなきゃ勝てなかった弱者共が吠えてんじゃねえっつってんだよ!!」
「ほう? よくもまぁ負けた分際で吠えたな? バルジェリアの王は剣の才覚や軍師の才覚には恵まれたが子育てには才能がなかったようだ。決行しろ。」
俺は剣を鞘に納める。それを見た四方匡の王は首を傾げてもう一度言う。
「何をしている? 処刑を決行しろと言ったのだ。」
「できません。」
「何?」
「王女殿下と殿下の命は取りません。」
「正気か? 貴様。」
四方匡の王の声が低く唸るように脅す声色に変わる。
「何してんだ?」
姫様も困惑している。
「その代わりとして。」
「ん?」
「バルジェリアの国民全てを奴隷として差し出します。」
「...んふふ...ふふふふ...はははははははははは!!!! 貴様気は確かか?」
「何言ってんだよ? お前...。」
俺の発言に笑いをこらえきらなくなった四方匡の王は笑いながら訊いてきた。
「正気だとも。」
「それを受け入れたとして、お前は王ではない。奴隷するだけでは足りんぞ。」
「任意で爆破させることのできる首輪、手錠、足枷を取り寄せ四方匡の人間に明け渡す。バルジェリアの国民は全て奴隷だ生まれてきた子供も。聖転騎士団はあらゆる状況で四方匡の人間を優遇しよう。もし反旗を翻す可能性があれば、殿下を人質にするといい。殿下の身柄は四方匡に明け渡す。」
「...!! 何言ってんだお前!!」
回りの人間を吹き飛ばして、姫様が胸倉を掴んでくる。
「お前も裏切り者か!? 父上の選択を踏みにじる気か!?」
「そうです。」
「ぇ...。」
「私はこれからこの国を裏切り、陛下の選択を踏みにじります。」
「よかろう。」
この発言を聞いたからか、四方匡の王は俺の目を見て許した。
「その王女はお前の騎士団に入れろ。それ以外は全てお前の言った条件を飲もうではないか。反旗を翻そうとすれば、そこの幼子の王子の命はいただく。お前のその覚悟に免じて王女と王子の処刑は無しにする。これにて処刑の儀は終わりだ。さぁお前達、国民共に奴隷の焼印をつけに行け!! 抵抗した奴は構わず斬り殺せ!! そこにいる兵士共は王子を連れて来い!! 国に持っていくぞ!!」
そうして、俺はその場に立ち尽くした。次第に声が聞こえなくなっていき、静寂が訪れた時、頬に強い衝撃が走った。
「姫様...。」
駆け寄ってきたソフィアの声が聞こえる。そう気づいた時には姫様に頬を叩かれたことに気づいた。
「あたしと弟を殺せばこれ以上犠牲は出なかったんだぞ!! 何が裏切り者になるだ!! 何が踏みにじるだ!! 苦しいのはお前だろうが!!」
「苦しいのが例え私でも、所詮私だけです。恨まれるのも、憎まれるのも私です。私が耐えればいい。」
俺はそう言って、駆け寄ってきたソフィアも無視してその場から立ち去った。そうしたらまた場面が飛んだみたいに、国民たちが奴隷になっている風景が目に入ってきた。見知った国民たちが四方匡の人間にこき使われながら必死に働いて、何度も謝って、治らない傷をつけられ、まるで道具のように使われている奴隷となった...いいや俺が奴隷にした国民たち。それを見るのが嫌になって後ろを見るとまた場面が飛んだように四方匡の王の前にいた。
「それで? 提案とは何だ?」
「...私の騎士団が敗北した奴らを騎士団として雇いたいのです。」
「ほう? それを許可したら我々にどんなメリットがある?」
「敵が消えます。私達と戦争をする敵が1人もいなくなります。私達に対抗する奴らが私達の味方になるため。」
「だが奴らは反旗を翻すかもしれんぞ?」
「いえ、金さえ出せば。奴らは従います。所詮...傭兵風情なのですから。」
「...よかろう。あれから5年経ったのだ。少しくらいは信用してやろう。」
「ありがたく存じます。」
「ああ、バルジェリアに遣わせた王の代わりは役に立っているか?」
「ええ。とても。」
「...そうか。」
そうして、城を後にする。城門を抜けると、姫様...ロンバートとソフィアが立っていた。
「で? これから何すんの? 聞いてないんだけど。」
「どんな命令でも聞くよ。」
「ティルジェイ傭兵団を味方に引き入れる。」
「は?」
「...わかった。」
俺の言葉に驚くロンバートを無視して、ソフィアと共に情報が来ていた傭兵団の元に向かう。もちろんロンバートも困惑しながらついてきた。そうしてまた場面が切り替わるように森の中に来た。そして目の前に、ガラの悪い連中がいる。中心にいるのが、刈り上げた赤紫色の髪と鋭い目つきに四白眼が特徴の傭兵団団長ティルジェイ・ヴァランそしてその右にいる、青紫色の髪と大きな盾を背負っているのが副団長のギアバシル・レインアズ。
「よう。」
俺がそう話しかけると、ティルジェイを囲んでいた傭兵達が一斉に武器を構えて俺達に向ける。同時にソフィアとロンバートも弓とレイピアを構える。
「別に戦いに来たわけじゃない。」
「だそうだ。武器を納めろ。」
俺がそう言うと、ギアバシルが傭兵達の武器を納めさせる。そうしてしばらくの沈黙。俺はずっとティルジェイの顔を見ていた。なぜならこいつは、あの日俺を負かし、三つの騎士団の壊滅させ、団長達を殺した。俺と同い年の男だからだ。
「今更俺達に何の用だ? 俺に負けた天才剣士君?」
ティルジェイが煽るように言いながら立ち上がり、槍の穂先を喉元に向けてくる。俺は傭兵団の様子、そしてこいつの状態を見て哀れに思いながら向けられた穂先を片手で掴んで答える。
「お前達を聖転騎士団に引き入れに来た。」
「ぷっははははは!!!」
俺の言葉にティルジェイは腹を抱えて笑い出し、それにつられるようにギアバシル以外の傭兵達も一緒になって爆笑した。そうしてしばらくした後、ティルジェイは俺の目を見て威圧するように言ってくる。
「俺に負けた弱小騎士団に入る気はねえよ。」
「今のみすぼらしく哀れなお前ならば俺は完膚なきまでに切り伏せることができるぞ。」
馬鹿にしながらはっきり断ったティルジェイを俺は馬鹿にしながら引き留めた。
「あ゛?」
俺の言葉が余程、癇に障ったらしい。ティルジェイは俺に再度槍の穂先を向ける。
「あんなみっともねえ負け方晒しておいて今の大口叩けるのは素直に感心する。それが事実か、はたまた苦し紛れに出た言葉か、理解するためにてめえのその煽りに乗ってやるよ。」
「おいティル!」
「まぁまぁ熱くなり過ぎたらお前が止めりゃいいだろ? なぁギア? 天才剣士くんよぉ。剣なんて自分から相手の間合いに入っていく欠点だらけの武器じゃ、白兵戦最強の槍に勝てねえことを改めて教えてやるよ。」
「距離取ってちくちく相手を刺す事しか能のない槍では応用性に富んだ剣には劣る事を今度こそ証明してやろう。」
ティルジェイはギアバシルの制止を振り切って、槍を構える。俺は煽ってきたティルジェイを煽り返して、剣を構える。あの時、四方匡との戦争の時、俺はこうやって剣を構えて、ティルジェイと戦った。よく覚えているあの日負けた後に言われた言葉。
「さぁ来い!! 天才って言葉にかまけた雑魚が!!」
「もう俺を雑魚とは言わせないぞ。貧民!!」
そう煽り合いながら俺達は一気に距離を詰め剣と槍が交差する一瞬...勝負は決した。槍を頬に掠めるように避け、ティルジェイの喉元に俺の剣の切っ先が届いた。
「実力に開きがあると、戦いは長引く。遊ぶから。実力が拮抗していると、これも戦いは長引く。どちらも気を抜けないから。だが稀に、一瞬で決着がつくことがある。一時の油断。...だったか? みすぼらしく弱くなった元最強の傭兵?」
「...。」
あの日言われた言葉をそっくりそのまま返すと、ティルジェイは黙って槍を納めて距離を取る。
「あそこまで煽って、勝負して負けたんじゃ。もう騎士団に入るしかねえ。野郎ども、俺はティルジェイ傭兵団を抜け、聖転騎士団に入る。」
「ティルジェイが入るなら俺ももちろん入る。」
意外と潔く騎士団に入ることを選んだティルジェイに続くようにギアバシルも騎士団に加入する流れになっている。
「お前らはどうする? 俺とギアがいない中で傭兵業を続けるか、俺がここで直々に解散させて別々の道を歩くか、いっそお前らも騎士団に入るか?」
ティルジェイは他の傭兵達にそう訊くと、皆口をそろえてティルジェイとギアバシルが行くんだったら当たり前に騎士団に入ることを決断してくれた。
「まぁこのまま傭兵業続けてたところで、戦争はおきねえし、依頼も入ってこねえしで廃業まっしぐらだったからな。少しの間クソかてえ騎士団生活だが安心しろ。ちゃんとこいつらっつうか国か。から金を取り立てるからよ。」
ティルジェイのこの発言に他の傭兵達の士気があがる。止めてほしい。そうして、俺達はティルジェイ傭兵団を連れて行くところで、また場面が飛ぶように汚くなった王城で王の代わりの男から任命式の中で名を呼ばれるところになった。
「ナイトメア・クライン。今回、お前の活躍によりあのティルジェイ傭兵団が聖転騎士団に加わるということで、人数が多くなりすぎている。よって、騎士団を4つに分割し、お前にはそれらをまとめて指揮する立場になってもらい、今回呼んだ他4名に分かれた騎士団を指揮させるように頼む。ナイトメア・クライン。お前を聖転騎士団団長から聖転騎士団総団長へと任命する。」
「拝命しました。」
「ティルジェイ・ヴァラン。貴殿を聖転騎士団第一団長に任命する。」
「拝命しました。」
「ソフィア・ローア。お前を聖転騎士団第二団長に任命する。」
「...拝命しました。」
「ギアバシル・レインアズ。貴殿を聖転騎士団第三団長に任命する。」
「拝命しました。」
「ロンバート・サニーズ...。貴様を聖転騎士団第四団長に任命する。」
「拝命した。」
そうして、下げたくもない頭を下げて、初めての任命式が最悪なものになった。それから、何度か他の団長と合同での訓練や紛争を終わらせた。その過程で、ソフィアとは少し距離ができた気がする。ギアとは少し打ち解けた気がする。ロンバートとはもっと距離ができた気がする。ティルジェイとは...なんだかんだ一番楽かもしれない。喧嘩するだけから。そうやって場面がまた切り替わり、ベッド上で寝転がっている。何で寝転がってるんだろう? 今何してたんだっけ? ...いいや、どうでも。
「あぁ~。このまま眠って。目が覚めなきゃいいのに...。」
そう言って、目を閉じた。
夢からの目覚め
辺りは真っ暗。夜になった。ナイトメアは起き上がって鎧を脱ぎ、夕飯を作る。
「何で今更あんな夢を...。...考えても無駄か。少し歩くか。」
ナイトメアはそう言って、鎧の下に来ていた普段着のまま外に出た。
誰かが呼ぶ声が聞こえる。名前だ。名前が聞こえる。誰の名前かわからない。ナイトメア・クライン...俺の名前だ。そう分かった瞬間に体を起こして声のする方に目をやると、包帯を巻いているソフィアの姿があった。
「ソフィア?」
「そうよ。」
ソフィアの姿をまじまじと見て、自分の姿を見る。ようやく頭が起きてきた。そうだ...負けたんだ。俺達は。
「今何時だ?」
「今は8時。寝坊だよ。」
「そうか...。」
今日は陛下が処刑される日。民を奴隷にするか、王族のみの犠牲で終わらせるか。この2つの選択肢のうち陛下が選んだの王族のみの犠牲。つまり、自分たちの命を差し出すというものだった。四方匡の王にこの選択を送った際、即座に陛下、お妃様、姫様、殿下の処刑決行日が決まり、今日の昼、国民たちの前で決行される事になった。
「陛下は?」
「牢屋の中でまだ幼い殿下を妃様と一緒に遊んでやってる。姫様は...牢の隅で黙って座ってる。」
「そうか。」
処刑人は最初、陛下の代わりに来る者が直々に行うはずだったが、それでは絶望が足りないとかで俺が処刑することになった。
「...。」
さんざん俺を鍛えてくれて、一緒に戦ってきたこの剣で今日、陛下、お妃様、姫様、殿下の首を落とす。今まで散々敵を斬ってきたのに、そう思うと手が震える。
「陛下の処刑まであと4時間ある。だから、陛下は外出させられないけど、殿下と姫様が外出させられるから、死ぬ前に遊ばせてやってくれって命令。」
「わかった。殿下と姫様を迎えに行こう。」
殿下とは良く出かけたな。ぶっきらぼうでぞんざいな姫様と違って素直で子供らしい殿下。いろいろ買ったし、団長になってより剣の腕により磨きをかけたら、自分が剣を教えたいなと思ってた。そんな事を思い出してると、もう陛下のいる牢に着いた。中にいる陛下は似合わないボロボロな服を着てる。でも、いつも通りの笑顔を向けて殿下と姫様に声をかける。
「フェシス、ヴィクタ。」
ミドルネームで呼ばれた殿下は俺とソフィアの方を見て笑い、姫様は諦めたような顔で牢の扉に立つ。看守はすぐに牢を開けて姫様と殿下を解放する。
「じゃあ頼むよ。ナイトメア団長。ソフィア副団長。」
「「はっ!!」」
何度も陛下に捧げた返事をして、殿下と姫様を連れていく。背中を向けて歩いていく中、お妃様と陛下の悲しい笑い声が聞こえた。街に出るといつもとは違う雰囲気に殿下は少し悲しそうな顔をするが、それでもいつも通り楽しそうな笑顔を作る。姫様は周りを見て、下唇を強く噛んでいる。
「どこを見ますか? 殿下。」
俺がそう声をかけると、殿下は周りを見てから言う。
「ナイトメアやソフィア、お姉ちゃんが行きたいところに行く!!」
無邪気な声で殿下は俺とソフィア、姫様に笑いかける。そうして、俺は4時間後に自分がすることを忘れて殿下を連れて遊んだ。立ち寄られた店の店員はその時だけ満面の笑顔を浮かべて接客し、普段は厳しい鍛冶屋の親父さんも殿下をこれでもかと可愛がった。
「皆優しいね!!」
「はい。皆、殿下のお父様が...お母さまが...大好きなのです。」
「もちろん、姫様もですよ。」
「知ってるよ。でも、守れなかった。」
殿下の言葉に辛くなった。姫様の言葉に悔しくなった。あの時、あの傭兵達に負けなければまだ戦えてたかもしれない。
「ナイトメア?」
「...すみません殿下。少しぼーっとしていました。」
考えるな。今は殿下と姫様の事だけ考えろ。その後、時間がくるまで殿下と姫様を連れて国中を歩いた。そうして、昼時の鐘が鳴る。
「昼だ。」
「ええ。昼...ですね。」
「「...。」」
何で、楽しい時間は無情にも早く流れていくのだろう。負けてから、陛下とあの会話をするまで凄く長く感じたのに。何で、終わりに向かう時間はこんなにも短いんだろう。...殿下と姫様を牢に送り届けた後、陛下に少し挨拶をした後、牢を後にした。挨拶する時、俺は陛下の顔が見れなかった。自分で殺す顔を見れなかった。
「大丈夫?」
「...大丈夫だ。すぐに処刑の儀が始まる。俺は準備しないといけない...から、ソフィアは誰も侵入できないように見張っててくれ。」
俺はそう言って、ソフィアと別れた後、すぐに自室には戻らなかった。しばらく、これから王のいない国になる風景を見つめた。
「ん?」
そうすると、奥から今日会った人々が走ってきた。明らかに俺の方に走ってきてる。
「どうしました?」
俺が先頭の男性に話しかける。鍛冶屋の親父さんだ。
「騎士団長...俺、この国の為なら奴隷なっても構わねえよ。」
「奴隷...? 何の話です?」
思いもよらない言葉に驚きながらも平静を装う。
「俺、聞いたんだよ。王様、俺達を奴隷にしない為に死ぬんだろ? そりゃ正直ありがてえよ。でも、あんな小さい子まで殺されちまうんだろ? そりゃ酷ってもんだろ。」
鍛冶屋の親父さんの言葉に他の人たちも同調する。そこで10分くらい処刑を止めてくれと言われた。陛下は騎士としての覚悟があるからこそ、選択をしてくれるのはわかっていた。自分たちを犠牲にするお人ではないことは知っていた。だが、殿下は違う。まだ、何の覚悟も決め切れていない子供だ。奴隷になる覚悟はできてる。どうにかしてくれ。
「...処刑の儀がある...これ以上は立ち止まれません。すみませんが、あなた方の期待には応えられない。」
そう言って、国民たちの前から去る。足取りが重い。殿下はまだ覚悟を決めれない子供...処刑するのは酷だ...。わかってる...そんな事当たり前にわかっている。何なら陛下すらも救いたい。だが、俺には力がない。守る力も、陛下の為に戦う力も何もかも足りない。奴隷になる覚悟ができているだと? 殿下に覚悟が決め切れないと言っておいて、何を言ってる。お前たちの子供も奴隷になるんだぞ。
「どうにかしてくれ? ...。」
俺は自分の右手を見る。散々剣を握りしめたこの右手。敵を薙ぎ倒し、切り裂いたこの右手...何ができる? これから、慕っていた人とその伴侶と2人の子供斬る右手...。
「一体俺に何が...。」
そう言いかけて、生まれたばかりの殿下を見せてくれた日の事を思い出す。
―――この子が僕とアリシェスの子供。名前はもう決めてた。伝説の王の名前からとって、名はアーサー。アーサー・ヴィクタ・バルジェリア。
その時の王は嬉しそうに名前を言って顔を見せてくれた。
―――ナイトメア。私は、このアーサー...名前で読んだらフェシスに怒られるね。ヴィクタが生まれてくるために生きてきた気がする。
―――え?
―――この子の為に、もちろんのフェシスもだけど。私は生涯を捧げる。
あの陛下の笑顔が忘れられない。笑いながら赤ん坊の殿下を大事に抱きしめるあの姿を忘れられない。
「...。」
拳を握りしめる。処刑人は...俺だ...。どういう結果になっても、それを背負う義務がある。...覚悟はできた。そうしてから、まるで場面が飛んだかのように処刑場に前にいた。これから処刑の儀が始まる。
「バルジェリア王。何か遺言はあるかな? 無いならば他3名の分の遺言を言え、戦わず恐れていた弱者に遺言を言わせる気はない。いや、そこの王女殿下は聞こう。」
四方匡の王が煽るように言った。陛下は前を向いて訪れた国民たちに告げる。
「私は...この国に生まれてきてよかった。今まで生まれに恥じた事も悔いた事もない。ただ一つあるとすれば、敗れた事だ。すまない。皆を守ることができなかった。皆に当たり前の明日を見せることができなかった。国の為に戦ってくれた皆の家族をまた会わせてやれなかった。国の為に命を賭して戦った仲間たちよ、旅だった仲間たちよすまない。私もお前たちの元に逝くことになった。」
「よき遺言だ。流石は強国バルジェリア最後の王だ。立派な遺言だ。決行しろ。」
俺はそう言われて、剣を持って陛下の横に立つ。
「ナイトメア。私達が居なくなった後の国を頼む。」
それが最後に告げられた言葉だった。振り下ろした剣は陛下の首を落とし、陛下の血に染まる。
「そのまま伴侶の処刑を決行しろ。」
「ごめんね。ヴィクタ、フェシス。私達の元に来なければ、幸せだったろうに...。」
涙を流すお妃様の首を落とす。
「よし。では王女殿下。遺言を聞こう。」
「弱者が強者になった気で吠えてんじゃねえよ。」
「ん?」
姫様は四方匡の王を睨みつけて叫ぶ。
「傭兵団雇って...人質に取ったうちの兵士を裏切らせて、毒盛らなきゃ勝てなかった弱者共が吠えてんじゃねえっつってんだよ!!」
「ほう? よくもまぁ負けた分際で吠えたな? バルジェリアの王は剣の才覚や軍師の才覚には恵まれたが子育てには才能がなかったようだ。決行しろ。」
俺は剣を鞘に納める。それを見た四方匡の王は首を傾げてもう一度言う。
「何をしている? 処刑を決行しろと言ったのだ。」
「できません。」
「何?」
「王女殿下と殿下の命は取りません。」
「正気か? 貴様。」
四方匡の王の声が低く唸るように脅す声色に変わる。
「何してんだ?」
姫様も困惑している。
「その代わりとして。」
「ん?」
「バルジェリアの国民全てを奴隷として差し出します。」
「...んふふ...ふふふふ...はははははははははは!!!! 貴様気は確かか?」
「何言ってんだよ? お前...。」
俺の発言に笑いをこらえきらなくなった四方匡の王は笑いながら訊いてきた。
「正気だとも。」
「それを受け入れたとして、お前は王ではない。奴隷するだけでは足りんぞ。」
「任意で爆破させることのできる首輪、手錠、足枷を取り寄せ四方匡の人間に明け渡す。バルジェリアの国民は全て奴隷だ生まれてきた子供も。聖転騎士団はあらゆる状況で四方匡の人間を優遇しよう。もし反旗を翻す可能性があれば、殿下を人質にするといい。殿下の身柄は四方匡に明け渡す。」
「...!! 何言ってんだお前!!」
回りの人間を吹き飛ばして、姫様が胸倉を掴んでくる。
「お前も裏切り者か!? 父上の選択を踏みにじる気か!?」
「そうです。」
「ぇ...。」
「私はこれからこの国を裏切り、陛下の選択を踏みにじります。」
「よかろう。」
この発言を聞いたからか、四方匡の王は俺の目を見て許した。
「その王女はお前の騎士団に入れろ。それ以外は全てお前の言った条件を飲もうではないか。反旗を翻そうとすれば、そこの幼子の王子の命はいただく。お前のその覚悟に免じて王女と王子の処刑は無しにする。これにて処刑の儀は終わりだ。さぁお前達、国民共に奴隷の焼印をつけに行け!! 抵抗した奴は構わず斬り殺せ!! そこにいる兵士共は王子を連れて来い!! 国に持っていくぞ!!」
そうして、俺はその場に立ち尽くした。次第に声が聞こえなくなっていき、静寂が訪れた時、頬に強い衝撃が走った。
「姫様...。」
駆け寄ってきたソフィアの声が聞こえる。そう気づいた時には姫様に頬を叩かれたことに気づいた。
「あたしと弟を殺せばこれ以上犠牲は出なかったんだぞ!! 何が裏切り者になるだ!! 何が踏みにじるだ!! 苦しいのはお前だろうが!!」
「苦しいのが例え私でも、所詮私だけです。恨まれるのも、憎まれるのも私です。私が耐えればいい。」
俺はそう言って、駆け寄ってきたソフィアも無視してその場から立ち去った。そうしたらまた場面が飛んだみたいに、国民たちが奴隷になっている風景が目に入ってきた。見知った国民たちが四方匡の人間にこき使われながら必死に働いて、何度も謝って、治らない傷をつけられ、まるで道具のように使われている奴隷となった...いいや俺が奴隷にした国民たち。それを見るのが嫌になって後ろを見るとまた場面が飛んだように四方匡の王の前にいた。
「それで? 提案とは何だ?」
「...私の騎士団が敗北した奴らを騎士団として雇いたいのです。」
「ほう? それを許可したら我々にどんなメリットがある?」
「敵が消えます。私達と戦争をする敵が1人もいなくなります。私達に対抗する奴らが私達の味方になるため。」
「だが奴らは反旗を翻すかもしれんぞ?」
「いえ、金さえ出せば。奴らは従います。所詮...傭兵風情なのですから。」
「...よかろう。あれから5年経ったのだ。少しくらいは信用してやろう。」
「ありがたく存じます。」
「ああ、バルジェリアに遣わせた王の代わりは役に立っているか?」
「ええ。とても。」
「...そうか。」
そうして、城を後にする。城門を抜けると、姫様...ロンバートとソフィアが立っていた。
「で? これから何すんの? 聞いてないんだけど。」
「どんな命令でも聞くよ。」
「ティルジェイ傭兵団を味方に引き入れる。」
「は?」
「...わかった。」
俺の言葉に驚くロンバートを無視して、ソフィアと共に情報が来ていた傭兵団の元に向かう。もちろんロンバートも困惑しながらついてきた。そうしてまた場面が切り替わるように森の中に来た。そして目の前に、ガラの悪い連中がいる。中心にいるのが、刈り上げた赤紫色の髪と鋭い目つきに四白眼が特徴の傭兵団団長ティルジェイ・ヴァランそしてその右にいる、青紫色の髪と大きな盾を背負っているのが副団長のギアバシル・レインアズ。
「よう。」
俺がそう話しかけると、ティルジェイを囲んでいた傭兵達が一斉に武器を構えて俺達に向ける。同時にソフィアとロンバートも弓とレイピアを構える。
「別に戦いに来たわけじゃない。」
「だそうだ。武器を納めろ。」
俺がそう言うと、ギアバシルが傭兵達の武器を納めさせる。そうしてしばらくの沈黙。俺はずっとティルジェイの顔を見ていた。なぜならこいつは、あの日俺を負かし、三つの騎士団の壊滅させ、団長達を殺した。俺と同い年の男だからだ。
「今更俺達に何の用だ? 俺に負けた天才剣士君?」
ティルジェイが煽るように言いながら立ち上がり、槍の穂先を喉元に向けてくる。俺は傭兵団の様子、そしてこいつの状態を見て哀れに思いながら向けられた穂先を片手で掴んで答える。
「お前達を聖転騎士団に引き入れに来た。」
「ぷっははははは!!!」
俺の言葉にティルジェイは腹を抱えて笑い出し、それにつられるようにギアバシル以外の傭兵達も一緒になって爆笑した。そうしてしばらくした後、ティルジェイは俺の目を見て威圧するように言ってくる。
「俺に負けた弱小騎士団に入る気はねえよ。」
「今のみすぼらしく哀れなお前ならば俺は完膚なきまでに切り伏せることができるぞ。」
馬鹿にしながらはっきり断ったティルジェイを俺は馬鹿にしながら引き留めた。
「あ゛?」
俺の言葉が余程、癇に障ったらしい。ティルジェイは俺に再度槍の穂先を向ける。
「あんなみっともねえ負け方晒しておいて今の大口叩けるのは素直に感心する。それが事実か、はたまた苦し紛れに出た言葉か、理解するためにてめえのその煽りに乗ってやるよ。」
「おいティル!」
「まぁまぁ熱くなり過ぎたらお前が止めりゃいいだろ? なぁギア? 天才剣士くんよぉ。剣なんて自分から相手の間合いに入っていく欠点だらけの武器じゃ、白兵戦最強の槍に勝てねえことを改めて教えてやるよ。」
「距離取ってちくちく相手を刺す事しか能のない槍では応用性に富んだ剣には劣る事を今度こそ証明してやろう。」
ティルジェイはギアバシルの制止を振り切って、槍を構える。俺は煽ってきたティルジェイを煽り返して、剣を構える。あの時、四方匡との戦争の時、俺はこうやって剣を構えて、ティルジェイと戦った。よく覚えているあの日負けた後に言われた言葉。
「さぁ来い!! 天才って言葉にかまけた雑魚が!!」
「もう俺を雑魚とは言わせないぞ。貧民!!」
そう煽り合いながら俺達は一気に距離を詰め剣と槍が交差する一瞬...勝負は決した。槍を頬に掠めるように避け、ティルジェイの喉元に俺の剣の切っ先が届いた。
「実力に開きがあると、戦いは長引く。遊ぶから。実力が拮抗していると、これも戦いは長引く。どちらも気を抜けないから。だが稀に、一瞬で決着がつくことがある。一時の油断。...だったか? みすぼらしく弱くなった元最強の傭兵?」
「...。」
あの日言われた言葉をそっくりそのまま返すと、ティルジェイは黙って槍を納めて距離を取る。
「あそこまで煽って、勝負して負けたんじゃ。もう騎士団に入るしかねえ。野郎ども、俺はティルジェイ傭兵団を抜け、聖転騎士団に入る。」
「ティルジェイが入るなら俺ももちろん入る。」
意外と潔く騎士団に入ることを選んだティルジェイに続くようにギアバシルも騎士団に加入する流れになっている。
「お前らはどうする? 俺とギアがいない中で傭兵業を続けるか、俺がここで直々に解散させて別々の道を歩くか、いっそお前らも騎士団に入るか?」
ティルジェイは他の傭兵達にそう訊くと、皆口をそろえてティルジェイとギアバシルが行くんだったら当たり前に騎士団に入ることを決断してくれた。
「まぁこのまま傭兵業続けてたところで、戦争はおきねえし、依頼も入ってこねえしで廃業まっしぐらだったからな。少しの間クソかてえ騎士団生活だが安心しろ。ちゃんとこいつらっつうか国か。から金を取り立てるからよ。」
ティルジェイのこの発言に他の傭兵達の士気があがる。止めてほしい。そうして、俺達はティルジェイ傭兵団を連れて行くところで、また場面が飛ぶように汚くなった王城で王の代わりの男から任命式の中で名を呼ばれるところになった。
「ナイトメア・クライン。今回、お前の活躍によりあのティルジェイ傭兵団が聖転騎士団に加わるということで、人数が多くなりすぎている。よって、騎士団を4つに分割し、お前にはそれらをまとめて指揮する立場になってもらい、今回呼んだ他4名に分かれた騎士団を指揮させるように頼む。ナイトメア・クライン。お前を聖転騎士団団長から聖転騎士団総団長へと任命する。」
「拝命しました。」
「ティルジェイ・ヴァラン。貴殿を聖転騎士団第一団長に任命する。」
「拝命しました。」
「ソフィア・ローア。お前を聖転騎士団第二団長に任命する。」
「...拝命しました。」
「ギアバシル・レインアズ。貴殿を聖転騎士団第三団長に任命する。」
「拝命しました。」
「ロンバート・サニーズ...。貴様を聖転騎士団第四団長に任命する。」
「拝命した。」
そうして、下げたくもない頭を下げて、初めての任命式が最悪なものになった。それから、何度か他の団長と合同での訓練や紛争を終わらせた。その過程で、ソフィアとは少し距離ができた気がする。ギアとは少し打ち解けた気がする。ロンバートとはもっと距離ができた気がする。ティルジェイとは...なんだかんだ一番楽かもしれない。喧嘩するだけから。そうやって場面がまた切り替わり、ベッド上で寝転がっている。何で寝転がってるんだろう? 今何してたんだっけ? ...いいや、どうでも。
「あぁ~。このまま眠って。目が覚めなきゃいいのに...。」
そう言って、目を閉じた。
夢からの目覚め
辺りは真っ暗。夜になった。ナイトメアは起き上がって鎧を脱ぎ、夕飯を作る。
「何で今更あんな夢を...。...考えても無駄か。少し歩くか。」
ナイトメアはそう言って、鎧の下に来ていた普段着のまま外に出た。
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