神様を育てることになりました

菻莅❝りんり❞

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10 アケルの街

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交代の見張りの間に騎士に、何で騎士達がここに居たのかを聞いたら、

「隊長の奥様の家出するという置き手紙を見た隊長が、奥様の実家である伯爵家に馬を走らせて迎えに行ったけど、帰ってきていないと現当主の奥様の兄の言葉に、侯爵家、伯爵家の騎士を総動員して探した結果、人攫いにあった言うことがわかり、隊長権限で動かせる隊である我々が先行隊として動いていたんだ」

ということだった。

俺はイビキをかいて寝ているごろつき達を見て、黒幕は絶対こいつらじゃないと思った。俺達がご飯を食べている時にグーグーとお腹の大合唱をしていたので、縛っている蔦から手だけを出し、猿轡を外してご飯を与えた。

神様の使う魔法だからね。手が使えても絶対にこの拘束からは抜け出せないから出来る荒業だ。

騎士達からは「甘いな」と言われた。確かに甘い対応かも知れないけど、あんなに大きな音をさせられてたら、安眠の妨害だし子供達が自分のご飯を持って行こうとしていたから、したかなくだ。

それに、食べ物があるのに空腹を訴えている人を無視することは出来ない。

そして翌朝、見張りで起きていたついでと、眠気覚ましに朝食を作った。ご飯のいい匂いに釣られて次々と起き出してきた。

朝食を食べ終わった後、出発の準備をしているとき、隊長である旦那さんに呼ばれ、皆から離れた場所に来た。

「君のことは上に報告しないといけない。偶然でも人攫いに拐われた人達を助けてくれたのだから。だから、確認させて欲しい。君は他国の貴族か?」

またもや貴族疑い。偽造収納バッグのせいかな。

「多分貴族ではないです。とある魔法の失敗で、自分の故郷が何処かとか、ここが何処かとか覚えていないんですよ。覚えていることは自分の名前がヨミで、相棒がラグってことと、少しの知識だけです」

俺が一部記憶喪失っていることで驚いた旦那さんは、驚いた後少し困ったように

「記憶がないのに、なぜ貴族ではないと?」

深く突っ込んで欲しくないなぁ。嘘に嘘を重ねたらどこかでボロが出そうだから

「何となくですのよ。ビルナの街でコリーナ様に会われて、その洗練された姿に馴染みが無かったもので。お恥ずかしながら心臓バクバクでしたよ。だんな、、隊長さん達は貴族といっても、騎士様なのでまだ馴染みやすいですけど」

これ以上は勘弁してよ~。口達者じゃないからもういっぱいいっぱいだよ~

俺が旦那さんと言いかけた事に

「そういえばちゃんと自己紹介していなかったな。私はここテンティヴ国で侯爵位を賜っているセドリック マトックと言います。以後お見知りおきを」

と騎士の礼を取った。俺は慌てて

「これはご丁寧に。俺、、私はヨミと言います。そして相棒のラグです。よろしくお願いします」

と頭をさげた。それをみて

「確かに貴族ではなさそうだね。記憶が無いから確実ではないけど、ヨミくらいの年齢なら貴族の礼は体が覚えてるだろうから、記憶がなくても無意識にしそうなものだしな」

俺に言っていると言うよりも、ただの確認の為に言っている感じだ。

「記憶が無いことも考慮して上へ上げよう。申し訳ないが、暫くは我が家で滞在してもらうことになる。報償の事もあるからな」

「本当にただの偶然なので、そんな報償なんていいです。て言うか、あまり目立ちたくないです」

俺が首をブンブンと振りながら断ると、セドリック様は困った顔をして

「ヨミ、どうか私の顔を立ててくれないか?妻や娘、捕らわれていた人達を助けてくれた恩人に、お礼もしない恩知らずにさせないでくれ」

「うっ、そ、んなこと言われたら、断れないじゃないですか」

「ありがとう。感謝するよ、ヨミ」

とキラキラの笑顔で答えた。

あれ、もしかして嵌められた?と思っていると、出発の準備が出来たのか、騎士の一人が近寄っていた。

「隊長、準備が終わりました」

「わかった。ではヨミ、道中の護衛と道案内は我々がしよう」

「・・・よろしくお願いします」

絶対からかってるな、これ。騎士の人も笑いを堪えてるのか、顔を背けて肩を震わせているし。
こうして休憩所を後にして、次の街アケルに向けて出発した。

あの後は何事もなく2日の日程を、幼い子供の事を考え4日かけて無事、アケルに到着した。

到着後は念のため、捕らわれていた人達を医師に見せ、問題がないと分かると、それぞれの家へ騎士達が送り届けた。

ごろつき達は今日はこの門の地下の牢屋へ入れて、尋問後王都へ連行される。

俺はあらかじめ、セドリック様に頼んでいた馬以外の馬車本体を譲り受け、こっそり収納した。けど、その様をアリアちゃんにバッチリ見られていた。

俺は人差し指を口に当てて「内緒な」というと、
大きな瞳をさらに大きくして驚いていたアリアちゃんは、キョトンとしたあとにっこり笑い、俺と同じ仕草をして「ないしょ」と言った。かわいい

アリアちゃんと一緒にセドリック様達と合流して、俺はセドリック様が用意した馬車に乗り、セドリック様家族と一緒に邸へ向かった。

アケルは、セドリック様が管理している領地なのだとか。ビルナの時も思ったけど、領地の名前=領主の名ではないみたいだ。

アケルの街も街の中心にギルドがあり、ギルド正面の道に領主邸があり、ギルドの左右の道にそれぞれ門がある。そして、ギルドの裏側の道にも門がある。

馬車がセドリック様の邸へ着くと、多くの使用人が待ち構えていた。

『おかえりなさいませ、奥様、お嬢様』

「皆、ただいま。心配かけましたね」

「ただいま~」

「俺も帰って来たんだが、、別にいいけど」

若干一名、拗ねている人が居たけど、皆リアさん達の帰りを笑顔で出迎えていた。リアさんとアリアちゃんも、それに笑顔で答えてた。

「クリス、客間を一部屋頼む。それと、小さな篭と小さなクッションもな」

セドリック様は俺を紹介しながら指示を出した。クリスさんと呼ばれた人は、篭とクッションに首を傾げたけど、ラグがポケットから出て、俺の肩に乗ったのを見て笑顔で了承し、直ぐ様指示をだしていた。

《ラグ良かったな、専用の寝床を用意してくれるみたいだぞ》

俺が念話でそういうと

《僕はいつものようにヨミの枕元でいいよ》

と言ったので、俺は好意を無下にしないためにも、ラグを説得した。

《折角好意で用意してくれるんだ。寝心地を確かめるだけはしてみればいい。それで違うと思えば、いつものように寝ればいいさ》

《うん。そうする》

ラグは素直に俺の意見を聞き入れてくれた。
ちなみに、用意された寝床をラグは気に入った。

それからは、セドリック様からもう一度聴取され、ごろつき達やリアさん達、捕らわれていた人達の聴取をまとめて、王都へ報告を上げた。

返信が来るまで、俺はセドリック様の邸から出ることは叶わなかった。なので主に、アリアちゃん達の遊び相手や、リアさんの話相手をして時間を潰していた。

セドリック様とリアさんの間には、アリアちゃん以外にも一人、男の子がいた。
男の子はアルフレッド君といって、リアさんが衝動で家出をしたときには、他家のお茶会に出掛けていて不在だったので、後でこっそり連れ出そうとしていたと、夕食の団欒の時にリアさんが言ってた。

*****
これはまだ休憩所にいた時の話。

僕はラグ、神候補の一人だよ。運がいいのか悪いのか、ヨミがトラブルを拾ってしまった。

僕はまだ生まれて間もないから、邪心を吸収しやすい。仮親であるヨミがいるから、まだ周りの邪心に惑わされる事はないけど、あのごろつきと言う奴ら。あいつらはまずい。邪心の塊すぎる。

そんなのがこんなに近くにいると、いくらヨミがいても、邪心を取り込んでしまう。邪心に染まってしまったら僕は邪神に落ちてしまう。そんなのは嫌だ。

僕が邪神に落ちるよりも、大好きなヨミが居なくなる方がもっと嫌だ。

(来るな!邪心を撒き散らさないでよ!落ちたくない!ヨミと離れたくない!)

僕が強く強くそう思った時、僕の中に入ってきていた邪心がキレイになくなった。そして、理解した。浄化の魔法を会得したと。

(これからはもう怖くない。この魔法があれば僕はもう邪神になることはないんだ。ずっとヨミと居られる)

ずっとずっと一緒にいようね、ヨミ

****
ーーーー
ラグレット 10/100(良)

・育成者 ヨミ

・眷属共鳴
  完全防御(物理、魔法)
  状態異常耐性 
  精神耐性
  念話
  魔法共有
  
・固有魔法(神本人のみが使える魔法)
  浄化 (あらゆる邪を浄化する) 
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