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16 落ちかけの神候補の正体
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王都だけあって中に入るのにかなり時間がかかったが、ギリギリ門が閉まる前に入れた。
中に入ればさすが王都だけあって、コリーナやアケルより格段に大きい。
しかし、邪心の影響か王都全体の雰囲気は暗い。皆黙々と歩いている。門近くにある食堂も、賑わいはなく話している人はいても、小声でぼそぼそと話しているだけだ。
『ここの人達はかなり邪心に影響されているわね。でも神聖獣のおかげで闇落ちまではしてないわね。もししていたらここは戦場だったわ』
俺は一瞬ここの人達が殺しあっているのを想像して身を震わせた。
『ヨミ。僕達が案内するから1柱がいる近くまで行ってみよう』
『ああ』
ラグ達の案内に従い歩いていくと闇は濃くなっていく。しかし、視界を遮ることはなかった。
「こんだけ濃い闇なのに、周りが把握できるなんてなんか不思議だな」
俺はキョロキョロと周りを見ながらこの不思議な視界を確認した。
「本来は見えないものだからね。ヨミは育成者であり、神眼も使える。だから見えないものが見えているの。そうね、今のヨミの状況をちょっと言葉で説明するのは難しいから、見えているけど見えてないって思っていて」
何だそれ?見えているけど見えてない?だからこの不思議な視界?
俺がレティの言葉を考えている間に、やたらと豪邸が立ち並んでる道に来た。しかも、騎士か兵士か分からないけど多くの人が巡回している。
「貴族の住む場所って所か?この先か」
「うん。でももう少し奥の方」
「ワタシの邪眼で見せてあげるわ」
レティがそう言うと、俺の視界がグンと動いた。一歩も動いていないのに物凄い早さで走っている感覚がする。
少し酔いそうになったとき、一件の豪邸の前で止まり、そのあとはゆっくりと豪邸の中に入っていく。
視界はまず、地下へと移動した。地下には牢屋があり、その一つに赤い髪をした少年がいた。その少年はあの時挨拶をしてくれた少年だった。
俺は驚くと共にショックを受けた。第一印象は悪くなかったったからだ。
でもよく少年を見ていみると、その表情に感情がなかった。思い出してみても、挨拶をしてくれたけどその表情は無だった。
それからまた視界は動き、今度は何処かの部屋だった。その部屋のすみの鳥籠に視界は近づいた。そこには、赤い色をしたフクロウがいた。その目も赤かった。あの少年と同じ色合い。
「この子が、、彼が生み出した神候補」
俺が無意識に呟くと、そのフクロウと目があった。しかし、その目は憎しみに満ちていた。
「いったい何が」
そんなに憎いのかと俺がフクロウを見ていると
「あいつはオレを裏切った!オレを売った!卵から孵った時守ると、側にいると言ってくれたのに!何で、なんで、なんで!」
フクロウは狭い鳥籠の中で暴れまわった。その声は憎しみと言うよりも、ただただ悲しそうに泣いているようだった。
あまり暴れるとけがをすると思い、止めようとした時部屋のドアが開いた。
「うるさいぞ!大人しくしろ!くそっ、折角選定者から神を手に入れたのに、この役立たずが!」
この家の主だろうか。その男は手にしていた杖を振り回し、フクロウのいる鳥籠をガンガンと叩きながらわめき散らした。
俺は目の前が真っ赤になり、その男の暴挙を止めようとしたが、体がすり抜けた。
「止めろ!この、止めろといっている!この、この」
何度体がすり抜けようとも、俺は男の暴挙を止めようとした。
「ヨミ、無理よ。ヨミの本体はここにはないから」
「ヨミ」
レティが俺の頬をスリッとしたのかそのツルツルとした感触とラグの小さな手の感触がした。
俺は男を止める手を止め、その手を強く握りしめた。
フクロウはそんな俺の行動に暴れるのを止めた。フクロウが暴れなくなったら、男は杖をおろし、そのまま部屋を出ていった。
「オレもあなたのような人に選ばれたかった。そうすれば、こんな気持ちも知らずにすんだのに」
俺は涙を流しているフクロウに近づき、そっとその体を撫でた。当たり前だが実際には撫でられていない。だけど
「あなたの手は、とても温かい」
そう言って、俺の手に頭をすり付ける仕草をした。
「もう少し待って。必ず助けるから」
俺は自然とそう口にした。すると、フクロウは少し泣き笑いをしたように見えた。
そのとたん、俺の視界は急速に戻っていった。だけど、ちゃんとフクロウの言葉は聞こえた。
「待ってる」
俺達は貴族街を後にして、ギルドで部屋を取った。
中に入ればさすが王都だけあって、コリーナやアケルより格段に大きい。
しかし、邪心の影響か王都全体の雰囲気は暗い。皆黙々と歩いている。門近くにある食堂も、賑わいはなく話している人はいても、小声でぼそぼそと話しているだけだ。
『ここの人達はかなり邪心に影響されているわね。でも神聖獣のおかげで闇落ちまではしてないわね。もししていたらここは戦場だったわ』
俺は一瞬ここの人達が殺しあっているのを想像して身を震わせた。
『ヨミ。僕達が案内するから1柱がいる近くまで行ってみよう』
『ああ』
ラグ達の案内に従い歩いていくと闇は濃くなっていく。しかし、視界を遮ることはなかった。
「こんだけ濃い闇なのに、周りが把握できるなんてなんか不思議だな」
俺はキョロキョロと周りを見ながらこの不思議な視界を確認した。
「本来は見えないものだからね。ヨミは育成者であり、神眼も使える。だから見えないものが見えているの。そうね、今のヨミの状況をちょっと言葉で説明するのは難しいから、見えているけど見えてないって思っていて」
何だそれ?見えているけど見えてない?だからこの不思議な視界?
俺がレティの言葉を考えている間に、やたらと豪邸が立ち並んでる道に来た。しかも、騎士か兵士か分からないけど多くの人が巡回している。
「貴族の住む場所って所か?この先か」
「うん。でももう少し奥の方」
「ワタシの邪眼で見せてあげるわ」
レティがそう言うと、俺の視界がグンと動いた。一歩も動いていないのに物凄い早さで走っている感覚がする。
少し酔いそうになったとき、一件の豪邸の前で止まり、そのあとはゆっくりと豪邸の中に入っていく。
視界はまず、地下へと移動した。地下には牢屋があり、その一つに赤い髪をした少年がいた。その少年はあの時挨拶をしてくれた少年だった。
俺は驚くと共にショックを受けた。第一印象は悪くなかったったからだ。
でもよく少年を見ていみると、その表情に感情がなかった。思い出してみても、挨拶をしてくれたけどその表情は無だった。
それからまた視界は動き、今度は何処かの部屋だった。その部屋のすみの鳥籠に視界は近づいた。そこには、赤い色をしたフクロウがいた。その目も赤かった。あの少年と同じ色合い。
「この子が、、彼が生み出した神候補」
俺が無意識に呟くと、そのフクロウと目があった。しかし、その目は憎しみに満ちていた。
「いったい何が」
そんなに憎いのかと俺がフクロウを見ていると
「あいつはオレを裏切った!オレを売った!卵から孵った時守ると、側にいると言ってくれたのに!何で、なんで、なんで!」
フクロウは狭い鳥籠の中で暴れまわった。その声は憎しみと言うよりも、ただただ悲しそうに泣いているようだった。
あまり暴れるとけがをすると思い、止めようとした時部屋のドアが開いた。
「うるさいぞ!大人しくしろ!くそっ、折角選定者から神を手に入れたのに、この役立たずが!」
この家の主だろうか。その男は手にしていた杖を振り回し、フクロウのいる鳥籠をガンガンと叩きながらわめき散らした。
俺は目の前が真っ赤になり、その男の暴挙を止めようとしたが、体がすり抜けた。
「止めろ!この、止めろといっている!この、この」
何度体がすり抜けようとも、俺は男の暴挙を止めようとした。
「ヨミ、無理よ。ヨミの本体はここにはないから」
「ヨミ」
レティが俺の頬をスリッとしたのかそのツルツルとした感触とラグの小さな手の感触がした。
俺は男を止める手を止め、その手を強く握りしめた。
フクロウはそんな俺の行動に暴れるのを止めた。フクロウが暴れなくなったら、男は杖をおろし、そのまま部屋を出ていった。
「オレもあなたのような人に選ばれたかった。そうすれば、こんな気持ちも知らずにすんだのに」
俺は涙を流しているフクロウに近づき、そっとその体を撫でた。当たり前だが実際には撫でられていない。だけど
「あなたの手は、とても温かい」
そう言って、俺の手に頭をすり付ける仕草をした。
「もう少し待って。必ず助けるから」
俺は自然とそう口にした。すると、フクロウは少し泣き笑いをしたように見えた。
そのとたん、俺の視界は急速に戻っていった。だけど、ちゃんとフクロウの言葉は聞こえた。
「待ってる」
俺達は貴族街を後にして、ギルドで部屋を取った。
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