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17 ある少年の人生
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俺の名前はアルフリート。とある国の男爵の長男として生まれた。産まれた時は赤茶色の髪に、薄い赤色の瞳で父譲りの色だったと聞いている。
だけど大きくなるに従って俺の髪も瞳も真っ赤になってきた。
俺の色が濃くなっていくに従って両親は俺を避けるようになった。
ふと夜中に目が覚めて、何気なく部屋を出て邸を彷徨いていたいたとき、両親の部屋の前を通ると二人の言い合う声が聞こえた。
「なんで、どうして!どうしてあんな濃い赤色になるの!あんな色、私が不貞したみたいじゃない!」
「落ち着け。誰もそんなことは思わない。一歳のお披露目の時は私と同じ色をしていたのだ」
「でも」
俺はこれ以上聞いていられなくて急いで部屋に戻った。それからは、両親にぞんざいに扱われていたから使用人も次第に俺をぞんざいに扱い出した。
そして俺が5歳の時、母が妊娠した。
母の妊娠を機に俺の部屋は屋根裏へと移された。
屋根裏へと移ったあとは、使用人の気が向いたときにしか食事は出なかった。それも薄いスープにカチカチのパン一つだけ。
後の空腹は夜中に庭に出て、井戸の水でしのいだ。ついでにボロボロの布で体も拭いた。
そんな生活が3年続き、とうとう俺は起き上がることも出来ないくらい弱っていった。
(このまま、死ぬのかな?、、それもいいか)
とっくに生きる気力は尽きていた。微かに聞こえる弟と思う子供の声と両親の楽しそうな声をずっと聞いていた。
(なんで俺の髪は濃くなったのかな。産まれたままの色なら父上達に愛してもらえたのかな?弟とも仲良くなれたのかな)
そのまま俺は気を失うように眠った。
いったいいつまで生きていられるのだろうと薄く浮上した意識で思っていると、バタバタとした複数の足音と何か言い争う声が近づいてきた。
「うるさい!そこを退かないか!」
ドアのすぐ近くで声がしたと思ったら乱暴に開けられた。
「父上、お待ちください」
父上の声がしたと思ったら、誰かが俺の近くに来た気配がした。
「何ということを。お前はそれでも人の親か!いや、こんなこと人の所業ではない!この愚か者!」
「しかし、これの色は私の色ではない。こんな色が知られたら妻が不貞を疑われる」
(なんで今更そんな事をいうの?前は否定していたのに。もう、誰にも期待していないつもりだったけど、心の何処かでは待っていたのかな?いつか父上と母上が俺を受け入れてくれるのを。でももういらない。もう誰にも期待しない)
未だに言い合っている父上とお祖父様と思う人の声はもう俺の耳には言葉として入ってはこなく、俺は意識を手放した。
「何が不貞だ!お前は我が家の歴史のなにを学んだ!この色は7代前の当主の色と同じだ。当時の第一王子が我が男爵家の一人娘に恋をして、永久に継承権を放棄する事でこの男爵家に婿として来てくださった。その王子の髪と瞳の色がこの赤だ。代を重ねる毎に色が褪せて今の赤茶になったが、この赤もれっきとした我が家の色だ!、、この子はワシが引き取る。よってベルフリートを次代にすることも認めよう。だが、今後いっさいお前達はこの子に接触することを禁ずる。アル、少し辛いだろうが辛抱してくれ」
死線をさ迷って次に俺が目を覚ましたら知らない部屋だった。しばらくボーとしていたら見たこともない使用人が入ってきて、俺が目覚めていることに気づくとすぐに誰かを呼びながら出ていった。
暫くすると白髪頭の老紳士と白衣を着たお医者さんらしき人を連れて戻ってきた。
「大丈夫か?久しぶりだな。といってもアルは覚えていないか、何せ3歳以来だからな。ワシはアルの祖父、フリートという。よく死の淵より戻ってきてくれた」
お祖父様が俺の頭を優しく撫でながら言った。
「初めまして、アルフリート様。私はこの家の専属医です。お体を見せてもらいますね」
お祖父様はお医者さんに場所を譲ると、お医者さんは俺の手を取り、脈を診たり質問をしたりした。
俺はまだうまくしゃべれない状態なので、お医者さんの手に指を当てることで返事をした。はいなら一回、いいえなら二回握られているお医者さんの手を打った。
お医者さんは一度お祖父様を見て頷くと、お祖父様も頷き返した。そして、お医者さんは俺に向き直ると
「たくさん栄養を取って、たくさん寝ればすぐに元気になりますよ。アルフリート様はまだお若いですからね。数日後にまた来ますね」
「重湯になるが用意させるのから、食べられるなら食べなさい。疲れたろう?ゆっくりお休み」
そうお祖父様が言うと、なんだか目蓋が重くなり、いつの間にか眠りについた。
アルフリートの微かな寝息が聞こえ始めた。
「いつ目覚めるか分からない。保温の魔道具に重湯を入れて置いておくように」
「はい」
適当な指示を出し、この部屋から使用人を遠ざけた。
「ジル、アルは、、」
ジルと呼ばれた医者は首を振り
「完全に心が壊れている。こちらの言葉は理解し返事は返すが、全ての感情が機能していない。そのせいで表情も動いていない。見ていただろう?私の質問には答えていたが、ピクリとも表情は動かなかった」
あの愚かな愚息を叱責したが、こんな状態になるまで気づいてやれなかったワシも同罪だ。
「アル。アルフリート、ワシの生涯をかけてこれからのお前の人生を守ろう。それがワシにできる贖罪だ」
微かに上下する胸だけが、アルが生きていることを証明しているが、それがなければまるで死んでいるように静かな寝息だった。
お祖父様に引き取られてから8年経ち16になった。お医者さんに診てもらい、お祖父様の家の使用人達によくしてもらい体は健康と体力を取り戻した。しかし、俺の心は壊れたままだ。
そして、俺は学園に通う歳になった。
お祖父様に引き取られたとき、俺は父上達の籍から抜けたので、正式な貴族というわけでなく、かといって平民というわけでもない。
父上の子ではなくなったけど、お祖父様の孫ではあるからだ。だから俺の存在は宙に浮いている。
学園側も俺の扱いには困っていたが、お祖父様の孫ということで、ギリギリ貴族として入学させることにしたようだ。
俺はお祖父様に引き取られてからも、いっさい社交はしなかった。だから知らなかった。俺の悪い噂が広まっていることに
噂によると、俺は弟を虐待していて、男爵家の私財を散財しているらしい。
しかも、お祖父様の威光を借りて好き勝手しているとも。
その為、俺は学園で嫌がらせの的にされている。でも、俺が反撃をするでもなく、ただ無表情でやり過ごしていることに気味が悪いと、さらに嫌がらせが悪化していった。
そんなある日、移動の為に階段を下りようとした時、後ろから押され俺はそのまま階段を転がり落ちた。
ふと気がつくと、俺は俺の葬式の様子を見ていた。
俺の葬式の参列者は、お祖父様とお祖父様の家の使用人達と専属医のお医者さんだけだった。
皆泣いている。その涙を見ていたら、なぜか胸がチクチクとした。
俺がお祖父様に手を伸ばすと、白いローブを着て顔を隠した人が現れ俺の手を遮った。
「あなたはもう死んでいます。死者が生者に接触することは出来ません。それよりあなたにやってもらいたい事があるんです。ついてきてもらえますか」
そう言って俺の返事も聞かず、この場から俺を引き離した。俺は見えなくなっていくお祖父様達を最後まで見続けた。
アルフリートを殺した罪人は罪に問われず、今でものうのうと生きている。
罪人が貴族の子息で、アルは貴族でも平民でもない中途半端な存在だったからだ。
アルと養子縁組をしたとしても、爵位は当に引き継いでいる。だから、養子縁組をしたとしてもアルは平民になってしまう。
だからといって、あのままアルの親権を愚息に持たしたままにはできなかった。
「戦争時でもないのに、人の命を奪っておいて、裁かれる事なく日常を過ごす事が許されていいのか。アルの命はそんなにも軽いのか」
爪が手のひらに食い込み血を流しても、そんなものアルの痛みに比べればどうということはない。
アルの49日が過ぎたころ、ワシは愚息に絶縁状を送り、使用人に新しい勤め先を斡旋した。そして、ある場所に手紙を送り、ワシは長年暮らした家を出た。
父上から絶縁状が送られてきて、慌てて父上の家へ行ったが、そこはもぬけの殻だった。邸に戻りお城へ捜索願いを出した。
捜索が始まってから一月後、変わり果てた姿で見つかった。
男爵家よりフリート元男爵の捜索願いが出され捜索を初めて一月後に、元男爵は変わり果てた姿で見つかったと報告が上がった。
それと同じくして文官が慌てたように、真っ青な顔をして、国王である私の執務室に駆け込んできた。
「恐れながら陛下、こちらを」
震える手で手紙を宰相に差し出した。
宰相は訝しがりながらも受け取り、宛名を見て目を見開き、文官を見た。
文官は青い顔のまま頷いた。
珍しく宰相が顔を歪めながら
「フリート元男爵からです」
と机に手紙を置いた。
私は全ての執務を止め、手紙を手にした。
そこには、自らの命と引き換えに罪人に裁きを与えてくれと書かれていた。
しかも、これが私の元に来るのは自分が死んでからだろうとも書かれていた。
「私は愚王だな。犠牲が出ないと何も気づかないとは」
それからはとことんまで学園での出来事や男爵家の事を調べた。
それにより判明した事はあまりにも残酷だった。なんの罪もない一人の子供が犠牲になった事実だった。
男爵家は育児放棄に虐待、嘘の噂を故意に広めたことによりお家の取り潰しに、男爵と夫人はムチ打ちの後、鉱山での労働。男爵子息は悪意のある噂を故意に広めたとしてムチ打ちの後、王都追放の刑に処した。
アルフリートを殺害した子息達は、アルフリートのみならずフリート元男爵の死の原因にもなったとして、極刑。
その親も国が選んだ人物に爵位を譲り、平民落ち。爵位も降爵となった。
学園側もいじめを放置したとして、学園長をクビにして、新しい学園長の元、学園の見直しを命令した。
王家は過去の間違った判断から今回の事が起きたとして、これより先、いかなる事があろうと下位貴族への降嫁や入婿を禁じた。
だけど大きくなるに従って俺の髪も瞳も真っ赤になってきた。
俺の色が濃くなっていくに従って両親は俺を避けるようになった。
ふと夜中に目が覚めて、何気なく部屋を出て邸を彷徨いていたいたとき、両親の部屋の前を通ると二人の言い合う声が聞こえた。
「なんで、どうして!どうしてあんな濃い赤色になるの!あんな色、私が不貞したみたいじゃない!」
「落ち着け。誰もそんなことは思わない。一歳のお披露目の時は私と同じ色をしていたのだ」
「でも」
俺はこれ以上聞いていられなくて急いで部屋に戻った。それからは、両親にぞんざいに扱われていたから使用人も次第に俺をぞんざいに扱い出した。
そして俺が5歳の時、母が妊娠した。
母の妊娠を機に俺の部屋は屋根裏へと移された。
屋根裏へと移ったあとは、使用人の気が向いたときにしか食事は出なかった。それも薄いスープにカチカチのパン一つだけ。
後の空腹は夜中に庭に出て、井戸の水でしのいだ。ついでにボロボロの布で体も拭いた。
そんな生活が3年続き、とうとう俺は起き上がることも出来ないくらい弱っていった。
(このまま、死ぬのかな?、、それもいいか)
とっくに生きる気力は尽きていた。微かに聞こえる弟と思う子供の声と両親の楽しそうな声をずっと聞いていた。
(なんで俺の髪は濃くなったのかな。産まれたままの色なら父上達に愛してもらえたのかな?弟とも仲良くなれたのかな)
そのまま俺は気を失うように眠った。
いったいいつまで生きていられるのだろうと薄く浮上した意識で思っていると、バタバタとした複数の足音と何か言い争う声が近づいてきた。
「うるさい!そこを退かないか!」
ドアのすぐ近くで声がしたと思ったら乱暴に開けられた。
「父上、お待ちください」
父上の声がしたと思ったら、誰かが俺の近くに来た気配がした。
「何ということを。お前はそれでも人の親か!いや、こんなこと人の所業ではない!この愚か者!」
「しかし、これの色は私の色ではない。こんな色が知られたら妻が不貞を疑われる」
(なんで今更そんな事をいうの?前は否定していたのに。もう、誰にも期待していないつもりだったけど、心の何処かでは待っていたのかな?いつか父上と母上が俺を受け入れてくれるのを。でももういらない。もう誰にも期待しない)
未だに言い合っている父上とお祖父様と思う人の声はもう俺の耳には言葉として入ってはこなく、俺は意識を手放した。
「何が不貞だ!お前は我が家の歴史のなにを学んだ!この色は7代前の当主の色と同じだ。当時の第一王子が我が男爵家の一人娘に恋をして、永久に継承権を放棄する事でこの男爵家に婿として来てくださった。その王子の髪と瞳の色がこの赤だ。代を重ねる毎に色が褪せて今の赤茶になったが、この赤もれっきとした我が家の色だ!、、この子はワシが引き取る。よってベルフリートを次代にすることも認めよう。だが、今後いっさいお前達はこの子に接触することを禁ずる。アル、少し辛いだろうが辛抱してくれ」
死線をさ迷って次に俺が目を覚ましたら知らない部屋だった。しばらくボーとしていたら見たこともない使用人が入ってきて、俺が目覚めていることに気づくとすぐに誰かを呼びながら出ていった。
暫くすると白髪頭の老紳士と白衣を着たお医者さんらしき人を連れて戻ってきた。
「大丈夫か?久しぶりだな。といってもアルは覚えていないか、何せ3歳以来だからな。ワシはアルの祖父、フリートという。よく死の淵より戻ってきてくれた」
お祖父様が俺の頭を優しく撫でながら言った。
「初めまして、アルフリート様。私はこの家の専属医です。お体を見せてもらいますね」
お祖父様はお医者さんに場所を譲ると、お医者さんは俺の手を取り、脈を診たり質問をしたりした。
俺はまだうまくしゃべれない状態なので、お医者さんの手に指を当てることで返事をした。はいなら一回、いいえなら二回握られているお医者さんの手を打った。
お医者さんは一度お祖父様を見て頷くと、お祖父様も頷き返した。そして、お医者さんは俺に向き直ると
「たくさん栄養を取って、たくさん寝ればすぐに元気になりますよ。アルフリート様はまだお若いですからね。数日後にまた来ますね」
「重湯になるが用意させるのから、食べられるなら食べなさい。疲れたろう?ゆっくりお休み」
そうお祖父様が言うと、なんだか目蓋が重くなり、いつの間にか眠りについた。
アルフリートの微かな寝息が聞こえ始めた。
「いつ目覚めるか分からない。保温の魔道具に重湯を入れて置いておくように」
「はい」
適当な指示を出し、この部屋から使用人を遠ざけた。
「ジル、アルは、、」
ジルと呼ばれた医者は首を振り
「完全に心が壊れている。こちらの言葉は理解し返事は返すが、全ての感情が機能していない。そのせいで表情も動いていない。見ていただろう?私の質問には答えていたが、ピクリとも表情は動かなかった」
あの愚かな愚息を叱責したが、こんな状態になるまで気づいてやれなかったワシも同罪だ。
「アル。アルフリート、ワシの生涯をかけてこれからのお前の人生を守ろう。それがワシにできる贖罪だ」
微かに上下する胸だけが、アルが生きていることを証明しているが、それがなければまるで死んでいるように静かな寝息だった。
お祖父様に引き取られてから8年経ち16になった。お医者さんに診てもらい、お祖父様の家の使用人達によくしてもらい体は健康と体力を取り戻した。しかし、俺の心は壊れたままだ。
そして、俺は学園に通う歳になった。
お祖父様に引き取られたとき、俺は父上達の籍から抜けたので、正式な貴族というわけでなく、かといって平民というわけでもない。
父上の子ではなくなったけど、お祖父様の孫ではあるからだ。だから俺の存在は宙に浮いている。
学園側も俺の扱いには困っていたが、お祖父様の孫ということで、ギリギリ貴族として入学させることにしたようだ。
俺はお祖父様に引き取られてからも、いっさい社交はしなかった。だから知らなかった。俺の悪い噂が広まっていることに
噂によると、俺は弟を虐待していて、男爵家の私財を散財しているらしい。
しかも、お祖父様の威光を借りて好き勝手しているとも。
その為、俺は学園で嫌がらせの的にされている。でも、俺が反撃をするでもなく、ただ無表情でやり過ごしていることに気味が悪いと、さらに嫌がらせが悪化していった。
そんなある日、移動の為に階段を下りようとした時、後ろから押され俺はそのまま階段を転がり落ちた。
ふと気がつくと、俺は俺の葬式の様子を見ていた。
俺の葬式の参列者は、お祖父様とお祖父様の家の使用人達と専属医のお医者さんだけだった。
皆泣いている。その涙を見ていたら、なぜか胸がチクチクとした。
俺がお祖父様に手を伸ばすと、白いローブを着て顔を隠した人が現れ俺の手を遮った。
「あなたはもう死んでいます。死者が生者に接触することは出来ません。それよりあなたにやってもらいたい事があるんです。ついてきてもらえますか」
そう言って俺の返事も聞かず、この場から俺を引き離した。俺は見えなくなっていくお祖父様達を最後まで見続けた。
アルフリートを殺した罪人は罪に問われず、今でものうのうと生きている。
罪人が貴族の子息で、アルは貴族でも平民でもない中途半端な存在だったからだ。
アルと養子縁組をしたとしても、爵位は当に引き継いでいる。だから、養子縁組をしたとしてもアルは平民になってしまう。
だからといって、あのままアルの親権を愚息に持たしたままにはできなかった。
「戦争時でもないのに、人の命を奪っておいて、裁かれる事なく日常を過ごす事が許されていいのか。アルの命はそんなにも軽いのか」
爪が手のひらに食い込み血を流しても、そんなものアルの痛みに比べればどうということはない。
アルの49日が過ぎたころ、ワシは愚息に絶縁状を送り、使用人に新しい勤め先を斡旋した。そして、ある場所に手紙を送り、ワシは長年暮らした家を出た。
父上から絶縁状が送られてきて、慌てて父上の家へ行ったが、そこはもぬけの殻だった。邸に戻りお城へ捜索願いを出した。
捜索が始まってから一月後、変わり果てた姿で見つかった。
男爵家よりフリート元男爵の捜索願いが出され捜索を初めて一月後に、元男爵は変わり果てた姿で見つかったと報告が上がった。
それと同じくして文官が慌てたように、真っ青な顔をして、国王である私の執務室に駆け込んできた。
「恐れながら陛下、こちらを」
震える手で手紙を宰相に差し出した。
宰相は訝しがりながらも受け取り、宛名を見て目を見開き、文官を見た。
文官は青い顔のまま頷いた。
珍しく宰相が顔を歪めながら
「フリート元男爵からです」
と机に手紙を置いた。
私は全ての執務を止め、手紙を手にした。
そこには、自らの命と引き換えに罪人に裁きを与えてくれと書かれていた。
しかも、これが私の元に来るのは自分が死んでからだろうとも書かれていた。
「私は愚王だな。犠牲が出ないと何も気づかないとは」
それからはとことんまで学園での出来事や男爵家の事を調べた。
それにより判明した事はあまりにも残酷だった。なんの罪もない一人の子供が犠牲になった事実だった。
男爵家は育児放棄に虐待、嘘の噂を故意に広めたことによりお家の取り潰しに、男爵と夫人はムチ打ちの後、鉱山での労働。男爵子息は悪意のある噂を故意に広めたとしてムチ打ちの後、王都追放の刑に処した。
アルフリートを殺害した子息達は、アルフリートのみならずフリート元男爵の死の原因にもなったとして、極刑。
その親も国が選んだ人物に爵位を譲り、平民落ち。爵位も降爵となった。
学園側もいじめを放置したとして、学園長をクビにして、新しい学園長の元、学園の見直しを命令した。
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