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ゆなお

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一章【集結】

二話 見える過去

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 一夜明け、一行は船着き場に行くことになった。簡易テントをしまい、食器等をリュックにしまい込む。それをスティアが背負おうとするとヴィッツが手に取り背負った。
「あ、それは私たちの荷物だから……」
 と言うも
「なんだ、食事と結界付きの安全な場所用意してくれた礼だ。女の子に重い荷物持たせるとか男として恥ずかしいのもある。まあそうは言うが俺は戦うことに関しては無知だからよ。なんかあったときの護衛は頼む」
 と荷物持ちは自分、そして護衛はスティアに頼むことにした。スティアもそれに頷く。
「そう、ね。確かにその方が合理的でもあるわ。ヴィッツ、ありがとう。じゃあ船着き場まで案内するわ」
「わーい、船! 船に乗れるね!」
 ザントは歓びながらふわふわと宙を舞う。
「こうやって見るとエルフって俺たち人間とそんなにかわんねーんだけど、やっぱ違う人間なんだなー」
 ヴィッツがそう言うと
「そうよね。同じ陸人族(りくびとぞく)に分類されるのに人間と呼ばれる類は魔力は低いけど、その分身体能力に長ける。一方エルフは膨大な魔力を持つ分、体力が低い。他にも陸人族は色々いるらしいけど、まあ世界の大半が人間とエルフだからお互い目に入ると言うか違いが目立っちゃうのかもしれないわね」
 とスティアが話す。流石知識欲の塊、いろいろと知っているなとヴィッツは思った。
「そういや俺たち人間とエルフのことって『陸人族』って言うじゃねーか。他にもなんとか族みたいなのがあるのか?」
 ヴィッツがスティアにそう聞くと
「そうねぇ……。私の読んだ書物からだと『海人族(うみびとぞく)』ってのがいるらしいわ。別名『魚人族(さかなびとぞく)』とも言われてる海に住む人間みたいな姿の種族が」
 魚人族と言われているがおとぎ話に出るような上半身人間、下半身魚のような人魚とは違い、見た目の姿は人そのものらしい。だが陸地では生きていけない海の種族であり、髪の色も青や水色と言った特殊な色をしているらしい。他にも色々スティアが話すがあまりに難しい話なのでうなずく程度でヴィッツは右から左へと内容を流した。
「あ、そうそう。それと『空人族(そらびとぞく)』ってのもいるらしいわ。でもあまりにも伝説というか伝承ばかりでハッキリした話じゃないけど、何年かに一度現れるだとか、天使のような存在だとか、竜の使いだとか……もうとにかく「これ!」って決定打に欠ける情報しかないのよねぇ。所詮はおとぎ話なのかしら」
 スティアがうーんと唸っている。
「お前本当すげーな。武術だけでなくそういった知識まできっちり頭に叩き込んでるってのは普通じゃできねーぞ。あ、何か口悪くてすまないな。俺どうもスティアが姫さんだって分かっててもこう礼儀だ作法だ習ってねーからなんか、どう口きけばいいかいまいちわからなくてさ」
 困ったようにヴィッツが言うが
「別にお姫様扱いなんてしなくていいわ。ヴィッツはそのままの口調でいいわよ。こっちもかたっ苦しい口調で話されるよりだいぶ楽よ。城にいた時には「姫! 左様でございますか!」「姫! いかがいたしましょうか!」とか、あれ本当なんか息苦しいのよね……」
 と逆にスティアも困った顔をしていた。
「姫様ってのも疲れるもんなんだな」
「そーなのよ」
 二人は同時に肩をすくめて笑った。そうこうしているうちに
「船! 見えた!」
 とザントが指差し、道が開け海が見える船着き場に到着した。そこでには馬車が何台か来ていて、ボルト城及び周辺の村からの荷物が船に積み上げられてる最中であった。スティアは早速船長に交渉に出る。
「すみませーん。サウザントまで乗せてほしいのですが、私とこちらの人と、それとこの子の三人お願いできますか? 船賃は全員分払いますので」
 スティアはヴィッツとザントを紹介して乗せてほしいことを頼む。荷物優先の貨物船のため、たまに荷物が多すぎて人を乗せられない場合があるからだ。船長は
「ああ、今日は荷が少ないから大丈夫だよ。他にも一名先客がいる。さあ荷物を積み終えたら出発だ。乗っとくれ」
 そう言ってこういう時に乗客がくつろげる甲板へと案内した。
「ありがとうございますっ!」
 スティアに合わせてヴィッツもお辞儀をし、ザントは「ありがとー」と礼を言った。
「俺たちゃまだ荷物を載せる作業がある。ゆっくりしてくれ」
 船長は乗組員と共に荷物を載せ点検する作業へと戻っていった。広い甲板を眺めていると端にある木箱の上に深いフードのローブを身にまとった人影が座っていた。
「あの人ね、さっきの先客の人って。到着までお世話になるし挨拶しておきましょう」
 スティアはローブの人物の側に近づいた。ローブの人物はスティアたちに気付いたようで少しだけ顔を上げる。口元だけが見えた。
「あの、私たちサウザントの街まで行くので、それまで一緒の船での旅になります。よろしくお願いします!」
 そう言ってスティアがお辞儀するとそのローブの人物は木箱から降りて人差し指をスティアに向けた。そしてこう言った。
「スティア・クレト・エレストニア。アルデナス王国第一王女」
 スティアの名前を言い当てて驚いたヴィッツとザントだったが、一番驚いたのはスティア本人だった。何故なら
「何で……何で知ってるの……。ほんのごく一部の関係者しか知らない私のミドルネーム。何故、私の知らないあなたが知ってるの? あなた何者なの?」
 声の主は大人びた女性の声だった。そしてさらに後ろの二人も指差し
「ヴィッツ・ウェアルド。父リンドリウンと母イアナとの間に生まれたワルトゥワ出身。そしてザント・オーリ。他者より魔力が高い分、成体成長に影響があり幼い姿のまま」
 とヴィッツとザントの名前とその素性まで言い当てた。
「お前、何者なんだ?」
 ヴィッツがそう聞くとローブの女性はフードを外した。そこには水色の髪のポニーテールの目つきが鋭い女性の顔があった。

女性は話を続ける。
「ヴィッツ。あなたは父に母の死を伝えるために旅に出た。その途中、スティアとザントと出会い本来ならアルデナスの街に向かうところをサウザントの街へと替えた」
 まるで今までを見ているかのようなその言い方にヴィッツは頷いた。
「ここに四人鍵が揃った。残る四人を探しにサウザントの街へ行く。彼方たちには強制的に私についてきてもらうわ」
 女性がそう言うと
「ちょちょちょ、ちょっと待て! 鍵ってなんだ? 俺は単なる旅人で父さん探しに出ただけだ。なんか訳わかんねー旅に連れて行くみたいな話、何なんだよ」
 戸惑うヴィッツに
「そ、そうよ。私は単にサウザントまでのヴィッツの護衛としてついてくだけだし、ザントは私の友達だから一緒にいるだけだし。一体何の旅だって言うの? 世界でも救うの? 魔王とか世界の消滅とか脅威とかそんなものない世界なのに」
 とスティアも言い返す。女性はふぅとため息をつくと
「私はミーン。ミーン・ソリアエル。髪の色を見てもらえばわかる通り魚人族よ。まあ、今は人の体を得てるから陸でも生きていけるけど。突然で混乱させてしまったようね。まずは私の話を聴いてちょうだい」
 とミーンと名乗った女性はこんな話を始めた。
「もうすぐ千年に一度生まれる竜人が誕生する。そうあなたたちが言う『空人族』よ。竜人が誕生するとき、それは世界のこの星のバランスである光と闇の均衡がほどける時。緩み歪んだ光と闇のバランスを正すため、竜人が生まれる。それを探すには基礎精霊を宿した八人の勇士が必要になる。ザントは風、私は水、そしてスティアは火、ヴィッツは動。そして残る精霊は光、闇、静、地。この八つの精霊を宿した者が揃えば竜人の手がかりがつかめる。そのために選ばれたのがあなたたちよ」
 突然の話に状況が飲み込めない。
「ちょっと待って! 空人族の話っておとぎ話とか絵本の話じゃなくて本当のことなの? それに世界のバランスが崩壊するって、そんな昔話みたいな話を急に信じろだなんて……」
 スティアがそう言うが
「実際に『言い伝え』であり『昔話』なのよ、『現実』の、ね。恐らくサウザント国王ならこの件について知っているはずだわ。私一人では謁見できないから、スティアに頼むわ。サウザント国第一王子の許婚、そうでしょ?」
 とミーンが言う。
「ええ……そうよ。私の許婚はサウザント国王の一番目の息子、カルロよ。どんなやつか見てやろうかと思ってたところだから、いいわ。その話乗ってあげる。でも何でそんなに私たちのことを知っているの? まるで過去を見れるみたいな」
 スティアがそう言うと
「そうよ。私は過去を見る者。過去を知る者、よ。いずれ時が来たら詳しく話すわ」
 と言って甲板を立ち去った。それと同時に船が動き出す。出航の時間のようだ。
「何だ、あいつ……。俺の過去も、俺のやりたいことも全部知ってやがった」
「ボクの名前もしってたねー、すごーい」
「胸の内を探られるような奇妙な感覚だわ。でも何故かしら、あの人どこか憎めないのよ」
「そうか? 俺は気持ち悪いのただ一言だぜ」
「そうね、それもあるんだけど。何か藁にも縋る、そんな思いが伝わってくるの。何かしらこの感覚」
 そんな話をしながら一行の船旅は始まった。
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