34 / 58
四章【理解】
三十三話 魔女の森
しおりを挟むウィル湖付近に戻った一行。エルフの杖で方角の確認をする。
「うん。北東のセルヴィーテの方向を指しているね」
ザントはそう言って杖を仕舞う。
「ここからは森と草原の繰り返しだね。森だと魔物との戦闘もあると思う。荷物持ちの三人以外で極力戦うけど、援護が必要なときはお願いするよ」
ザントがカルロたちにそう言うと
「まあ荷物も大事だからな。だが、いざってときは俺らも戦う」
こうして北東を目指して森と草原を抜けていく。魔物との戦いもいくつか遭遇し、三日後の夕方前にようやく村よりは大きいが街ほどはない規模の町が見えてきた。その町から少し離れたところに、黒い雲に覆われた不気味な黒い色をした低い山が見える。
「なんだ? あれ」
ヴィッツが不思議そうに眺めていると
「あの山……全部腐ってる。木々も大地も魔物の残り火で燃え切ったように死んでる」
ザントは少し悲しそうな表情でその山を見ていた。
「なんだろう。僕は長い間、自然に囲まれて育ったから。あの山を見てると、何かとても不安に感じる」
そう言って山から目を背ける。
「魔物の巣窟もあるって話だ。あの山こそ、そうなのかもしれねぇな」
カルロがそう言うと
「とにかく日が暮れる前にあの町に行きましょう。まずは宿を探すのが先だわ」
ミーンの言葉に一行は町へと向かった。到着した頃には日が沈み、夜になっていた。幸い町は無事のようで活気あふれた様子がうかがえる。入り口付近の宿で一泊した。
一夜明けて外を見ると、ごく普通の町のようで賑わいを見せている。食料などの補充もかねて数日はここで過ごすことに決め、一行は町の中を歩く。大きな広場に出ると、子供が三人いた。その一人がこちらに気付き走ってくる。見たところ十代前半で、長い三つ編みに少しウェーブのかかった髪の、とんがり帽子のいかにも魔法使いといった姿の少女だった。少女は一行の前に来ると
「旅人さんですね! キルトの町にようこそ! 私はファラ。魔法使いを目指す見習いの者です!」
少女は町と自己紹介をした。ファラと名乗る少女に
「見習いってことはまだ精霊と契約が済んでないということね」
とミーンが言う。ファラは
「そうなんです。まだどんな魔法を使うか決めてなくて……。四大属性にしようか、上位四属性は難しいので、他の属性にしようか。本当に悩んでます」
と言ってどの精霊と契約をするか悩んでいることを話す。
「あれ? 精霊って基礎の八属性以外にもあんのか?」
ヴィッツが素朴な疑問を投げかける。
「私たちに必要なのは基礎八精霊。それ以外にも雷や雨、星に花といろいろあるわ。基礎八精霊と比べると特殊な魔法を使えるものが多いのが特徴ね」
初めて聞く話にヴィッツは
「ほえー。魔法の世界もまだまだ知らないこと多いんだなぁ」
と感心する。スティアが
「それであなたはどんな魔法か大体は絞ってるのかしら?」
と聞くとファラは
「私は星か花で悩んでいます。キラキラした星の魔法も素敵だし、花の優しい魔法も素敵だし。とっても悩んでます」
そう言ってうーんと考え込む。そして
「皆さんはもう精霊と契約済みなんですか?」
と尋ねてきた。
「ええ、それぞれが基礎八属性を持ってるわ。そうそう、せっかく自己紹介してもらったのに私たちはまだだったわね」
そう言ってミーンは八人それぞれの紹介をした。それを聞いて
「凄いですね! 四大属性以外の光と闇と動と静まで覚えてる方が一同にいらっしゃるなんて。あー私も早く魔法使えるようになりたいー!」
ファラがそう言って羨ましそうにしていると
「やぁ、ファラちゃん。そちらの旅の方々とお話中かい?」
と男性の声が聞こえてきた。ファラは声の方を向き
「あっ、リックさん! それにハーグさんも!」
と言った。声の方には二人の男性がいた。一人はボサボサな髪の大剣を背負った戦士。もう一人は目を閉じた状態でやってきたサラサラな髪を束ねた術士のような姿。そんな二人がファラたちの元に到着する。大剣を背負った男性が
「旅の方、ようこそ。と言いたいところだが、この町は危険だ。なんせ魔女の住む森が近くにある。ここに来る前に異様な小高い山を見ただろう。あの山からよく魔物が降りてくる。私と彼はその討伐をしている。おっと、申し遅れた。私はリック。しがない戦士さ。そしてこっちが」
「ハーグと申します。と、まあそんな感じで巡回してるのが僕とリックなんです。あれですね。他にも討伐の方々がいますけど、大体は僕らで片付けてるのです」
リックと名乗る男性は丁寧な、ハーグと名乗る男性は少々大雑把な性格のようだ。
「あーそうそう。僕は生まれつき目は見えてないですが、そのあたりは大丈夫なんで気にしないでください。精霊のおかげで普通に歩いたりする分には困らないので。ただ人の顔を認識は出来ないので、どういった顔かまではわからないですけどね。基本声とか音で判断するんで。まあ、そういうわけです」
そう言ってハーグは気楽そうに話す。
「相変わらずハーグの脳天気さには困ったものだが、頼りになる相棒なのは間違いない。話は逸れたが、旅の方はこの町で旅の準備が出来たら早々に去った方がいい。昼間だろうが夜中だろうが、魔物が出る。そこだけは気をつけてほしい」
そう言ってリックとハーグは見回りへと向かった。
「なあ、ファラ。あの山っていうか森っていうか。あれは何なんだ?」
カルロがそう聞くと
「はい。あの森は魔女の森と言われていますが、元々は死の森と呼ばれてました。あの森の中には大量の魔物たちがいて、大地も木もすべて死んでしまった場所です。その魔物の一部がこの町にもやってきます。大昔、一度だけ旅の方が森に迷い込んだ際、森の中で女性に助けられたそうです。なんとか町にたどり着いた旅の方の話では『あの森には魔物を統べる魔女がいる』とのことで、いつしか死の森は魔女の森と呼ばれるようになったんです。旅の方の話がどういう内容を話したかまでは分からないです。私が生まれるより昔の話なので……」
とファラは森の説明をした。
「魔物が頻繁にでる、と言うより魔物がずっと住み着いてる。そんな場所だと聞いています。一斉に襲ってくることはないのですが、それでも時々町の方に来るんです」
ファラの言葉に
「その降りてきた魔物は人を襲ってきたことがあるのか」
とグレイが聞いた。そのグレイの素朴な疑問にファラはしばらく考え込んだ。そして
「そう言われてみると、町に降りてきてウロウロしてて。このまま放っておくと危ないし大地が死ぬからって倒すことが多いです。でも聞かれたら、たしかに凶暴化して襲ってくるということはないなって」
考え込むファラをよそに
「なあ兄貴。なんで急にそんな話を聞いたんだ?」
とカルロがグレイに話すと
「いや。この町に来てから、あの森が気になってな。あの森にいる魔物は他で会った魔物とは違うのではないかと、そう感じた。今までの狂気を感じない」
とグレイは話す。
「闇を司る者としての感か、あるいは能力的なもんなのか。そんなところかな?」
カルロの言葉にグレイはうなずく。そして
「ファラ。すまないが、この町で魔物を討伐している人物を全員連れてきてくれないか。少し情報を整理したい」
とグレイは申し出る。
「分かりました。友達と一緒に皆さんを呼んできます」
そう言ってファラは二人の友達の元に向かうと、それぞれ討伐をしている人物を呼びに行った。そんな様子を見て
「兄貴から他人に話しかけるとか、本当変わったんだなぁ」
カルロが感慨深そうにそう話す。
「いいんじゃねぇか? そんだけ精神的にも大人になったんじゃねーかな」
ヴィッツの言葉に
「兄貴より年下のあんたには言われたくねぇと思うぞ」
とカルロは笑う。ヴィッツは
「つってもよ。グレイのやつ、ここまで来るのに本当精神大人じゃなかったからよ。俺が言える立場じゃねーってのは分かってるけど、現実受け止めてやっと大人になった感じするんだよな」
と話した。
「まあ、そりゃたしかにそうだわな。親父に命令されることだけをやり続けて、交流とかそういったもん断ち切った生活だったからな。そういう意味では兄貴の変わるきっかけはヴィッツであり家族だったんだな」
そんな話をしている間に、先ほどのリックとハーグの他にも数人の魔物討伐をしている人たちが集まった。全員で二十人ほどだろうか。大体はペアやトリオで行動し、チーム交代で見回りをしているらしい。その中でも中心なのがリックとハーグの二人ということだ。グレイは早速彼らに話を聞く。
「旅の者が突然、こんな話をして申し訳ない。だが色々と気になることがあって討伐をしている者たちに話を聞きたい。いくつか質問に答えてくれると助かる」
少しざわつくが討伐隊は皆うなずいた。
「まず、この町に迷い込む魔物は、あの森から来ているのは間違いないか。他の場所からの魔物の可能性はないか」
グレイの問いに
「すべてがあの魔女の森からやってきたものだ。方角からして間違いない」
と答えが返ってくる。
「ならば、その森からやってきた魔物は町の人を、あるいは討伐に向かった者を襲ってきたことがあるか」
そのグレイの問いに討伐隊の面々はお互い顔を見合わせ話す。しばらくその様子を眺めていると
「そういえば、町に迷い込むことはあったが。襲われた人がいたという話は聞いたことがないな」
「それに俺たちが討伐で倒しても、その最中に襲ってくることもなかった」
「ウロウロしたり立ち尽くしたり。特別何か行動することは、言われてみるとなかったな」
全員がそう改めて認識すると、グレイはさらに問いかける。
「ではあの森に入ったことがある人物はこの町にいるのか」
それに対しては
「いや、だれも気味悪がって入ったりしていない」
「俺は近くまで行ったことがあるが、木も大地も腐りきってまともな空気じゃなかった。あと魔物の影も見えた。普通じゃ考えられない数だったよ」
「何度かあの森ごと焼き払おうって言われてた頃もあったが、本当に近くに行くことも怖い場所だ」
「大昔に旅人が迷い込んで、森の中で女性に助けられて外に出ることが出来た。そんな話がある。その女性は魔物を引き連れていたらしく、魔物を統べる魔女だと旅人は言ったそうだ。だからその魔女がいる以上、あの森は生き返らないんじゃないかって言われている」
彼らの話から、旅人を助けた女性が魔女と呼ばれる人物なのではないかということが分かった。グレイは
「色々聞いた話をまとめると、魔物が森から降りてくることは間違いない。だが人を襲ってくることもない。そしてあの森には魔女と呼ばれる人物がいる、ということか」
と言い
「もし、その魔女とやらの考えが分かったならどうする」
そう言うと
「ま、まさか。あの森に入るっていうのか!?」
と討伐隊の一人が言う。
「兄貴、マジで入るってのか?」
カルロが聞くと
「とても気になることがあってな。今の俺なら一人であの森に入れる。それで魔物を統べる魔女と言われている者が何を考え、どうしたいのかが分かれば何とかなるのでは。そう思った」
グレイの目線は森に向かっていた。
「はいはい。どうせ止めたって無駄なんだろ? 兄貴の気が済むならそれでいいさ」
カルロがそう言うと
「まて! そんな一人で、しかも旅の人を巻き添えにするなど……」
と討伐隊の一人が言うが
「かまわん。俺が勝手にやりたいと思っただけだ。だが、俺があの森に行って帰ってきて。そしてその後話すことは信用してほしい」
そう言ってグレイは一人、魔女の森に向かっていった。
町から離れ森に向かったグレイは、その異様な光景に少し眉をひそめた。小高い丘のような緩やかな山に生い茂る木々はすでに枯れ果て黒ずむ。大地も色があせて生気がない。そして森の中にはおびただしい数の魔物の気配を感じた。だがその魔物たちは襲ってくる様子はなかった。獣道がある森の入り口に立つ。すると脳内に声が聞こえる。
『来客は久しぶりだわ。闇を司る者ね。貴方ならこの森に入れるでしょう。大丈夫、その子たちは手出しさえしなければ貴方を襲うことはないわ。頂上の館で待っているわ』
低めの女性の声が聞こえた。グレイは意を決して森に入る。木々の葉は落ちて枝だけとなり、空は見えるが黒い雲に覆われ薄暗い。木の陰にはたくさんの魔物たちがいる。だが声の主のとおり、こちらに敵意はないようで襲ってくる様子はなかった。上へ上へと上っていき、ついには山の頂上にたどり着いた。そこには一軒の大きな館が建っていた。灰色の空の下にある不気味な館。すると一羽の黒い鳥がグレイの元に飛んでくる。
「オキャクサン! オキャクサン! コッチ! コッチ!」
そう言ってグレイを誘導する。館の扉の前に来ると
「イラッシャイ!」
黒い鳥がそう言うと扉は鈍い音を立てて開いた。中は暗い。恐る恐る館の中に入ると扉は自然と閉じた。真っ暗闇になったと思った瞬間、ゆっくりと館の中は明るくなる。目の前には深緑のローブを着た、右目が髪で隠れている黒髪の女性が立っていた。女性は
「闇を司る者。私に何か用かしら」
と尋ねてきた。グレイは
「俺はグレイ。お前の言うとおり闇を司る者。その力を持つ者として、この森に不思議な気配を感じた。興味本位で悪いが、この森の詳細を聞かせてもらいたい。お前が、魔物を統べる者なのかどうか、真実を知りたい」
と言った。すると女性は少し口元を笑わせ
「なるほどね。まあ昔から疑われてきたから、きちんと町の人たちにも話をした方が良さそうね」
と言う。そして
「私はリオドアヌア。気軽にリオと呼んでかまわないわ。そして、私は人間ではない」
と意味深な話をする。
「人間じゃ……ない? たしかに、人と比べると不思議な感じがするが。お前は一体何者……」
グレイがそう聞くと
「真(まこと)の魔法使いって知ってるかしら?」
とリオは言う。
「真の……魔法使い?」
聞いたことのない言葉にグレイは思わず聞き返した。リオは
「真の魔法使い。それは人間の成れの果て。魔法を極めた者のみが、肉体と人間を捨ててなることができる存在。見た目は人間だけれども、そうね体は実体や半実体に近いと言った方がいいかしら」
そう話しながらリオは続ける。
「私は元々キルトの町の生まれだった。あるときからこの森に魔物が頻繁に出るようになって、何人もの調査団が送られては帰ってこなかった。闇の魔法を使う私も調査に向かった。そこで私は思わぬことに巻き込まれた。そこからが本題よ」
リオはグレイを客室に招き、椅子に座らせる。お茶を入れてグレイの前にカップを置くと、向かい合うようにリオも座った。
「長い話になるけれど、聞きたい話なんでしょう?」
リオの言葉にグレイはうなずく。
「ああ。なぜ魔女と呼ばれ、魔物を統べると言われているか。こんな場所にずっと住んでいるのか。そもそもその真の魔法使いになった経緯。色々と聞きたい」
その言葉にリオは
「じゃあ話を続けましょう」
と言って一口お茶を飲み、話を続けた。
「この森の調査に向かった際、私は魔物の現れる瞬間を見た。突然空間に穴が空き、そこから魔物が出てきた。そして私の足下にもその空間の穴が空き、私は見知らぬ場所へと落ちていった。途中で色々な感情が押し寄せてきたけれど、闇の魔法で必死に抵抗した。そしてたどり着いた先は闇の世界だった。私たちとは違う見た目、だけど普通の人たちが生活している世界。私を見た瞬間、その人たちは『狂ってない表の世界の人間が来たぞ』と言ったわ。彼らは私を丁寧に街の長のところへと連れて行ってくれた。長は獣のような姿の人だった。彼は私を見て『世界の穴からよく正気を保ってここまで来れたね。普通の人はここに来るまでに魔物となり、この世界の人を襲い大地を腐らせるのに』と言ったわ。最初は私も意味が分からなかったけど、彼らの話を聞いて理解した。この世界は表と裏があって。表の世界がいわゆる私たちのいる世界。裏の世界が私たちの世界で言う魔物と呼ばれる者たちが本来住む正常な状態の世界。私たちの世界に来る魔物たちは、本来は普通の裏の世界の人たちで、世界の穴に入った瞬間、空気の違いに発狂して表の世界で魔物となるの。つまりその逆もある。私たちの世界の人間が世界の穴から裏の世界に行ってしまうと、魔物となってしまうの。私は、世界の穴に落ちたとき必死に魔法で耐え、そして肉体が滅び真の魔法使いになってしまった。だから裏の世界でも正常に生きていられた。そして長に言われたわ。『君の住む町の近くに世界の穴が頻繁に現れる。我々も好き好んで君たちの世界に行っているわけではない。もし君が真の魔法使いとして生きていくことを選ぶなら、そちらの世界に行ってしまった我々の同胞が暴れないように抑えてほしい』とね。人間ではなくなった私だから、その条件を飲んだわ。こうして表の世界に戻った私は、この森に出る魔物だけだけど、暴れることなく極力森から出ないように見張りの役をすることになった。それでも、興味本位で出て行ってしまって迷惑をかける魔物もいるけどね。だからある意味、この森の主であり、魔物を統べる者でもある。でもそれは魔物を呼び出してるのではなく、魔物を極力町へ出ないよう監視するため。ああそう、真の魔法使いに寿命はないから、私はずっとここにいるわ。何百年とこの森の魔物たちを見てきたわ。魔物になると寿命は縮み、そして自然に死に絶え大地も木々も腐らせ、この森は死の森となった。一度だけ旅人が迷い込んできたわね。私の周りに魔物たちもいたから、怖がっていたわね。なんとか森の出口まで案内したけど。そう、魔物を統べる魔女なんて呼ばれてたのね。間違いではないけど、魔女ではないわ。真の魔法使いよ」
そう長々と話したリオは再びお茶を一口飲む。グレイは長い話を脳内で必死にまとめる。
「正直俺は学がないし頭も良くないから少しずつまとめさせてほしい。お前は元々は普通の人間で、ある日から森に魔物が出没するようになった際に調査隊として出向いた。それは何年前の出来事だ」
グレイがそう言うと
「何年前かなんて忘れたわ。ここは月日も年も時間も何もかもが分からない場所。数百年は経ってると思うから普通の人間の生きられる年月ではないわね」
リオは少し首をかしげて
「そうね。昔は人間だった。ごく普通の闇の精霊と契約した精霊使いだったわ。それだけは間違いない。次の質問は何かしら」
と言う。グレイは
「『世界の穴』と言ったか。それはどういう原理で発生するかは分かっているのか」
と聞く。
「分かっていればこんなことにはならないわ。世界中のあちこちに、表の世界にも裏の世界にも前触れもなく突然開く穴よ。明るい場所にはあまり出ないことは分かっているわ。でも場所も特定出来ないものがほとんどだけど、この森だけは裏の世界からの穴が非常に発生しやすい場所になった、ということかしら。私が子供の頃はこの森も普通の森だったから。だから裏の世界の人たちも困ってるのよ。行きたくもない表の世界に魔物になって行ってしまうし、行方不明になったと思ったら表の世界に行ってしまっていたり。こっちの人間が魔物になって迷い込むこともあるから、どちらの世界にも迷惑な存在なのが世界の穴なのよ」
そのリオの言葉に
「穴に落ちた者を元の世界に戻す手段はないのか」
と尋ねたが
「表と裏の世界を移動する際に豹変してしまうから、元の世界に戻ったとしても元には戻れないわ。身も心も壊れてしまっているから。でも少なくとも狂った彼らを倒すことはある意味救いだから、襲ってきたなら倒しても良い。魂は巡り巡ってこの世界に帰ってくるから。この森の魔物の数は尋常じゃないから私が魔法で制御して精神を落ち着かせているから襲うことはない。それに魔物になれば寿命も数年未満になるから、自然と死んでいくわ。だからこの森は魔物の死骸の跡で死に絶えているのよ。出てくるたびに倒してもいいけど、彼らと一緒にいると色々と考えさせられるわ。好き好んで魔物になったわけでもない彼ら。苦しみながら倒されて死ぬよりは、この森で自然に帰る方が幸せなのよ」
そう言ってリオはまたお茶を一口飲んだ。リオは一息ついて
「まだまだ聞きたいことはあるのでしょう?」
と聞いてきた。今まで質問したこととまだ聞いてない話を整理する。
「真の魔法使い、と言ったな。人の成れの果てとも。それはどういう風なもので、どうすればなれるのか。世界にどれくらいいるのか。俺も他の奴らもなることが可能なのか。色々詳しく聞きたい」
グレイは真の魔法使いについての話を聞いた。リオは
「そうね。どこから話せばいいかしら」
と窓の外を見た。宵闇が広がる窓の外を見ながら昔話を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる



