3IN-IN INvisible INnerworld-

ゆなお

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六章【決着】

四十四話 最後の休息

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 気がつけばそこは小さな町の目の前だった。
「お、おお? なんかあいつが杖を掲げたと思った瞬間、ここに居た」
 カルロがそう言って不思議そうにすると、ヴィッツが
「真の魔法使いってのはな、呪文唱えなくても魔法が使えんだよ。あいつは元々雷の精霊との契約者だが、本来は精霊と契約出来ない身だった」
 と言う。
「精霊と契約出来ない? 魔力の器があるなら魔力の強さに限らず契約出来るんじゃないの?」
 スティアがそう聞くと
「まあプライベートな話だから詳しくは話さねーが。あいつは元々魔力の器を持ってない『魔力欠乏症』だったんだ。数万人に一人、魔力の器を持たずして生まれるヤツがいる。魔力の器がないから精霊が見えないし、契約することも出来ない。でもあいつは奇跡を起こした、というか奇跡が起こった。だから雷の精霊と契約して、そして色々あってこの世界で初めての真の魔法使いになったってわけだ」
 とヴィッツは話した。そして
「『真の魔法使いは人間には存在しない。それが世界の理』って言葉があってだな。ライアットもそれを聞かされてたはずだ。真の魔法使いってのはいわゆる『精霊使い』みたいなクラス分けじゃなくて『真の魔法使いって言う種族』になることだ。人間とは別物になる。だから『人間には存在しない』ってのが世界の理なんだよ」
 するとグレイが
「その話はリオからも聞いたな」
 と言った。ヴィッツは話を続ける。
「ライアットが生きていた時代より前から言われてる言葉だが、その当時はまだ本当に真の魔法使いになったヤツはいなかった。ああそうだ、この世界は三千年くらいの歴史があるけど、実際にはもっともっと長い時間が経ってる。だから三千年より前に人間もいたし、本当は真の魔法使いもいたんだ、完全体ではなかったけどな。でも何があったかは言えねぇがすべての真の魔法使いは自決して滅びた。一度滅びた種族だな。それから新たな歴史として約三千年前がスタート地点となり、そこから数えて初めて誕生した真の魔法使いってのがライアットなんだ」
 と説明をした。
「元々素直じゃねぇし、人間に対しての嫌悪感もあるってのは知ってた。でも、今頼りになるのがライアットしか居なくて賭けてみたが、まあ森を抜けるよりまさか近くの町まで飛ばしてくれるとは思ってなかったけどな」
 そう言って一か八かの賭けをしたことを話した。ヴィッツの話を聞いてミーンは
「流石、世界が生まれてから生き続けている竜の血を引き継ぐだけはあるのね。私にも読めないし知らないことをあなたが知ってるのが不思議だわ」
 と笑う。すると
「だろう! お前らがバカだと思ってた知識無しの俺がここまで世界のことを知ってるのが面白おかしくてたまらないだろう? いや実際、俺も面白すぎて笑えるんだ。俺がこれだけの知識を得る器だったってことがな」
 とヴィッツも笑った。続けて
「とにかく最終目的まであと少しだ。本当ならもう三日か四日くらいはかかってたのが、最短コースで来れた。今日は宿でゆっくり休んだら、本当の、最後の決着だ。特にティアスとグレイはしっかり休めよ。お前ら二人が要(かなめ)だ。グレイは体調一回崩してるから、特に慎重にな」
 とヴィッツは真面目な表情で話した。こうして一行は宿で二人部屋を四つ取り、一度荷物を置いて人の少ないところに集まり話をする。
「ねえ、ヴィッツ。儀式はどうやって進行するのかしら」
 ミーンの質問に
「そうだな。その前に説明しときたいことがある。まず島に持ち込める物が限られてる。ティアスの光の杖とグレイの闇の杖は必須だ。他の皆はいつも通りの武器も持ち込める。だが野宿に使ってたテントや食料は余計な物になるから、本当に『もしもの時』の戦える装備だけが持って行ける」
 そう言ってから
「そんじゃあ、ミーンの質問に答えるな。儀式に関してだが、八勇士はやっぱ揃ってねーとダメなんだわ。俺は竜人だからティアスとグレイの力を世界の天秤に流し込むための役目を担ってる。ティアスとグレイはそれぞれ杖に自身の力を注ぎ込む。これがなかなか難しくてな。『お互いの力が均等』にならねーとバランス崩すんだ。どっちか片方の力が強すぎても、逆に弱すぎてもダメ。均等な力を注がねえといけねーから、二人の息がどれだけ合うかが重要だ。で、その間に残ったヤツらはそれぞれの属性の力でその場の精霊力を静めて欲しい。いわゆる結界状態にしてほしい」
 と説明する。スティアが
「精霊力を静めるって、どんな感じですればいいの?」
 と質問すると
「ああ、集中して自分の属性を最大限引き出すだけだ。魔法使う時みたいに自身の中の精霊の力をとにかく集中! まあ気合い入れてりゃそれでいい。ただ儀式終わるまでずっとだからかなり疲れるけどな」
 とヴィッツが答える。
「うーん。ヴィッツの説明いまいち分からないけど。まあとにかく集中すればいいのね」
 スティアがそう言うとヴィッツはうなずいた。するとザントが
「もし、儀式が失敗することになったらどうなるの? ティアスかグレイの力が偏りすぎて、バランスが崩れたら何か起こるの?」
 と質問してきた。ヴィッツは
「そんときゃ、力が強すぎた方の属性の化身が現れる。そいつをぶっ倒しゃあ、とりあえずその場の属性は一旦落ち着く。その後に再度儀式って感じかな。お互いの均等具合が分かれば割とすぐ終わるよ。失敗してもなんとかなる。その分、労力めっちゃ使うけどな」
 と話した。
「世界の命運を分けた話のはずなのに、君はずいぶんと気楽そうに話すよね」
 ザントがそう言って苦笑いすると
「一発勝負じゃねぇからな。何度かはチャンスがある。だから、成功するまですればいいってこった。まあ失敗した分だけ世界の崩壊が進むから、極力早めに終わらせねーとダメだけどな」
 とヴィッツは笑う。それに対してカルロは
「いや笑い事じゃねぇぞ。マジで世界が崩壊するかバランス保つかが俺らにかかってるんだ」
 と冷静に判断する。そして
「最悪一回目は初めてだから無理だったとしても、二回目で決着付けときたいな。それ以上時間かかると本当に崩壊一直線かもしれねぇ。兄貴に姉貴。お互いの力の具合、確認しておけよ。強すぎてもダメ、弱すぎてもダメってことだ」
 カルロがそう言うと
「分かってはいる。だが、どのくらいの力を杖に注げばいいかを試せるのは本番のみ。今は杖に魔力を注ぐことが出来ない」
 とグレイが言う。続けてティアスも
「ヴィッツの動かす世界の天秤が起動しない限り、杖への魔力注入は不可能なんです。だから、本当に本番が最初なんです」
 と言った。カルロはヴィッツに
「なあ、兄貴と姉貴が言ってることは本当か?」
 と聞いた。ヴィッツは
「ああ。俺が世界の天秤を動かさない限り、二人が持ってる杖はただの杖なんだ。世界の天秤が動いて初めて、魔力を注ぐ器となる。そういう仕組みだから、ぶっつけ本番なんだよ。ただ、注いですぐに化身が出ることはねーから。俺がどっちが強すぎる弱すぎるって説明するから、それで調整して二人に頑張ってもらうっきゃねーんだ」
 と説明した。
「そうか。まあ、兄貴も姉貴も体も心も休めるために寝るなり散歩するなり、好きにすりゃいいか。今日は一日ゆっくり出来る。俺たちもまあリラックスするかね。ヴィッツ、解散でいいか?」
 カルロがそう言うと
「そうだな、これ以上ここで説明することはないし。明日の朝まで自由時間としようか」
 とヴィッツも各自好きにするように言った。こうしてスティアはミーンとナスティとティアスの女性陣で出かけた。ヴィッツはグレイの体調を見るために部屋に戻りそばに居る。カルロとザントは町の高台に上り周りを眺める。見える範囲だと北の方に海が見える。
「あの手前に魔法陣でもあるのかねぇ」
 カルロがそう言うと
「どうなんだろうね。多分、ヴィッツしか分からないんじゃないかな」
 と少し笑いながら答える。
「なんだよ。ずいぶんと嬉しそうだな。明日には世界の命運を分ける俺たちの役割が待ってるってのに」
 そう言いつつもカルロも口元を緩ませて言う。
「だから言ったでしょ? お互い様だって」
 ザントの言葉に
「ははっ。そうだな」
 とカルロは答えた。
「あんたは出会った時はあんなちっこかった子供だったのに、気付いたら俺と四つ違いの姿だ。それに気付けばあんたにゃあだいぶ世話になったな。特にセルヴィーテの酒場の一件、な」
 そう言って少し恥ずかしそうにカルロは頭をかく。
「ふふっ。君は王子らしくない見た目だけど頭脳明晰。判断力も正確で鋭い。そして料理も出来る。サウザント次期国王としての役目がある。ヴィッツの両親が分かった以上、旅に出る必要もなくなったからカルロはすぐスティアと結婚して王位を継ぐんだよね?」
 ザントが聞くと
「帰ってすぐ『はい、結婚式して戴冠式!』って訳にはいかねぇからなぁ。国と国の政略結婚だ。少なくともお互い城に戻って準備してあれこれやることやって。それから結婚式の後に戴冠式かな。俺が国王になってる間はアルデナス国とも関係は良好だろう。あとセルヴィーテとの交流の糸口も掴んだ。あー、どんな仕事がどんだけ待ってんのか、考えるだけでも恐ろしいわ」
 とカルロはため息をついた。
「だーかーら。そのために僕に側近になって欲しいんじゃないの?」
 ザントがカルロの顔をのぞき込んで言うと
「えっ? マジで側近のこと考えてくれてんのか、あんた?」
 驚いた様子でカルロが聞くと
「パッと出のエルフが側近になれるのかは分からないけど、僕はもう決めたよ。君の側近として君を支え、仕事を手伝うって。迷惑だったかな?」
 ザントが悩むような表情でそう聞くと
「いや! あんたがそう言ってくれるなら、誰が何言おうと俺の側近として仕えてもらう! 俺は正直、子供の頃は籠の鳥みたいなもんだった。兄貴というヒーローが現れたが、兄貴は結局振り向いてくれなかった。そこから無人島で生活して、まあ兄貴や姉貴が来てくれたり。二人に頼んで船よこしてもらって、街に帰ったりもしたよ。だけどやっぱ寂しかったんだろうな。だが今はあんたが一番の俺の話し相手だよ。親身に聞いて、悩み相談に乗って、でもたまに意地悪な返答もする。そこを合わせても、あんたと話してるのは楽しいよ。本当に、俺の相棒として側近になって付いてきてくれるか?」
 真面目な表情でカルロがそう言うと
「うん。寿命に差があるから、僕の方が長生きするだろうけど。でも君のそばにいるよ。ずっと、ね」
 とザントは笑顔で答えた。

 一方、女性陣四人で出かけた中のティアスが
「あ、あのっ」
 と三人に声をかける。するとスティアが
「ん? ティアス、どうしたの?」
 と不思議そうな表情で聞いてくる。そんなスティアに対して
「その……私はこの役目が終われば過去に帰ってしまいます。ミーンも同じです。なので、皆さんとこうやってお出かけしたりしていると……とても辛いんです」
 とティアスは困り顔で返答した。ティアスが下を向いてしまう。スティアはティアスの前に立つと
「分かってるわよ。だからこそ、思い出作りましょう。『ああ、あのとき楽しかったな』って思える方が『あのとき辛かったなぁ』って思い出すよりいいでしょ?」
 そう言ってティアスの頭を撫でる。ナスティも
「そうですよ! 私とティアスは元々同じ仕事をしてましたし。ここまでずっと一緒に旅も続けました! もうあと一日ですよ? いっぱいいっぱい、楽しい思い出作りませんか?」
 と言う。ミーンも
「姫、スティアとナスティと、そして私と。この普通なら体験できなかった『私たちとの千年後の世界』色々楽しみましょう」
 と言った。三人の言葉にティアスはそっと顔を上げた。そして
「そう、ですね! 大事な役割を担っている私がこんな風じゃだめですね。それじゃあお言葉に甘えて、皆さんと色々この町のお店とか回りたいです」
 と笑顔で言い
「それでいいのよ。二人がこの時代に生まれ変われるか保証はないし、生まれ変わったとしても記憶があるとも限らない。でも、どこかで会えたらいいわね。会えなくても、私たちは仲間で友達よ。もちろんあのうるさい男連中もだけどね」
 とスティアが頭を抱えながら言った。こうして普段寄らなかった小物屋や服屋に寄って、こんなものを部屋に飾りたい、こんな服を着てみたいと色々楽しんだ。

 部屋に戻っているヴィッツとグレイ。グレイは上着を脱ぎ、ベッドで横になっている。その横に椅子に座ったヴィッツがいる。
「どうだ? 体調の方は、まだ引きずってるか?」
 と聞くと、グレイは左手を見せる。
「手の跡はもうなくなった。体の方は少しだるさが残っている」
 そう答え
「あの木々をかき分けた時、どうも毒の枝を触ってしまったようだな。すまん、迷惑をかけた」
 と寝たまま謝る。ヴィッツは
「まあ、あれはしゃーない。ヴィテジアの枝はマジで見分け付かねぇし、俺にも判別不可能だ。普通はただの木なんだけどよ。ライアットが言ってたとおり、たまに突然変異で一部分だけ毒持ちの枝として生えてくる。一度触れればその毒は触れた者の体内に入り、普通の枝に戻る。だからどうしようもねぇんだ。普段なら薬常備してるはずだが、たまたま切れちまってたんだろうな。俺とティアスで取りに行く羽目になっちまった」
 と説明する。
「取りに行くのに二人必要なのは、何か理由があるのか?」
 グレイが聞くと
「あー、えーと。多分、その花が咲く原動力ってのが『お互いの絆そして愛』なんだと思う。それでライアットは俺たちを試したんだ。まあ、そのおかげでお前を助けるための薬は出来たし、あいつは俺たちを認めてくれてここまで飛ばしてくれたってわけだ」
 ヴィッツがそう説明する。グレイは聞きながら笑う。
「な、なんだよ。何、笑ってんだよっ」
 ヴィッツが困ったように言うと
「いや。お前とティアスの絆の深さが分かって面白いな、と思ってただけだ。あいつが生まれ変わったらやはりあいつと結婚するのか?」
 グレイがからかい半分にそう言うと
「まっ、まだティアスがこの時代に生まれ変わる保証がねぇよ! それに、旅が終わってすぐ過去に戻って、直後生まれ変わったとしてもさ。ティアスが十歳なら俺はもう三十だぞ。結婚できる十八なら俺は三十八のおっさんだ。釣り合うもんか」
 とひねくれた様子でそっぽを向いた。そんなヴィッツを見てグレイはさらに笑う。
「別に年の差など気にする必要はない。お前があいつのことを好きなら、それでいいじゃないか」
 グレイの言葉を聞いて
「なんだ……お前、ずいぶん俺とティアスのこと気にかけてっつーか、応援してくれてんのか?」
 と聞く。グレイは
「まあな。親友を祝福したい。その気持ちだけじゃ駄目か?」
 と逆に聞いてきた。そんなグレイの言葉にヴィッツは
「そっか。じゃあその気持ちありがたく受け取っとくよ。まあどうせ俺の予想じゃ、生まれ変わったティアスにも会えないし、ずっとワルトゥワの村で過ごすんだろうなぁ。はぁ~。村に帰ったら、ハーミルのやつに『結局、出会いもなしに帰ってきたのか』って笑われそうだ。あっ……そういや父さんと母さんのこと、どう話そうかな」
 と急に話題を変えた。察したグレイは
「村の皆の記憶が改変されたこと、か」
 と言う。ヴィッツはうなずき
「多分、村の皆の記憶は俺の母さんが流行病で死んだことになってて。父さんを探しに村を出たって、そう思ってるままなんだ。そこの記憶の改変はそのままじゃねーとダメだからさ。そしたら結局、俺は村の誰にも真実を言えない、嘘を貫き通さなきゃなんねーんだなって思ったら申し訳ないなって……」
 少しうつむくヴィッツに
「だが、真実を言えば混乱を招く。全員が不幸になりたくないなら、嘘を通し続ける必要もあるだろう。辛かったらたまに城に来ればいい。お前は精霊と契約破棄しなければ、転送魔法でいつでも城に来れるし、村にも戻れる。俺で良ければ話を聞く。自分の嘘を悪いものだと思うな。お前の嘘は大事な、皆を護るための嘘だ」
 と励ました。その言葉にヴィッツは
「ははっ。お前もそうやって人を励ますのが上手くなったな。最初は他人のことなんてほとんど考えなくて。でも、俺がお前の心を開いて家族とも会って、お前はそう言う意味でやっと大人になれたな」
 そう言って笑った。グレイは照れながら
「ま、まあ自覚はしてる……と言うか過去の自分がどれだけ独りよがりだったか今になってよくわかった。それを打ち破るきっかけは、最初がお前だったんだ。だから俺はお前の力になりたいし、応援したい。そう思っている。出来る事なら……」
 と言いかけて
「あ、いや……。ちょっと疲れたから俺は仮眠する。また夕食の時間に」
 とグレイはシーツを被って壁の方を向いてしまった。グレイが何を言おうとしたか気になるが、まだ病み上がりのためそっとしておくことにした。ヴィッツはそのまま椅子を窓際のテーブルに戻すと、部屋を出て散歩に出かけた。夕飯は全員揃って宿の食堂で食べ、風呂で身を清めて万全の体勢で旅に出るため、早めに眠りについた。こうして準備を整えた一行は朝になり、宿を出て村を出て北を目指した。
「ねぇ。不要なものは持っていけないって言ったわりには、テントとか全部持ってきたけどいいの?」
 スティアが聞くと
「一応今まで世話になった荷物たちだ。一回サウザント城に荷物を送り出してから、俺たちはルードリー海域に入る」
 とヴィッツは言った。
「荷物を転送する手段があるってこと?」
 スティアの追加の質問に
「ああ、そうだ。とにかく魔法陣に向かったら教えるよ」
 とヴィッツが言う。そのまま荷物を背負い、ヴィッツたちは魔法陣のある場所に向かった。一時間ほど歩くと、そこは何もない岬の先端だった。草に覆われたその岬を見て
「何もないわね。何か洞窟とか祠的なものがあるのかと思ってたけど。ヴィッツ、確かにここで合ってるのかしら」
 ミーンがそう言うと
「間違いない、ここで合ってるよ。皆、ここまで下がってくれ」
 とヴィッツは少し後ろに下がり背負った荷物を地面に置いて、北を向いて両手を振り全員がヴィッツの後ろに来るように案内する。ヴィッツに言われるままに全員下がる。そして
「こっからは竜人である俺の出番だ。ちと衝撃が来るかもしれねぇ」
 そう言ってヴィッツは右手を地面に付けて何か唱えた。次の瞬間、衝撃と共に目の前の岬一杯に光る巨大な魔法陣が現れた。ヴィッツ以外は驚いた。
「何これ。結界の魔法陣とかと全然違う。凄い魔力を帯びた魔法陣だわ」
 スティアは驚く。
「これ、ヴィッツが呼び出したの?」
 ザントが聞くと
「俺以外呼び出せない、ここにある転送用魔法陣だ。竜の血が流れた竜人のみが使える。ああ、変身は特にしなくても大丈夫だから、人間の姿のままでも使えるんだ。竜の血に反応するんだ。それじゃあちと魔法陣を調整してサウザントの転送魔法陣に座標を指定っと」
 魔法陣の文字が変わる。そしてヴィッツは
「おーい。魔法科学研究所の誰かー。俺の声が聞こえるかー」
 と魔法陣に向かって声を上げる。するとしばらくして
『えっ、今ヴィッツ様の声がこっちから聞こえましたよね?』
『ああ、転送魔法陣の方から声が……魔法陣が光ってる?』
 二人の研究員の声が聞こえ
「おー繋がった! 今からそっちに荷物だけ送り届けるから預かっといてくれ!」
 と言う。
『えっ。荷物を転送? 登録されてない、ましてや人間ではない荷物だけを?』
『それより転送魔法陣から声が出るなんて信じられない!』
 と混乱した様子の研究員に
「へへっ、竜人様の力舐めんなって! おーい、みんなー。不要な荷物を魔法陣の中心に置きな!」
 ヴィッツがそう指示し、スティアとカルロは各自の、ザントがヴィッツの持っていた分を抱えて魔法陣の真ん中に置く。
「よし! それじゃ魔法陣の外に出な」
 ヴィッツの指示に従い三人は元の場所に戻る。そしてヴィッツが何かを唱えた瞬間、魔法陣の中心にあった荷物が消えた。そして
『うわっ! 転送魔法陣にたくさんの荷物が来た!』
『ヴィッツ様! 今、竜人がどうとかおっしゃいましたよね? 竜人は見つかったのですか?』
 と聞いてくるも
「急ぎの用事なんで、詳しいことは任務終えてから話す! そんじゃあ通信切るぜ!」
 とヴィッツは一方的に魔法陣を書き換えて通信を切った。あっけにとられる全員を見て
「まあこういうわけで、転送魔法陣とこの魔法陣を直結させて荷物を送った」
 ヴィッツの説明に
「あの転送魔法陣は人を登録して送ったり引き戻したりするもんだぞ。竜人の血ってのは本当すげぇことが出来んだな……」
 とカルロは驚いた様子で言った。
「さあ、準備は整った。全員魔法陣の中心に集まってくれ」
 ヴィッツは魔法陣の真ん中に立つと、全員を呼ぶ。中心部に集まると
「八人乗るにしても広すぎない? 二十人くらい乗れそうな大きさの魔法陣よね」
 とスティアが言う。ヴィッツは
「そりゃあ、乗るのが八人とは限らねぇからな。八精霊の勇士と光を司る者と闇を司る者と竜人。多ければこれに何人かついてくる場合もあるってわけだ。この時代はたまたま八人で良かったってだけだ」
 と説明する。
「じゃあもう出発するぞ」
 そう言ってヴィッツが何かを唱えると、全員は一斉にその場から消えた。
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