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終章【終点】
四十七話 ただいま、我が故郷
しおりを挟む『親愛なる父さんと母さんへ。
父さん、母さん。あれから十年が経ちました。
母さんは俺たちが任務を遂行して、もう消滅してしまいましたね。
父さんも次の世界の崩壊の危機が来るまで眠り続けているでしょう。
俺は今、兄さんと一緒にワルトゥワの村で暮らしています。
ハーミルのヤツもまさか俺に兄が居たとは、と驚いてました。
とりあえず混乱を防ぐために「父さんには会えなかったけど生き別れの兄に会えた」と話しておきました。
嘘で騙し続けるのは気が引けますが、村の皆を混乱させないためにも、俺と兄さんの正体は秘密のままで暮らしています。
俺は今、三十歳になり、兄さんも三十二歳になりました。
兄さんと二人で暮らしてますが、兄さんが料理上手なので俺も教えてもらって、今では普通の料理くらいは作れるようになりました。
そうそう、時々と言うより結構な頻度で俺はサウザント城に遊びに行ってます。
カルロはスティアと結婚してすぐ即位し、最初こそスティアと側近になったザントに手伝ってもらって国王の仕事を必死にしてました。
でも三十四歳になったカルロはすっかり国王としての威厳がある風に変わったと感じます。
ザントは俺と同い年ですが、今でも見た目は当時とほとんど変わりません。
若い姿ながらも切れ者の側近として有名になってるみたいです。
カルロ曰く「あいつは怒らせるとこわいからちゃんと言うこと聞くようにしてる」そうです。
スティアはその豊富な知識と勤勉さでカルロの代わりに指示に回ることも多いそうです。
なんでも「国王陛下より指示が上手い」とまで言われてるらしいです。
カルロとスティアの間には五人の子供が生まれました。
強気な長女に弱気な長男、そして自由奔放な次女に甘え上手な三女、とにかくやんちゃな次男という感じだそうです。
次期国王になる長男がこんなに弱気でどうする、とカルロとスティアは頭を悩ませてるみたいですが、多分二人の子供なので修行に出る十五を過ぎれば大丈夫だと思います。
ナスティは実家に帰り、過去の自分がしてきたことを清算して、今では真面目に仕事をしているとのことです。
なんでもアルバイトで入った雑貨屋の店主の男性と結婚して、二人で経営していると聞いています。
相変わらず料理音痴かと思っていましたが、旦那さんに熱心に教えてもらって、少しずつまともな料理が作れるようになったとのことです。
それより問題はグレイです。
あいつはことあるごとに俺を城に呼び出しては、話を聞いてくれと言ってきます。
まあ親友だから仕方ないとはいえ、やっぱり年上なのに俺に甘え過ぎな気がします。
もう会えない二人、ティアスとミーン。
きっと過去に戻った二人は、ティアスは王位について、ミーンは側近として頑張ったのでしょう。
そして現在、生まれ変わっているはずです。
でも今の時代に生まれ変わってるかは分かりません。
いつの日か会えるでしょうか。
それではこの辺で。
ヴィッツ・ウェアルド』
そう手紙を書いたヴィッツは、手紙をくしゃくしゃに丸めて一階の台所へと向かった。台所には昼食の準備をしているティルトがいる。そんなティルトの横に来て、先ほど書いて丸めた手紙を燃えるかまどの中に投げ入れた。
「なんだ、ヴィッツ。書いた手紙燃やしてんのか?」
ティルトが聞くと
「ああ、父さんと母さん宛ての手紙だ。他の誰にも読まれちゃいけねー内容だ。とりあえず手紙にしたためて、父さんと母さんに想いが届くように燃やしてんだ」
とヴィッツが答えた。
「はは、お前らしい行動だな。それで、飯食ったらまたサウザントに行くのか?」
ティルトは料理をテーブルに並べる。ヴィッツは椅子に座りながら
「ああ、またグレイから呼び出されてるからな」
とため息をつきながら笑う。
「もう、お前らいっそのこと一緒に暮らせばどうだ? それくらいお前サウザントに行ってるだろう」
料理を並べ終えたティルトはヴィッツの向かい側に座りながら話す。
「まあそれはそうなんだが。グレイは今じゃ魔法科学研究所のツートップだ。ディア総責任者と並んで研究に取り組んでる。俺が一緒に暮らしたところでどうにもならねーだろ」
ヴィッツがそう言うが
「でも『お前の飯が食いたい』とか『俺の話を聞いてくれ』とかそんな野暮用だろう? それもう一緒に暮らした方が早いレベルの懐き具合じゃないか」
とティルトが言う。
「ははっ、まあな」
ヴィッツはそう言いながら食事を食べる。ティルトも食べながら
「俺はこのままワルトゥワの村で暮らしたい。いやぁ、この村は居心地いいんだわ。だからお前はサウザントにでも引っ越したらどうだ? そうすりゃ行き来しなくていいし、会うのもすぐだし。っていうか、お前ら本当一緒に暮らした方がお互いのためだろう」
と話す。ヴィッツは苦笑いしながら
「そうだなー。今日、グレイに会って色々話してみるよ」
と答えた。こうして食事を終えたヴィッツは、ティルトと一緒に食器を片付けてから、転送魔法でサウザントの街に向かった。
「あいつにちょっと渡したいものがあったんだよな」
そう呟きながらヴィッツは雑貨屋に寄り買い物をする。そして外に出ると、相変わらずサウザントの街は多くの人であふれかえっていた。そんな人混みを歩いていると背後から
「ヴィッツ!」
と自分を呼ぶ声が聞こえた。聞いたことのない声。だが、その声の主は明らかにヴィッツと言った。ヴィッツがゆっくりと振り返ると、そこにはウェーブのかかったミディアムヘアな水色の髪の少女がいた。目の色は金色で、その体型から十歳くらいに見える。そんな少女は
「ようやく……会えましたね、ヴィッツ。貴方にとっては十年。私にとっては千年ぶりの再会、ですね」
そう言って微笑んだ。その口ぶりから、ヴィッツは思わず懐かしい名を呼んだ。
「ティア……ス?」
ヴィッツの言葉に少女はこくりと頷いた。
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