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ゆなお

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if五章【真実】

if四十一話 竜の血

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 ブルーたちの魔法により、早々に一行が到着した街はカナという名の街だった。見た感じは今まで訪れた街と大差は無い広い街だ。水色や金色の髪の人も希にいるようで目に入る。海岸沿いで港もあり、どうやら他の大陸とも行き来があるようだ。
「んー、なんか変な感じだなぁ。セルヴィーテがここに人を入れるのを警戒してる割には、港があって他大陸とのやりとりもあるってのに、なんであそこまで警戒すんだろう」
 カルロがそう全員に話す。それに対してザントは
「機械、と言う文明をこの大陸に取り入れることを阻止してる、とか?」
 と意見を述べる。
「ほら、魔法というかこの大陸は竜が住む大陸。機械と相性が悪いとか、そう言うものがあって自主的に避けてるのかなって僕は思ったんだ」
 ザントがそう言うとブルーが
「御名答。君の言うとおり、この大陸は竜が住む大陸であり、『異物』を拒絶する。その異物は機械と魔法の融合物だ。時計程度の機械なら持ち込めるよ」
 と話す。それに続いてアベンも
「機械と魔法の融合は本来この世界に存在しない力。故に創生期から生きている竜には負荷のかかる力だ。そのためセルヴィーテ側は事情を把握し、精霊による海峡の流れの変化に加えて、魔法により海峡全般に魔法の壁を作った。融合物の侵入を防ぐためにな。まあ、お前たちをここに連れてくるためには必要な物だから、あの乗り物だけは特例だったがな。竜にとっても少し針に刺されたくらいの痛みだっただろう」
 と話した。一行が話を聞いているとタイトが
「ああ、俺たちの姿はお前たち以外の周りの人間には見えていない。俺たち翼を持つ者は人間に扮してない限り、人目につかない。もちろん声も聞こえない。ここで俺たちに話しかければ、ただの虚空に話しかけてるように見えるだけだ。そこは気を付けろ」
 と言い、ローズも
「宿屋とか人のいない場所なら僕らのこと呼んでくれたらすぐ飛んで行くよ。それじゃあ僕らは少し休憩に出かけるから街中で情報収集してくるといいよ」
 と言って四人は姿を消した。そして気付けばストナの姿もなかった。
「とりあえずあいつらの言うとおり、まずは案内所に行って宿の場所とか聞いとこうぜ」
 ヴィッツがそう言うと一行は案内所を探した。旅人向けの案内所に立ち寄り宿や食堂そして浴場の場所を聞くついでにこの大陸のことについて案内人に聞く。他に旅人はいないようで、カウンターの案内人だけだった。
「ええと、俺たちこのあたり初めてなんだけど。宿とか大浴場の場所を教えてほしい。あと、このあたり特有の食い物とか名所とかあるかい?」
 カルロがそう聞くと案内人は宿などの施設の説明をした後
「名所や名物は沢山ありますよ。豊富な海産物に北西付近の農村地帯で採れる野菜や果物。世界最大とも言われるグルドア大陸に無いものも沢山あります」
 案内員の口から出た食べ物の話にグレイとザントが反応する。さらに案内人は
「名所なら世界の滝壺と言われる巨大穴の滝や、魔法石がよく取れる鉱山もあります。でも何よりどの大陸にもないものがあります。それが、竜の洞窟です」
 その言葉に全員が騒然とする。そんな一行とは裏腹に案内人は淡々と話を続ける。
「この大陸は竜の住む大陸です。一部では神聖視されていますが、それを除けば普通の大陸なんですよ。でも今は違う。竜が呼んでいるんです。八つの精霊を宿し勇士と光を司る者と闇を司る者が来るのを待っています。竜人を目覚めさせるために、ね」
 と案内人は一向に目線を向ける。
「それがあなた方なのでしょう? 竜の住む洞窟付近の村から連絡が来ておりました。竜のお告げによると、近々八人の旅人が来るとのことでした。まあ私は案内人ですのでそこまでしか話を聞いてませんが、街の人たちは知らない話なのでご内密に」
 どうやらこちらの事情を知っている人のようでカルロは
「その竜の洞窟ってのはどこにあるか教えてもらえるか」
 と聞く。案内人は
「ここから北に真っ直ぐ二、三日歩いて行くとトラースンという村があります。そこは竜を祀る村。小さな村ですが、竜の神の使いが洞窟からやってきて、竜からのお告げを伝えに来るそうです」
 と話した。カルロは
「いや、充分な情報ありがたい。とはいえ、まさかこんな案内所で最重要内容を聞くとは思わなかった」
 と言う。
「先ほども言いましたとおり、街の人々は竜の洞窟のことは知っていても、ただの観光名所と思っていて、普通に生活しているだけです。この案内所は竜を祀る村からの伝言を預かる由緒正しき役目を担っています。これはごく一部の者のみが知る内容です。私も貴重な体験が出来る時期にこの仕事が出来てよかったです。次は一体何年後になることやら」
 案内人の言葉に
「千年に一度、じゃねぇのか? 親父から聞いた話じゃ千年毎にって聞いたが」
 とカルロが聞くと
「元々は不定期だったそうです。ただ今言えるのは千年前に事故が起きて、その事故の修復が千年後の現在である、と言うことです。私も知っているのはそこまでなので、トラースンの村で聞いた方が確実です」
 と案内人は答えた。
「そうか。とりあえず、その北にあるっていうトラースンの村を目指せばいいんだな。色々情報ありがとうな!」
 カルロが礼を言うと
「世界の命運をかけた旅、無事達成できることを祈っております」
 と案内人が一礼して一行が出て行くのを見送った。宿に到着し、各自部屋に荷を置いて全員がロビーに集まる。全員風呂に入りたいとのことで、大浴場のある温泉に行く。こうして身をきれいにした一行は街の中を散策する。するとどこからともなくおいしそうな匂いがする。それにグレイとザントがすかさず反応し、走り出した。
「あっ! 兄貴! ザント! 飯の匂い嗅ぎつけたな!」
 慌ててカルロは二人を追いかける。
「グレイもザントも食うことには熱心だよな」
 ヴィッツが笑うと
「まあ、あの二人は魔力の器が大きいから仕方ないわ」
 ミーンも笑う。グレイとザントが店の前でカルロに食べたそうに何か言ってるのをヴィッツたちは遠巻きから見た。そして三人の近くまで行き、全員で色々買って食べ歩いた。
「トラースンの村に行くのに二、三日かかるんだっけか」
 ヴィッツがそう言うと
「最低四日分の食料を用意しときたいところだが……おい、ブルーたち。聞こえるか」
 カルロはそう言って空を見上げて小さく声をかける。するとすぐにブルーの姿が現れた。そして事情を話した。すると
「ここからトラースンまでどれくらいかかるか、だな。歩けば三日はかかるだろうが、俺たちの力で一日半ってところかな」
 ブルーの返答に
「やっぱあの移動魔法すげーんだな。じゃあ食料は一日分で大丈夫か」
 ヴィッツがそう言うと
「そうだね。荷物が増えるだけだし、一日分で充分だよ。あ、でも僕らも久々にテントで焚き火囲ってご飯食べたいから四人分食事を追加してもらえるかな?」
 とローズが注文をしてきた。カルロは
「ははっ。移動の手伝いしてもらってる身だ。それくらいなら任せな。そんならストナの分も用意しとくか」
 と笑いながら答えた。お互い手を上げて挨拶して再び別行動をする。
「とりあえず食料の件はいいとして、問題は兄貴とザント、だ」
 そう言ってカルロは両手いっぱいに食べ物を抱え、無心で食べている二人を見て
「はいはい。兄貴もザントもここ座って、食べるときは行儀良く」
 と二人を通りのそばにあるベンチに座らせる。二人は文句も言わずに黙々と食べている。それを見ていたミーンは
「まあ一日分の食料でいいって言ってたけど十三人分、ね。そしてあの二人がよく食べる。それなりの量は用意しなきゃいけないわね」
 とため息交じりに言う。
「そうね。食べ歩きして分かったけど、運搬にいい軽い食材が多かったからそれでなんとかしましょうよ」
 スティアがそう言って
「ねぇ。ナスティにティアス。二人も食材選びと運ぶの手伝ってくれるかしら」
 と二人に頼む。
「はい! 私は運ぶのを頑張ります!」
「私も料理はあまり得意ではないので運ぶのをお手伝いします」
 と二人は答えた。
「それじゃあ行きましょう」
 そう言って女性陣は買い物へと出かけていった。一人残ったヴィッツはグレイとザントを見張るカルロの元へと向かった。そして
「カルロ。相変わらず二人は黙々と食ってるな」
 と言う。カルロは
「本当、兄貴とザントは大飯食らいだな。野宿生活だと控えめに食ってくれてるけど、こういう『いくらでも食える環境』になった途端、自重しねぇからな。いや、参ったよ」
 と苦笑いで答える。ヴィッツは黙々と食べるグレイを見ていると
「なんだ。お前も食べたいのか」
 そう言ってグレイが一つ食べ物を差し出した。
「いや、別に俺は普通の胃袋しかねーから。別にお前のを食いたくて見てた訳じゃねーよ。単に本当によく食うなって感心してただけだ」
 とヴィッツは話す。すると
「そうか」
 と一言だけ言ってまた黙々と食べ始めた。

 一方、ブルーたちは人気の無い公園で四人揃って大きな木の枝に座る。最初に口を開いたのはローズだった。
「ごめんね。僕が地上に残りたいって言ったせいで、アベンまで巻き込んじゃって……」
 少し悲しげな表情で言うと、アベンは
「別に、お前が悪い訳じゃない。俺だって本気で助けるつもりだったら、とうの昔に引き戻していた。だが、お前がこの地上での生活を楽しんでいるのを見ていたら、無理矢理戻すことに躊躇してしまった。お前のせいじゃないんだ。俺が、迷ったのが原因だ」
 と話した。しかしローズは
「でも僕がもっと早くに帰っていれば、せめてアベンだけは純粋な白の翼のままでいられた。僕は片翼を失っているから、そのまま戻ってもすぐに人間に生まれ変わるだけの道だった。どっちもランクが下がることはなかった」
 と話す。そんなどちらも自身を責めるローズとアベンに対してタイトは
「魂のランクは下がったが、ローズは助かった。生まれ変わる人間に対しては申し訳なさはあるだろうが、穢れになって墜ちるよりはましだ。どうせまだまだ長い時間を俺たちはこの姿で生き続ける。俺はまだお前たちと一緒にいたい。そう思っている」
 と言うと
「珍しく同意見だな。お前のことはまだ完全に受け止めきれないが、考えることは同じ、ということか」
 とブルーが話す。そして
「それに彼らが無事、竜人を見つけて世界の均衡を保たねば、世界ごと俺たちも消滅だ。それを手助け出来る旅に同行できるのも、悪くはないんじゃないかな」
 と付け加えた。すると
「ああそうだ。ローズ、ちょっといいか」
 突然話題を変えブルーがそう言うと
「え? 何? あ、そういえばこの翼になって飛ぶのまだ上手くなれてないから、練習に付き合ってくれるかな」
 とローズが言い
「そうだな。アベンにタイト、俺たちはちょっと席を外すよ。少し二人でゆっくりするといい」
 こうしてブルーとローズは空高く飛び立っていった。そんな二人を見上げながら
「あいつは何を考えているんだ……」
 とアベンが独り言のように呟くと
「気遣い、だろうな」
 とタイトが答える。
「気遣い?」
 アベンが不思議そうな顔をすると
「何、気にするな。このまましばらくお前は俺と一緒にいればいいだけだ」
 とタイトは少し笑みを見せた。意図が分からないアベンは不機嫌そうな表情をした。
 
 次の目的地まですぐに行けるため、一日ゆっくりした一行はストナを連れて街を出る。
「ゆっくり休めたし、一日半で着けるなら荷物も少なめで良さそうね。そういえば魔物の話とか聞いてなかったけど……」
 スティアがそう言うと
「ああ、その辺は後で俺が案内所の人に聞いてきた。やっぱりこの大陸自体魔物が出ないらしい。竜の話も聞いたが、ブルーたちの言ったとおり、セルヴィーテの機械を拒んでるって話だ」
 とカルロが聞いてきたことを話す。
「そうなのね。竜がどんなものかは分からないけれど、世界の均衡を保つ竜人を作り出す存在。魔力が強いのかもしれないわね」
 とミーンが言う。
「そういえばミーンは千年前の竜人そのものに会ってるんだよね? どんな姿だったとか覚えてる?」
 ザントの問いに
「ええ、はっきりと覚えてるわ。見た目の形は人とほぼ同じ。でも額に角が一本生えていて、背中に翼があった。鳥や虫の翼とは違う、なんて言うのかしらコウモリのような、でもちょっと違う感じの大きな翼だった。そしてトカゲのような尻尾が生えてたわね。足下は私が水面から顔出して見てたから分からないわ」
 ミーンは竜人に会った時のことを話した。続けて
「そして竜人は『この時代の歪みは正せるが千年しか持たない。だから千年後に本来この時代に目覚めるはずだった光を司る者を見つけ出して、本来の意味での光と闇の均衡を保て』と言ったの。その光を司る者が姫、そして闇を司る者がグレイだった。竜人は……竜の洞窟に行けば会えるかしらね」
 と話す。カルロが
「まあその竜人とやらを見つけて、兄貴と姉貴の力で光と闇のバランスを保つ。その竜人に辿り着けるのが俺たち八勇士ってわけだ。さあ皆、忘れ物はねぇか?」
 と確認すると全員うなずいた。
「それじゃあ北に真っ直ぐ向かうか。ザント、一応確認に指し示す方向を常時出してくれ」
「うん。分かったよ」
 カルロに言われて街から北へと向かったザントは、杖を取り出し方角を確認する。
「緑の矢印は北を指しているね。この大陸に到着した時よりも大きくなってる」
 ザントがそう言うと
「竜の、そして竜人の元に近づいてる証拠ね」
 ミーンが言った。こうして街から離れた一行は北にあるというトラースンの村を目指した。森にさしかかると道があり、手前には「この先トラースン村」と書かれた看板があり村まで真っ直ぐ行けることが分かる。
「道があるってことは、このトラースンの村も外とは一応交流があるってことか」
 カルロがそう言うと、ブルーたちが現れ
「ある種、観光地だからな。そう言う意味でもこうやって森を切り抜けるように道が用意されている。さぁ皆、ここから村までの道は一直線だ。このまま突破するから魔法をかけるぞ」
 と言う。カルロは
「全員揃ってるな。よし、いいぜ」
 とブルーたちに言うと移動魔法をかけて一気に森を抜けた。こうして夕方になり、一行は森を抜けた少し先の草原を拠点とした。普段と違い大人数になった。いつも料理をしてくれていたミーンとスティアには休んでもらうことにした。カルロとブルーとローズで料理を作る。
「なんだか不思議な感じね。いつも私が料理担当してたから、料理しない野宿って変な感じだわ」
 とミーンが料理するカルロたちを見て話す。
「あはは。そうね。私とミーンが大体料理してたからね。カルロも手伝ってくれてたけど、私たちがお休みの番ってとても珍しいわよね」
 スティアもクスクスと笑いながらミーンの話に返事をする。こうして三人が作った料理を全員でおいしくいただく。量は多めに作ってあるため、グレイとザントは普段の野宿生活より多めに食べる。ストナは少量食べた後、すぐにテントに入って眠っていた。こうして一行は全員テントで休み、ブルーたち四人が焚き火の番をして夜が明けた。拠点の後始末をした一行は再び村へと向かう。昼過ぎには建物が見えてきた。
「お、村が見えてきたな」
 カルロが眺めていると
「あーなんかワルトゥワの村を思い出すような風景だなぁ」
 とヴィッツが言う。
「だだっ広い小麦畑に牧場に。まあ建物の形とかは違うけど田舎って感じは同じだ」
 そう言ってヴィッツは笑う。
「ははっ、ヴィッツの住んでるところはこんな雰囲気なのか。よし、とにかく村に入ろう」
 こうしてブルーたちは移動魔法を解いて村に飛んでいき、ストナは一人村に潜り込む。カルロたちは徒歩で村の入口に入った。そこでは村人たちが農作業の行き来をしたり、子供たちが遊んでいた。そしてその村の奥に高い岩山がそびえ立つのが見えた。村を一望していると、一人の老人がこちらにやってくる。
「おやおや、こんな辺鄙な村に観光客かい? 竜の洞窟を見たがる客がよく来るが、あそこは我々でも入れん特殊な洞窟じゃ。入口を眺めては皆帰っていくよ」
 と老人は話す。老人に対してカルロは
「えっと、俺たちは観光で来たわけじゃない。カナの街の案内人に聞いたんだ『竜人のことを聞きたかったらトラースンの村に行け』ってな」
 すると老人の目つきが変わり
「なにゆえ竜人様を探っておるか聞いてもええか?」
 と聞いてきた。ここまで来て隠す必要は無いと判断したカルロは
「その、信用してくれるか分からねぇが、俺たちは竜人を探している『基礎精霊を宿した八勇士』なんだ」
 と話す。その瞬間、全員の精霊が現れ
「この人たちは選ばれし人。竜人を目覚めさせに来た勇士たちだ!」
 とカルロの精霊アズィエーサが老人に話す。それを見て
「お、おお……ついにこの時が来たのか!」
 老人は後ろを振り向くと
「おーい! 皆! 長を呼ぶのじゃ! 竜人様の目覚めの時が来た!」
 と声を上げる。村人は動きを止め、一斉に散り散りになる。そして村の建物の奥から一人の中年男性が現れた。続々と村人も集まる。男性はカルロたちの前に来て、現れた精霊を見る。そしてお辞儀をして
「八勇士の皆様、ようこそいらっしゃいました。この村に住む我々は代々竜の神に仕える一族です。長年語り続けられた千年前の事故の修復へ、この時代に八勇士がやってくると竜の神の使いの方から先日聞いておりました。それが今日でしたか。よくぞここまで辿り着きましたね。カナの街から来たのならお疲れでしょう。宿と言えるものはありませんが、皆様が休める家を用意しましょう」
 長である男性は村人たちに何か話して、そして話を聞いた村人数人はどこかへ行った。しばらくして戻ってきた村人からそれぞれ二人ずつ家に泊められるという四軒の家を紹介された。
「あ、いやぁ……何なら俺たちは村の外でテントで寝泊まりしてもいいくらいなんだが……」
 カルロがそう言うと
「いえ、大事な客人です。それに竜の神に会うのは今日では遅い。あの山を少し上らなければならないのです」
 と言って村のすぐ北にある岩山を指す。すぐ見える位置に洞窟らしきものがあるが
「あの洞窟が入口ですが、遠回りしなければ辿り着けないのです。だから、今日はゆっくり休んでください。皆様おそろいのところ、散り散りになって申し訳ありません」
 そう言って全員に休むことを勧めた。
「泊めてもらうだけでありがてぇ。じゃあお言葉に甘えて休ませてもらうよ。なあ皆、どう分かれる?」
 カルロがそう言って話し、ヴィッツとグレイ、カルロとザント、スティアとナスティ、ミーンとティアスでそれぞれ村の家で休ませてもらうことになった。各自泊めてもらった家で食事を振る舞われ、そして風呂にゆっくり入り部屋に案内された。ミーンとティアスは
「ついに竜人に会える。そして竜人を連れて姫とグレイで世界の光と闇の均衡を保つ。私たちの旅ももうすぐ終わりなのね」
「はい。任務のために頑張ります。そして、この時代とのお別れも……覚悟は決めています」
「姫、私も正直皆と別れるのは辛いです。最初は姫を連れ戻すことだけが最優先だった。でもこうやって旅を続けて、彼らと共に居るのも悪くない、そう思うようになった。でも、私は任務を優先します」
「ミーンも家族に会いたいでしょう。私も父や母に会いたいです。そのためにも、無事終わらせましょう」
「ええ」
 そう言って二人は話す。一方スティアとナスティは
「ああー、ようやく竜人が目の前なのね」
「どんなお姿の人? 人と呼んで良いのか分かりませんが、どんな方なんでしょうね?」
「私にも分からないわね。だって直接見てるの、千年前にいたミーンだけだもの。話聞いただけじゃちょっと想像つかないわ」
「そうですね! 明日会えることですし、とにかく今日はゆっくり休みましょう!」
 と明日に向けて二人はベッドでゴロゴロと休んだ。その頃、カルロとザントは
「なんだろう。凄く神聖な場所にいるのに、どことも変わらない感じなんだよね。まあ魔物が出ないってところが違うけど」
「そうだなぁ。『ここが神聖な場所だ!』って強調しすぎるのも危ういから、竜が住む洞窟がある名所、くらいにしか一般的には知られてないんじゃねぇかな」
「竜や竜人がいることは長老様から話は聞いてたけど、まさか僕がその世代の人になるとは思わなかったよ」
「俺も同感だ。ヴィッツたちが島に来て、それからどれくらい経ったかねぇ。まさかこんな世界の命運を分けるような旅に出るとは思わなかった。だが、俺が国王になるために色々吸収させてもらったよ。俺にとっちゃかなり実りのある旅になったな」
「流石カルロだね。何事も前向きに捉えられるって普通じゃ出来ないことだよ。君といると色々と楽しいことに巻き込まれる。エルフの杖を封印したら、僕もグレイと同じで魔法科学研究所にでも入ろうかな」
「あんたはダメだ! 俺は兄貴を親父に取られちまうんだぞ? 一人寂しい俺の話し相手になってくれよ」
「何言ってるんだい。君は国王としての仕事が最初は山積みでしょ?」
「だからそれを補佐してくれってことだよ。絶対俺とスティアだけじゃ間に合わねぇ」
「なるほど、そういうことなら僕で良ければ補佐として付き合ってあげてもいいよ」
「なんだその上から目線。あんた、たまになんかそういう意地悪な面見せるな」
「お互い様、でしょ?」
 二人で城に帰った後の話をした。ヴィッツとグレイはベッドに隣同士に座り
「お前からもらったピアス……。ここに来るための大事な鍵だった」
「そうだな」
「お前に出会わなかったら、俺は一生自分の殻の中に閉じこもっていたんだろうか」
「どうだろうな。もしかしたら村も無事で家族と平和に過ごしてた。そんなこともあったかもしれねーしな」
「家族の死は辛かった。だが、俺は大事なものを得て、そして知った。お前という親友だ」
「お前、こういうときだけは面と向かって『親友』って言ってくれるのに、他の奴らがいるとはぐらかすよな」
「そっ、それは……恥ずかしいだけだ」
「何恥ずかしがってんだよ。俺と親友なのが恥ずかしいってのか?」
「そう言う意味じゃない」
「じゃあ何なんだよ」
「これは俺の中だけの秘密だ。話せる時が来たら話す。だから今はあまり詮索するな」
「何か分かんねーけど、まあお前の気持ちを根掘り葉掘り聞くのも失礼だしな」
「分かってくれればそれでいい。明日、無事竜人に会えるよう、今日は休む」
「ああ、おやすみ」
 そう言ってそれぞれベッドに入った。一夜明けて八人は荷を村に置いて竜の洞窟に向かうことにした。村の長に洞窟への案内を命じられた青年が先頭を歩き、その後ろを八人がついて行く。こうして一時間ほど山道を登ると洞窟の前に到着した。案内の青年が
「ここは竜の神に選ばれた勇士たちだけが入れる場所です」
 そう言って青年が入口に手をかざすと、光の壁が浮かび上がる。そして入ろうとする青年は、その光の壁で入れないことを見せた。
「皆様なら通れるでしょう。入口は暗いですが、奥に入れば明るいと聞きます。そのまま真っ直ぐ進むと水の道がある、とまでは聞いております。その水は人を弾くそうで、水の上を歩けるとかなんとか。竜の神の使いの方がそうおっしゃっておりました」
 青年は一礼して、皆が戻るまでここで待っていると言う話をした。
「ついに竜に、そして竜人に会えるのか」
 カルロの一言に全員は洞窟の中へと入った。
「さて、と。竜人に会うために、目覚めさせるために竜の洞窟に入ったか」
 ブルーがそう言うと
「竜人の正体、どう思うだろうね」
 とローズが言う。
「あいつらに受け入れられるかどうか」
 アベンの言葉に
「なるようにしかならん。あいつら八人次第だ」
 タイトが答える。一方村の人影のない場所で
「竜人の目覚め。その力、必要なものかどうか……」
 ストナが一人呟いた。

 カルロたちは徐々に入口から離れ、暗くなっていく。そして曲がりくねった洞窟を進むと明かりが見えた。そこには光る水が洞窟の通路のように漂っていた。
「これがさっき聞いた人を弾く水ね」
 ミーンはそう言って水面に手を当てる。すると弾力で手が弾かれた。
「ここから先の通路は全部この水の上を歩かなきゃいけないみたいだね。歩ける面がどこにもないもの」
 ザントがそう言って水路の先を見ると、水面以外はない通路となっている。
「これ、本当に沈まねぇよな……」
 カルロが心配そうに眺める。ミーンはそのまま水面の上に立った。少し揺らめく水面に
「ちょっと揺れるみたいだけど大丈夫そうよ」
 と言って少し歩いてみた。ザントも水面に乗り
「わぁ、本当だ。僕でもちゃんと水面歩ける」
 と感心する。スティアとナスティも飛び乗って
「何これ! 面白い!」
「水のはずなのにぷよんぷよんしますね!」
 とその弾力で飛び跳ねて遊ぶ。
「私でも大丈夫でしょうか」
 ティアスが心配すると
「もし落ちるようなことがあったら俺がすぐ受け止める」
 とグレイがティアスの背中に手を当てて二人一緒に前に進む。
「あ、本当に歩けるんですね」
「水の精霊持ちの俺でも大丈夫なのか」
 カルロは
「本当に沈まないよな? 鎧とか槍とか錆びるの嫌なんだが」
 と言って恐る恐る水面に足を付けた。
「お、おお……マジで水面歩けるのか。なんか変な感じだな」
 と言った。ヴィッツも
「皆大丈夫そうだなー。じゃあ俺もっ!」
 そう言って勢いよく水面に立った瞬間、ヴィッツの体が水に沈む。
「おわっ! なんだこれ! た、助けてっ!」
 その場に居た全員が驚く。慌ててグレイとカルロがヴィッツの元に行き手を掴む。手を掴まれて安定すると
「あ、これ水の深さ腰のちょっと上くらいか……って、そんな話ししてる場合じゃねぇよ! なんで俺だけ水に沈まなきゃなんねーんだよ!」
 と混乱した様子で叫ぶ。するとミーンが
「さっきの人が言ってたわよね『人を弾く水』だって。つまりそれって、私たちは人だと認識されてるけど、ヴィッツは……」
 と言いかけた時、全員の脳内に低い声が響く。
『よく来たな、基礎精霊を宿し八勇士……そして、我が息子よ』
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