気が付いたら異世界で孤児だったけど、立派な宇宙海賊になってみせます~貧民惑星から始める転生成り上がり銀河無双~

渋谷千立

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今日の晩飯はピザ、でも未来は未定

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『全クルーへ。食堂へ集合。繰り返す、全クルーはただちに食堂へ集合してくれ』

朝の船内放送を流したのは俺だった。

今日は任務もなく、完全オフ。だからこそ、全員にちゃんと話しておきたかった。

もちろん、反応は――

「ちょっとお~、今日は休みでしょ?わたし二度寝の予定だったのに!」

最初に食堂へ来たマリナは不満顔。酒瓶を片手に、完全にオフモードだ。

「私は今日、ドローンの性格データを“ツンデレ風”に再構築しようと思っていたのだが……中断か」

リズはリズで意味不明な研究をしていたらしい。

「なに?パーティー?おかし?」

食堂のテーブルに座っているアイカはすでに紅茶を人数分用意していた。仕事が早い。

「よし、全員揃ったな。これより艦の今後の方針について会議を行う」

俺が宣言すると、マリナが「えっ真面目なやつ?」と気の抜けた声を上げた。

「簡単に言えば、これからどうするかって話だ。今のままマリア・クレストで活動を続けるか、それとも拠点をケルベロス・スロットに戻すか。アイカ、現状の説明を」

「了解しました。現在、ケルベロス・スロット宙域は治安が安定傾向にあり、依頼件数も徐々に減少しています。一方、ここマリア・クレスト宙域は商業・研究施設が集積しており、依頼数は安定。違法海賊の出現率も高いため、活動の余地が大きいと考えられます」

「というわけで、俺の考えとしては、このままマリア・クレストでの活動を継続したいと思ってる。……どうだ?」

マリナが腕を組み、「ふーん」と一言。

「私は賛成。こっちの方が稼げそうだしね。ステーションはきれいで酒の種類も多いし、文句ないよ」

「私はどちらでも構わない。我が叡智は銀河の果てでも輝くゆえ」

「わたしは……クッキーのおみせがいっぱいあるなら、こっちがいい!」

「じゃあ、異議なしってことでいいな」

「異議なし」

「我は沈黙をもって賛同とする」

「クッキー!」

「よし、決まり。これよりマリア・クレスト常駐計画を正式に開始する。以上、会議終了!」



そこから先は、いつものように自由な時間が流れた。

マリナはさっそく酒の買い出しに出かけ、戻ってきたころにはご当地クラフト麦酒を両手に持っていた。

「この“浮遊麦酒”、泡が下に沈むんだけど!?なにこれ!」

「重力流体構造の逆転を利用しているようですね。面白いです」

アイカが横からさらっと解説していたが、マリナは完全に酔っ払いモードへ突入していった。

「うへへへへ。これ美味しいねぇ。ねぇコウキ、コウキも飲んでみたら?」

「まぁ一杯だけなら……」

俺は差し出された酒を一気に飲み干す。……美味いなこれ。

「お、良い飲みっぷり!ささ、もう一杯」

「まぁもう一杯だけなら……」

結局5杯飲んだ。



リズは艦内の廊下を使って、小型ドローンを走らせるという実験を始めたが――

「そこ、アイカの補助電源ケーブルが――」

バチッ!

「うわああああ!私のドローンが感電したあああ!」

「いいかげん艦内で暴走実験するなって言ったよな……?」

「なんでケーブルが露出してるんだ!危ないじゃないか!床に埋め込むぞ。ドローン部隊、発進!」

≪――サギョウカイシ――アンゼンダイイチ――ホンジツモゴアンゼンニ――≫

ドローンがケーブル埋め込み作業を開始した。ドローンの合成音声と、作業音が艦内に響く。

「壊すなよ。アイカが怒るぞ」

「問題ない。艦内をバリアフリー化するだけだ」

「そうかい」

俺は本でも読もうと端末を開いていたが、騒ぎの収まらない艦内に軽くため息をついた。

それでもまあ、どこか心地よい騒がしさだ。

「そうだ、アイカ。AI対決の記録、ギルド本部に送っといてくれ。使える部分だけな」

「了解しました。とくに第五回戦“ギャグ生成バトル”の部分は、エンタメ部門が注目しているようです」

「やめてくれ……あれは黒歴史にしたい……」

それでも、何もない一日は久しぶりだった。

しばらくは、このマリア・クレストでゆっくり根を張っていくのも悪くない。

「よし、今日はこれでお開き。晩飯はピザにしよう。異論あるか?」

「異議なし!ピザ最高!」

「ピザなら四種チーズ一択!」

「クッキーは?」

「晩飯の後な」



「……艦長、帝国軍情報部より、予備照会が届きました」

「帝国軍?なんでまた」

「宙域規模の治安維持作戦を検討中とのこと。詳細は未定ですが、当艦が過去に成功させた“ブル・フォッグ掃討作戦”などの実績を評価し、候補艦リストに挙げたいとの意向です」

「へえ……ずいぶん律儀な話じゃないか」

「内容的には三か月以上先の想定ですが、関係各艦へ事前の意思確認を行っているようです」

「まあ、即答はしないけどな。保留ってことでいい。そう伝えてくれ」

「了解しました」

大規模作戦か……。いよいよ俺たちの名前も、“ただの便利屋”ってわけじゃ済まなくなってきたか。

さて。どんなことが待ち構えているのやら。
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