気が付いたら異世界で孤児だったけど、立派な宇宙海賊になってみせます~貧民惑星から始める転生成り上がり銀河無双~

渋谷千立

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旧き旗の下に

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「コウキ、ハイペリオンのチェック完了したよ」

「コウキ、各種武装点検完了だ」

「艦長、エネルギーチェック完了しました。いつでも作戦開始可能です」

「リサ提督にも話はつけた。これからデブリに紛れて敵の通信傍受を行う。準備はいいな?」

「了解」

「ついに我が叡智を発揮する機会ができたな!」

「了解です、艦長」

「はーい!」

「よし、ヘッジホッグ発進!」



――作戦宙域:マリア・クレスト宙域第7セクター、未登録小惑星帯近傍。

ヘッジホッグは静かに、慎重に小惑星帯へと潜り込んでいった。艦内に響くのは、推進音すら抑えられた航行モード独特の、低い電子音のみ。

「現在位置、ターゲット宙域へ進入。索敵範囲内に大型艦影なし。中・小型反応が複数……そのほとんどがデブリのようです」

「メルセデスの艦隊はステルス性の高い小型艇が主体だ。油断するなよ。アイカ、通信波形の解析を」

「了解しました。傍受モード、起動。現在、周辺の周波数帯をスキャン中……微弱ですが、周波数偏移のある軍用暗号通信を確認しました」

「位置を特定できるか?」

「……できます。デブリ群の中、宙域座標B-23。おそらく小型の観測機が擬装されていると思われます」

「リズ、ジャマー展開頼めるか?」

「ふっ、造作もない。拡散干渉波、発信――こちらの存在は完全にカモフラージュされた。今なら敵も気づくまい」

「マリナ、状況次第で突入することもある。準備を」

「了解。ミサイルとビーム砲、全部磨いて待ってるからね~。暴れていい合図、早くちょうだいよ」

よし……“亡霊”たちがどんな面をしてるのか、見せてもらおうか」

ヘッジホッグは静かに、しかし確実に、敵の巣へと牙を向け始めていた。



「暗号通信を確認。解析します……成功。傍受開始」

アイカの声が落ち着いたまま響く。艦内の空気が一段と張り詰めたものになった。

「内容は?」

「……断片的ですが、船団移動の座標情報、補給ルートの交信と推測されます。発信源は、やはりデブリ帯内部。通常の通信ログでは隠蔽されていた形跡があります」

「罠かもしれねぇな。敵がわざと流してる情報って可能性もある」

「ええ。ですが、真実なら連中の母艦の所在が割れる可能性もあります」

「哨戒ドローン展開。索敵を開始。ステルスで起動。気づかれるなよ」

「了解。ドローン起動、ステルスモード。発艦します」

「マリナ、武装は警戒レベルに。リズ、電子妨害を段階的に強化。念のため撤退ルートも確保しておけ」

「まったく、厄介な依頼持ってくるもんだよ、帝国軍さんは……了解」

「ふふ、罠であろうと関係ない。我が叡智が真実を見抜くまでよ!」

アイカが目を細めた。

「艦長。そこにあるのは……ただの観測機じゃありません。旧帝国軍の規格で作られた、ステルス仕様の情報収集艦です」

「旧帝国軍……だと?」

誰もが息を飲んだ。確かにその名は、今では“過去の亡霊”と呼ばれて久しいはずだった。

「どうやら、また一筋縄ではいかない話になりそうだな」



「きゅうていこくぐんってなに?」

キョウカが目をぱちくりさせながら、俺の隣に寄ってくる。ヘッドセットを外したまま、何となく会話を聞いていたらしい。

「旧帝国軍とは、およそ20年前に起きた銀河帝国皇帝崩御に伴い、軍事政権を画策した軍部の一部が新皇帝擁立に失敗し脱走、新帝国統一軍を名乗り好き勝手やっている集団です」

淡々と説明するのは、もちろんアイカだ。

「ふーん……それって、わるい子たちなの?」

「ええ。彼らは統一の名のもとに、各地で独自の軍政を敷いたり、海賊団と手を組んだりしています。現在では“亡霊部隊”“旧帝国軍”と呼ばれ、国家間の秩序を乱す存在とされています」

「新帝国軍って名乗ってるのに旧帝国軍って呼ばれてるのね。ちょっと笑える」

「ただの海賊じゃねーのかよ。そんな連中がまだ生き残ってたってのか……」

俺は舌打ち混じりに呟いた。視線の先には、モニターに映された旧式のステルス艦がある。黒く歪んだ機影は、明らかに現行帝国軍のものとは違っていた。

「やはりな。情報からして不自然だと思ったのだよ。ただの海賊団が使えるようなシステムじゃなかったし」

リズが腕を組んで唸る。

「ってことは、“メルセデス”の背後に、その亡霊がいるってことか」

「可能性は高いです。リサ提督に報告を上げますか?」

「いや、もう少しだけ証拠を集めよう。中途半端な情報じゃあの人も動きにくいだろうしな。奴らの尻尾を掴むチャンスだ」

「了解です。追跡を継続します」

「おにいちゃん、あたし、こわくないよ。だって、みんなつよいもん!」

キョウカが胸を張る。

「……ああ。心配すんな。俺たちの“家”は、そう簡単にやられたりしないさ」



艦内は緊張感に包まれていた。
だが、それは焦燥ではない。
誰もが、それぞれの役割を果たすことに集中していた。

「暗号通信、再び受信。傍受を開始します……今度は位置情報付きです」

「どこだ?」

「マリア・クレスト宙域、サーマ軌道帯。民間ステーションの裏に隠れて通信しているようです」

「隠れ家ってわけか……アイカ、周辺の地図と重ねてくれ」

「了解しました。該当座標をマッピング」

 ホログラムマップに浮かび上がる、複雑に入り組んだ小惑星帯とステーション群。その一角に、ごく小規模なエネルギー反応があった。

「これだな……隠れてるつもりかもしれねぇが、通信波でバレバレなんだよ」

「ねえ、コウキ。こっちで拾った画像に、気になるのが映ってたよ」

 マリナが立ち上がり、別モニターを操作する。

「ドローン映像。遠距離から撮ったもんだからボケてるけど、こいつ……見覚えない?」

 映像の中には、旧帝国軍の紋章らしきものを掲げた輸送艦の一群が写っていた。塗装こそ民間用に偽装されているが、船体構造とエンジン配列は軍用艦そのもの。

「間違いねぇな。旧帝国の残党が、“メルセデス”に武器と艦を流してる。下手すりゃ、こいつらが本体かもしれねぇ」

「まさか、ここまで組織だった動きだったとは……」

 リズが目を細める。

「リサ提督に報告を入れるべきかと」

「いや、まだだ」

 俺は首を振る。

「今報告しても“憶測の域を出ない”って返されるだけだ。もう一押し……確たる証拠が必要だ」

「ふむ、ならばこの“天才”の出番だな。我が最終型索敵アルゴリズム、“ノヴァスキャン改”を用いて、電磁隠蔽中の母艦を炙り出してやろう」

「うわー、また始まったよリズの変態技術」

 マリナが頭をかくが、実際、リズの技術は信頼できる。
 そして、敵が本格的な軍事構造を持っているとすれば――次の戦いは、ただの“海賊退治”では済まない。

「各員、警戒を強化。次は実戦になるかもしれない。相手は旧帝国の残党、“亡霊”だ。気を引き締めていけ」

「了解!」

「了解です、艦長」

「わかってるよ~」

「おにいちゃん、がんばろ!」

 俺たちはすでに、“見えない敵”との戦いに足を踏み入れていた。

 次に待っているのは、亡霊たちとの真正面からの衝突――
 そのとき、俺たちが試されることになるのだ。
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