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金属生命体の謎
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デブリ帯宙域――
大小の岩塊が、無秩序に宙を舞っていた。レーダーにはただの宇宙ゴミとしか映らないが、その奥に、座標データを持つ者だけが知る“隠れ家”がある。
「……ここか。旧帝国軍の仮拠点」
ヘッジホッグのブリッジに、ざらついた映像が浮かぶ。
デブリに擬装されるようにして、古びた格納庫施設が貼りついていた。外壁は半壊し、使用を放棄されて久しいように見えるが――。
「うわー……なんかボロっちいね」
マリナがモニター越しに顔をしかめる。
「表面の破損痕は旧式ビーム兵器のものです。戦闘による損耗かと」
淡々と解析するアイカ。
「でも、完全に壊して放置した感じじゃないようだ。内部はまだ使えるよう整備されてる……怪しい匂いしかしないな」
リズが目を輝かせる。
「罠の可能性は?」
俺は問いかける。
「十分にありますね。ですが――」
アイカが一瞬言葉を切り、
「内部から微弱なエネルギー反応を感知しました。通常の炉心稼働とは異なる波形です」
「ふむ、これは……」
リズが前のめりになる。
「なんだ?」
「あの金属生命体の反応と似てるな」
「……ねぇ、また変なの引き当てたんじゃないよね?」
マリナは肩をすくめる。
俺は短く息を吐いた。
「ドローンを先行させろ。内部の状況を確認する」
ブリッジに緊張が走る。
デブリに隠された拠点――そこに、まだ誰かが潜んでいるのか。それとも、もっと得体の知れない“何か”が眠っているのか。
旧帝国軍の仮拠点――内部は仮とは思えないほどの設備があった。
「これ、仮拠点ってレベルじゃないな。何かの研究施設って言われた方がしっくりくるぞ」
「旧帝国の隠し研究所か……ふふふ、面白くなってきたな」
「前みたいなのは勘弁だがな」
「あれはもう……遠慮したいかも」
「帝国の古い生体実験施設だったか……行ってみたいものだ。機械と生命の融合……血が騒ぐな」
「絶対やだ」
「二度と行かない」
「残念だな」
「ドローンを進めますよ」
ドローンは施設内を進んでいく。ところどころに見えるのは培養槽。中には何かが浮かんでいて……
ドローンのカメラがフロアを照らし出す。
壁一面に並ぶ培養槽。その中に浮かんでいたのは――
「……あれ、見覚えあるよ」
マリナがモニター越しに身を乗り出す。
「うむ、間違いないな。あの無機の塊……例の金属生命体だ」
リズの瞳が鋭く光る。
濁った液体の中、蠢くのは黒い金属の塊。
人型にも獣型にも定まらぬ不安定な輪郭を持ち、時折、液体を透かして内部の光が脈動する。
まるで生物の心臓が鼓動しているかのように。
「……旧帝国は、こんなものを培養してたのか」
俺は息を呑んだ。
「観測データ照合中……確定しました。先日遭遇した金属生命体と同一種です。しかも――」
アイカの声が低くなる。
「複数体、休眠状態で保存されています」
「うわぁ……あれがたくさん並んでるの、正直ゾッとするんだけど」
マリナは肩をすくめる。
「でも興味深いな。奴らを研究していたなら、旧帝国がどうやって制御しようとしたか手掛かりが残っているはずだ」
リズは不敵に笑う。
その瞬間、画面のひとつの培養槽が不気味に泡立った。
中の影が揺れ、金属の肢がガラスを叩く。
ゴン……ゴンッ!
「っ、動いた!」
マリナが声を上げる。
「休眠解除の兆候。エネルギー反応が急速に上昇しています」
アイカが警告を発する。
――ドローンの映像が激しく乱れ、次の瞬間、真っ暗に途絶えた。
ブリッジに緊張が走る。
俺は短く息を吐き、言い放った。
「……どうやら、“隠し物”は眠らせておいてくれなかったらしいな」
「さて、どうする?」
「金属生命体の戦闘力が未知数です。戦闘用ドローンでの先行調査を提案します」
「そうだな。安全確保が第一だ。アイカ、戦闘用ドローン展開」
「了解。戦闘用ドローン展開。施設内に送ります」
無音のまま、ドローン部隊が施設通路を進む。
やがて、途切れていた通信エリアに到達する――
「先ほどドローンとの通信が切れたのはこの辺りですが……」
「あれ……見て……」
マリナが指を伸ばす。
画面には、黒光りする塊がドローンを覆い尽くす姿が映し出されていた。
金属生命体が機械を包み込み、まるで寄生するように浮遊している。
「……浸食してるのか?ドローン全体をびっしり覆ってやがる。通信断はこれのせいだな」
「どうしますか?」
「確保してくれ!先日のはほぼ壊れかけで、ろくに実験できずに死んでしまったんだ!是非欲しい!」
リズが声を張り上げる。
「よし。確保だ。偵察ドローンには戦闘能力はない。強化ガラスの檻にでも詰めとけ」
「了解。確保します」
捕獲用ドローンが電磁網を展開し、ゆっくりと近づく――その瞬間。
ガチガチガチ……と、金属生命体が不気味に音を立てて変形していく。
突如、形を変えた先端に“銃口”が生まれた。
「……っ!」
パァン、と乾いた銃声。
弾丸が閃光を引き、捕獲ドローンは装甲を貫かれて爆ぜる。
「変形したぞ!?」
「浸食した機械を素材にして、構造を組み替えた……? 興味深い、いや、恐ろしい……」
リズが戦慄と好奇心をないまぜに呟く。
「行ってる場合か!確保は中止!破壊だ!」
「了解。ドローン攻撃開始」
数機の戦闘ドローンが一斉にレーザーを放つ。
光の奔流が金属生命体を直撃し、黒い塊は爆ぜるように床へ叩き落とされた。
「死んだか?」
「熱源反応、消失。活動停止を確認しました」
アイカの報告が淡々と響く。
「……あー!私の実験材料がー!」
リズが頭を抱える。
「培養槽で眠ってるやつを使え。それと他の機械に近づけるな、絶対に。艦が乗っ取られたらたまったもんじゃない」
俺はきっぱりと言い放った。
「……あれ?金属生命体の死体、どこ行った?」
墜ちたドローンは、いつのまにか元の偵察用ドローンに戻っていた。表面は溶けており、一部が欠けている。
その表面を覆っていたはずの金属生命体は、痕跡すら残さず消えていた。
「ドローンが映像を撮っていました。確認しましょう」
ブリッジには、張りつめた沈黙と、消えた“何か”への不安だけが残った――。
大小の岩塊が、無秩序に宙を舞っていた。レーダーにはただの宇宙ゴミとしか映らないが、その奥に、座標データを持つ者だけが知る“隠れ家”がある。
「……ここか。旧帝国軍の仮拠点」
ヘッジホッグのブリッジに、ざらついた映像が浮かぶ。
デブリに擬装されるようにして、古びた格納庫施設が貼りついていた。外壁は半壊し、使用を放棄されて久しいように見えるが――。
「うわー……なんかボロっちいね」
マリナがモニター越しに顔をしかめる。
「表面の破損痕は旧式ビーム兵器のものです。戦闘による損耗かと」
淡々と解析するアイカ。
「でも、完全に壊して放置した感じじゃないようだ。内部はまだ使えるよう整備されてる……怪しい匂いしかしないな」
リズが目を輝かせる。
「罠の可能性は?」
俺は問いかける。
「十分にありますね。ですが――」
アイカが一瞬言葉を切り、
「内部から微弱なエネルギー反応を感知しました。通常の炉心稼働とは異なる波形です」
「ふむ、これは……」
リズが前のめりになる。
「なんだ?」
「あの金属生命体の反応と似てるな」
「……ねぇ、また変なの引き当てたんじゃないよね?」
マリナは肩をすくめる。
俺は短く息を吐いた。
「ドローンを先行させろ。内部の状況を確認する」
ブリッジに緊張が走る。
デブリに隠された拠点――そこに、まだ誰かが潜んでいるのか。それとも、もっと得体の知れない“何か”が眠っているのか。
旧帝国軍の仮拠点――内部は仮とは思えないほどの設備があった。
「これ、仮拠点ってレベルじゃないな。何かの研究施設って言われた方がしっくりくるぞ」
「旧帝国の隠し研究所か……ふふふ、面白くなってきたな」
「前みたいなのは勘弁だがな」
「あれはもう……遠慮したいかも」
「帝国の古い生体実験施設だったか……行ってみたいものだ。機械と生命の融合……血が騒ぐな」
「絶対やだ」
「二度と行かない」
「残念だな」
「ドローンを進めますよ」
ドローンは施設内を進んでいく。ところどころに見えるのは培養槽。中には何かが浮かんでいて……
ドローンのカメラがフロアを照らし出す。
壁一面に並ぶ培養槽。その中に浮かんでいたのは――
「……あれ、見覚えあるよ」
マリナがモニター越しに身を乗り出す。
「うむ、間違いないな。あの無機の塊……例の金属生命体だ」
リズの瞳が鋭く光る。
濁った液体の中、蠢くのは黒い金属の塊。
人型にも獣型にも定まらぬ不安定な輪郭を持ち、時折、液体を透かして内部の光が脈動する。
まるで生物の心臓が鼓動しているかのように。
「……旧帝国は、こんなものを培養してたのか」
俺は息を呑んだ。
「観測データ照合中……確定しました。先日遭遇した金属生命体と同一種です。しかも――」
アイカの声が低くなる。
「複数体、休眠状態で保存されています」
「うわぁ……あれがたくさん並んでるの、正直ゾッとするんだけど」
マリナは肩をすくめる。
「でも興味深いな。奴らを研究していたなら、旧帝国がどうやって制御しようとしたか手掛かりが残っているはずだ」
リズは不敵に笑う。
その瞬間、画面のひとつの培養槽が不気味に泡立った。
中の影が揺れ、金属の肢がガラスを叩く。
ゴン……ゴンッ!
「っ、動いた!」
マリナが声を上げる。
「休眠解除の兆候。エネルギー反応が急速に上昇しています」
アイカが警告を発する。
――ドローンの映像が激しく乱れ、次の瞬間、真っ暗に途絶えた。
ブリッジに緊張が走る。
俺は短く息を吐き、言い放った。
「……どうやら、“隠し物”は眠らせておいてくれなかったらしいな」
「さて、どうする?」
「金属生命体の戦闘力が未知数です。戦闘用ドローンでの先行調査を提案します」
「そうだな。安全確保が第一だ。アイカ、戦闘用ドローン展開」
「了解。戦闘用ドローン展開。施設内に送ります」
無音のまま、ドローン部隊が施設通路を進む。
やがて、途切れていた通信エリアに到達する――
「先ほどドローンとの通信が切れたのはこの辺りですが……」
「あれ……見て……」
マリナが指を伸ばす。
画面には、黒光りする塊がドローンを覆い尽くす姿が映し出されていた。
金属生命体が機械を包み込み、まるで寄生するように浮遊している。
「……浸食してるのか?ドローン全体をびっしり覆ってやがる。通信断はこれのせいだな」
「どうしますか?」
「確保してくれ!先日のはほぼ壊れかけで、ろくに実験できずに死んでしまったんだ!是非欲しい!」
リズが声を張り上げる。
「よし。確保だ。偵察ドローンには戦闘能力はない。強化ガラスの檻にでも詰めとけ」
「了解。確保します」
捕獲用ドローンが電磁網を展開し、ゆっくりと近づく――その瞬間。
ガチガチガチ……と、金属生命体が不気味に音を立てて変形していく。
突如、形を変えた先端に“銃口”が生まれた。
「……っ!」
パァン、と乾いた銃声。
弾丸が閃光を引き、捕獲ドローンは装甲を貫かれて爆ぜる。
「変形したぞ!?」
「浸食した機械を素材にして、構造を組み替えた……? 興味深い、いや、恐ろしい……」
リズが戦慄と好奇心をないまぜに呟く。
「行ってる場合か!確保は中止!破壊だ!」
「了解。ドローン攻撃開始」
数機の戦闘ドローンが一斉にレーザーを放つ。
光の奔流が金属生命体を直撃し、黒い塊は爆ぜるように床へ叩き落とされた。
「死んだか?」
「熱源反応、消失。活動停止を確認しました」
アイカの報告が淡々と響く。
「……あー!私の実験材料がー!」
リズが頭を抱える。
「培養槽で眠ってるやつを使え。それと他の機械に近づけるな、絶対に。艦が乗っ取られたらたまったもんじゃない」
俺はきっぱりと言い放った。
「……あれ?金属生命体の死体、どこ行った?」
墜ちたドローンは、いつのまにか元の偵察用ドローンに戻っていた。表面は溶けており、一部が欠けている。
その表面を覆っていたはずの金属生命体は、痕跡すら残さず消えていた。
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