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プリンセス納屋、改装地獄編
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ユモト社の整備ドック。
展示用の倉庫艦──いや、《プリンセス納屋(仮)》が、俺たちの新しい母艦として改装待機中である。
「じゃ、とりあえずだ。何が欲しい?」
「えっとねぇ~、壁紙はピンクで、ふかふかのベッドがあって、冷蔵庫! 冷蔵庫は絶対欲しい。それからお風呂! できれば泡が出るやつ!」
「多い、要求が多すぎる。もっと少なくしろ」
「じゃあ……ベッドと冷蔵庫。フードロボットも欲しい。味気ない合成食はもう飽きたよ~」
「最初より増えてんじゃねぇか……」
「艦長。私は高性能CPUが欲しいです。これがあれば作業効率が42.7%向上します」
ポンコツが勝手にドックの端末から要望を送ってきやがった。
「おい、てめえの要求、いつ出したんだ!?」
「十分前です。すでに発注処理済み。発注先はユモトインダストリー、経費処理は艦長名義で行いました」
「キャンセルしろ!! 今すぐキャンセルしろ!!」
「できません。CPUはもう艦に発送されました。お楽しみに」
俺は天を仰いだ。
これは──地獄の幕開けである。
「えーと、次は部屋の内装だな。各自の希望をまとめるぞ。予算は――」
「ベッドはふかふかで、横にサイドテーブル! ミニバーも絶対! あと壁はピンクにして星柄にしたいな~!」
「猫型のホログラムペットも用意したいです。掃除サポートと癒やし効果を兼ねます」
「今どきのAIは何言い出すんだよ……」
業者のおっちゃんが俺にヒソヒソと囁く。
「艦長さん、これマジで全部入れる気っすか……? ただの貨物艦がラブホと研究所になる勢いなんですけど」
「やめてくれ、事実だけど言わないでくれ」
一応、俺にも希望はある。
「俺の部屋は……ベッドと、机ひとつ。それでいい。あと、静かであること」
「はーい艦長の部屋にもピンクの壁紙追加っと~」
「やめろおおおおお!!!」
「友情の証でしょ? いいじゃんいいじゃん♪」
「ふざけんな、二度と言うなその言葉!」
──翌日。改装第2段階に入ると、さらに地獄が加速した。
「ちょっと! そのベッド違うでしょ!? ふかふかじゃない! ぐにゃぐにゃ!」
「CPUの冷却水管がベッド下通ってるんです。静音性は担保されてますが、床が多少あったかいです」
「どんな構造してんだこの艦は!!」
「なお、マリナさんの部屋から漏電の疑いが。酒の缶が制御パネルに詰まってショートしています」
「知らない知らないわたし知らない~!!」
「お前の部屋からしか出てねぇ匂いがするんだよ!」
作業員が、涙目になっている。
「艦長ォ、また仕様変更ですか? ほんと勘弁してくださいよぉ」
「こっちが泣きたいよ……!!」
──夜。とりあえず仮設ベッドに倒れ込んで、天井を見上げた。
部屋は、まだ壁も貼られてない。音が反響して、マリナの鼻歌が遠くからでも聴こえる。
「ふんふ~ん♪ 冷蔵庫来た~♪ うれし~♪」
「艦長。マリナさんが、無断でバーカウンター設置しました。設計図と違います」
「……もはや止める気力がない……」
「艦長?」
「なんだ」
「現在、艦内ストレス指数が142%。常時警戒レベルを超過しています」
「もう限界ってことかよ……」
「いいえ。艦長の“適応性”が同時に上昇しています。記録更新、おめでとうございます」
「やかましいわ」
──こうして我らが“プリンセス納屋(仮)”は、見た目倉庫、中身スナック+AI研究所、という異色の母艦へと生まれ変わっていった。
この艦がいつか歴史に名を残すことがあったとしても──
誰もその内装を知ることは、ないだろう。
「はぁ、やっと完成か……」
俺は艦内の中央廊下で、天井を見上げながら深いため息をついた。
もうツッコむ気力も尽き果てた。
途中からは「好きにしろ」と言い放って、マリナとポンコツに任せた結果──
とんでもないモノができあがっていた。
・バーカウンター(設計図になし)
→「ねぇねぇ! このカウンター、カクテル用シェイカーも置けるよ!」
→「誰がそんなもん使うんだよ! てか、なんでバーテンダー風ホログラムいるんだよ!」
・サーバールーム(設計図より3倍拡張)
→「データ処理効率は987%向上しました」
→「それはすごいけど……お前、自分の部屋にマジで“メインフレーム”作ったのか……?」
・ジェットバス(普通の浴槽の予定だった)
→「泡、出るよ!すっごい! しかも音楽と照明の演出つき!」
→「なんで風呂がプチナイトプールになってんだよ!?」
・AI用アンドロイド(ポンコツが勝手に発注)
→「こんにちは艦長。私は“アイカ・Mk-II”。主に雑務と応答担当です」
→「誰が頼んだ!? っていうかポンコツ、お前、人格二つに分けてんじゃねぇ!!」
あらゆる意味で、艦の常識を逸脱していた。
これはもう宇宙船じゃない。
動くラウンジだ。もしくは移動型のオタクの夢の城。
「……ま、いいか」
俺はカウンターに置かれていた酒を、ひとつ手に取った。
バーテンダーホログラムが、なぜかウインクしてくる。
「艦長、任務もないので“開店モード”に移行してよろしいですか?」
「やめろ、戦艦にそんなモードはいらねぇ!!」
艦は、動く。ときどき、勝手に。
でもまぁ、悪くない。
展示用の倉庫艦──いや、《プリンセス納屋(仮)》が、俺たちの新しい母艦として改装待機中である。
「じゃ、とりあえずだ。何が欲しい?」
「えっとねぇ~、壁紙はピンクで、ふかふかのベッドがあって、冷蔵庫! 冷蔵庫は絶対欲しい。それからお風呂! できれば泡が出るやつ!」
「多い、要求が多すぎる。もっと少なくしろ」
「じゃあ……ベッドと冷蔵庫。フードロボットも欲しい。味気ない合成食はもう飽きたよ~」
「最初より増えてんじゃねぇか……」
「艦長。私は高性能CPUが欲しいです。これがあれば作業効率が42.7%向上します」
ポンコツが勝手にドックの端末から要望を送ってきやがった。
「おい、てめえの要求、いつ出したんだ!?」
「十分前です。すでに発注処理済み。発注先はユモトインダストリー、経費処理は艦長名義で行いました」
「キャンセルしろ!! 今すぐキャンセルしろ!!」
「できません。CPUはもう艦に発送されました。お楽しみに」
俺は天を仰いだ。
これは──地獄の幕開けである。
「えーと、次は部屋の内装だな。各自の希望をまとめるぞ。予算は――」
「ベッドはふかふかで、横にサイドテーブル! ミニバーも絶対! あと壁はピンクにして星柄にしたいな~!」
「猫型のホログラムペットも用意したいです。掃除サポートと癒やし効果を兼ねます」
「今どきのAIは何言い出すんだよ……」
業者のおっちゃんが俺にヒソヒソと囁く。
「艦長さん、これマジで全部入れる気っすか……? ただの貨物艦がラブホと研究所になる勢いなんですけど」
「やめてくれ、事実だけど言わないでくれ」
一応、俺にも希望はある。
「俺の部屋は……ベッドと、机ひとつ。それでいい。あと、静かであること」
「はーい艦長の部屋にもピンクの壁紙追加っと~」
「やめろおおおおお!!!」
「友情の証でしょ? いいじゃんいいじゃん♪」
「ふざけんな、二度と言うなその言葉!」
──翌日。改装第2段階に入ると、さらに地獄が加速した。
「ちょっと! そのベッド違うでしょ!? ふかふかじゃない! ぐにゃぐにゃ!」
「CPUの冷却水管がベッド下通ってるんです。静音性は担保されてますが、床が多少あったかいです」
「どんな構造してんだこの艦は!!」
「なお、マリナさんの部屋から漏電の疑いが。酒の缶が制御パネルに詰まってショートしています」
「知らない知らないわたし知らない~!!」
「お前の部屋からしか出てねぇ匂いがするんだよ!」
作業員が、涙目になっている。
「艦長ォ、また仕様変更ですか? ほんと勘弁してくださいよぉ」
「こっちが泣きたいよ……!!」
──夜。とりあえず仮設ベッドに倒れ込んで、天井を見上げた。
部屋は、まだ壁も貼られてない。音が反響して、マリナの鼻歌が遠くからでも聴こえる。
「ふんふ~ん♪ 冷蔵庫来た~♪ うれし~♪」
「艦長。マリナさんが、無断でバーカウンター設置しました。設計図と違います」
「……もはや止める気力がない……」
「艦長?」
「なんだ」
「現在、艦内ストレス指数が142%。常時警戒レベルを超過しています」
「もう限界ってことかよ……」
「いいえ。艦長の“適応性”が同時に上昇しています。記録更新、おめでとうございます」
「やかましいわ」
──こうして我らが“プリンセス納屋(仮)”は、見た目倉庫、中身スナック+AI研究所、という異色の母艦へと生まれ変わっていった。
この艦がいつか歴史に名を残すことがあったとしても──
誰もその内装を知ることは、ないだろう。
「はぁ、やっと完成か……」
俺は艦内の中央廊下で、天井を見上げながら深いため息をついた。
もうツッコむ気力も尽き果てた。
途中からは「好きにしろ」と言い放って、マリナとポンコツに任せた結果──
とんでもないモノができあがっていた。
・バーカウンター(設計図になし)
→「ねぇねぇ! このカウンター、カクテル用シェイカーも置けるよ!」
→「誰がそんなもん使うんだよ! てか、なんでバーテンダー風ホログラムいるんだよ!」
・サーバールーム(設計図より3倍拡張)
→「データ処理効率は987%向上しました」
→「それはすごいけど……お前、自分の部屋にマジで“メインフレーム”作ったのか……?」
・ジェットバス(普通の浴槽の予定だった)
→「泡、出るよ!すっごい! しかも音楽と照明の演出つき!」
→「なんで風呂がプチナイトプールになってんだよ!?」
・AI用アンドロイド(ポンコツが勝手に発注)
→「こんにちは艦長。私は“アイカ・Mk-II”。主に雑務と応答担当です」
→「誰が頼んだ!? っていうかポンコツ、お前、人格二つに分けてんじゃねぇ!!」
あらゆる意味で、艦の常識を逸脱していた。
これはもう宇宙船じゃない。
動くラウンジだ。もしくは移動型のオタクの夢の城。
「……ま、いいか」
俺はカウンターに置かれていた酒を、ひとつ手に取った。
バーテンダーホログラムが、なぜかウインクしてくる。
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