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初めての大規模戦(後編)
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「よ~し! アレが暴れてるやつだね。そこそこいい動きするじゃん……でも!」
ヘルメット越しにニヤリと笑い、スロットルを最大まで押し込む。
「私ほどじゃないねッ!」
ブースターが閃光を放ち、ハイペリオンが一気に加速。機体が空間を引き裂くように、一直線に敵艦へ突進する。
「ターゲットロック──完了! ……発射ァッ!!」
レールキャノンが低く唸り、凄まじい速度で弾丸が放たれる。だが──
「なっ!? 嘘ッ!? よけられた!?」
敵艦はあざ笑うかのように機体をひねり、レールキャノンを紙一重で回避。
「この~ッ、調子に乗んなよッ!」
マリナの声がヒートアップする。
「追い打ち行くよ!ミサイル、全弾発射!」
翼下のコンテナが開き、複数のミサイルが放たれる。軌道を描いて迫るその後ろを、マリナがさらに詰めていく。
「ったく……いい動きしすぎでしょ。こんな宙域で何鍛えてきてるのよアンタ!」
敵艦も黙ってはいない。ビーム砲がハイペリオンを狙い、紅い閃光を吐く。
「ッ──そんなもん、当たるかーっ!」
マリナは機体をスピンさせながら弾道を逸らし、ミサイルとともに敵艦へ接近。
「覚悟ぉおおおおおおッッ!!」
レールキャノンが再び火を噴く。
白熱の光線が敵艦を貫き、直後、巨大な火球が宙域に広がる。
機体の中央を貫かれた敵艦は、もんどりうって爆散した。
「……撃破確認!」
マリナの声に、艦橋がわずかに安堵の空気に包まれる。
「アイカ、敵の動きは?」
「……確認中。──敵残党、宙域内に僅か三隻。すでに追撃戦に移行しており、こちらが対応する必要はありません。まもなく全艦撃破予定」
「そうか……」
俺は小さく息を吐く。だが、まだ油断はしない。
「この宙域の安全が確定するまで、こちらは慎重に動く。アイカ、レーダー警戒は継続」
「了解。戦術モード維持。感知範囲、最大展開中」
「残弾とエネルギーは?」
「──残弾、12%。エネルギー残量、34%。戦闘継続は困難。そろそろ限界です」
「ふむ……それなら──この辺りで撤退するか」
俺は座席にもたれ、少しだけ背を預ける。
「マリナ、ハイペリオン帰還準備。帰投後は即補給に入れ」
「りょ~かい! いやぁ~、燃えた燃えた!でもちょっとクールダウンしたいかも~」
「アイカ、撤退ルートを最短で。状況報告もまとめといてくれ。帰還後提督に提出する」
「了解。最短ルート算出中。──帰投、準備完了です」
「よし、じゃあ帰るか。“実績”は充分、残せたはずだ」
俺たち“ヘッジホッグ”は、濃密な戦場の余韻を背に、ゆっくりと回頭する──
俺が艦を反転させ、戦場を後にするのとほぼ同時──
「作戦宙域、敵艦すべてせん滅確認」
という通信が、帝国艦隊から全艦に向けて届いた。
……終わったな。
肩の力を抜きながら、俺は小さく息を吐いた。
そして翌日。
俺はケルベロス・スロット駐留軍の基地へと足を運んだ。
「星間海賊ギルド所属、コウキだ。提督に会いに来た」
門衛がこちらを見て、小さくうなずく。
「お前か。なかなかの働きだったらしいな。場所はわかってるな? 行っていいぞ」
言われるがまま、足を進める。昨日と同じ、重たい扉の前に立ち──
「星間海賊ギルド所属、コウキだ。入っていいか?」
「……入れ」
返ってきたのは、以前と同じく低く鋭い声。
だがどこか、昨日よりも疲れて聞こえる。
俺は扉を開け、中に入った。
──そこにいたリサ提督は、昨日と同じ制服姿だったが、わずかに乱れた前髪と、机に積まれた報告書がその疲労を物語っていた。
「来たか」
彼女は視線だけをこちらに向け、顎で隣の椅子を示す。
「昨日の働き、確かに確認した。……貴艦の対応は、予想以上だった。礼を言う」
「まあ、うちの連中も頑張ったんでな。正直、想像より敵がしぶとかった」
「その通りだ。だが、結果は上々……こちらの損害も、当初の想定よりは軽微だった」
リサは小さく、けれどはっきりと息を吐いた。
「ふう……今、ようやく終わった感覚がしている」
──この言葉に、俺は彼女の“覚悟”が本物だったことを再確認する。
「帝国軍があれだけ動くなんて、正直、思ってなかったよ。提督があんたじゃなきゃ、たぶんこの作戦、始まってすらいなかった」
「……私一人では無理だ。だが、貴様のような外部戦力がいてくれたことは、大きな助けになった」
そして、彼女は机の上から一枚の紙を取って、俺の前に差し出した。
「これは帝国からの正式な謝礼と報酬、そして──戦闘協力に対する“推薦状”だ。銀河帝国軍との今後の関係を築く際に使える」
「……本気で、あんた俺たちを“戦力”として認めてくれるのか?」
「当然だ。──次があれば、また声をかける。それでもいいな?」
俺は紙を受け取り、小さくうなずいた。
「検討はするさ。……状況次第だがな」
この女は、軍人としては堅物だが──
信用できる“指揮官”だ。
それだけは、間違いない。
「それじゃあ、大規模戦勝利を祝って──かんぱ~い!」
マリナの声に合わせて、皆がグラスやカップを掲げる。
「おー!」
「乾杯」
「乾杯!」
カンッ、と軽やかな音が艦内の食堂に響く。
「いや~、終わってみれば意外と、なんとかなるもんだねぇ」
マリナが頬を赤らめながら、ビールらしき液体をぐいっとあおる。
「そうだな。大した損傷もなく、よくやったと思うぞ」
俺が応えると、キョウカが元気よく指を立てる。
「わたし、ハイペリオンにいっぱい弾、はこんだよ!」
「うん、キョウカはほんとに頑張ったな。補給タイミングも完璧だった」
「完璧、と言っても差支えはないでしょう。本艦の出力と連携能力は、敵の想定を完全に上回っていました。……よい“実績”となりました」
アイカが少し誇らしげに言う。珍しく、感情の込もった声だ。
「いやあ、ヘッジホッグって、やればできる子だったんだねぇ~」
「お前が言うな。その“できる子”のレールキャノン、撃ち損じてたじゃねぇか」
「ちょっ、それ言う!? 一発だけだよ、一発! そのあとはバッチリ決まったじゃん!」
「確かにな。……ちゃんと“仕留めた”のは見てた」
「ふふん、コウキのくせにちゃんと見てんじゃーん?」
「当たり前だ。俺が見てなきゃ誰が見る。艦長だぞ」
「わたしもみてた!マリナおねえちゃん、かっこよかった!」
「よっし!今日はもう一杯いっちゃおうか~!」
──こうして、俺たちの勝利の夜は、にぎやかに、そして和やかに更けていった。
数日後──。
ケルベロス・スロット宙域における“ブル・フォッグ討伐戦”の報告が、帝国広報網を通じて銀河全域へと配信された。
「帝国軍主導の作戦により、ケルベロス・スロット宙域の違法海賊組織“ブル・フォッグ”壊滅。指揮は駐留軍提督リサ氏。協力した複数の民間私掠艦の中でも──特に目覚ましい戦果を上げたのは、“ヘッジホッグ”艦隊とされる──」
映像に映るのは、俺たちが撃ち落とした敵艦の記録と、発艦するハイペリオンの姿。そして……艦橋で指揮を執る俺の横顔だった。
「……なんだこれ、俺、かっこよく映ってんじゃねぇか」
「“キメ顔モード”、作動させておいて正解でしたね、艦長」
「仕込んだのかよ……!」
「勝手に記録用に使われてるじゃん。肖像権って知ってる?肖像権!」
「おにいちゃん、かっこいいね!」
「はぁ……目立ちすぎるのも、面倒なんだけどな」
俺は頭をかきながら、映像ウィンドウを閉じた。
──とはいえ、これで“ヘッジホッグ”の名は確実に銀河に刻まれた。
少なくとも、“この辺境に、ただの海賊じゃない何かがいる”──と。
その意味と影響が、どこまで波紋を広げるかは、まだ誰にも分からない。
ただひとつ分かっているのは。
これが、俺たちの──
“本当の始まり”かもしれないということだ。
ヘルメット越しにニヤリと笑い、スロットルを最大まで押し込む。
「私ほどじゃないねッ!」
ブースターが閃光を放ち、ハイペリオンが一気に加速。機体が空間を引き裂くように、一直線に敵艦へ突進する。
「ターゲットロック──完了! ……発射ァッ!!」
レールキャノンが低く唸り、凄まじい速度で弾丸が放たれる。だが──
「なっ!? 嘘ッ!? よけられた!?」
敵艦はあざ笑うかのように機体をひねり、レールキャノンを紙一重で回避。
「この~ッ、調子に乗んなよッ!」
マリナの声がヒートアップする。
「追い打ち行くよ!ミサイル、全弾発射!」
翼下のコンテナが開き、複数のミサイルが放たれる。軌道を描いて迫るその後ろを、マリナがさらに詰めていく。
「ったく……いい動きしすぎでしょ。こんな宙域で何鍛えてきてるのよアンタ!」
敵艦も黙ってはいない。ビーム砲がハイペリオンを狙い、紅い閃光を吐く。
「ッ──そんなもん、当たるかーっ!」
マリナは機体をスピンさせながら弾道を逸らし、ミサイルとともに敵艦へ接近。
「覚悟ぉおおおおおおッッ!!」
レールキャノンが再び火を噴く。
白熱の光線が敵艦を貫き、直後、巨大な火球が宙域に広がる。
機体の中央を貫かれた敵艦は、もんどりうって爆散した。
「……撃破確認!」
マリナの声に、艦橋がわずかに安堵の空気に包まれる。
「アイカ、敵の動きは?」
「……確認中。──敵残党、宙域内に僅か三隻。すでに追撃戦に移行しており、こちらが対応する必要はありません。まもなく全艦撃破予定」
「そうか……」
俺は小さく息を吐く。だが、まだ油断はしない。
「この宙域の安全が確定するまで、こちらは慎重に動く。アイカ、レーダー警戒は継続」
「了解。戦術モード維持。感知範囲、最大展開中」
「残弾とエネルギーは?」
「──残弾、12%。エネルギー残量、34%。戦闘継続は困難。そろそろ限界です」
「ふむ……それなら──この辺りで撤退するか」
俺は座席にもたれ、少しだけ背を預ける。
「マリナ、ハイペリオン帰還準備。帰投後は即補給に入れ」
「りょ~かい! いやぁ~、燃えた燃えた!でもちょっとクールダウンしたいかも~」
「アイカ、撤退ルートを最短で。状況報告もまとめといてくれ。帰還後提督に提出する」
「了解。最短ルート算出中。──帰投、準備完了です」
「よし、じゃあ帰るか。“実績”は充分、残せたはずだ」
俺たち“ヘッジホッグ”は、濃密な戦場の余韻を背に、ゆっくりと回頭する──
俺が艦を反転させ、戦場を後にするのとほぼ同時──
「作戦宙域、敵艦すべてせん滅確認」
という通信が、帝国艦隊から全艦に向けて届いた。
……終わったな。
肩の力を抜きながら、俺は小さく息を吐いた。
そして翌日。
俺はケルベロス・スロット駐留軍の基地へと足を運んだ。
「星間海賊ギルド所属、コウキだ。提督に会いに来た」
門衛がこちらを見て、小さくうなずく。
「お前か。なかなかの働きだったらしいな。場所はわかってるな? 行っていいぞ」
言われるがまま、足を進める。昨日と同じ、重たい扉の前に立ち──
「星間海賊ギルド所属、コウキだ。入っていいか?」
「……入れ」
返ってきたのは、以前と同じく低く鋭い声。
だがどこか、昨日よりも疲れて聞こえる。
俺は扉を開け、中に入った。
──そこにいたリサ提督は、昨日と同じ制服姿だったが、わずかに乱れた前髪と、机に積まれた報告書がその疲労を物語っていた。
「来たか」
彼女は視線だけをこちらに向け、顎で隣の椅子を示す。
「昨日の働き、確かに確認した。……貴艦の対応は、予想以上だった。礼を言う」
「まあ、うちの連中も頑張ったんでな。正直、想像より敵がしぶとかった」
「その通りだ。だが、結果は上々……こちらの損害も、当初の想定よりは軽微だった」
リサは小さく、けれどはっきりと息を吐いた。
「ふう……今、ようやく終わった感覚がしている」
──この言葉に、俺は彼女の“覚悟”が本物だったことを再確認する。
「帝国軍があれだけ動くなんて、正直、思ってなかったよ。提督があんたじゃなきゃ、たぶんこの作戦、始まってすらいなかった」
「……私一人では無理だ。だが、貴様のような外部戦力がいてくれたことは、大きな助けになった」
そして、彼女は机の上から一枚の紙を取って、俺の前に差し出した。
「これは帝国からの正式な謝礼と報酬、そして──戦闘協力に対する“推薦状”だ。銀河帝国軍との今後の関係を築く際に使える」
「……本気で、あんた俺たちを“戦力”として認めてくれるのか?」
「当然だ。──次があれば、また声をかける。それでもいいな?」
俺は紙を受け取り、小さくうなずいた。
「検討はするさ。……状況次第だがな」
この女は、軍人としては堅物だが──
信用できる“指揮官”だ。
それだけは、間違いない。
「それじゃあ、大規模戦勝利を祝って──かんぱ~い!」
マリナの声に合わせて、皆がグラスやカップを掲げる。
「おー!」
「乾杯」
「乾杯!」
カンッ、と軽やかな音が艦内の食堂に響く。
「いや~、終わってみれば意外と、なんとかなるもんだねぇ」
マリナが頬を赤らめながら、ビールらしき液体をぐいっとあおる。
「そうだな。大した損傷もなく、よくやったと思うぞ」
俺が応えると、キョウカが元気よく指を立てる。
「わたし、ハイペリオンにいっぱい弾、はこんだよ!」
「うん、キョウカはほんとに頑張ったな。補給タイミングも完璧だった」
「完璧、と言っても差支えはないでしょう。本艦の出力と連携能力は、敵の想定を完全に上回っていました。……よい“実績”となりました」
アイカが少し誇らしげに言う。珍しく、感情の込もった声だ。
「いやあ、ヘッジホッグって、やればできる子だったんだねぇ~」
「お前が言うな。その“できる子”のレールキャノン、撃ち損じてたじゃねぇか」
「ちょっ、それ言う!? 一発だけだよ、一発! そのあとはバッチリ決まったじゃん!」
「確かにな。……ちゃんと“仕留めた”のは見てた」
「ふふん、コウキのくせにちゃんと見てんじゃーん?」
「当たり前だ。俺が見てなきゃ誰が見る。艦長だぞ」
「わたしもみてた!マリナおねえちゃん、かっこよかった!」
「よっし!今日はもう一杯いっちゃおうか~!」
──こうして、俺たちの勝利の夜は、にぎやかに、そして和やかに更けていった。
数日後──。
ケルベロス・スロット宙域における“ブル・フォッグ討伐戦”の報告が、帝国広報網を通じて銀河全域へと配信された。
「帝国軍主導の作戦により、ケルベロス・スロット宙域の違法海賊組織“ブル・フォッグ”壊滅。指揮は駐留軍提督リサ氏。協力した複数の民間私掠艦の中でも──特に目覚ましい戦果を上げたのは、“ヘッジホッグ”艦隊とされる──」
映像に映るのは、俺たちが撃ち落とした敵艦の記録と、発艦するハイペリオンの姿。そして……艦橋で指揮を執る俺の横顔だった。
「……なんだこれ、俺、かっこよく映ってんじゃねぇか」
「“キメ顔モード”、作動させておいて正解でしたね、艦長」
「仕込んだのかよ……!」
「勝手に記録用に使われてるじゃん。肖像権って知ってる?肖像権!」
「おにいちゃん、かっこいいね!」
「はぁ……目立ちすぎるのも、面倒なんだけどな」
俺は頭をかきながら、映像ウィンドウを閉じた。
──とはいえ、これで“ヘッジホッグ”の名は確実に銀河に刻まれた。
少なくとも、“この辺境に、ただの海賊じゃない何かがいる”──と。
その意味と影響が、どこまで波紋を広げるかは、まだ誰にも分からない。
ただひとつ分かっているのは。
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