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そして、日常へ
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「……うまい」
炭火の香ばしい匂いと、ジューシーな肉汁が舌の上で弾けた。
目の前には、肉・肉・肉のオンパレード。分厚いステーキ、ハンバーグ、香ばしい骨付きソーセージ、海辺とは思えぬほど充実した焼肉セットまで。島の備え付けとは思えない豪勢な夕飯が、テーブルの上に所狭しと並んでいる。
「おにくいっぱい~! えへへ、勝ってよかったぁ~!」
「くっ、ちゃんと勝負で決めたからね。これは正式な結果よ」
マリナが悔しそうに口を尖らせながらも、ワイン片手に肉を頬張っていた。結局、なんだかんだで満足してるらしい。
「……私はシーフードも追加で頼みました。せっかくなので」
「ナイスだアイカ。俺もそれ食う」
アイカが用意していたグリル海鮮セットから、ぷりぷりのホタテをつまみあげる。肉尽くしの食卓に、一筋の海の幸が差し込む瞬間だった。
「こうしてると……なんか、ゆめみたいだね」
キョウカがぽつりと呟いた。
肉を両手で抱えたまま、でもその表情は真剣だった。
いつもと違う、どこか大人びた声だった。
海風が吹き抜け、炭の香りと笑い声が、波音に混じって消えていく。
──楽しい時間は、いつまでも続かない。
そんな空気が、誰の口にも出さずとも、そっと場を包み始めていた。
食後。砂浜で集まって夕陽を見る。そこには、楽しかった、という思いと、もう終わっちゃうのか、という思いが混ざり合い、どこかしんみりとした空気が漂っていた。
「綺麗だね~」
「きれい!……ねむねむ……」
「キョウカさんはお疲れのようですね」
「そりゃあれだけはしゃいでれば眠くもなるさ」
「ふふっ」
「ははっ」
ゆったりとした時間を過ごす。こんな時間も……悪くない。
「ずっと、ここであそびたい……」
「私もそう思うけど、明日にはもう帰らなきゃ。ね」
「そうだな。明日には帰るぞ。忘れ物しないようにな」
夕日が沈んでいくのを眺めながら、アイカが聞いてくる。
「皆さんにとって、“帰る場所”とはどういうものなのでしょうか?」
「みんなといっしょのとこ……」
「私は考えたこともなかったな。でも、今は皆がいるところかな。ちょっと、照れくさいけど」
「俺は……今は、艦かな。お前らといると、退屈しないしな」
「居場所って、そういうもんで十分なんだろ。笑って帰れるならさ」
――楽しい時間も、ゆっくりと終わりが近づいてきていた。
日も落ち、のんびりと温泉を楽しむ。
「騒がしいのも悪くはないが、やっぱりこういうのんびりとした時間が、俺は好きだな」
隣の女性風呂ではマリナとキョウカがはしゃいでいる声が聞こえる。
のんびり月を眺めながら湯船に浸かっていると、背後から声が聞こえる。
「背中、流しましょうか?」
「うわっ!なんだアイカか。ここは男子風呂だぞ」
「私はAIですので。性別は関係ありません」
「お前自分で女性型人格って言ってただろうが」
「……」
「何か、話でもあるのか?」
アイカは黙ったまま、手にタオルを持ってこちらに歩み寄ってくる。
湯気の中、月の光が湯面に揺れている。
「──いえ。正確には、今お伝えすべきか迷っていました」
「ん?」
「休暇中に受信した、未処理の高優先度通信があります。差出人は帝国軍情報局と、ギルド本部」
「……なるほどな」
コウキは湯に浸かったまま、ため息をつく。
「やっぱり来たか。休暇が終わるってのは、そういうことだな」
「内容はまだ開封していませんが、少なくとも“のんびりしたまま”ではいられなくなる可能性があります」
アイカはタオルを折りたたみ、コウキの背中に当てる。
「背中、お流しします」
「……ああ、頼む」
タオル越しに、静かに温もりが伝わる。
人工知能のはずのアイカの手つきは、どこか優しかった。
「今日だけは、のんびりしていいか?」
「はい。今夜までは、平穏を維持します」
「……ありがとな。たぶん、そういうのが一番、大事なんだと思う」
湯船の向こうでは、まだマリナとキョウカのはしゃぎ声が聞こえる。
「……じゃあ、明日から地獄ってやつか」
「その可能性は、約73%です」
「残りの27%に賭けたいところだな」
湯気と笑い声の向こうに、月が静かに浮かんでいた。
夜。ゆったりとした音楽を聴きながら、マリナは一人、バーで酒を楽しんでいた。
「お前、まだ飲んでるのか」
「コウキ~、一緒に飲もうよ~」
「一杯だけな」
おれは差し出されたグラスを受け取り、ゆっくりと流し込む。
「ふぅ」
「いいじゃん、もう一杯いっとく?」
「いらん。お前もそろそろ寝とけ。明日からまた忙しくなるぞ」
「え~、せっかくの飲み放題だし、もうちょっとだけ……」
「二日酔いでも仕事はさせるからな」
「わかったよ~。じゃ、そろそろ寝るとしますか」
「おう、お休み」
「……部屋はそっちじゃなくて反対だぞ」
「えっ、ああ、こっちか」
俺は手を振って部屋へと戻るマリナを見ながら、残りを一気にあおるのだった。
部屋に戻ると、キョウカはすでに寝息を立てていた。
その横にはアイカが、座ったままじっと見守っている。
「寝かしつけ、完了したか」
「はい。たくさん遊んだので、五分もかかりませんでした」
「そりゃそうだ。あれだけ暴れりゃな……」
俺は静かにベッドに腰掛ける。
天井を見上げながら、言葉を探す。
「……なあ、アイカ」
「なんでしょう?」
「お前が言ってた“高優先度通信”ってやつ、明日の朝に確認すればいいな」
「はい。それが最善と判断します。今夜は──皆さんの記憶の中で、“楽しかった”という感情が一番濃く残るように、最適化を優先します」
「……そっか。ありがとな」
窓の外には、夜の海が静かに波を打っていた。
こうして、俺たちの短いバカンスは、静かに幕を閉じた。
だが──明日にはまた、“宇宙海賊の日常”が戻ってくる。
それでもきっと、大丈夫だ。
俺たちには、帰る場所がある。仲間がいる。
──そしてまた、次の冒険が待っている。
どんな危険な宙域でも、どんな無茶な任務でも。
俺たちは、笑って帰ってくる。そういうチームだからな。
炭火の香ばしい匂いと、ジューシーな肉汁が舌の上で弾けた。
目の前には、肉・肉・肉のオンパレード。分厚いステーキ、ハンバーグ、香ばしい骨付きソーセージ、海辺とは思えぬほど充実した焼肉セットまで。島の備え付けとは思えない豪勢な夕飯が、テーブルの上に所狭しと並んでいる。
「おにくいっぱい~! えへへ、勝ってよかったぁ~!」
「くっ、ちゃんと勝負で決めたからね。これは正式な結果よ」
マリナが悔しそうに口を尖らせながらも、ワイン片手に肉を頬張っていた。結局、なんだかんだで満足してるらしい。
「……私はシーフードも追加で頼みました。せっかくなので」
「ナイスだアイカ。俺もそれ食う」
アイカが用意していたグリル海鮮セットから、ぷりぷりのホタテをつまみあげる。肉尽くしの食卓に、一筋の海の幸が差し込む瞬間だった。
「こうしてると……なんか、ゆめみたいだね」
キョウカがぽつりと呟いた。
肉を両手で抱えたまま、でもその表情は真剣だった。
いつもと違う、どこか大人びた声だった。
海風が吹き抜け、炭の香りと笑い声が、波音に混じって消えていく。
──楽しい時間は、いつまでも続かない。
そんな空気が、誰の口にも出さずとも、そっと場を包み始めていた。
食後。砂浜で集まって夕陽を見る。そこには、楽しかった、という思いと、もう終わっちゃうのか、という思いが混ざり合い、どこかしんみりとした空気が漂っていた。
「綺麗だね~」
「きれい!……ねむねむ……」
「キョウカさんはお疲れのようですね」
「そりゃあれだけはしゃいでれば眠くもなるさ」
「ふふっ」
「ははっ」
ゆったりとした時間を過ごす。こんな時間も……悪くない。
「ずっと、ここであそびたい……」
「私もそう思うけど、明日にはもう帰らなきゃ。ね」
「そうだな。明日には帰るぞ。忘れ物しないようにな」
夕日が沈んでいくのを眺めながら、アイカが聞いてくる。
「皆さんにとって、“帰る場所”とはどういうものなのでしょうか?」
「みんなといっしょのとこ……」
「私は考えたこともなかったな。でも、今は皆がいるところかな。ちょっと、照れくさいけど」
「俺は……今は、艦かな。お前らといると、退屈しないしな」
「居場所って、そういうもんで十分なんだろ。笑って帰れるならさ」
――楽しい時間も、ゆっくりと終わりが近づいてきていた。
日も落ち、のんびりと温泉を楽しむ。
「騒がしいのも悪くはないが、やっぱりこういうのんびりとした時間が、俺は好きだな」
隣の女性風呂ではマリナとキョウカがはしゃいでいる声が聞こえる。
のんびり月を眺めながら湯船に浸かっていると、背後から声が聞こえる。
「背中、流しましょうか?」
「うわっ!なんだアイカか。ここは男子風呂だぞ」
「私はAIですので。性別は関係ありません」
「お前自分で女性型人格って言ってただろうが」
「……」
「何か、話でもあるのか?」
アイカは黙ったまま、手にタオルを持ってこちらに歩み寄ってくる。
湯気の中、月の光が湯面に揺れている。
「──いえ。正確には、今お伝えすべきか迷っていました」
「ん?」
「休暇中に受信した、未処理の高優先度通信があります。差出人は帝国軍情報局と、ギルド本部」
「……なるほどな」
コウキは湯に浸かったまま、ため息をつく。
「やっぱり来たか。休暇が終わるってのは、そういうことだな」
「内容はまだ開封していませんが、少なくとも“のんびりしたまま”ではいられなくなる可能性があります」
アイカはタオルを折りたたみ、コウキの背中に当てる。
「背中、お流しします」
「……ああ、頼む」
タオル越しに、静かに温もりが伝わる。
人工知能のはずのアイカの手つきは、どこか優しかった。
「今日だけは、のんびりしていいか?」
「はい。今夜までは、平穏を維持します」
「……ありがとな。たぶん、そういうのが一番、大事なんだと思う」
湯船の向こうでは、まだマリナとキョウカのはしゃぎ声が聞こえる。
「……じゃあ、明日から地獄ってやつか」
「その可能性は、約73%です」
「残りの27%に賭けたいところだな」
湯気と笑い声の向こうに、月が静かに浮かんでいた。
夜。ゆったりとした音楽を聴きながら、マリナは一人、バーで酒を楽しんでいた。
「お前、まだ飲んでるのか」
「コウキ~、一緒に飲もうよ~」
「一杯だけな」
おれは差し出されたグラスを受け取り、ゆっくりと流し込む。
「ふぅ」
「いいじゃん、もう一杯いっとく?」
「いらん。お前もそろそろ寝とけ。明日からまた忙しくなるぞ」
「え~、せっかくの飲み放題だし、もうちょっとだけ……」
「二日酔いでも仕事はさせるからな」
「わかったよ~。じゃ、そろそろ寝るとしますか」
「おう、お休み」
「……部屋はそっちじゃなくて反対だぞ」
「えっ、ああ、こっちか」
俺は手を振って部屋へと戻るマリナを見ながら、残りを一気にあおるのだった。
部屋に戻ると、キョウカはすでに寝息を立てていた。
その横にはアイカが、座ったままじっと見守っている。
「寝かしつけ、完了したか」
「はい。たくさん遊んだので、五分もかかりませんでした」
「そりゃそうだ。あれだけ暴れりゃな……」
俺は静かにベッドに腰掛ける。
天井を見上げながら、言葉を探す。
「……なあ、アイカ」
「なんでしょう?」
「お前が言ってた“高優先度通信”ってやつ、明日の朝に確認すればいいな」
「はい。それが最善と判断します。今夜は──皆さんの記憶の中で、“楽しかった”という感情が一番濃く残るように、最適化を優先します」
「……そっか。ありがとな」
窓の外には、夜の海が静かに波を打っていた。
こうして、俺たちの短いバカンスは、静かに幕を閉じた。
だが──明日にはまた、“宇宙海賊の日常”が戻ってくる。
それでもきっと、大丈夫だ。
俺たちには、帰る場所がある。仲間がいる。
──そしてまた、次の冒険が待っている。
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俺たちは、笑って帰ってくる。そういうチームだからな。
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