刻印

マリ・シンジュ

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施術1ヶ月前の訪問

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※この日は、施術本番の前に下絵とステンシルの最終確認のための来訪だった。

「パールマリ工房」は、いつも通り静かだった。
だが今日の静けさには、どこか湿り気を帯びた、張りつめた空気が混じっている。
扉が開き、二人を見た瞬間、心の奥で小さく確信した。
——やっと来た。

​新城。磨かれた石像のような静けさをまとい、内側に熱を閉じ込めて歩く男。
すらりとした体躯、無駄のない線、視線の置き方ひとつに、逃げ場を断った覚悟がにじむ。
(前回より、いい。彼はもう、刻まれる側に立っている)

隣に立つ羽生は、新城を囲い込むように、けれど誰にも触れさせない「所有の光」を瞳に宿して立っている。若く率直な所有欲すら、今は美しき素材の一部に見えた。

​Mari:「ようこそ。今日は下絵の最終確認と、ステンシルですね」

​声は淡々と。内側の高揚は押し込める。

Mari:「新城様、こちらへ。仰向けでお願いします」

​新城はためらいなく衣服を下ろし、施術台に横たわる。脚のラインが照明に溶け、Mariは一度、深く息を吸った。
転写液を含ませた指先が内腿に触れる。温度も、吸い付くような肌の張りも、理想的だ。

一センチに満たない精度で位置を測り、迷いなくシートを置く。貼りつく音が、静寂の中に吸い込まれるように消えた。
​シートを剥がすと、赤いリボンの輪郭が青紫の線で浮かぶ。

結び目の上に孔雀の目。まだ薄い線なのに、すでにそこには「意志」が座っていた。
新城の呼吸に合わせてわずかに動くのを見て、Mariは喉の奥で小さく確認する。
(位置も形も、間違いない。恐ろしいほどに、彫るべき場所が整っている)

​手鏡を差し出すと、新城は黙ってそれを見つめた。
羽生が近づき、新城の耳元に触れるほどの距離で何かを囁く。
新城の眉がかすかに動き、羽生の言葉を拒むことなく、静かに受け入れた。
そのやり取りすら、Mariには「素材の相互作用」——二人の魂が重なり、溶け合うプロセスに見えた。

​新城:「これでいい。変えなくていい」

​短い言葉が、決定事項として空間に固定される。
新城が着替える間、羽生の肌にステンシルを密着させる。
剥がす瞬間、薄い紙が空気を切る音がした。
現れたのは——羽根のようにしなやかで、槍のように鋭い、流線の紋様。

新城の縛り付けるようなリボンとは対照的な、舞い上がる意志の形。
​二人の線を見比べ、Mariは小さく息を吐いた。
座標、傾き、線の精度。すべてが完璧に噛み合っている。

(ああ、これこそ集中すべき仕事だ。個人的な感情は、置いておこう)

​手袋を外す。ぱん、と乾いた音。儀式の区切り。
羽生が新城の手に、絡めるでも握るでもなく、ただ静かに己の手を重ねた。
その沈黙の接触だけで、二人の間に深い呼吸が流れるのをMariは見た。

​二人が部屋を出たあと、Mariは施術台を見下ろす。
(指先は早く動きたがっている……でも、これは本当に、許されることなのだろうか)
アトリエに満ちる冷たい光の中に、二人が残した熱い誓約の残り香だけが生々しく残る。
その余韻を、Mariは不快だとは思わなかった。

♡あとがき♡
お待たせしました!次回はエロきます。これ読んだあとにエロサンプルを読むと笑ってしまう😸
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