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第1章 倫理の境界線(プロトコルの策定)
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1. 静寂の中の義務感と汚された知性
深夜の書斎は、分厚いカーテンに閉ざされ、重苦しい静寂が支配していた。重厚な木のデスクの上。無機質な金属製のトイが、医療用の滅菌パックに収まったまま置かれている。
新城教授は、それをブジーという専門用語ではなく、「トイ」と呼ぶ教え子の望みに応える義務感に駆られていた。
彼はこの行為を心から望んでいない。しかし、切実な甘い言葉で自分を「教授」としてリードしてほしいと求めてくる羽生の要望を前に、年長者としての責任を放棄することは、彼自身の規範が許さなかった。
新城の切れ長の瞳の奥には、倫理を破る罪悪感と、「引き受けた以上、教え子の身体の安全を最優先に、完璧に遂行しなければならない」という、真面目な義務感が宿っていた。この器具の使用には、当然リスクが伴う。新城は、教え子の身体の安全という、最も避けがたい責任を全うするため、知識で武装する必要があった。
2. 教授のプライドと臨床医の具体的助言
新城は、深呼吸で心拍の乱れを鎮め、公的な権威のトーンを声にまとうと、スマホを手に取った。呼吸を整え、同窓の泌尿器科医師、田中を呼び出す。教授の白いシャツの下、腹部の奥では、抑え込まれた緊張が微かな熱となり、隠された衝動を警告していた。
新城:「田中君、夜分に済まない。倫理委員会への提出資料を作成中でね」
新城は、罪悪感からくる硬さを、『教授の責務』という仮面に貼り付けた。田中の疲れたような笑い声が、電話口から漏れた。
田中:「はぁ、新城教授。夜にその手の話題ですか。相変わらず真面目ですね。で、何の実測値が必要で?」
新城は一瞬、居心地の悪さに沈黙する。トイの実践的な手技を聞き出すという、教授としてのプライドを削る行為に、羞恥心が胸を締め付けた。
新城:「尿道への異物挿入が体腔内に与える影響についてだ」
彼は、意を決して核心に入った。
新城:「ブジーが尿道のS字カーブを通過する際の、粘膜損傷を避けるための微妙な角度について、何かコツはあるかね? 文献の理論だけでは、どうも精度に欠ける。……安全性の確保が最優先だ。」
田中は、教授の真面目さに面白がっているようだった。声を潜める。
田中:「安全性の確保、ですか。教授、そんなに真面目だと、相手に逃げられますよ? ブジーが『入っていく』のを待つんじゃなくて、『尿道がブジーを受け入れるのを待つ』のがコツですよ。愛ですよ、愛。それを焦ると、痛いだけです。」
田中は一度笑った後、臨床医としてのトーンに戻し、具体的な助言を付け加えた。
田中:「真面目な話、教授。挿入の開始角度は、ペニスに対してだいたい30度ですよ。その角度から、ブジーの先端がカーブに当たったら、そこで力を抜いて3秒待つ。粘膜が柔らかく広がるのを待つんです。それが一番、粘膜を傷つけない。理論じゃなくて、実務です。」
新城は、その臨床的な生々しさと甘い教訓を同時に与えられ、一瞬沈黙した。羞恥心と、貴重な情報を得た知的な驚きを押し殺す。
新城:「……30度、そして3秒……。ありがとう。再現性のある貴重な情報だ。」
田中:「教授、再現性より優しさですよ。金属は冷たいですからね。年長者としてリードするなら、なおさらです。」
田中は再び茶化す。
新城:「私の研究の範疇だ。その抵抗を最小限に抑え、感染リスクを確実に排除する医療用潤滑剤の成分を、正確に教えてくれ。これは医療者としての責務だろう。」
新城は冷たく答えたが、声には焦燥が隠されていた。
3. 支配ではなく、リードするためのプロトコル
新城は、田中の「愛」の助言をノイズとして処理し、通話を切った。彼の指先が、トイをパックから取り出す。教え子の身体の安全という責任感から、医療用のアルコールで入念に拭き上げられた。この真面目すぎる衛生管理は、教え子の身体に、自分という存在の罪を刻む道具を、決して傷つけてはならないという、倒錯的な責任感の表れだった。
机上には、泌尿器系の人体解剖図が広げられている。新城はトイのカーブと長さを視覚的に照合し、田中から得た「30度の開始角度」と「3秒の待機時間」をペンで細かくメモしていく。
新城のメモ用紙の冒頭には、「トイの使用時、被験者に対するプロトコル」というタイトルで、大人の義務が記されていった。
《プロトコル:羽生に対する義務》
トイ挿入時、尿道括約筋の弛緩を維持すること。抵抗は即座に中止の合図とする。
トイが前立腺に到達した際、快感の最大値(主観的評価)を明確な言葉で私に報告すること。
私が処置の主導権を持つ。いかなる感情的な衝動も、私の許可なしに顕在化させないこと。
新城教授は、年長者としての責任と、羽生の望みを叶える義務感をもって、この背徳的なプロトコルを完成させた。彼は、この一連の義務が、羽生の肉体をどの程度の屈辱と快感で染め上げるか、その「データ予測」に、背筋が冷えるような抑えがたい快感を感じていた。彼の表情には、支配者の傲慢さではなく、避けられない任務を引き受け、知性で倫理を武装した指導者の重い決意だけが宿っていた。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
深夜の書斎は、分厚いカーテンに閉ざされ、重苦しい静寂が支配していた。重厚な木のデスクの上。無機質な金属製のトイが、医療用の滅菌パックに収まったまま置かれている。
新城教授は、それをブジーという専門用語ではなく、「トイ」と呼ぶ教え子の望みに応える義務感に駆られていた。
彼はこの行為を心から望んでいない。しかし、切実な甘い言葉で自分を「教授」としてリードしてほしいと求めてくる羽生の要望を前に、年長者としての責任を放棄することは、彼自身の規範が許さなかった。
新城の切れ長の瞳の奥には、倫理を破る罪悪感と、「引き受けた以上、教え子の身体の安全を最優先に、完璧に遂行しなければならない」という、真面目な義務感が宿っていた。この器具の使用には、当然リスクが伴う。新城は、教え子の身体の安全という、最も避けがたい責任を全うするため、知識で武装する必要があった。
2. 教授のプライドと臨床医の具体的助言
新城は、深呼吸で心拍の乱れを鎮め、公的な権威のトーンを声にまとうと、スマホを手に取った。呼吸を整え、同窓の泌尿器科医師、田中を呼び出す。教授の白いシャツの下、腹部の奥では、抑え込まれた緊張が微かな熱となり、隠された衝動を警告していた。
新城:「田中君、夜分に済まない。倫理委員会への提出資料を作成中でね」
新城は、罪悪感からくる硬さを、『教授の責務』という仮面に貼り付けた。田中の疲れたような笑い声が、電話口から漏れた。
田中:「はぁ、新城教授。夜にその手の話題ですか。相変わらず真面目ですね。で、何の実測値が必要で?」
新城は一瞬、居心地の悪さに沈黙する。トイの実践的な手技を聞き出すという、教授としてのプライドを削る行為に、羞恥心が胸を締め付けた。
新城:「尿道への異物挿入が体腔内に与える影響についてだ」
彼は、意を決して核心に入った。
新城:「ブジーが尿道のS字カーブを通過する際の、粘膜損傷を避けるための微妙な角度について、何かコツはあるかね? 文献の理論だけでは、どうも精度に欠ける。……安全性の確保が最優先だ。」
田中は、教授の真面目さに面白がっているようだった。声を潜める。
田中:「安全性の確保、ですか。教授、そんなに真面目だと、相手に逃げられますよ? ブジーが『入っていく』のを待つんじゃなくて、『尿道がブジーを受け入れるのを待つ』のがコツですよ。愛ですよ、愛。それを焦ると、痛いだけです。」
田中は一度笑った後、臨床医としてのトーンに戻し、具体的な助言を付け加えた。
田中:「真面目な話、教授。挿入の開始角度は、ペニスに対してだいたい30度ですよ。その角度から、ブジーの先端がカーブに当たったら、そこで力を抜いて3秒待つ。粘膜が柔らかく広がるのを待つんです。それが一番、粘膜を傷つけない。理論じゃなくて、実務です。」
新城は、その臨床的な生々しさと甘い教訓を同時に与えられ、一瞬沈黙した。羞恥心と、貴重な情報を得た知的な驚きを押し殺す。
新城:「……30度、そして3秒……。ありがとう。再現性のある貴重な情報だ。」
田中:「教授、再現性より優しさですよ。金属は冷たいですからね。年長者としてリードするなら、なおさらです。」
田中は再び茶化す。
新城:「私の研究の範疇だ。その抵抗を最小限に抑え、感染リスクを確実に排除する医療用潤滑剤の成分を、正確に教えてくれ。これは医療者としての責務だろう。」
新城は冷たく答えたが、声には焦燥が隠されていた。
3. 支配ではなく、リードするためのプロトコル
新城は、田中の「愛」の助言をノイズとして処理し、通話を切った。彼の指先が、トイをパックから取り出す。教え子の身体の安全という責任感から、医療用のアルコールで入念に拭き上げられた。この真面目すぎる衛生管理は、教え子の身体に、自分という存在の罪を刻む道具を、決して傷つけてはならないという、倒錯的な責任感の表れだった。
机上には、泌尿器系の人体解剖図が広げられている。新城はトイのカーブと長さを視覚的に照合し、田中から得た「30度の開始角度」と「3秒の待機時間」をペンで細かくメモしていく。
新城のメモ用紙の冒頭には、「トイの使用時、被験者に対するプロトコル」というタイトルで、大人の義務が記されていった。
《プロトコル:羽生に対する義務》
トイ挿入時、尿道括約筋の弛緩を維持すること。抵抗は即座に中止の合図とする。
トイが前立腺に到達した際、快感の最大値(主観的評価)を明確な言葉で私に報告すること。
私が処置の主導権を持つ。いかなる感情的な衝動も、私の許可なしに顕在化させないこと。
新城教授は、年長者としての責任と、羽生の望みを叶える義務感をもって、この背徳的なプロトコルを完成させた。彼は、この一連の義務が、羽生の肉体をどの程度の屈辱と快感で染め上げるか、その「データ予測」に、背筋が冷えるような抑えがたい快感を感じていた。彼の表情には、支配者の傲慢さではなく、避けられない任務を引き受け、知性で倫理を武装した指導者の重い決意だけが宿っていた。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
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