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時間は巻き戻らない

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「別れよう」

 いつも、何年経っても離れがたくて空が暗くなっても飽きずに話した。勉強のこと、友達のこと、部活のこと、家族のこと、将来のこと。たくさん、色々なことを話した。その思い出のベンチに並んで、今日は別れ話を切り出された。

 なんとなくわかっていた。別れの予感はしていた。それでも違うと、勘違いだと、思いたかったのに。

 どこに隠れていたのか次から次へと涙が溢れて落ちていく。

 春前の、まだ肌寒い風が濡れた頬を冷やした。

「お姉ちゃんが戻って来たから?」
「………」

「私、別れたくない」
「……」

「何とか言ってよ」
「……ごめん」

「ごめんじゃなくてさぁ……」
「ごめん」

「……寂しいよ。独りぼっちになっちゃうよ」
「ごめん」

「私のこと捨てるんだ。お姉ちゃんの代わりにして、本物が戻ってきたら捨てるんだね。最低。ひどすぎ。付き合った時間返してよ。私、初めてだったのに。返してよ」
「ごめん」

「私のこと好きって言ったのに。また遊園地行こうねって約束したのに、約束も破るんだね。最低。最悪」
「ごめん」

「付き合わなきゃよかった。好きにならなきゃよかった。私のことなんか最初から放っといてくれたらよかったのに」
「ごめん」

「ごめん以外に言えないわけ?ごめんって謝って、それで全部終わらせようとしてるでしょう。……好きなのに、もう会えないの?」
「ごめん」

「……こうやって、もうキスも、しないの?」
「ごめん」


「……もう、お姉ちゃんと付き合ってるの?」
「……いや、まだ」

「まだ気持ち言ってないの?それなのに私と別れるの?」
「……ちゃんと、けじめつけたくて」

「お姉ちゃんには、ね。私のことお姉ちゃんの代わりにしたくせに、お姉ちゃんには”誠実”なんだね。笑える。私もお姉ちゃんみたいに大切にされたかったな」 

「ごめん。春子は良い子だから…すぐ彼氏が出来るよ。俺じゃ春子を幸せに出来ない。良い彼氏じゃなかったけど……今までありがとう」

「……私は斗真と幸せになりかたったんだよ」

 こうして、私のラブストーリーは終わってしまったのだ。

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