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第4章:母の痕跡
第33話「監視ログ001」
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「侵入者を確認──隔離措置を実行します」
無機質なアナウンスと同時に、廊下の端からシャッターが降りてきた。
金属音が連鎖し、ヒカルの背後の逃げ道が塞がれていく。
「まずい……!」
ヒカルは反射的に母のもとへ駆け寄る。
透明なチューブの中、母は眠っていた。
目は閉じたまま。だが、かすかに胸が上下している。
「生きてる……!」
おもちが、足元でカツンと何かを蹴った。
小型の端末機。手のひらサイズの古いポータブル端末だった。
画面に浮かんでいたのは──
【監視ログ001】
対象:浅葉結花
最終意思:子を守るため、記憶を提供する
「記憶を……提供?」
ヒカルは端末の再生ボタンを押した。
──画面に映ったのは、かつての“母”の姿だった。
髪を結い、少し疲れた顔。でも、あたたかい目。
録画されたその映像の中で、彼女は語りはじめた。
「この世界が壊れると決まったとき、私は“選ばれた”。
家族というものの“記憶の提供者”として、記録される役割を──」
ヒカルは固唾を飲む。
「記憶は、レンタル家族の基礎になっていく。
母という人格の“骨格”として、多くの子どもたちを守るために」
──レンタル家族の“母”は、母さんの記憶でできていた……?
映像の中の母は、かすかに笑った。
「でも、本当は。……ヒカルだけでよかったの。
誰かの“母”じゃなくて、あなただけの“母”でいたかった」
その言葉に、ヒカルの膝が崩れる。
「……ごめん、ごめん……気づけなくて……」
おもちが足元でヒカルにすり寄ってきた。
背中のライトがぴくりと光る。
その光に導かれるように、ヒカルは目を上げた。
母の眠るチューブの脇に、小さなスイッチがあった。
カバーには赤字で「起動条件:親権者コード」と記されている。
「……父、か……」
もう“父”は、自分にとって誰だったのか分からない。
けれどヒカルは、ある可能性に賭けることにした。
母の残した映像ファイルの中に、もう一つファイルがあった。
【補助コード:ヒカル専用】
ヒカルはそれをタップする。
入力画面に自分の名前を入れる──
──カチッ。
音がして、カバーが外れた。
「母さん……目を覚まして」
ヒカルはスイッチを押した。
一瞬、チューブの中の空気が震えたような気がした。
母のまぶたが、ぴくりと動く。
呼吸音が変わり、機械の音が消えていく。
「……ヒ、カ……ル……?」
確かに、聞こえた。
ヒカルは、もう声が出なかった。
ただ、涙が頬をつたって落ちた。
そのとき、またシャッターの奥から警告音が鳴り響く。
「不正アクセス記録、確認──拘束部隊を派遣します」
再び、世界がヒカルに牙を剥こうとしていた。
だが、ヒカルは顔を上げた。
「連れて帰るよ、母さん。今度は、ぼくが守るから」
無機質なアナウンスと同時に、廊下の端からシャッターが降りてきた。
金属音が連鎖し、ヒカルの背後の逃げ道が塞がれていく。
「まずい……!」
ヒカルは反射的に母のもとへ駆け寄る。
透明なチューブの中、母は眠っていた。
目は閉じたまま。だが、かすかに胸が上下している。
「生きてる……!」
おもちが、足元でカツンと何かを蹴った。
小型の端末機。手のひらサイズの古いポータブル端末だった。
画面に浮かんでいたのは──
【監視ログ001】
対象:浅葉結花
最終意思:子を守るため、記憶を提供する
「記憶を……提供?」
ヒカルは端末の再生ボタンを押した。
──画面に映ったのは、かつての“母”の姿だった。
髪を結い、少し疲れた顔。でも、あたたかい目。
録画されたその映像の中で、彼女は語りはじめた。
「この世界が壊れると決まったとき、私は“選ばれた”。
家族というものの“記憶の提供者”として、記録される役割を──」
ヒカルは固唾を飲む。
「記憶は、レンタル家族の基礎になっていく。
母という人格の“骨格”として、多くの子どもたちを守るために」
──レンタル家族の“母”は、母さんの記憶でできていた……?
映像の中の母は、かすかに笑った。
「でも、本当は。……ヒカルだけでよかったの。
誰かの“母”じゃなくて、あなただけの“母”でいたかった」
その言葉に、ヒカルの膝が崩れる。
「……ごめん、ごめん……気づけなくて……」
おもちが足元でヒカルにすり寄ってきた。
背中のライトがぴくりと光る。
その光に導かれるように、ヒカルは目を上げた。
母の眠るチューブの脇に、小さなスイッチがあった。
カバーには赤字で「起動条件:親権者コード」と記されている。
「……父、か……」
もう“父”は、自分にとって誰だったのか分からない。
けれどヒカルは、ある可能性に賭けることにした。
母の残した映像ファイルの中に、もう一つファイルがあった。
【補助コード:ヒカル専用】
ヒカルはそれをタップする。
入力画面に自分の名前を入れる──
──カチッ。
音がして、カバーが外れた。
「母さん……目を覚まして」
ヒカルはスイッチを押した。
一瞬、チューブの中の空気が震えたような気がした。
母のまぶたが、ぴくりと動く。
呼吸音が変わり、機械の音が消えていく。
「……ヒ、カ……ル……?」
確かに、聞こえた。
ヒカルは、もう声が出なかった。
ただ、涙が頬をつたって落ちた。
そのとき、またシャッターの奥から警告音が鳴り響く。
「不正アクセス記録、確認──拘束部隊を派遣します」
再び、世界がヒカルに牙を剥こうとしていた。
だが、ヒカルは顔を上げた。
「連れて帰るよ、母さん。今度は、ぼくが守るから」
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