6 / 437
第2章 名前のない少年
1.名前のない少年
しおりを挟む
それから俺は、幾日もモヤモヤしたままだった。
俺には『妹』の他にも『弟』がいる。
母の兄であるエドワードにもこっそりと聞いてみたが、はぐらかすばかりで肝心なことは何一つ教えてくれない。
どうして教えてくれないんだろう?
母上は父上が他の女に産ませた子供に対して、同情的だったように見える。
しかし裏法律に従って生ませただけの子供といえど、内心穏やかではないはずだ。
また、母上は父上に深く愛されている『幸せな王妃』として国の内外から憧れの眼差しで見られてきた。
父上が腹踊りで恥をかくのはどうでもよいが、建国以来初の『浮気された王妃』として母上が恥をかく事だけは、息子として耐えがたい。
国民や城の皆にバレる前に、俺が必ずその憎むべき不義の子を探し出す。
そう……俺はその子が憎いのだろう。
母である妾妃と共に死んでくれていたならば、俺だって同情心しか持たなかった。
でも、『その子』が生きている限り、お優しい母上は苦しみ続けることになる。
そうだ、その子をどこかに隠してしまおう。
密かにどこか、人里はなれた場所にでも隠してしまおう。
大体、『大国の王子の一人』なのに生まれたときから日陰者として扱われるなんて、それはそれで哀れな話。
城から出してあげて自由に暮らさせる方がきっと、その子にとっても幸せに違いない。
……こうなったら、何が何でも突き止めてやる。
俺は作戦を開始した。
まずは王家の過去帳を調べた。
一般の人は閲覧できないが、これにはとても詳しい系譜が記されているはずだ。
王子の俺なら王族のみが入れる書庫にも、簡単に入れる。
こんなものに興味を持ったことはなかったが、探してみると意外と簡単に見つかった。
ふむふむなるほど。
こうしてみると、一妻制のはずのエルシオン国王は極々たまにだが、妾妃を娶っている。
子供の死亡率は俺が思っていたより遥かに高い。
エドワードの所程じゃないが、ほとんどの王が最低一人は子供を亡くしている。
特に子供特有の病気や出産の事故が多いようだ。
うちの国には魔道士が一人もいないが、こんなに死亡率が高いのなら一人ぐらい治癒魔道士を置けばいいのに。
外国では魔道士は忌まれていると聞くが、我が国では始祖王と共に国を造り上げた『大魔道士アースラ』が今でも崇拝の対象となっている。
だから魔道士というだけで忌まれたりはしない。
外国でも、治癒魔道士などに限れば普通に王宮にも街にもいるらしい。
昔は我が国にもアースラをはじめとして、優秀な魔道士がたくさんいた。
なのにどうして、今は全く居ないのだろう?
そう思いながらページをめくる。
父王は10年前、他国の下級貴族の娘を密かに娶ったようだ。
ちゃんと過去帳に記してある。
その娘の顔まではわからないが、面食いの父上の目にかない、かつスーパーシスコンのエドワードが『大変美しい』などと言うぐらいだから、母上と同等かそれ以上に美しかったことと思われる。
生まれたのはエドワードが言ったように男児だったようだ。
しかし名前は記入されていない。
『死亡』とだけ書き添えられているのが、なんだか寂しい。
俺には『妹』の他にも『弟』がいる。
母の兄であるエドワードにもこっそりと聞いてみたが、はぐらかすばかりで肝心なことは何一つ教えてくれない。
どうして教えてくれないんだろう?
母上は父上が他の女に産ませた子供に対して、同情的だったように見える。
しかし裏法律に従って生ませただけの子供といえど、内心穏やかではないはずだ。
また、母上は父上に深く愛されている『幸せな王妃』として国の内外から憧れの眼差しで見られてきた。
父上が腹踊りで恥をかくのはどうでもよいが、建国以来初の『浮気された王妃』として母上が恥をかく事だけは、息子として耐えがたい。
国民や城の皆にバレる前に、俺が必ずその憎むべき不義の子を探し出す。
そう……俺はその子が憎いのだろう。
母である妾妃と共に死んでくれていたならば、俺だって同情心しか持たなかった。
でも、『その子』が生きている限り、お優しい母上は苦しみ続けることになる。
そうだ、その子をどこかに隠してしまおう。
密かにどこか、人里はなれた場所にでも隠してしまおう。
大体、『大国の王子の一人』なのに生まれたときから日陰者として扱われるなんて、それはそれで哀れな話。
城から出してあげて自由に暮らさせる方がきっと、その子にとっても幸せに違いない。
……こうなったら、何が何でも突き止めてやる。
俺は作戦を開始した。
まずは王家の過去帳を調べた。
一般の人は閲覧できないが、これにはとても詳しい系譜が記されているはずだ。
王子の俺なら王族のみが入れる書庫にも、簡単に入れる。
こんなものに興味を持ったことはなかったが、探してみると意外と簡単に見つかった。
ふむふむなるほど。
こうしてみると、一妻制のはずのエルシオン国王は極々たまにだが、妾妃を娶っている。
子供の死亡率は俺が思っていたより遥かに高い。
エドワードの所程じゃないが、ほとんどの王が最低一人は子供を亡くしている。
特に子供特有の病気や出産の事故が多いようだ。
うちの国には魔道士が一人もいないが、こんなに死亡率が高いのなら一人ぐらい治癒魔道士を置けばいいのに。
外国では魔道士は忌まれていると聞くが、我が国では始祖王と共に国を造り上げた『大魔道士アースラ』が今でも崇拝の対象となっている。
だから魔道士というだけで忌まれたりはしない。
外国でも、治癒魔道士などに限れば普通に王宮にも街にもいるらしい。
昔は我が国にもアースラをはじめとして、優秀な魔道士がたくさんいた。
なのにどうして、今は全く居ないのだろう?
そう思いながらページをめくる。
父王は10年前、他国の下級貴族の娘を密かに娶ったようだ。
ちゃんと過去帳に記してある。
その娘の顔まではわからないが、面食いの父上の目にかない、かつスーパーシスコンのエドワードが『大変美しい』などと言うぐらいだから、母上と同等かそれ以上に美しかったことと思われる。
生まれたのはエドワードが言ったように男児だったようだ。
しかし名前は記入されていない。
『死亡』とだけ書き添えられているのが、なんだか寂しい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
【第1部完結しました。第2部更新予定です!】
処刑された記憶とともに、BLゲームの悪役会計に転生したことに気付いた主人公・カイル。
処刑されないために、チャラ男の仮面を被り、生徒会長に媚びを売り、能力を駆使して必死に立ち回る。
だが、愛された経験がない彼は、正しい人との距離感を知らない。
無意識の危うい言動は、生徒会長や攻略対象、さらには本来関わらないはずの人物たちまで惹きつけ、過剰な心配と執着、独占欲を向けられていく。
——ただ生き残りたいだけなのに。
気づけば彼は、逃げ場を失うほど深く、甘く囲われていた。
*カクヨム様でも同時掲載中です。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる