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第12章 転機
8.転機
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俺たちはスプラッタな食事処でいそいで食事を済ませたあと、馬車に乗って出発した。
……ああ、あんな壮絶な場所でも美味しく食事を頂いてしまった自分が信じられない。
アリシアに勧められて椅子に座りなおし、『体のため』に『一口だけでも』と食べたら、もう止まらなかった。
ここのところ、保存食を簡単に調理した物しか食べてなかったからかなぁ?
――――いいや違う。
俺はきっと、こういう人間なのだ。
こういう、人でなしの殺人鬼。
エルシオンに居た頃は『善の結界』があったから、善良でいられただけなのだ。
どんよりと落ち込みながら、馬に鞭を当てる。
この場所からラフレイムとの国境は、あって無い様なものだ。
特に関所などがあるわけでもなく、4時間も馬車を走らせればそこはもう『ラフレイム帝国』と呼ばれる場所だ。
着いたその町でウルフを先頭に進むと、そのへんにたむろしているガラの悪そうな奴らが、ジロジロと舐めるように俺たちを見た。
「ウルフ、気にしちゃ駄目よ♪
凶悪殺人鬼兄弟がついてるんだから、胸を張って堂々と行きなさい!」
アリシアが腰の引けているウルフに、失礼極まりないことを囁く。
なんて思いやりのない女なのだっっ!
……いやまぁ…………言っていることは間違っちゃいないのかもしれないけれど。
「さ、あそこの食堂に行きましょう。きっと面白いことがあるわ!!」
アリシアのやけに明るい口調に不吉なものを覚えるが、あれから時間は随分経った。
昼ご飯はとっくに消化され尽くしてお腹は減っている。俺は成長期なのだ。
それに、この先どこで食べても多分同じような雰囲気だろう。
食堂に入ると、さっき街道で俺たちをジロジロと見ていた男の一人が続いて入ってきた。
そしてすぐ側のテーブルに座る。
飯屋の店員に注文を言ってしばらくたったところを見計らい、男はウルフに話しかけてきた。
「よお。こんな所に来るぐらいだから堅気じゃねえんだろ?
綺麗なねえちゃん連れてるけど、お前の女か?」
「ええそうよ。ダーリンってばとっても強いのぉ。ふふ」
聞かれたウルフが答えるより早く、アリシアが妖艶に微笑んでウルフの腕に手を絡めた。
普通ならこんな豊満な美女にそうされたら喜びそうなものだが、ウルフの顔色は限りなく悪い。
「へえ。姉ちゃんは強い男が好みか。
だったら俺がこいつに勝ったら俺の女にならねえか?」
下心満載のスケベそうな顔の男に、アリシアはう~ん……と考える。
……そっか。考えるのか。
あんなスケベ丸出しの男でも考える対象となるのか。
女ゴコロはよくわからない。
俺が彼女の立場だったら、何が何でもお断りなのだが。
「いいわ。でもダーリンは駄目。あなた一瞬で死んじゃうわよ?
そうね……私の下の弟とやってごらんなさい。
それで勝てたら、あなたの女になってあ・げ・る!」
指さされたリオンがビックリして、大きな瞳を瞬かせる。
「さ、リオン。愛する姉さんのためにぃ、頑張ってネ♪」
アリシアがそう言った瞬間、リオンは犬のウンコでも踏んでしまったかのような嫌な顔をした。
沈黙が続く。
……が、再度促されてしぶしぶと立ち上がった。
実はこの街には俺とリオン、アリシアは姉弟として潜入している。
ウルフはアリシアの彼氏役だ。
俺とリオンとアリシアは、苦しいながらも美形繋がりで姉弟設定をでっち上げる事が出来る。
アリシアの提案に乗ってそうしたのは、その方が旅人としては自然だからだ。
そして、実戦で全く役に立たないウルフのフォローは俺とリオンでするようあらかじめ打ち合わせがされている。
でもリオンは『愛する姉さんのため』というセリフがものすごく引っかかっているようだ。
……ああ、あんな壮絶な場所でも美味しく食事を頂いてしまった自分が信じられない。
アリシアに勧められて椅子に座りなおし、『体のため』に『一口だけでも』と食べたら、もう止まらなかった。
ここのところ、保存食を簡単に調理した物しか食べてなかったからかなぁ?
――――いいや違う。
俺はきっと、こういう人間なのだ。
こういう、人でなしの殺人鬼。
エルシオンに居た頃は『善の結界』があったから、善良でいられただけなのだ。
どんよりと落ち込みながら、馬に鞭を当てる。
この場所からラフレイムとの国境は、あって無い様なものだ。
特に関所などがあるわけでもなく、4時間も馬車を走らせればそこはもう『ラフレイム帝国』と呼ばれる場所だ。
着いたその町でウルフを先頭に進むと、そのへんにたむろしているガラの悪そうな奴らが、ジロジロと舐めるように俺たちを見た。
「ウルフ、気にしちゃ駄目よ♪
凶悪殺人鬼兄弟がついてるんだから、胸を張って堂々と行きなさい!」
アリシアが腰の引けているウルフに、失礼極まりないことを囁く。
なんて思いやりのない女なのだっっ!
……いやまぁ…………言っていることは間違っちゃいないのかもしれないけれど。
「さ、あそこの食堂に行きましょう。きっと面白いことがあるわ!!」
アリシアのやけに明るい口調に不吉なものを覚えるが、あれから時間は随分経った。
昼ご飯はとっくに消化され尽くしてお腹は減っている。俺は成長期なのだ。
それに、この先どこで食べても多分同じような雰囲気だろう。
食堂に入ると、さっき街道で俺たちをジロジロと見ていた男の一人が続いて入ってきた。
そしてすぐ側のテーブルに座る。
飯屋の店員に注文を言ってしばらくたったところを見計らい、男はウルフに話しかけてきた。
「よお。こんな所に来るぐらいだから堅気じゃねえんだろ?
綺麗なねえちゃん連れてるけど、お前の女か?」
「ええそうよ。ダーリンってばとっても強いのぉ。ふふ」
聞かれたウルフが答えるより早く、アリシアが妖艶に微笑んでウルフの腕に手を絡めた。
普通ならこんな豊満な美女にそうされたら喜びそうなものだが、ウルフの顔色は限りなく悪い。
「へえ。姉ちゃんは強い男が好みか。
だったら俺がこいつに勝ったら俺の女にならねえか?」
下心満載のスケベそうな顔の男に、アリシアはう~ん……と考える。
……そっか。考えるのか。
あんなスケベ丸出しの男でも考える対象となるのか。
女ゴコロはよくわからない。
俺が彼女の立場だったら、何が何でもお断りなのだが。
「いいわ。でもダーリンは駄目。あなた一瞬で死んじゃうわよ?
そうね……私の下の弟とやってごらんなさい。
それで勝てたら、あなたの女になってあ・げ・る!」
指さされたリオンがビックリして、大きな瞳を瞬かせる。
「さ、リオン。愛する姉さんのためにぃ、頑張ってネ♪」
アリシアがそう言った瞬間、リオンは犬のウンコでも踏んでしまったかのような嫌な顔をした。
沈黙が続く。
……が、再度促されてしぶしぶと立ち上がった。
実はこの街には俺とリオン、アリシアは姉弟として潜入している。
ウルフはアリシアの彼氏役だ。
俺とリオンとアリシアは、苦しいながらも美形繋がりで姉弟設定をでっち上げる事が出来る。
アリシアの提案に乗ってそうしたのは、その方が旅人としては自然だからだ。
そして、実戦で全く役に立たないウルフのフォローは俺とリオンでするようあらかじめ打ち合わせがされている。
でもリオンは『愛する姉さんのため』というセリフがものすごく引っかかっているようだ。
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