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第五章 酔っ払い太子の妃
第五章 酔っ払い太子の妃 二
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さて、内ではなく外を見れば、北周の敵国である『北斎』では暗愚な皇帝が立っていた。
名を高緯と言う。
『北斉』は伽羅の住まう『北周』同様『北魏』から派生した国で、美男かつ勇猛なことで知られる『蘭陵王』はこの頃の北斉の武将である。
さて、北斉四代目皇帝も暴君であったが、現在の新帝――――五代目皇帝の緯は全くの良いとこ無し。皇后腹の長男というだけで帝位が転がり込んできた無能者なのだ。
そもそも彼は、九歳で父帝から帝位を譲られた。
何故か。帝位を譲って息子に押し付け、隠居し、一日中遊びたかったからである。
そんな父を見習ったのか、三年後に父が崩御すると、皇帝緯は遊びほうけることしかしない。
身を飾り立てるのが大好きで、贅をつくした新宮殿を建てさせてはすぐに飽きた。
好みに合わせて次々と新宮殿を建造させるものだから、民たちはたまらない。
しかも工期が長くなると怒り狂うので、徴用された工夫たちは夜でもかがり火の中で作業をしなければならなかった。そのため多くの死者が出た。
国に大災害が起こっても、民が餓死しても、皇帝緯は一切関心を持たなかった。
知らん振りで宴会三昧である。
当然、国民からは恨まれた。
国庫も大変な状態になっていたが、それでも危機感を持つ事は無い。
お追従を述べる佞臣を左右にはべらせては悦に入り、後宮には多くの美妃を入れて酒色にふけるのみである。
この皇帝は贅沢なだけでなく残虐を好む質であり、それに加速をつけたのが彼の異母兄弟であった。
名を高綽と言う。
彼は南陽王として封じられていたが素行が悪く、ある日、皇帝緯のもとに連行された。
しかし、この異母兄弟は皇帝緯と同年同日に生まれており、特別の間柄であったようだ。
皇帝緯は、彼をすぐに許し、
「任地では、どのようなことが最も楽しかったのであろうか?」
と、尋ねてみた。
普通の者なら、土地独特の祭りや遊び、良き友、良き部下との出会い、美しい女人の話などを語る。
だが、彼は違った。
「南陽は、特に面白いことのある土地ではございませんでしたな。
ですので、囚人を猛犬に襲わせてみたのです。
逃げ惑うさまが中々に面白うございました。
それも最近は飽きましたので、今度は蠍で満たした槽桶を用意し、中に人を入れて楽しんでおります」
と、答えた。
皇帝はこれを聞き、
「馬鹿者が!
なぜこのような面白い遊びを早う朕に教えなかったのじゃ!」
と、膝を打って叫んだという。
この残虐放蕩な隣国の皇帝が『人望』を失っていく様子を、舌なめずりするがごとくうかがっていた男が、かつて居た。
皇帝邕を傀儡としていた、今は亡き宇文護である。
『北斉』には『蘭陵王』を始め、猛将・知将が多く、宇文護にとってやりにくい相手ではあったが、それでも彼は読み筋に優れた策略家である。この無能短絡な皇帝緯が、古くからの忠臣達を煙たがって一人、また一人と殺すであろうことを読んでいた。
「北斉の名将・忠臣を打ち取るのは、我が国の将兵ではなく北斉の愚帝であろう」
かつて宇文護はそう皇帝邕に語っていたが、後年、現実のこととなったのである。
名を高緯と言う。
『北斉』は伽羅の住まう『北周』同様『北魏』から派生した国で、美男かつ勇猛なことで知られる『蘭陵王』はこの頃の北斉の武将である。
さて、北斉四代目皇帝も暴君であったが、現在の新帝――――五代目皇帝の緯は全くの良いとこ無し。皇后腹の長男というだけで帝位が転がり込んできた無能者なのだ。
そもそも彼は、九歳で父帝から帝位を譲られた。
何故か。帝位を譲って息子に押し付け、隠居し、一日中遊びたかったからである。
そんな父を見習ったのか、三年後に父が崩御すると、皇帝緯は遊びほうけることしかしない。
身を飾り立てるのが大好きで、贅をつくした新宮殿を建てさせてはすぐに飽きた。
好みに合わせて次々と新宮殿を建造させるものだから、民たちはたまらない。
しかも工期が長くなると怒り狂うので、徴用された工夫たちは夜でもかがり火の中で作業をしなければならなかった。そのため多くの死者が出た。
国に大災害が起こっても、民が餓死しても、皇帝緯は一切関心を持たなかった。
知らん振りで宴会三昧である。
当然、国民からは恨まれた。
国庫も大変な状態になっていたが、それでも危機感を持つ事は無い。
お追従を述べる佞臣を左右にはべらせては悦に入り、後宮には多くの美妃を入れて酒色にふけるのみである。
この皇帝は贅沢なだけでなく残虐を好む質であり、それに加速をつけたのが彼の異母兄弟であった。
名を高綽と言う。
彼は南陽王として封じられていたが素行が悪く、ある日、皇帝緯のもとに連行された。
しかし、この異母兄弟は皇帝緯と同年同日に生まれており、特別の間柄であったようだ。
皇帝緯は、彼をすぐに許し、
「任地では、どのようなことが最も楽しかったのであろうか?」
と、尋ねてみた。
普通の者なら、土地独特の祭りや遊び、良き友、良き部下との出会い、美しい女人の話などを語る。
だが、彼は違った。
「南陽は、特に面白いことのある土地ではございませんでしたな。
ですので、囚人を猛犬に襲わせてみたのです。
逃げ惑うさまが中々に面白うございました。
それも最近は飽きましたので、今度は蠍で満たした槽桶を用意し、中に人を入れて楽しんでおります」
と、答えた。
皇帝はこれを聞き、
「馬鹿者が!
なぜこのような面白い遊びを早う朕に教えなかったのじゃ!」
と、膝を打って叫んだという。
この残虐放蕩な隣国の皇帝が『人望』を失っていく様子を、舌なめずりするがごとくうかがっていた男が、かつて居た。
皇帝邕を傀儡としていた、今は亡き宇文護である。
『北斉』には『蘭陵王』を始め、猛将・知将が多く、宇文護にとってやりにくい相手ではあったが、それでも彼は読み筋に優れた策略家である。この無能短絡な皇帝緯が、古くからの忠臣達を煙たがって一人、また一人と殺すであろうことを読んでいた。
「北斉の名将・忠臣を打ち取るのは、我が国の将兵ではなく北斉の愚帝であろう」
かつて宇文護はそう皇帝邕に語っていたが、後年、現実のこととなったのである。
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