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第十三章 次男・楊広
第十三章 次男・楊広 二
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その後、楊広がまた女を摘まんでも、蕭氏は全く文句を言うことはなかった。
それどころか、相手先にも丁寧に遇したりする。
楊広は、狐につままれたように思いながら過ごしていた。
これが母の伽羅であったなら、愛人は滅多打ちに打ち殺されていたことだろう。
それでも取りあえず、浮気がばれるたびに妃に謝っていたのだが、
「尊い身の太子様が、軽々しく妃に頭を下げるものではありませんわ。
浮気は男の甲斐性とも申します。お気になさらずとも良いのです」
麗しいかんばせで、浮気がばれるたびにそう言われると、楊広も段々とその気になってくる。
手にいれた大輪の華は飛び抜けて美しいが、その周りに色とりどりの百花を飾ったなら、どれほど美しいことだろう。
そう思えてきたのだ。
また、楊広は麗しの正妃や愛人たちに贈るために、こっそりと高価な品々を取り寄せることがあった。
これまた母と違い、蕭氏は怒ることをしない。
「まあ、これは三国時代の壺ですわね。
青磁は発色が不安定なものが多いのに、これは素晴らしいお品ですわ。
殿下は本当にお目が高うございます」
そう言って、贅沢を非難することも、贈り先の愛人たちに嫉妬をすることも無く微笑むのだ。
楊広はしだいにそのことに慣れていった。
また同時に、嫉妬してもらえぬことを寂しく思うようにもなっていた。
母である伽羅の激しさは時に恐ろしく、父に同情しがちであったのだが、いざ妃を娶ってみて全く嫉妬されぬとなれば別である。
父・楊堅のように妻から愛される夫であると思っていたのに――――。
「これでは妃は『姉上』と全く同じではないか」
広は誰に言うともなく、ひとりごちた。
姉・麗華は母の娘でありながら、夫の妃たちには一切の嫉妬心を向けなかった。
それどころか、諸妃たちとは極めて仲が良く、熱烈に慕われてさえいたのだ。
楊広はその頃、ほんの少年であったが、はっきりと覚えている。
家人たちはそのことについて、口をそろえて言っていた。
「夫に対する愛情が、一片すらないのに嫉妬の気持ちなど湧きますまい。
まあ、あの皇帝は地位だけが取り柄でございますなぁ。
お嬢様も致し方なく陛下のご機嫌などを取りつつ過ごしておられるようですが、本当にお可哀想に」
もちろん、このような発言は『不敬』にあたるので、内内だけで交わされた言葉である。
楊広の脳裏に、次第にこの言葉がチラつくようになっていった。
「一片の愛情すらないのに……か。
私の結婚は、父母同様に親が決めた結婚であった。それでも私は父を見習って蕭氏を愛し大切にしたのに、彼女は私を『地位ばかりの男』だと思っているのだろうか」
楊広はため息をついた。また、こうも考えた。
蕭氏が別の男に浮気心を持ったなら、自分は嫉妬に狂って彼女を叱責するだろう。
母のように、浮気相手を打ち殺してしまうかもしれない。
しかし、それはすべて『愛ゆえ』なのである。
「ならば妃から、嫉妬も叱責も受けぬのは、やはり彼女から愛されていないからであろうか。
私は……妃が他の男に微笑む様子を思い浮かべただけでも心が苦しくなるというのに」
楊広はガックリと肩を落とした。
そして今になって初めて、あんなにも激しい愛情を向けられていた父は『幸せ者』であったのだと思い至ったのだった。
それどころか、相手先にも丁寧に遇したりする。
楊広は、狐につままれたように思いながら過ごしていた。
これが母の伽羅であったなら、愛人は滅多打ちに打ち殺されていたことだろう。
それでも取りあえず、浮気がばれるたびに妃に謝っていたのだが、
「尊い身の太子様が、軽々しく妃に頭を下げるものではありませんわ。
浮気は男の甲斐性とも申します。お気になさらずとも良いのです」
麗しいかんばせで、浮気がばれるたびにそう言われると、楊広も段々とその気になってくる。
手にいれた大輪の華は飛び抜けて美しいが、その周りに色とりどりの百花を飾ったなら、どれほど美しいことだろう。
そう思えてきたのだ。
また、楊広は麗しの正妃や愛人たちに贈るために、こっそりと高価な品々を取り寄せることがあった。
これまた母と違い、蕭氏は怒ることをしない。
「まあ、これは三国時代の壺ですわね。
青磁は発色が不安定なものが多いのに、これは素晴らしいお品ですわ。
殿下は本当にお目が高うございます」
そう言って、贅沢を非難することも、贈り先の愛人たちに嫉妬をすることも無く微笑むのだ。
楊広はしだいにそのことに慣れていった。
また同時に、嫉妬してもらえぬことを寂しく思うようにもなっていた。
母である伽羅の激しさは時に恐ろしく、父に同情しがちであったのだが、いざ妃を娶ってみて全く嫉妬されぬとなれば別である。
父・楊堅のように妻から愛される夫であると思っていたのに――――。
「これでは妃は『姉上』と全く同じではないか」
広は誰に言うともなく、ひとりごちた。
姉・麗華は母の娘でありながら、夫の妃たちには一切の嫉妬心を向けなかった。
それどころか、諸妃たちとは極めて仲が良く、熱烈に慕われてさえいたのだ。
楊広はその頃、ほんの少年であったが、はっきりと覚えている。
家人たちはそのことについて、口をそろえて言っていた。
「夫に対する愛情が、一片すらないのに嫉妬の気持ちなど湧きますまい。
まあ、あの皇帝は地位だけが取り柄でございますなぁ。
お嬢様も致し方なく陛下のご機嫌などを取りつつ過ごしておられるようですが、本当にお可哀想に」
もちろん、このような発言は『不敬』にあたるので、内内だけで交わされた言葉である。
楊広の脳裏に、次第にこの言葉がチラつくようになっていった。
「一片の愛情すらないのに……か。
私の結婚は、父母同様に親が決めた結婚であった。それでも私は父を見習って蕭氏を愛し大切にしたのに、彼女は私を『地位ばかりの男』だと思っているのだろうか」
楊広はため息をついた。また、こうも考えた。
蕭氏が別の男に浮気心を持ったなら、自分は嫉妬に狂って彼女を叱責するだろう。
母のように、浮気相手を打ち殺してしまうかもしれない。
しかし、それはすべて『愛ゆえ』なのである。
「ならば妃から、嫉妬も叱責も受けぬのは、やはり彼女から愛されていないからであろうか。
私は……妃が他の男に微笑む様子を思い浮かべただけでも心が苦しくなるというのに」
楊広はガックリと肩を落とした。
そして今になって初めて、あんなにも激しい愛情を向けられていた父は『幸せ者』であったのだと思い至ったのだった。
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