最強忍者とエルフのお姫様~隠れ里を抜けてぼっちになったので、辺境のエルフ村でのんびり暮らします~

ケンコーホーシ

文字の大きさ
5 / 13

5話 忍者はメイドエルフに出会う

しおりを挟む
そっくりだ。


カレナ様と名乗る可憐な少女を目にして、俺は真っ先に主の姿を思い出した。
金色の髪、透き通るような白い肌、ぴょこんと飛び出た長い耳。
そして小さな身体。

「人間さんお前なんて言うの?」
「……クロウです。カレナ様」
「カレナでいいよ!」

 そう言って華奢な手で俺の大きな手を握り、カレナ様は俺をエルフの里の奥へと案内していく。
 花畑がどこまでも続くのかと思いきや、生活圏になっているだろう居住区があちこちから姿を現し始めてきた。

「ここが私たちのお家だよ」
「寝所ですか。良い場所ですね」
「えへへっ……」

 カレナ様は俺の言葉が嬉しかったのか身体をむずむず動かしながら、ぎゅっと手を握られた。
 とても可愛らしい。

「ここまで来るの大変だったでしょ! 私のお家で休んでいってよ!」
「よろしいのですが? ですが……」

 俺はここで一つ気になった。
 カレナ様は確かに親切で俺を家に招待してくださっているが、しかし、彼女はおそらくその見た目から推察するに、まだ年齢もお若いことだろう。
 父君や母君がいらしゃってもおかしくない。彼らの許可を取らねば彼女はよくとも、俺がせっかく来たエルフの里を追い出されることになるだろう。

「こっちだよ!」

 そう引っ張ってくるカレナ様の歩みを俺が止められるはずもなく、ひとまず彼女の家についていくことにした。

「こっちこっちー」
「か、カレナ様、いったいどこまで」

 しかし、いくつもの住居を通り過ぎ、一向にカレナ様は止まる気配を見せなかった。
 道中、カレナ様以外のエルフの方々を目にしたが、どなたも金髪で小さくて愛らしくて油断すると心を奪われそうで非常に目に毒であった。

「ついたよ! ここが私のお家!」

 そう言って、彼女が指差したお家は――里で一番大きな木造の宮殿であった。


 ☆


「お帰りなさいませ、カレナ様」
「ただいまディネ!」

 そう言って俺たちを出迎えたのは、カレナ様と同じくらいの背丈の侍女の格好をしたエルフの少女であった。
 黒を基調としたわんぴいす、と呼ばれる服に、ひらひらのついた白い前掛けをつけている。
 頭には名前は知らぬが同じくひらひらのついた白い飾りをつけている。
 これは、国を出てから何度か目にすることもあったが、めいど、と呼ばれる者か。

「あらそちらの方は」
「この人はクロウ! さっき友達になったんだ!」
「左様ですか。人間のお客様がこう立て続けにいらしゃるとはめずらしい。初めまして、ディネリンド=ノンドールと申します」

 そう言ってディネリンドと名乗られたエルフは長いわんぴいすの両端をつかみ紳士的にお辞儀した。

「俺はクロウと申します。クロウ=クロミヤ。この度はお招きいただきありがとうございます。ディネ様」
「ディネでよろしいですよ。クロウさん。私はただの使用人ですので」
「めいど、呼ばれる者ですか」
「はい、そうです。クロウさんに分かりやすく言うと、メイドエルフですね」

 メイドエルフ……。
 聞き慣れぬ響きであったが悪い気はしなかった。
 しかし、他の家と明らかに違う豪奢な作り、そして使用人がいるという環境、これはますます勝手に上がり込んではマズイのでは。

「あの、ディネ様、伺いたいのですが……」
「ディネ、です」
「……ディネ、質問なのですが、私はどなたかに許可を貰わずともこちらに上がっても――」
「ディネー、早摘みのお茶っぱまだあったよねー」

 と、俺とディネ様……いや、俺とディネが話しこんでいる間に、カレナ様はとてとてと部屋の奥へと進み、こちらからも聞こえる何かを漁るような音を出しはじめた。

「ああ、カレナ様、給仕は私がやりますから少しお待ちくださーい! すみません、クロウさん、詳しいお話はまたのちほどで」
「はい、それは構いませんが」

 不安がる俺の心配をよそに、ディネは軽やかに笑い。

「カレナ様が良いといったなら万事は大丈夫ですよ。あの方は、このアルフヘイムのお姫様
ですから」

 そう言ってのけたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...