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7話 忍者はエルフと一緒に寝る
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目を覚ますと柔らかい布団にくるまれていた。
俺は気絶したのか……。
辺りは薄暗く、外からは小鳥のなく声だけがチュンチュンと聞こえてくる。
まさか意識を失うことがあるとは。
忍者としての任務を幼少の頃から続けてきて、あらゆる拷問の際も決して倒れず与えられた任務の秘密を吐かぬ強さを持ち合わせていたと自負していたのだが。
仕方あるまい……主にそっくりな方に、ああも近くに寄られたのだ。
忍者であるが故、里の女衆は総じて美人が揃っている。
姉御もそうであるが、彼女たちは女の色香を武器とするため、男が好みそうな容姿、仕草を完璧に把握している。
そんな彼女たちを見ていたから、俺は人一倍、女性の扇情的な装いや裸には強いと思っていたのだが。
「まさか、あんなに可愛らしい方がこの世に存在するとは……」
「誰が可愛いの?」
「うわぁっ!?」
と、声に驚き俺が横を見ると、そこには布団の隣でちょこんと入って笑ってるカレナ様の姿があった。
「よかったぁ、いきなり倒れちゃうから心配したよ」
「い、いえ、だ、大丈夫……です……」
だが、そう応える俺の目はぐるぐると回り、動悸がせわしない。
「なら、よかったぁ、この里に来るのってとっても大変だもん。きっと疲れたんだよ」
そう朗らかに笑うカレナ様は清らかな泉の水よりも透き通った心で俺の容態を心配してくれる。
だ、だが、そうではないのだ。
俺の動悸がせわしないのは間違いなく、カレナ様が俺と同じ寝屋に入っているというその事実なのだ。
「い、いけません、カレナ様……」
「カレナでいいのに……」
「はぁ、はぁ……」
「大丈夫? まだ眠る?」
お、落ち着けクロミヤクロウよ。お前のには幼少より鍛え抜かれた鋼の心があるだろ。
あらゆる拷問に耐え、決して精神を乱すことなく、平静を保ち続ける。
そういう存在であるはずだろ、そう、だろ……!
「う、うぅ……」
「落ち着いて、ほら――」
と、カレナ様は柔らかい両手を伸ばして、俺の首から肩に優しく抱きついてきた。
「…………っっっ!?」
「怖い夢を見て寝れない時、たまにディナがこうしてくれるんだ。ディナっていつもはカレナ様カレナ様ってお硬いんだけど、私が本当に寂しがっている時はカレナって呼び捨てにしてこうしてぎゅっとしてくれるんだよ」
「…………」
俺はその話を聞きながら――自分の心が落ち着いていくのを感じた。
何故だろう。それは五年前、主に初めて出会った時のようであった。
懐かしい感触、俺は目を閉じる。
一回りも離れた少女の腕の中で俺は何をしているんだろうとも思う。
だが、それは俺たち人間の感覚だ。
彼女にとっては俺は年の近い兄妹であり、あるいは……。
「~~~~~♪」
緩やかなメロディが聞こえる。
争いのない時代には詩歌が流行り、文化が発展し、形而上学的思弁に耽るものだと、こちらの国を巡っている時に話した学者が語っていた。
ならばエルフとは、これ以上ない文化的な存在だと言えるのだろう。
なぜなら、こんなにも歌が、美しいのだから……。
「おやすみなさい、クロウ……」
カレナ様が隣りにいるという温もりを感じながら、俺はゆっくりと再び眠りにつくのであった。
俺は気絶したのか……。
辺りは薄暗く、外からは小鳥のなく声だけがチュンチュンと聞こえてくる。
まさか意識を失うことがあるとは。
忍者としての任務を幼少の頃から続けてきて、あらゆる拷問の際も決して倒れず与えられた任務の秘密を吐かぬ強さを持ち合わせていたと自負していたのだが。
仕方あるまい……主にそっくりな方に、ああも近くに寄られたのだ。
忍者であるが故、里の女衆は総じて美人が揃っている。
姉御もそうであるが、彼女たちは女の色香を武器とするため、男が好みそうな容姿、仕草を完璧に把握している。
そんな彼女たちを見ていたから、俺は人一倍、女性の扇情的な装いや裸には強いと思っていたのだが。
「まさか、あんなに可愛らしい方がこの世に存在するとは……」
「誰が可愛いの?」
「うわぁっ!?」
と、声に驚き俺が横を見ると、そこには布団の隣でちょこんと入って笑ってるカレナ様の姿があった。
「よかったぁ、いきなり倒れちゃうから心配したよ」
「い、いえ、だ、大丈夫……です……」
だが、そう応える俺の目はぐるぐると回り、動悸がせわしない。
「なら、よかったぁ、この里に来るのってとっても大変だもん。きっと疲れたんだよ」
そう朗らかに笑うカレナ様は清らかな泉の水よりも透き通った心で俺の容態を心配してくれる。
だ、だが、そうではないのだ。
俺の動悸がせわしないのは間違いなく、カレナ様が俺と同じ寝屋に入っているというその事実なのだ。
「い、いけません、カレナ様……」
「カレナでいいのに……」
「はぁ、はぁ……」
「大丈夫? まだ眠る?」
お、落ち着けクロミヤクロウよ。お前のには幼少より鍛え抜かれた鋼の心があるだろ。
あらゆる拷問に耐え、決して精神を乱すことなく、平静を保ち続ける。
そういう存在であるはずだろ、そう、だろ……!
「う、うぅ……」
「落ち着いて、ほら――」
と、カレナ様は柔らかい両手を伸ばして、俺の首から肩に優しく抱きついてきた。
「…………っっっ!?」
「怖い夢を見て寝れない時、たまにディナがこうしてくれるんだ。ディナっていつもはカレナ様カレナ様ってお硬いんだけど、私が本当に寂しがっている時はカレナって呼び捨てにしてこうしてぎゅっとしてくれるんだよ」
「…………」
俺はその話を聞きながら――自分の心が落ち着いていくのを感じた。
何故だろう。それは五年前、主に初めて出会った時のようであった。
懐かしい感触、俺は目を閉じる。
一回りも離れた少女の腕の中で俺は何をしているんだろうとも思う。
だが、それは俺たち人間の感覚だ。
彼女にとっては俺は年の近い兄妹であり、あるいは……。
「~~~~~♪」
緩やかなメロディが聞こえる。
争いのない時代には詩歌が流行り、文化が発展し、形而上学的思弁に耽るものだと、こちらの国を巡っている時に話した学者が語っていた。
ならばエルフとは、これ以上ない文化的な存在だと言えるのだろう。
なぜなら、こんなにも歌が、美しいのだから……。
「おやすみなさい、クロウ……」
カレナ様が隣りにいるという温もりを感じながら、俺はゆっくりと再び眠りにつくのであった。
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