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薄暗いバーの片隅で、熱い吐息が響く。
とっくに閉店時間を迎えた店内には客もおらず、しんと静まり返っている。だがカウンター席のさらに奥、バックヤードからは、ぐちゅりと卑猥な音が聞こえている。
沙夜はそれをどこか他人事のように感じながら、ぼんやりと自分に覆い被さる男の顔を見上げた。
「あっ……や、ぁ……椿くんっ……!」
「沙夜さん、集中して」
「だめっ、もっ、やめっ……ぁ、あっ!」
「まだそんなこと言うの? 俺じゃ満足できない?」
咎めるように奥を突かれ、沙夜は一際甲高い声をあげた。
椿は柔らかい黒髪を揺らして、いつもと変わらず涼しげな表情のままだ。自分より遙かに年下で、まだ学生の男の子にこんなことをさせてしまっているかと思うと、沙夜は罪悪感に胸を苛まれる。
それでも身体の疼きが止められない。沙夜の意志とは反対に、いやらしく椿を求めて腰が揺れてしまう。
「ぁ、あっ……また、っ……!」
「いいよ。何回でもイって」
椿が唇の端をニッと持ちあげる。普段から何を考えているのかさっぱり分からなかったが、まさかこんな状況で意外な彼の一面を知るなんて。
絶頂がふたたび駆け上がってきて、瞼の裏がチカチカと点滅する。すでに手放しかけた理性の狭間で、沙夜の頭には後悔の文字が浮かんでいた。
――どうしてこんなことになったんだろう。
◆◆◆
赤坂に美人バーテンダーがやっている店がある。
そんな噂が広まったのは、沙夜がバーをオープンした半年前のことだ。
短大を卒業後、二十歳で酒造会社に就職。十年間、営業職として勤めた後、ようやく三十歳で念願かなって自分の店を持ったのだ。
だが現実は思うようにはいかない。店を訪れるほとんどの客が男性で、沙夜を口説き落とそうとあの手この手を使ってくる。セクハラを受けることも多く、水商売と間違えられることもあった。
穏やかで、ゆっくりと時間が流れる静かなお店を目指したかったというのに、これではガールズバーとさして変わらない。純粋にお酒を楽しむ客は少なく、現実と理想のギャップに悩む日々が続いていた。
「マスタ~!」
男性客に呼ばれて沙夜が振り返った瞬間、男の両手はまっすぐ沙夜の胸に伸びる。このパターンはもう何度目だろうか。沙夜は呆れながら男の手首を掴んで、にっこりと微笑んだ。
「うちはそういったお店ではありませんよ」
「あれれ~? マスターってばつれないなあ~」
緩く巻かれた金色の髪を靡かせ、ふんわりと優しい見た目とは裏腹に、沙夜の目は笑ってはいなかった。
男の手を退けて沙夜がお水を差し出した。口コミを見て来てくれたという新規客だ。一緒に来たスーツの男性もへらへらと笑うだけで相当酔っている。沙夜が愛想笑いを浮かべながら頭をうならせていると、ちりんと扉の鈴が鳴った。
「椿くん、こんばんは」
椿が沙夜に会釈すると、目元にかかった前髪がさらりと揺れた。相変わらず綺麗な顔立ちだ。椿は黙り込んだままいつもの一番奥のカウンター席に座って、じーっとボトルを眺める。
高城椿。都内の名門大学に通う大学生で、オープン直後からの常連客だ。まだ21歳とは思えないほどの落ち着きぶりで、口数も多くはない。それでも毎日のように沙夜の店を訪れている。
「今日は何から飲む?」
沙夜が椿の問いかけると、騒いでいたサラリーマンが大声で手をあげた。
「そのスコッチのボトル開けるから結婚して下さい!」
「して下さい!」
完全に悪酔いだ。こうした客は珍しくはない。椿はいつも何も言わないが本当は騒がしい客が好きではないだろう。
――さて。どうやってお帰りいただこうか。
このまま酒を注いでもさらに状況が悪くなるのは目に見えている。
そのときだった。
「沙夜さん、一番左のマッカラン出して」
椿が指定したのは、年代物で希少価値が高く、店で一番値段の高いボトルだった。椿が高い酒を頼むこと自体は珍しくはない。彼はどちらかというと酒には弱い方だと以前から言っており、ゆっくり時間をかけて一杯を堪能するのが好きなタイプだ。あまり飲めない代わりに、年代物の高いボトルばかり注文するため、最初のころは本当に予算は大丈夫か、と確認していたことを思い出す。だがブラックカード一括で支払いを済ませる椿に、お金の話をするのは失礼だと気づいたのはそれからすぐのことだった。
なぜなら椿は、日本屈指のIT企業――高城ホールディングスの御曹司だったのだから。
「ガキにはまだ早いんじゃないかなー」
だがそんなことを知らないふたりのサラリーマンは、椿を蔑むように嗤う。
騒動を起こすのなら帰っていただこう、と沙夜がぴくりと眉を動かした。椿は店にとって大事なお客様だ。店を始めた頃はまだ勝手が分からず断ることもできなかったが、今では度が過ぎるお客様には帰っていただいている。
沙夜が口を開こうとした瞬間だった。
「ごちそうしましょうか」
先に口を開いたのは椿だった。
「え!? いいの!?」
「お前いい奴だな!」
すると二人のサラリーマンがころっと表情を変える。
「沙夜さん、グラス追加で」
――え?
そこまで椿に迷惑をかけるわけにはいかない、と沙夜が視線で訴えかける。だが椿は大丈夫だからと言って、空のグラスを二人に手渡した。
二人のサラリーマンが帰ったのは閉店直前だった。
ようやく静けさを取り戻した店内で、沙夜は何度も椿に頭を下げる。
「椿くん、本当に無理しないで。あーゆー方には帰っていただくから」
「別に。それよりちゃんと断ったら?」
椿君の言うとおりだ。こういったことは初めてじゃない。
恋人を作るつもりはない――何度そう伝えても理由をつけて迫ってくるお客様ばかりで、落ち着くどころか過熱している。
「本当に恋人でもいればはっきり断れるんだけど」
最初から嘘でもついておけばよかったのだが、まさかこんな風になるとは思っていなかったのだ。おかげで理想のお店とはほど遠く、沙夜を自分のものにしようと客が毎晩のようにやってくる。
「……俺がなる」
「え? 何に?」
「沙夜さんの恋人」
グラスを磨いていた手が止まる。一瞬、何を言っているのか頭が追いつかなかった。けれど椿は真剣なまなざしで沙夜を見上げる。
「椿くんも冗談言うのね」
この容姿だ。モテないはずがないだろう。いつもひとりで来てくれるがきっと可愛い彼女がいるに違いないと、沙夜は心の中で思っていた。だが椿は珍しく眉間にしわを寄せて、硬い表情を見せる。
「……じゃあ働くから雇って」
「は、働く!?」
「男がひとりでも立ってればあーゆー奴も減るだろ」
沙夜がきょとんと目を丸くする。確かに椿の言うとおり、女ひとりでやっていることも影響しているだろう。だが誰かを雇うことなんて考えてもいなかった。
「えっと……それは本気?」
「金はいらないから」
「そうじゃなくて、勉強とか就職とか」
「平気。就職も決まってる」
珍しくグイグイと押してくる椿に、沙夜は口ごもってしまう。こんなに積極的な椿は初めてだ。そう言われてしまえば特に断る理由も見つからない。
「役に立たなかったら切っていいよ」
そこまで言うなら、と先に折れたのは沙夜の方だった。
「じゃあ……よろしくお願いします」
「うん。明日から来る」
「そんなにすぐ!?」
「毎日通ってるじゃん」
こうして、新しいアルバイトの採用が決まったのだった。
◆◆◆
翌日。
開店の15分前に、椿が店のドアを開いた。
「お疲れさまです」
「お疲れさま。更衣室、奥にあるから使ってね」
「ありがとうございます」
――敬語だ。
いつもは懐かない猫みたいだから新鮮だ。制服はこちらで用意しようか、と沙夜は言っていたが椿は高級ブランドのショッピングバッグを片手に更衣室へと向かった。
バーカウンターを拭きながら、沙夜は鼓動が速くなっているのを自覚していた。勢いで承諾してしまったものの、人を雇うのはもちろん初めてだ。会社員時代、チームリーダーとして部下を率いていた経験はあるが、相手が大学生でしかも常連客の男の子なんてもちろん経験はない。
今までも、厄介なお客さんに囲まれて沙夜が困り果てる度に椿が助けてくれていた。これ以上は迷惑をかけたくなかったというのに、これではさらに迷惑をかけることになるのではないだろうか。
「着替え終わりました」
「あら、すっごく似合ってる」
椿のすらりと長い手足に、バーテン服はよく似合っていた。とても初日とは思えない風格だ。
「お酒は私に任せて。ゆっくり覚えていきましょう」
「店のボトルは全部覚えてるんで。カクテルも作れます」
これには沙夜も驚きを隠せなかった。
「どこかで働いてたの?」
「ある程度覚えてきました。迷惑かけたくないんで」
――まさか、そこまで。
沙夜は思わず椿の頭に手を乗せて、いい子いい子と頭を撫でる。ぶっきらぼうで何を考えているのかあまり分からなかったけれど、根はしっかりして、真面目な子ということは十分に分かっている。
カウンター越しじゃない椿は新鮮だ。やめてください、と抵抗してくるかと思いきや椿はじっとしたまま動かなかった。それがますます可愛らしく、沙夜はにっこりと笑う。
――こんな子が弟だったらな。
年下の男の子に対して、そんなことを思うようになった自分も年を重ねたものだと苦笑する。
「……お客さんきますよ」
「ご、ごめんね!」
「いえ」
椿に言われてようやく手を離すと、椿は少し照れくさそうに頬を赤らめていた。
そうして椿と二人三脚の日々がはじまった。
それから1ヶ月――。
椿のおかげで、新規客からのアプローチは一気に減った。そのかわり椿が目的の女性客も増え、店の雰囲気はがらりと変わった。中にはお客様同士で連絡先を交換している姿もあり、出会いの場にもなっている。少しずつ沙夜が目指した理想へとなりつつあり、笑顔の絶えない店へとなっていた。
「沙夜ちゃん、久しぶり」
「梅北さん、ご無沙汰しております」
「いやあ~ずっと海外出張でさあ。さっきやっと帰ってきたんだよ」
閉店間際、店内を訪れたのは常連の梅北だ。都内で不動産会社を経営するやり手社長である。だが隙あらば沙夜を食事に誘い出そうとし、ときには家に行ってもいいかと冗談交じりに問いかけてくることもある。悪い男ではないが、その要求は段々とエスカレートしてきている。
「あれ? なんで椿くんがそっちに?」
「うちで働いてもらってるんです」
梅北と椿の視線が重なる。どことなく緊張感が漂ったが、椿がぺこりと頭を下げた。
「はい。これお土産」
梅北から手渡されたのは、都内でも有名なケーキ店の紙袋だ。以前、店で話題になり沙夜が食べてみたいと言ったものだった。
「ありがとうございます! わざわざ買ってきてくださったんですね」
「いいのいいの。沙夜ちゃんのためならおじさんいくらでも並んじゃう」
箱の中を開けると、ショートケーキがひとつ入ってた。テレビで見た通り、ふわふわの生クリームに大粒の苺がのっている。
「ね、今食べてよ。感想聞きたいなあ」
「せっかくだから3人でいただきましょうか」
「だめ。沙夜ちゃんに買ってきたものなの」
気のせいだろうか。普段から強引な人だが、今日は執拗以上に強要してくる。
椿が皿を用意してくれたが、本当にひとりで食べてもいいのだろうかと沙夜が頭をうならせる。
せっかく買ってきてもらったものだ。本人の前で食べないのも失礼な話だろう。お言葉に甘えて沙夜はフォークを持つと、丁寧にスポンジを切って口元に運ぶ。
「とっても美味しいです。ありがとうございます」
「うんうん。おじさんその笑顔が見たかったんだよ。もっと食べちゃって」
甘いクリームが口の中に広がって頬が緩む。勧められるがままに食べるが、次第に違和感が身体の内側から込み上げてくる。
――気のせいだろうか。
ミネラルウォーターをグラスに注いで飲み干す。だが身体の疼きがどんどん大きくなっていくばかりだ。
――なにこれ。
大きな変化は急に訪れた。足下がおぼつかない。頭がくらくらして身体の内側から熱が溜まっていく。呼吸が荒くなって、じんじんとお腹が疼きだす。
「沙夜さん?」
いち早く異変に気づいたのは椿だった。
心配そうなまなざしを向ける椿に、沙夜は大丈夫だからと笑顔を見せたが熱は高ぶるばかりだ。
ふと沙夜が梅北に視線を向けた。下品な視線が突き刺さり、沙夜はようやく事態を把握する。おそらくケーキに何か仕込まれていたのだろう。
――油断した。
今までも何度か似たようなことはあった。席を外したときに飲み物に薬を混ぜられていたり、無理やり酒を飲むように煽られることもあった。幸い、すべて未遂に終わっているのだが食べ物に仕込まれたのは初めてだ。
「沙夜ちゃんどうしたの? ケーキ美味しくなかった?」
「いえ……とっても美味しかったです」
「体調悪いなら帰り送っていこうか?」
閉店間際に来店したのもこれが狙いだったのだろう。
椿がいてくれて正解だったかもしれない。もしふたりきりだったなら、今頃さらに取り返しのつかない事態になっていたかもしれないのだ。
するとすかさず、椿が前にでた。
「俺が送ります。夜間病院に行くんで今日は閉めてもいいですか。沙夜さんのこと心配なんですよね?」
威圧のある声で椿がそう言うと、梅北がうっと声を漏らして引き下がった。
「そ、そうだな。今日はもう帰るとするか」
梅北がお金を置いてそそくさと店を出る。いつもなら店の外に出て見送りをしているが、そんな余裕はなかった。代わりに椿が外に出て見送りを済ませ、店内に戻って鍵を閉めた。
「ありがとう、椿くっ……」
「沙夜さんっ!」
がくりと膝から崩れ落ち足に力が入らなくなる。立ち上がろうとしても全身の力が抜けていくような感覚に襲われ、じんじんと得体の知れない熱が身体中に広がっていく。
椿がケーキの皿に目を向けた。勘のいい子だ。きっとすぐに気づいたのだろうと、沙夜がふっと笑う。
「更衣室まで行きますよ」
「つ、椿くん……!?」
椿はお姫様のように沙夜を横抱きにかかえ、更衣室の扉を開ける。そのままやさしくソファにおろし、沙夜は身を守るように身体を丸めた。ひんやりと冷たい感触に一瞬理性を取り戻したが、それもまた熱へと上書きされる。
呼吸が荒い。訳もなく涙が溢れそうだった。椿の肌が触れただけでぴくんと全身が反応して、歯止めがきかなかった。
「あの男っ……」
苛立つ椿の声が、どこか遠くに感じた。
「すぐ治まるから……椿くんはもう帰って……」
このままではどうなるか分からない。沙夜はできるだけ笑顔を作ってにこりと微笑んだ。だが椿はじっと沙夜を見下ろし、ごくりと唾を飲む。
「……放っておけるかよ」
椿がロッカーから荒っぽく長財布を取り出し、ひそませていた避妊具をポケットに突っ込んだ。沙夜が抵抗する前に覆い被さりソファがぎしりと鳴る。
「ごめん、沙夜さん。すぐ楽にしてあげるから」
切なげに眉を寄せて、唇が重なった。熱が一気に高まる。
――だめなのに。
くちゅくちゅと卑猥な音が響き、耳がおかしくなってしまいそうだった。
椿の手が沙夜のリボンを解き、ベストのボタンをぷちぷちと外していく。するりとシャツの下から手が滑りこみ、びくんっと腰が飛び跳ねた。
「やっ、椿くっ……」
「大丈夫。俺、沙夜さんを満足させられる自信あるよ」
シャツのボタンを外されて、冷たい空気が肌に触れる。ピンク色のレース下着が豊満な胸を包み、椿の手が下着のホックに伸びた。
「あっ……」
息をつく暇もなくぱちんと外され、沙夜の頬が朱色に染まっていく。隠すものを失い、沙夜は咄嗟に両手で隠そうすれば、椿が遮るように沙夜の手を掴んだ。
「だめだよ、沙夜さん」
甘く咎めるような声で囁いて、椿はしゅるりと自分のネクタイを解いた。そのまま沙夜の両腕を頭上で拘束してネクタイで縛ってしまう。
「椿くんっ、やだっ……!」
「怖がらないで。痛くしないから」
――身体がおかしい。
嫌なはずなのに、早く触れてほしくてたまらない。椿が顔を胸元に寄せ、まだ尖りを持っていない突起に吸いついた。
「あ、ぁっ……!」
くちゅ、といやらしい音を立てながら椿の舌が沙夜の突起に絡みつく。そのままぎゅうっと吸い上げられ、甘く噛まれた。沙夜の背中が弓なりに大きく反り、椿は宥めるように舌先でコロコロと突起を転がす。
「かわいい」
椿がふっと笑った。そんな風に笑う椿を見たのは初めてだった。椿は沙夜の反応に満足して、もう片方の突起を指の腹で押し潰す。その瞬間、沙夜の身体には強烈な電流のような衝撃が走り、びくんっと腰が飛び跳ねた。
「やぁ、あっ、……!」
じたばたと身体が暴れるが両腕を拘束されているせいで身動きが取れない。沙夜が大人しくなったことを確認すると椿の手が沙夜のベルトを外して、ズボンのチャックを下げていく。あっさりと脱がされてしまい、下着の上からツーッと指先でなぞられる。
「あっ……!」
「濡れてる。そんなに気持ち良かった?」
「ちがっ、くすりがっ! あぁ、っ……!」
必死に反抗しようとしても、か細く情けない声が漏れるだけだ。
ぐっと唇を噛んで息を止めているのに、熱い吐息が漏れてしまう。沙夜はこんな身体になってしまった自分が情けなくてぽろぽろと涙をあふれさせていると、椿がなだめるようにキスを落とした。
「……全部薬のせいだから。泣かないで」
「ごめんなさいっ……椿くんに、こんなっ……」
年も離れた男の子、しかも常連客でありバイトとして手伝ってくれている子になんてことをさせているのだと罪悪感がこみ上げてくる。
すんっと鼻をすすると、椿が困ったように笑った。
「俺、感謝してるんですよ。梅北さんに」
「え?」
「沙夜さんを抱ける口実ができたからね」
ぽかんと目を丸くする沙夜とは反対に、椿は男の顔をしていた。
「だからもう逃がさない。このまま俺のものにする」
ぎらりと椿の鋭いまなざしが突き刺さる。
「椿くっ……もう、これ以上はっ……」
「聞こえない」
幼子のようなか細い声で、沙夜が椿に懇願する。
だが椿はそれを聞き入れず、沙夜が声をあげる前にショーツを脱がし、ぽとりと床に落とした。ひやりと冷たい空気に触れたのに、身体の熱は相変わらず高まったままだ。椿が沙夜の両足を左右に開くと、その間に身体をすべりこませた。
――椿くんに見られている。
目を背けたいのに逃げ場がない。無意識にぎゅっと目を瞑ると、あふれる蜜を絡めながら花芯を刺激され、沙夜の身体が飛び跳ねた。
「1回イっとこうか」
指で花芯を弄ばれ、急速に身体の奥から何かがせりあがってくる。その正体も分からないまま、ピンッと指先ではじかれてしまうと、頭の中が一気に真っ白になった。
「は、ぁっ……あ、ぁあっ……!」
――なに。今の。
経験したことのない感覚に混乱していると、椿は驚いたように目を見開いていた。
「もしかして初めて?」
「……あ」
沙夜はかあっと頬が赤く染めて、椿から目をそらす。恋愛話はいつもはぐらかしてばかりだったが、本当は夢を追いかけるばかりでこういったことには一切興味がなかったのだ。
「大丈夫。俺に任せて」
嬉しそうな声だった。つぷりと椿の指が奥まで埋められる。慣れない違和感に身を捩ると、逃がさないといわんばかりに椿の手が腰を掴んだ。
「やっ、なに……っ」
椿がある一点を掠めた瞬間、感じたことのない衝撃に身体が飛び跳ねた。指が二本に増やされ、執拗に同じトコロを攻められる。頭がとろとろにとろけさせられる。こんな椿は知らない。
「椿くっ……ぁ、あっ、見ないで」
「見るよ。すげーやらしい」
苦痛にも似た快楽が全身を埋め尽くし、言葉にできない衝動に駆られる。身体の熱は治まるどころか勢いを増し、椿を求めてしまう。
――薬のせいなのに。
快楽の波にあらがえない。もっと椿に触れてほしいとさえ思ってしまう。そんないやらしい自分に気づいて、真っ赤に頬が染まる。
沙夜が顔を背けると無数のキスが降り注ぎ、何度も角度を変えて、酸素を送り込まれる。敏感になった身体には苦しく、はくはくと浅い呼吸を繰り返す。けれど心地よくて、椿の唇が離れていきそうになると沙夜は無意識に椿を追いかけてしまう。
「……ずるいよ、それ」
ナカから二本の指が引き抜かれた。椿が自分のベルトに手をかけて、腫れあがった欲の塊にゴムを被せる。
その途端、沙夜に緊張が走り抜けた。
「ぁ……」
「薬のせいにはさせない。抱くよ」
はっきりと告げられた言葉に、返事はできなかった。そそり勃つ椿の欲望がぴたりと押しあてられる。
一瞬、呼吸が止まった。けれど誘うようひくひくとナカが伸縮し、そのまま椿の大きな欲望が埋められていく。指とは比べものにならない圧迫感に全身が強張り、沙夜は唇をかんだ。
「力抜いて。そう……上手」
ゆっくりと椿の欲望が奥へと進み、ナカを広げられていく。薬のせいか思ったより痛みはなかったが、違和感が激しい。
必死で呼吸を繰り返していると、椿が宥めるように口づけを落とす。椿は沙夜が慣れるまで奥に埋めたまま動かなかった。
「椿くんっ……?」
「ん?」
沙夜が椿の名前を呼ぶと、椿は穏やかに微笑んですりっと頬を寄せた。
余裕そうに見えていたが、椿の額にはじわりと汗が滲んでいる。椿も汗を流すのだと、これは相当我慢させているに違いないと、沙夜は胸を痛めた。
「も、いいよっ……」
「っ……!」
沙夜の一言で椿が律動を開始する。普段のクールなイメージとは反対に、椿は獣のように腰を打ち付けた。
「沙夜さんっ……すき、好きだ」
「ぁ、あっ……」
「誰にも渡さない。俺のものにする」
椿に与えられるままに快楽を感じ、甘い悲鳴をあげながら腰を振る。律動の激しさに頭がくらくらして、何も考えられなくなっていく。
「またっ……」
「いいよ。何回でもイかせるから」
奥をひと突きされて、ちかちかと瞼の裏が点滅した。二度の絶頂を迎えたというのに薬の効力は切れることなく、またすぐに熱を持ってしまう。
強烈な快楽に何度も腰が浮く。息の仕方も忘れるほど、それからは淫らに腰を振って快楽を貪ることしかできなかった。自分が恐ろしくて、別人ではないのかと思いたかった。
これ以上、椿にみっともない姿を見せたくないのに身体の疼きに逆らえなくて、ぼろぼろと涙がこぼれてしまう。
「……泣かないで」
「だって、椿くんにこんなっ……」
「いいよ。もっと見せて。俺だけに」
何度も奥を突かれて再び熱がせり上がる。もう理性は欠片も残っていなかった。
ぽたりと椿の頬から汗の玉が落ち、椿もまた絶頂が近いことを知る。椿が激しく腰を打ち付け、それにあわせて沙夜の腰が揺れる。
「椿くっ……ぁ、あっ、んっ、あ!」
「沙夜さんっ……!」
「一緒にっ……や、ぁ、ぁあっ!」
そっと椿の背中に手を回した瞬間、沙夜は悲鳴をあげながら、急速に込み上げてくる欲を解放し、頭が真っ白にはじけた。ナカで締め付けられる感覚に椿がぶるりと身震いして、後を追うように薄いゴム越しに熱を吐き出した。
「は、ぁっ……はっ……」
熱く、荒い吐息が漏れる。ようやく腕の拘束が解かれたが、もはや感覚は残っていなかった。薬の効果は薄れはじめていたものの、沙夜の視界がゆっくりと閉じていく。
「ごめんね、沙夜さん」
「椿く、ん……」
沙夜は椿に手を伸ばしたが、頬に触れる直前、限界を迎えてぱたりと落ちていった。
◆◆◆
沙夜が目を覚ますと、見慣れた天井が視界に飛び込んだ。
「私……なんで、ここに」
どうやら店のソファで眠っていたらしい。身体を起こそうとするが、鉛のように重く動かせない。
いつのまにか私服のワンピースに着替えており、制服はきっちり綺麗に畳まれていた。
今は何時なんだろうか。外の景色も分からず、店の壁時計に目を向けると、椿の姿が映りこんだ。
「椿くんっ!」
――そうだ。思い出した。
薬も抜けたというのに、かあっと頬が赤く染まり、身体を両手で包み込む。強い薬だというのならいっそのこそ記憶すら失ってしまえばよかったのに、記憶は鮮明だ。
「私っ……ごめんな、さ――」
沙夜がそう言いかけたときだった。
椿はまっすぐ沙夜を見つめ、口を開く。
「俺、責任とるから。つーか最初からそのつもりだったし」
「責任って……その」
「沙夜さんを幸せにする。それとも俺のこと嫌い?」
嫌いなんかじゃない。恋愛感情ではないものの、むしろ好きな方だ。だが将来のある若者にとんでもないことをさせてしまったかと思うと、このまま一緒にいないほうがいいんじゃないかと思えてくる。
「でもまだ学生だし……」
「来年卒業する。就職も決まってる」
「でも就職したら忙しく……」
「一緒に住めばいい」
――だめだ。引く気配がない。
言葉が続かず沙夜が黙り込む。この先の人生、なにがあるか分からない。ましてやまだ21歳、これから出会いもやりたいこともたくさん出てくるだろう。椿にはちゃんと逃げ道を用意しておいてあげたい。
「えっとじゃあ……お試しからはどうかな?」
「……分かった。今はそれでいいよ」
嬉しそうな椿を見ると、沙夜はそれ以上なにも言うことはできなかった。
「色々とよろしくお願いします」
沙夜が改まってぺこりと頭を下げる。すると椿の手が頬に添えられて、そのまま唇を奪われた。
「本気で落とすからね、沙夜さん」
そう言ってぺろっと下唇を指先で拭った椿は、意地の悪い顔をしていた。
沙夜は鈍感な自分にため息をつく。どうやら椿もまた、恋人の座を狙っていたひとりだったようだ。
沙夜は諦めたように微笑むと、再び近づいてきた唇を素直に受け入れた。
とっくに閉店時間を迎えた店内には客もおらず、しんと静まり返っている。だがカウンター席のさらに奥、バックヤードからは、ぐちゅりと卑猥な音が聞こえている。
沙夜はそれをどこか他人事のように感じながら、ぼんやりと自分に覆い被さる男の顔を見上げた。
「あっ……や、ぁ……椿くんっ……!」
「沙夜さん、集中して」
「だめっ、もっ、やめっ……ぁ、あっ!」
「まだそんなこと言うの? 俺じゃ満足できない?」
咎めるように奥を突かれ、沙夜は一際甲高い声をあげた。
椿は柔らかい黒髪を揺らして、いつもと変わらず涼しげな表情のままだ。自分より遙かに年下で、まだ学生の男の子にこんなことをさせてしまっているかと思うと、沙夜は罪悪感に胸を苛まれる。
それでも身体の疼きが止められない。沙夜の意志とは反対に、いやらしく椿を求めて腰が揺れてしまう。
「ぁ、あっ……また、っ……!」
「いいよ。何回でもイって」
椿が唇の端をニッと持ちあげる。普段から何を考えているのかさっぱり分からなかったが、まさかこんな状況で意外な彼の一面を知るなんて。
絶頂がふたたび駆け上がってきて、瞼の裏がチカチカと点滅する。すでに手放しかけた理性の狭間で、沙夜の頭には後悔の文字が浮かんでいた。
――どうしてこんなことになったんだろう。
◆◆◆
赤坂に美人バーテンダーがやっている店がある。
そんな噂が広まったのは、沙夜がバーをオープンした半年前のことだ。
短大を卒業後、二十歳で酒造会社に就職。十年間、営業職として勤めた後、ようやく三十歳で念願かなって自分の店を持ったのだ。
だが現実は思うようにはいかない。店を訪れるほとんどの客が男性で、沙夜を口説き落とそうとあの手この手を使ってくる。セクハラを受けることも多く、水商売と間違えられることもあった。
穏やかで、ゆっくりと時間が流れる静かなお店を目指したかったというのに、これではガールズバーとさして変わらない。純粋にお酒を楽しむ客は少なく、現実と理想のギャップに悩む日々が続いていた。
「マスタ~!」
男性客に呼ばれて沙夜が振り返った瞬間、男の両手はまっすぐ沙夜の胸に伸びる。このパターンはもう何度目だろうか。沙夜は呆れながら男の手首を掴んで、にっこりと微笑んだ。
「うちはそういったお店ではありませんよ」
「あれれ~? マスターってばつれないなあ~」
緩く巻かれた金色の髪を靡かせ、ふんわりと優しい見た目とは裏腹に、沙夜の目は笑ってはいなかった。
男の手を退けて沙夜がお水を差し出した。口コミを見て来てくれたという新規客だ。一緒に来たスーツの男性もへらへらと笑うだけで相当酔っている。沙夜が愛想笑いを浮かべながら頭をうならせていると、ちりんと扉の鈴が鳴った。
「椿くん、こんばんは」
椿が沙夜に会釈すると、目元にかかった前髪がさらりと揺れた。相変わらず綺麗な顔立ちだ。椿は黙り込んだままいつもの一番奥のカウンター席に座って、じーっとボトルを眺める。
高城椿。都内の名門大学に通う大学生で、オープン直後からの常連客だ。まだ21歳とは思えないほどの落ち着きぶりで、口数も多くはない。それでも毎日のように沙夜の店を訪れている。
「今日は何から飲む?」
沙夜が椿の問いかけると、騒いでいたサラリーマンが大声で手をあげた。
「そのスコッチのボトル開けるから結婚して下さい!」
「して下さい!」
完全に悪酔いだ。こうした客は珍しくはない。椿はいつも何も言わないが本当は騒がしい客が好きではないだろう。
――さて。どうやってお帰りいただこうか。
このまま酒を注いでもさらに状況が悪くなるのは目に見えている。
そのときだった。
「沙夜さん、一番左のマッカラン出して」
椿が指定したのは、年代物で希少価値が高く、店で一番値段の高いボトルだった。椿が高い酒を頼むこと自体は珍しくはない。彼はどちらかというと酒には弱い方だと以前から言っており、ゆっくり時間をかけて一杯を堪能するのが好きなタイプだ。あまり飲めない代わりに、年代物の高いボトルばかり注文するため、最初のころは本当に予算は大丈夫か、と確認していたことを思い出す。だがブラックカード一括で支払いを済ませる椿に、お金の話をするのは失礼だと気づいたのはそれからすぐのことだった。
なぜなら椿は、日本屈指のIT企業――高城ホールディングスの御曹司だったのだから。
「ガキにはまだ早いんじゃないかなー」
だがそんなことを知らないふたりのサラリーマンは、椿を蔑むように嗤う。
騒動を起こすのなら帰っていただこう、と沙夜がぴくりと眉を動かした。椿は店にとって大事なお客様だ。店を始めた頃はまだ勝手が分からず断ることもできなかったが、今では度が過ぎるお客様には帰っていただいている。
沙夜が口を開こうとした瞬間だった。
「ごちそうしましょうか」
先に口を開いたのは椿だった。
「え!? いいの!?」
「お前いい奴だな!」
すると二人のサラリーマンがころっと表情を変える。
「沙夜さん、グラス追加で」
――え?
そこまで椿に迷惑をかけるわけにはいかない、と沙夜が視線で訴えかける。だが椿は大丈夫だからと言って、空のグラスを二人に手渡した。
二人のサラリーマンが帰ったのは閉店直前だった。
ようやく静けさを取り戻した店内で、沙夜は何度も椿に頭を下げる。
「椿くん、本当に無理しないで。あーゆー方には帰っていただくから」
「別に。それよりちゃんと断ったら?」
椿君の言うとおりだ。こういったことは初めてじゃない。
恋人を作るつもりはない――何度そう伝えても理由をつけて迫ってくるお客様ばかりで、落ち着くどころか過熱している。
「本当に恋人でもいればはっきり断れるんだけど」
最初から嘘でもついておけばよかったのだが、まさかこんな風になるとは思っていなかったのだ。おかげで理想のお店とはほど遠く、沙夜を自分のものにしようと客が毎晩のようにやってくる。
「……俺がなる」
「え? 何に?」
「沙夜さんの恋人」
グラスを磨いていた手が止まる。一瞬、何を言っているのか頭が追いつかなかった。けれど椿は真剣なまなざしで沙夜を見上げる。
「椿くんも冗談言うのね」
この容姿だ。モテないはずがないだろう。いつもひとりで来てくれるがきっと可愛い彼女がいるに違いないと、沙夜は心の中で思っていた。だが椿は珍しく眉間にしわを寄せて、硬い表情を見せる。
「……じゃあ働くから雇って」
「は、働く!?」
「男がひとりでも立ってればあーゆー奴も減るだろ」
沙夜がきょとんと目を丸くする。確かに椿の言うとおり、女ひとりでやっていることも影響しているだろう。だが誰かを雇うことなんて考えてもいなかった。
「えっと……それは本気?」
「金はいらないから」
「そうじゃなくて、勉強とか就職とか」
「平気。就職も決まってる」
珍しくグイグイと押してくる椿に、沙夜は口ごもってしまう。こんなに積極的な椿は初めてだ。そう言われてしまえば特に断る理由も見つからない。
「役に立たなかったら切っていいよ」
そこまで言うなら、と先に折れたのは沙夜の方だった。
「じゃあ……よろしくお願いします」
「うん。明日から来る」
「そんなにすぐ!?」
「毎日通ってるじゃん」
こうして、新しいアルバイトの採用が決まったのだった。
◆◆◆
翌日。
開店の15分前に、椿が店のドアを開いた。
「お疲れさまです」
「お疲れさま。更衣室、奥にあるから使ってね」
「ありがとうございます」
――敬語だ。
いつもは懐かない猫みたいだから新鮮だ。制服はこちらで用意しようか、と沙夜は言っていたが椿は高級ブランドのショッピングバッグを片手に更衣室へと向かった。
バーカウンターを拭きながら、沙夜は鼓動が速くなっているのを自覚していた。勢いで承諾してしまったものの、人を雇うのはもちろん初めてだ。会社員時代、チームリーダーとして部下を率いていた経験はあるが、相手が大学生でしかも常連客の男の子なんてもちろん経験はない。
今までも、厄介なお客さんに囲まれて沙夜が困り果てる度に椿が助けてくれていた。これ以上は迷惑をかけたくなかったというのに、これではさらに迷惑をかけることになるのではないだろうか。
「着替え終わりました」
「あら、すっごく似合ってる」
椿のすらりと長い手足に、バーテン服はよく似合っていた。とても初日とは思えない風格だ。
「お酒は私に任せて。ゆっくり覚えていきましょう」
「店のボトルは全部覚えてるんで。カクテルも作れます」
これには沙夜も驚きを隠せなかった。
「どこかで働いてたの?」
「ある程度覚えてきました。迷惑かけたくないんで」
――まさか、そこまで。
沙夜は思わず椿の頭に手を乗せて、いい子いい子と頭を撫でる。ぶっきらぼうで何を考えているのかあまり分からなかったけれど、根はしっかりして、真面目な子ということは十分に分かっている。
カウンター越しじゃない椿は新鮮だ。やめてください、と抵抗してくるかと思いきや椿はじっとしたまま動かなかった。それがますます可愛らしく、沙夜はにっこりと笑う。
――こんな子が弟だったらな。
年下の男の子に対して、そんなことを思うようになった自分も年を重ねたものだと苦笑する。
「……お客さんきますよ」
「ご、ごめんね!」
「いえ」
椿に言われてようやく手を離すと、椿は少し照れくさそうに頬を赤らめていた。
そうして椿と二人三脚の日々がはじまった。
それから1ヶ月――。
椿のおかげで、新規客からのアプローチは一気に減った。そのかわり椿が目的の女性客も増え、店の雰囲気はがらりと変わった。中にはお客様同士で連絡先を交換している姿もあり、出会いの場にもなっている。少しずつ沙夜が目指した理想へとなりつつあり、笑顔の絶えない店へとなっていた。
「沙夜ちゃん、久しぶり」
「梅北さん、ご無沙汰しております」
「いやあ~ずっと海外出張でさあ。さっきやっと帰ってきたんだよ」
閉店間際、店内を訪れたのは常連の梅北だ。都内で不動産会社を経営するやり手社長である。だが隙あらば沙夜を食事に誘い出そうとし、ときには家に行ってもいいかと冗談交じりに問いかけてくることもある。悪い男ではないが、その要求は段々とエスカレートしてきている。
「あれ? なんで椿くんがそっちに?」
「うちで働いてもらってるんです」
梅北と椿の視線が重なる。どことなく緊張感が漂ったが、椿がぺこりと頭を下げた。
「はい。これお土産」
梅北から手渡されたのは、都内でも有名なケーキ店の紙袋だ。以前、店で話題になり沙夜が食べてみたいと言ったものだった。
「ありがとうございます! わざわざ買ってきてくださったんですね」
「いいのいいの。沙夜ちゃんのためならおじさんいくらでも並んじゃう」
箱の中を開けると、ショートケーキがひとつ入ってた。テレビで見た通り、ふわふわの生クリームに大粒の苺がのっている。
「ね、今食べてよ。感想聞きたいなあ」
「せっかくだから3人でいただきましょうか」
「だめ。沙夜ちゃんに買ってきたものなの」
気のせいだろうか。普段から強引な人だが、今日は執拗以上に強要してくる。
椿が皿を用意してくれたが、本当にひとりで食べてもいいのだろうかと沙夜が頭をうならせる。
せっかく買ってきてもらったものだ。本人の前で食べないのも失礼な話だろう。お言葉に甘えて沙夜はフォークを持つと、丁寧にスポンジを切って口元に運ぶ。
「とっても美味しいです。ありがとうございます」
「うんうん。おじさんその笑顔が見たかったんだよ。もっと食べちゃって」
甘いクリームが口の中に広がって頬が緩む。勧められるがままに食べるが、次第に違和感が身体の内側から込み上げてくる。
――気のせいだろうか。
ミネラルウォーターをグラスに注いで飲み干す。だが身体の疼きがどんどん大きくなっていくばかりだ。
――なにこれ。
大きな変化は急に訪れた。足下がおぼつかない。頭がくらくらして身体の内側から熱が溜まっていく。呼吸が荒くなって、じんじんとお腹が疼きだす。
「沙夜さん?」
いち早く異変に気づいたのは椿だった。
心配そうなまなざしを向ける椿に、沙夜は大丈夫だからと笑顔を見せたが熱は高ぶるばかりだ。
ふと沙夜が梅北に視線を向けた。下品な視線が突き刺さり、沙夜はようやく事態を把握する。おそらくケーキに何か仕込まれていたのだろう。
――油断した。
今までも何度か似たようなことはあった。席を外したときに飲み物に薬を混ぜられていたり、無理やり酒を飲むように煽られることもあった。幸い、すべて未遂に終わっているのだが食べ物に仕込まれたのは初めてだ。
「沙夜ちゃんどうしたの? ケーキ美味しくなかった?」
「いえ……とっても美味しかったです」
「体調悪いなら帰り送っていこうか?」
閉店間際に来店したのもこれが狙いだったのだろう。
椿がいてくれて正解だったかもしれない。もしふたりきりだったなら、今頃さらに取り返しのつかない事態になっていたかもしれないのだ。
するとすかさず、椿が前にでた。
「俺が送ります。夜間病院に行くんで今日は閉めてもいいですか。沙夜さんのこと心配なんですよね?」
威圧のある声で椿がそう言うと、梅北がうっと声を漏らして引き下がった。
「そ、そうだな。今日はもう帰るとするか」
梅北がお金を置いてそそくさと店を出る。いつもなら店の外に出て見送りをしているが、そんな余裕はなかった。代わりに椿が外に出て見送りを済ませ、店内に戻って鍵を閉めた。
「ありがとう、椿くっ……」
「沙夜さんっ!」
がくりと膝から崩れ落ち足に力が入らなくなる。立ち上がろうとしても全身の力が抜けていくような感覚に襲われ、じんじんと得体の知れない熱が身体中に広がっていく。
椿がケーキの皿に目を向けた。勘のいい子だ。きっとすぐに気づいたのだろうと、沙夜がふっと笑う。
「更衣室まで行きますよ」
「つ、椿くん……!?」
椿はお姫様のように沙夜を横抱きにかかえ、更衣室の扉を開ける。そのままやさしくソファにおろし、沙夜は身を守るように身体を丸めた。ひんやりと冷たい感触に一瞬理性を取り戻したが、それもまた熱へと上書きされる。
呼吸が荒い。訳もなく涙が溢れそうだった。椿の肌が触れただけでぴくんと全身が反応して、歯止めがきかなかった。
「あの男っ……」
苛立つ椿の声が、どこか遠くに感じた。
「すぐ治まるから……椿くんはもう帰って……」
このままではどうなるか分からない。沙夜はできるだけ笑顔を作ってにこりと微笑んだ。だが椿はじっと沙夜を見下ろし、ごくりと唾を飲む。
「……放っておけるかよ」
椿がロッカーから荒っぽく長財布を取り出し、ひそませていた避妊具をポケットに突っ込んだ。沙夜が抵抗する前に覆い被さりソファがぎしりと鳴る。
「ごめん、沙夜さん。すぐ楽にしてあげるから」
切なげに眉を寄せて、唇が重なった。熱が一気に高まる。
――だめなのに。
くちゅくちゅと卑猥な音が響き、耳がおかしくなってしまいそうだった。
椿の手が沙夜のリボンを解き、ベストのボタンをぷちぷちと外していく。するりとシャツの下から手が滑りこみ、びくんっと腰が飛び跳ねた。
「やっ、椿くっ……」
「大丈夫。俺、沙夜さんを満足させられる自信あるよ」
シャツのボタンを外されて、冷たい空気が肌に触れる。ピンク色のレース下着が豊満な胸を包み、椿の手が下着のホックに伸びた。
「あっ……」
息をつく暇もなくぱちんと外され、沙夜の頬が朱色に染まっていく。隠すものを失い、沙夜は咄嗟に両手で隠そうすれば、椿が遮るように沙夜の手を掴んだ。
「だめだよ、沙夜さん」
甘く咎めるような声で囁いて、椿はしゅるりと自分のネクタイを解いた。そのまま沙夜の両腕を頭上で拘束してネクタイで縛ってしまう。
「椿くんっ、やだっ……!」
「怖がらないで。痛くしないから」
――身体がおかしい。
嫌なはずなのに、早く触れてほしくてたまらない。椿が顔を胸元に寄せ、まだ尖りを持っていない突起に吸いついた。
「あ、ぁっ……!」
くちゅ、といやらしい音を立てながら椿の舌が沙夜の突起に絡みつく。そのままぎゅうっと吸い上げられ、甘く噛まれた。沙夜の背中が弓なりに大きく反り、椿は宥めるように舌先でコロコロと突起を転がす。
「かわいい」
椿がふっと笑った。そんな風に笑う椿を見たのは初めてだった。椿は沙夜の反応に満足して、もう片方の突起を指の腹で押し潰す。その瞬間、沙夜の身体には強烈な電流のような衝撃が走り、びくんっと腰が飛び跳ねた。
「やぁ、あっ、……!」
じたばたと身体が暴れるが両腕を拘束されているせいで身動きが取れない。沙夜が大人しくなったことを確認すると椿の手が沙夜のベルトを外して、ズボンのチャックを下げていく。あっさりと脱がされてしまい、下着の上からツーッと指先でなぞられる。
「あっ……!」
「濡れてる。そんなに気持ち良かった?」
「ちがっ、くすりがっ! あぁ、っ……!」
必死に反抗しようとしても、か細く情けない声が漏れるだけだ。
ぐっと唇を噛んで息を止めているのに、熱い吐息が漏れてしまう。沙夜はこんな身体になってしまった自分が情けなくてぽろぽろと涙をあふれさせていると、椿がなだめるようにキスを落とした。
「……全部薬のせいだから。泣かないで」
「ごめんなさいっ……椿くんに、こんなっ……」
年も離れた男の子、しかも常連客でありバイトとして手伝ってくれている子になんてことをさせているのだと罪悪感がこみ上げてくる。
すんっと鼻をすすると、椿が困ったように笑った。
「俺、感謝してるんですよ。梅北さんに」
「え?」
「沙夜さんを抱ける口実ができたからね」
ぽかんと目を丸くする沙夜とは反対に、椿は男の顔をしていた。
「だからもう逃がさない。このまま俺のものにする」
ぎらりと椿の鋭いまなざしが突き刺さる。
「椿くっ……もう、これ以上はっ……」
「聞こえない」
幼子のようなか細い声で、沙夜が椿に懇願する。
だが椿はそれを聞き入れず、沙夜が声をあげる前にショーツを脱がし、ぽとりと床に落とした。ひやりと冷たい空気に触れたのに、身体の熱は相変わらず高まったままだ。椿が沙夜の両足を左右に開くと、その間に身体をすべりこませた。
――椿くんに見られている。
目を背けたいのに逃げ場がない。無意識にぎゅっと目を瞑ると、あふれる蜜を絡めながら花芯を刺激され、沙夜の身体が飛び跳ねた。
「1回イっとこうか」
指で花芯を弄ばれ、急速に身体の奥から何かがせりあがってくる。その正体も分からないまま、ピンッと指先ではじかれてしまうと、頭の中が一気に真っ白になった。
「は、ぁっ……あ、ぁあっ……!」
――なに。今の。
経験したことのない感覚に混乱していると、椿は驚いたように目を見開いていた。
「もしかして初めて?」
「……あ」
沙夜はかあっと頬が赤く染めて、椿から目をそらす。恋愛話はいつもはぐらかしてばかりだったが、本当は夢を追いかけるばかりでこういったことには一切興味がなかったのだ。
「大丈夫。俺に任せて」
嬉しそうな声だった。つぷりと椿の指が奥まで埋められる。慣れない違和感に身を捩ると、逃がさないといわんばかりに椿の手が腰を掴んだ。
「やっ、なに……っ」
椿がある一点を掠めた瞬間、感じたことのない衝撃に身体が飛び跳ねた。指が二本に増やされ、執拗に同じトコロを攻められる。頭がとろとろにとろけさせられる。こんな椿は知らない。
「椿くっ……ぁ、あっ、見ないで」
「見るよ。すげーやらしい」
苦痛にも似た快楽が全身を埋め尽くし、言葉にできない衝動に駆られる。身体の熱は治まるどころか勢いを増し、椿を求めてしまう。
――薬のせいなのに。
快楽の波にあらがえない。もっと椿に触れてほしいとさえ思ってしまう。そんないやらしい自分に気づいて、真っ赤に頬が染まる。
沙夜が顔を背けると無数のキスが降り注ぎ、何度も角度を変えて、酸素を送り込まれる。敏感になった身体には苦しく、はくはくと浅い呼吸を繰り返す。けれど心地よくて、椿の唇が離れていきそうになると沙夜は無意識に椿を追いかけてしまう。
「……ずるいよ、それ」
ナカから二本の指が引き抜かれた。椿が自分のベルトに手をかけて、腫れあがった欲の塊にゴムを被せる。
その途端、沙夜に緊張が走り抜けた。
「ぁ……」
「薬のせいにはさせない。抱くよ」
はっきりと告げられた言葉に、返事はできなかった。そそり勃つ椿の欲望がぴたりと押しあてられる。
一瞬、呼吸が止まった。けれど誘うようひくひくとナカが伸縮し、そのまま椿の大きな欲望が埋められていく。指とは比べものにならない圧迫感に全身が強張り、沙夜は唇をかんだ。
「力抜いて。そう……上手」
ゆっくりと椿の欲望が奥へと進み、ナカを広げられていく。薬のせいか思ったより痛みはなかったが、違和感が激しい。
必死で呼吸を繰り返していると、椿が宥めるように口づけを落とす。椿は沙夜が慣れるまで奥に埋めたまま動かなかった。
「椿くんっ……?」
「ん?」
沙夜が椿の名前を呼ぶと、椿は穏やかに微笑んですりっと頬を寄せた。
余裕そうに見えていたが、椿の額にはじわりと汗が滲んでいる。椿も汗を流すのだと、これは相当我慢させているに違いないと、沙夜は胸を痛めた。
「も、いいよっ……」
「っ……!」
沙夜の一言で椿が律動を開始する。普段のクールなイメージとは反対に、椿は獣のように腰を打ち付けた。
「沙夜さんっ……すき、好きだ」
「ぁ、あっ……」
「誰にも渡さない。俺のものにする」
椿に与えられるままに快楽を感じ、甘い悲鳴をあげながら腰を振る。律動の激しさに頭がくらくらして、何も考えられなくなっていく。
「またっ……」
「いいよ。何回でもイかせるから」
奥をひと突きされて、ちかちかと瞼の裏が点滅した。二度の絶頂を迎えたというのに薬の効力は切れることなく、またすぐに熱を持ってしまう。
強烈な快楽に何度も腰が浮く。息の仕方も忘れるほど、それからは淫らに腰を振って快楽を貪ることしかできなかった。自分が恐ろしくて、別人ではないのかと思いたかった。
これ以上、椿にみっともない姿を見せたくないのに身体の疼きに逆らえなくて、ぼろぼろと涙がこぼれてしまう。
「……泣かないで」
「だって、椿くんにこんなっ……」
「いいよ。もっと見せて。俺だけに」
何度も奥を突かれて再び熱がせり上がる。もう理性は欠片も残っていなかった。
ぽたりと椿の頬から汗の玉が落ち、椿もまた絶頂が近いことを知る。椿が激しく腰を打ち付け、それにあわせて沙夜の腰が揺れる。
「椿くっ……ぁ、あっ、んっ、あ!」
「沙夜さんっ……!」
「一緒にっ……や、ぁ、ぁあっ!」
そっと椿の背中に手を回した瞬間、沙夜は悲鳴をあげながら、急速に込み上げてくる欲を解放し、頭が真っ白にはじけた。ナカで締め付けられる感覚に椿がぶるりと身震いして、後を追うように薄いゴム越しに熱を吐き出した。
「は、ぁっ……はっ……」
熱く、荒い吐息が漏れる。ようやく腕の拘束が解かれたが、もはや感覚は残っていなかった。薬の効果は薄れはじめていたものの、沙夜の視界がゆっくりと閉じていく。
「ごめんね、沙夜さん」
「椿く、ん……」
沙夜は椿に手を伸ばしたが、頬に触れる直前、限界を迎えてぱたりと落ちていった。
◆◆◆
沙夜が目を覚ますと、見慣れた天井が視界に飛び込んだ。
「私……なんで、ここに」
どうやら店のソファで眠っていたらしい。身体を起こそうとするが、鉛のように重く動かせない。
いつのまにか私服のワンピースに着替えており、制服はきっちり綺麗に畳まれていた。
今は何時なんだろうか。外の景色も分からず、店の壁時計に目を向けると、椿の姿が映りこんだ。
「椿くんっ!」
――そうだ。思い出した。
薬も抜けたというのに、かあっと頬が赤く染まり、身体を両手で包み込む。強い薬だというのならいっそのこそ記憶すら失ってしまえばよかったのに、記憶は鮮明だ。
「私っ……ごめんな、さ――」
沙夜がそう言いかけたときだった。
椿はまっすぐ沙夜を見つめ、口を開く。
「俺、責任とるから。つーか最初からそのつもりだったし」
「責任って……その」
「沙夜さんを幸せにする。それとも俺のこと嫌い?」
嫌いなんかじゃない。恋愛感情ではないものの、むしろ好きな方だ。だが将来のある若者にとんでもないことをさせてしまったかと思うと、このまま一緒にいないほうがいいんじゃないかと思えてくる。
「でもまだ学生だし……」
「来年卒業する。就職も決まってる」
「でも就職したら忙しく……」
「一緒に住めばいい」
――だめだ。引く気配がない。
言葉が続かず沙夜が黙り込む。この先の人生、なにがあるか分からない。ましてやまだ21歳、これから出会いもやりたいこともたくさん出てくるだろう。椿にはちゃんと逃げ道を用意しておいてあげたい。
「えっとじゃあ……お試しからはどうかな?」
「……分かった。今はそれでいいよ」
嬉しそうな椿を見ると、沙夜はそれ以上なにも言うことはできなかった。
「色々とよろしくお願いします」
沙夜が改まってぺこりと頭を下げる。すると椿の手が頬に添えられて、そのまま唇を奪われた。
「本気で落とすからね、沙夜さん」
そう言ってぺろっと下唇を指先で拭った椿は、意地の悪い顔をしていた。
沙夜は鈍感な自分にため息をつく。どうやら椿もまた、恋人の座を狙っていたひとりだったようだ。
沙夜は諦めたように微笑むと、再び近づいてきた唇を素直に受け入れた。
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