《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

文字の大きさ
5 / 61
第一章 田中悠斗

異世界の村③

しおりを挟む
 ルナリアの冒険者ギルドは、村の中心にある大きな木造建築だった。
 
 扉を開けると、カウンターの向こうで書類を整理している少女が目に入る。
 
 歳は20歳くらい。肩まで伸びた茶色の髪をポニーテールに結び、振り返った笑顔はとびきり爽やかだ。日差しに焼けた健康的な肌に、程よく引き締まった腕と脚。胸も腰もほどよく張りがあって、全体のバランスがとにかく快活さを物語っている。
 
 まるで「元気が服を着て歩いてきた」みたいな印象で、ギルドに訪れた冒険者たちを自然と安心させるオーラがあった。ラノベとかによく出てくる感じなので、彼女が受付嬢だろう。

「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ! 私は受付のエリルです。登録ご希望ですか?」

 ぱっと花が咲いたような笑顔。声も明るく、張り詰めていた心が少しだけほぐれる。
 僕は一歩前に出て答えた。

「あ、はい。僕、田中悠斗と、この人は高柳葵。二人で冒険者登録をしたいんですけど……」

「悠斗さんに葵さん、ですね! 了解しました! どうぞよろしくお願いします!」

 エリルは人懐っこい笑みを浮かべて、順番に僕らの顔を見つめた。その視線に、少し照れくさくなる。

「悠斗さん、なんだか頼りになりそうな雰囲気ですね!」

 エリルはニコニコしながら僕にウィンクする。え、なに? 急に好感度高くない? 葵が隣で「チッ」と舌打ちする音が聞こえる。怖いよ、葵さん……。

「え、あ、いや……そ、そうですか?」
 完全にお世辞だとわかっているのに、ちょっと嬉しい自分が情けない。

「……は? どこがよ」

 すかさず隣から低い声。葵だ。腕を組んで、明らかに不満そうに僕を睨んでいる。

「こいつ、昔からオドオドしてばっかりだから。頼りになるとか一番縁遠いタイプだから」

「ちょっ……今そういうこと言うなよ!」

 僕が慌てて抗議すると、エリルはクスクスと笑った。

「ふふっ。妬けちゃいますね。大丈夫ですよ、冒険者は色んな人がいますから! それじゃあ、登録手続きを始めますね!」

 エリルは書類を取り出しながら、にっこりと笑った。

「それじゃあ、お二人のお名前と年齢、それから得意分野をここに記入してくださいね」

 僕は羽ペンを手に取り、慣れない文字に悪戦苦闘しながら名前を書き込む。横で葵は「何このダサいペン、インク垂れるんだけど!」と文句を言いながらも、意外と達筆に記入していた。

「……はい、ありがとうございます!」
 書類を受け取ったエリルは、僕の方を見て小さく頷く。

「悠斗さん、すごく真面目そうですね。ギルドでも頼れる人になりそう」
「えっ、あ、いや……そんな……」
 顔が熱くなる。こんな風に真正面から褒められるのは、会社でもまずなかった。

「……はあ? どこが真面目よ。こいつ、会社じゃいつも私に怒られてたんだから」
 葵が即座に横槍を入れる。目が据わっていて怖い。

「ふふ、でも怒られても続けてこれたのは、努力家だからじゃないですか?」
 エリルは微笑みながらさらりと返す。その優しい眼差しに、思わず心臓がドキッと跳ねた。

 ……やばい、この人、ちょっと僕に好意的?

「悠斗、めずらしくモテてるじゃん。まあ、こんな田舎の女の子には、あんたくらいでちょうどいいのかもね」

 葵の嫌味に、エリルの笑顔が一瞬ピクッと固まる。うわ、修羅場フラグ!? 慌てて話題を変える。

「えっと、エリルさん! 書類これでいいですか?」

 エリルは書類を確認すると、すぐに木製の冒険者バッジが渡してくれた。僕のバッジには「ランクF」と刻まれている。どうやら初心者はみんなこのランクからスタートらしい。葵も同じFランクのバッジを受け取り、ちょっと不満そうにそれを眺めている。

 エリルが説明する。
 
 「このバッジは冒険者の証明書みたいなものですよ。クエストを受注したり、報酬を受け取ったりする時に必要だから、大事に持っててくださいね!」
 
「MMOみたいに名前が頭の上に出たりしないのか……」
 変な事を言ったのでエリルが目をぱちくりしてる。

「エムエム……?魔術師ですか?名前が頭の上に出るとか、よその街のギルドで聞いたことありますけど……。ここでは出ませんね」

「ははは」

「あと、悠斗さん、初めてのクエストなら、近くの草原でウサギ型モンスター『ホーンないラビット』の討伐がおすすめです! 初心者でも安全に戦えるし、素材も売れるからお金稼ぎにピッタリ!」

「ホーンないラビット? ウサギってことは弱いよね?」

「とーーっても弱いですよ! でも、数が多かったり、突っ込んでくるから、油断しないでね! 装備は市場で揃えられますよ。悠斗さんなら、剣と軽い鎧で十分かな!」

「ありがとう。行ってみるよ」

 エリルに礼を言いギルドを出ようとする。

「あの……私も……手伝いましょうか?」

 エリルが顔を赤くしながら、モジモジして言う。

「うん、戦ってみて難しかったら頼むよ」

 ギルドを出て、エリルのアドバイスに従い、僕と葵は市場に向かった。



 手持ちの所持品を売って資金を確保しようと思ったけど、スマホとか財布とか、現代のものは価値がなさそうだった。仕方なく、僕の腕時計と葵のブランド物のバッグを質屋に持っていくと、意外にも高値で買い取ってくれた。どうやら「異世界の工芸品」として珍しがられたらしい。結果、銀貨30枚ほどを手に入れ、これで装備を揃えることに。

 市場で剣、革の胸当て、簡単な盾を買った。葵は動きやすさを優先して、短剣と軽いローブを選んだ。
 
 装備を整えた僕らは、さっそく草原へ向かう。エリルが言ってた通り、ルナリアの南にある広大な草原には、ウサギがピョンピョン跳ねている。見た目は可愛いけど、目が赤く光っていて、ちょっと不気味だ。

「悠斗、あんたが先に行きなよ。こんなウサギ、楽勝でしょ?」

 葵がニヤリと笑いながら僕を前に押し出す。ったく、相変わらずだな……。剣を構えて、ホーンないラビットに近づく。すると、そいつが急にダッシュしてきた!

「うわっ!」

 慌てて盾で受けると、意外と衝撃が強い。こいつ、見た目よりパワフルだぞ! 横に飛びながら剣を振ると、ホーンないラビットの脇腹に浅い傷がつく。動きが速いから、狙いを定めるのが難しい。

「だっさ! ウサギにビビってんの?」

 葵が後ろでゲラゲラ笑ってる。くそっ、絶対見返してやる! ホーンないラビットの動きをよく見て、次の突進をかわす。今度はしっかり剣を振り下ろし、首元をスパッと切った。ウサギはキーキー鳴いて倒れる。やった、初キル!

 その瞬間、頭の中に声が響く。

『レベルアップしました! レベル2にあがりました!』

 え、なにこれ? ゲームみたいにレベルアップ? しかも、なんか体が軽くなった気がする。ステータスとか見れないのかな?

 試しに「ステータスオープン!」と叫んでみると、青っぽい半透明のウインドウが目の前にあらわれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...