《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

文字の大きさ
14 / 61
第一章 田中悠斗

獣人の村へ③

しおりを挟む
 最後に残ったのは――レベル6のボア。
 仲間を倒された怒りか、地鳴りのような咆哮を放った。

 ゴオオオオオッ!!

 森全体が震え、木々の葉が舞い散る。幹までミシミシと軋んだ。
 鼓膜が焼けるような轟音。思わず耳を塞ぎたくなる。

 【鑑定】のウインドウが自動で開く。
 ――咆哮:自分より低レベルの敵の動きを数秒間封じる。

 僕はレベル5、葵はレベル4。
 ……完全にアウトだ!

 ガチンッ!
 体が石のように固まり、盾を構えたまま動けなくなる。
 背中でウミャウが「ひっ」と短く悲鳴を上げた。

 くそっ、ウミャウを怖がらせやがって――!

「悠斗、動け! ヤバいよ!」
 葵の声も震えていたが、彼女自身も体が硬直している。
 剣を握ったまま、まるで時間が止まったみたいだ。

 ボアが地面を蹴り、目を血走らせて突進の構えを取る。
 200kg超の巨体。狙いは、ウミャウを背負う僕。

 「やばい、止まれ……動け、動け、動けぇッ!!」

 叫んでも体は動かない。
 足が地面に縫い付けられたみたいにピクリとも動かない。

 その瞬間――背中の重みが消えた。
 ウミャウが僕の背中からスルリと降り、地面に着地した。

「ウミャウ!? 危ない、下がれ!」
「ミャウ……ママのために、ミャウ、がんばる!」
 小さな声。その目は――まっすぐだった。

 次の瞬間、ウミャウが風になった。
 小さな足音が、森の中を駆け抜ける。

 ボアが突進を始める――直前。
 ウミャウが拾い上げた小石を、ビシッと投げつけた!

 ――命中!

 ボアの右目にクリーンヒット!
 「グオオオッ!!」と吠え、巨体がバランスを崩す。

 ガツンッ!

 突進がズレ、巨大な体が隣の木に激突した。
 木がバキリと折れ、葉がざわめく。

「ウミャウ、ナイス!! 葵、動けるか!?」

 咆哮の効果が切れ、葵が体を震わせて剣を構え直す。
 額に汗が光る。

「くっ……動ける! 悠斗、ウミャウを」

「了解!」
 僕も硬直が解け、すぐに盾を構えた。

 ボアは血走った目でこちらを睨み、再び蹄を鳴らす。
 咆哮の余韻で空気が重い。

 ドドドドッ――!!

 再突進。
 斜めに構えた盾へ、角が直撃する。

 ガツーン!!

 衝撃が腕を突き抜け、HPが10減って30。
 視界がグラつく。それでも――踏ん張る。

「葵、側面だ!」

 葵は即座に反応。
 剣術Lv2の軌跡が閃光のように走る。

 ザシュッ!

 ボアの後ろ足に深い傷が入り、血が飛び散る。
 「キイィィ!」と悲鳴を上げて振り向くボア。

 その隙に、ウミャウがまた動いた!
 影のように木の陰へ消え、別の位置から飛び出す。
 小さな足が地面を滑るように走り、ボアの足元へ――枝を投げた!

 パチン!
 枝が前足に絡み、ボアの体勢が一瞬崩れる。

 「ウミャウ、すげえ!」
 僕は叫びながら盾で頭をガンッと叩き、剣を脇腹に振り抜く。
 ズバッ! 肉を裂く手応え。

「葵、連携いくぞ!」
「言われなくてもっ!」

 葵が一気に駆け、ボアの背に跳び乗った。
 渾身の力で剣を首筋に突き立てる。

 ズブリ――ッ!!

 ボアが怒り狂って咆哮を上げようとするが、
 その瞬間――

 ウミャウの小石が、また閃いた。

 ビシッ!!

 鼻先に直撃!
 「グオオオッ!」と咆哮が途切れ、ボアがふらつく。

「悠斗、今だっ!!」
「うおおおおおっ!!」

 僕は盾を全力で振り下ろし、
 ガツンと角を叩き折る勢いで打ちつけた。
 続けざまに剣で肩口を斬り裂く!

 葵が連続斬りを放ち、首筋を二度、三度と斬り抜ける。
 血飛沫が夜風に舞った。

 最後の一撃。
 僕の盾が突進の勢いを受け止め――

 ガツーン!!

 ドスン。

 巨体が地に沈む音。
 ボアは、動かなくなった。

 ――終わった、のか?

 僕のHPは25まで削られていたが――

『ホーンワイルドボア(レベル6)を討伐しました!』
『レベルアップしました! 現在レベル6!』

 体の奥から光が走る。全身が回復していく感覚。
 息が整い、痛みが消える。

「はぁ……なんとか倒したね」
 葵が剣を払って血を飛ばす。
 息を弾ませているのに、その表情はどこか楽しそうだった。

「やった! ウミャウ、すげえよ!」

「ふん、派遣さん、ウミャウに助けられるなんて、情けないんじゃない?」
 葵が笑う。その声には、ほんの少しの安堵が混じっていた。

 ウミャウはハァハァと息を切らしながらも、ニコッと笑う。
「ミャウ……ママのために、がんばった……!」

 その小さな笑顔に、胸が熱くなった。
 たった今まで命を懸けた戦場だったのに、不思議と心が温かい。

 ウミャウが、そっと顔を上げる。
「……ゆうとも、すごかったよ」
 か細い声に、息が詰まった。

 ――この子、ただの子供じゃないのかな。



 ステータスを確認すると、ウインドウが淡く光った。

===== ステータス =====

名前:田中悠斗
レベル:6

力:13
素早さ:8
器用さ:6
体力:13
知力:6
精神:6
幸運:6

HP:70
MP:60
SP:70

スキル:
鑑定Lv1
2倍

余ってるポイント:12

=================

 葵のステータスも横目でチェック。

===== ステータス =====

名前:高柳葵
レベル:4

力:15
素早さ:21
器用さ:21
体力:21
知力:21
精神:12
幸運:24

HP:100
MP:40
SP:100

スキル:
鑑定Lv1
剣術Lv3

B87 W58 H85

余ってるポイント:7

=================

「ひゃうっ!? ちょ、悠斗、あんたねぇ!」
 ――バレた! 

「ごめん、つい気になって……」
 っていうか、Bが増えてる!?
 ……いや、それより、ポイントの上がり方おかしくない?

「葵、余ったポイント、Bに振った?」
 葵の身体がビクッっと震えた。
「……」

 ――自分で盛ってたのか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...